バリュエンスホールディングス株式会社 代表取締役社長 嵜本晋輔

自分の可能性を信じ、どんな状況でも楽しみを見出す

バリュエンスホールディングス株式会社 代表取締役社長 嵜本晋輔(さきもと しんすけ)

■プロフィール

1982年、大阪府出身。元Jリーガー(ガンバ大阪)。

2011年12月にブランド品のリユースなど、サステナブルな事業を行う株式会社SOU(現 バリュエンスホールディングス株式会社)を設立。2018年に東証マザーズ市場(現 グロース市場)に上場。元サッカー選手としては初めての上場企業社長に。

プロサッカー選手から転身した経営者として、初の上場を果たしたのが嵜本晋輔社長。プロサッカー選手から起業への道のりや、常に検証をし続けた結果における新たなビジネスモデルの確立の秘訣。さらには今後の展望や大学生に向けたメッセージについて、嵜本社長にお話を伺った。

■サッカー以上の天職に出逢った

小学校の頃からJリーガーになるのが夢で、ずっとサッカーの練習に力を入れていました。高校1年生の時に他の選手を目的に来ていたスカウトの目に留まり、高校卒業後、ガンバ大阪に入団しJリーガーになることができました。しかし18歳で入団したものの、自分の思い描いていたサッカーのレベルよりも高く、入団3年目で戦力外通告を受けてしまいました。

その後はJFLの佐川急便のチームに拾っていただき、働きながらサッカーをするようになりました。しかし、自分自身を客観的に見た時に「サッカーを続けたい」というのが自分のエゴだとわかり、サッカーへの夢を手放すことができました。サッカー選手を卒業した後は父親の経営していた会社に入り、その後3兄弟でリユース事業の会社を立ち上げることに。初めてビジネスの世界に触れた際、サッカー以上の楽しみを見出すことができました。

与えられた環境や状況で楽しみを見つけるのは、サッカー選手時代と同じだなと感じます。人生の幸福度は、状況の捉え方によって変わる。考え方次第で、どんな状況でも楽しみ方を見出すことができる。そんな事実をこの時に学びました。当時の最大のモチベーションは、父や兄に褒められたいという思いで、誰にも負けない人材になることでした。また、サッカー選手時代に戦力外通告を受けるという悔しい経験をしたことも、今の仕事に活きていると思います。

■プロからの初めての上場企業社長に

今後世の中はどう変わっていくのか。そして、自社を他社とどう差別化すべきかを考えたときに、「地域の人から愛されるだけではなく、日本全国に広めていけるようにしたい」という思いが芽生えました。

私の会社はブランド品・貴金属・骨董品等の買取および販売を行っています。どうやって他社と差別化していくかを考えた際、それぞれの商品の性質を理解して短期間で在庫をさばいていき、ライバル企業におろしていくCtoBtoBというビジネスモデルを確立しました。ブランド品は生ものだからこそ、商品の相場は需要で決まります。Bで売るべきかCで売るべきかの需要を、常に見極めることがこのビジネスの肝です。

また、今日できたことは明日もできますが、今日できなかったことは改善がなければ次も失敗します。だからこそ、失った売り上げに目を向けたのもポイントだったと思います。それによって、改善の機会を多く得ることができ、業界の中では後発だったにもかかわらず、上場できたのだと思います。現在、同じようなビジネスモデルを運営する会社は増えてきましたが、その間に自分たちは飛び抜けることができたと確信しています。

■今後の未来を創り上げる人材

他の業界では、どんなことをしているのかに常に目をむけています。以前から、他業界のものを自分の業界にもってくるように意識をしています。

自分の経験、知識にとらわれすぎてしまうと、ビジネスは発展しません。実は、他業界を経験し、リユース業界に初めて入ってきた人のほうがクリエイティブを発揮できることも多いです。長年やっている人は成功体験などが足かせになりがちで、「リユース業界はこういうものだ」と定義づけた瞬間にバイアスに流されてしまいます。

だからこそ、大切なのは影響を受けない自分を作ること。採用の際も「過去の経験にとらわれすぎていないか」を1個の基準にしています。何事も吸収しようとする素直で謙虚な人のほうがこれからの未来をつくれます。過去にすごい結果を残していることも大切ですが、それよりも重要なのは、フラットな視点でどれだけ今後の未来を作っていけるかだと思っています。

■潜在的ニーズを引き出す

顧客が何を求めているのか。それは、最終的におもてなしやコミュニケーションといった信頼の積み重ねである人間力だと思います。そのため、顧客が得たい成果を理解して、ヒヤリングをする重要性を常日頃感じています。そこで大切になってくるのは、質問力と傾聴力です。顕在化されているニーズと裏側にある潜在的ニーズを引き出すことこそが、ビジネスの本質です。特に私達のいる業界は、リピーターに支えられており、売り上げの半分をリピーターが占めています。だからこそ、鑑定士にしても、ただ査定するのではなく、きちんと相手の隠れたニーズを引き出せる人材として育成できるように、意識しています。

■プロチームとしての経験

サッカーと企業は、チームが重要という観点では共通しています。いかに優秀なプレイヤーが一人いても、その人だけでは勝つことはできません。いかにチームとして機能するかが重要なので、プレイヤーである社員全員が、会社全体で思考できることが大切です。私のこうした視点は、サッカーから学ぶことができました。なお、会社全体を理解するコツは、「みんなと飲みに行っているかどうか」です。会社の中で情報共有している時と、お酒の場のコミュニケーションの時は、誰もが表情が変わってきます。私自身は、特にキーマンとキーマンを合わせるための食事会を開きますが、社員同士がこうした機会を自然に設けられるようになったら、組織としてもっと成長すると考えています。

■大学生へのメッセージ

それぞれ一人ひとりが、とんでもないポテンシャルを持っているはずです。ただ、自分の可能性に気づいている人は少ないです。その可能性を奪っているのは自分自身です。だから、「自分は何者だ」と決めつけないでほしいです。定義づけしてしまった瞬間に、並の人間にしかなれません。幸せと年収は比例しません。都合のいい大人が作ったものに惑わされずに本当の自分に気づいてほしいなと思います。

学生新聞オンライン 2022年8月29日取材 國學院大學3年 島田大輝

國學院大學3年 島田大輝 / 法政大学1年 佐伯桜優  / 関東鍼灸専門学校3年 竹原孔龍 / 立教大学4年 須藤覚斗

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