株式会社AbemaTV プロデューサー 樫尾 魁

『プロデューサーの仕事は、思い通りにならないからこそ面白い』

株式会社AbemaTV プロデューサー 樫尾 魁(かしお かい)

■プロフィール
2013年明治大学商学部卒業。ソフトバンクグループに入社後、テレビ制作会社に転職。2018年に株式会社AbemaTVに転職し、バラエティジャンルのプロデューサーを経験した後、現在は恋愛リアリティーショー『オオカミには騙されない』シリーズなどのプロデューサーを務める。

日本の10代女性の約3人に1人が観ている「ABEMA」オリジナル恋愛番組ジャンルの中でも不動の人気を誇る『オオカミには騙されない』シリーズを手掛けるプロデューサーの樫尾魁さん。多くの人が気になるプロデューサーの仕事内容から「ABEMA」ならではの魅力、『オオカミには騙されない』シリーズの制作についても伺った。

■積極的に動き続けたプロデューサーまでの道のり

学生時代は、学生団体にたくさん入っていました。10個以上の団体に所属し、様々な知見を得ながらフットワーク軽く、アクティブに過ごしていました。新卒の時は、「成長したい」という欲が強かったので、一度はソフトバンクに入社しました。でも、小さい頃からずっとテレビを観ているテレビっ子だったので、やはりタレントさんと一緒に仕事がしてみたいなと思い、この業界に入りました。制作会社でAD(アシスタントディレクター)やD(ディレクター)を経験した後、サイバーエージェントの社員の方に声をかけていただき「ABEMAというチャレンジングな場所でプロデューサーとして挑戦してみたい」という思いから転職をしました。

入社後は、アシスタント業務から始まりました。「ABEMA」に入った当時は28歳ぐらいだったので、「早くアシスタント業務を卒業するぞ」という思いでめちゃくちゃ仕事しました(笑)。周りの方達は忙しく手取り足取り業務を教えてくれるわけではないので、どうやって人のスキルを盗むかということを考えました。使っているメッセージツールで尊敬する先輩方のやり取りを見て、その後、15分くらい時間をとって解説してもらうなどの行動を重ねるうちに、数か月で念願のプロデューサーになることが出来ました。

■予想外こそ面白いプロデューサーの仕事

プロデューサーの業務内容は、主に企画作成やチーム作り、制作進行、予算管理です。企画はプロデューサーが全部アイディアを出しているわけではなくて編成や運用、宣伝、広報担当などABEMAの社内で15人から20人前後のチーム作りや制作会社との連携を行いながら、様々な案を出し合い、企画を作っていきます。また、それに伴って決められた予算の中でどうやってやりたいことを成立させていくかを考えることもプロデューサーの仕事です。レストランで例えると、予算を見ながらどういうテーマ、世界観でやっていくかを決める店のオーナーの仕事が、プロデューサーの仕事に近いイメージです。
「ABEMA」はリニア放送もありますが、オンデマンドで見逃し視聴もできるコンテンツがほとんどです。そのため、どのように打ち出していけば、事前だけでなく放送中、また放送後に視聴者の方々が興味を持ってくれるのかといった設計をする時間を長くとります。想定外の反響があったり、中々設計通りにはいかないこともありますが、そこが面白いなと思っています。自分の価値観とは全く違う価値観に触れることで自分の中のレパートリーが増える感覚がありますし、そういった予定不調和な視聴者の方々のレスポンスはプロデューサーとしてのやりがいにつながっています。

■“網羅性”の「ABEMA」

番組を企画するうえで一番大切にしているのは、「一言で何が面白いか伝わること」です。「ABEMA」の番組は、SNS上で話題にしていただくことも大切にしています。面白さを一言で表せれば、自ずと番組の拡散性は高まると思っています。また地上波のテレビを観るときは、チャンネルをザッピングしてパッと目に飛び込んできて面白そうと思った番組を観るスタイルが多いと思いますが、「ABEMA」の番組は観ようと思って観に行く、意志ある視聴がベースになっていることが多くあります。そのため「それって簡単に言うと、どんな話?」というログラインで面白さが視聴者の方にしっかり伝わることが重要です「ABEMA」はテレビのように生放送などのチャンネル編成が組まれたリニア放送もしている一方で、オンデマンドで見逃し視聴もできる独自性を持ったサービスです。リアルタイムの視聴とオンデマンドの視聴の数やコメント量には相関性がありいかにリアルタイム配信で熱狂を作りコメント量やコンテンツの総視聴数を伸ばせるかを重要視しています。また「ABEMA」にはチャンネルが25以上あり、ニュースやオリジナルドラマ、恋愛リアリティーショー、スポーツ、アニメなど全ジャンル・ターゲットの“網羅性”に強みがあると考えています。

■恋愛リアリティーショーのプロデューサーとしての挑戦

今はオリジナル恋愛リアリティーショー『オオカミには騙されない』シリーズを担当しているのですが、以前は『チャンスの時間』や『ニューヨーク恋愛市場』など芸人冠バラエティの統括をしていました。ですから、恋愛リアリティーショーのプロデューサーを務めることになった時は「胸キュンって何?」という感じでした。(笑)未知の領域だったので、まずはたくさんの恋愛リアリティーショーを観て勉強しました。しかし、視聴者の層が10代、20代とバラエティとは全く違ったので、自分自身だけでは分からないことが多く、ターゲットの人たちと認識、価値観をすり合わせるのが最初はすごく難しかったです。自分だけで想像してもうまくいかないので、内定者や周囲の若年層に、「今、若い人たちは何を観ているのか、どうしてそれを観ているのか、どんなアプリを使っているのか」などヒアリングを繰り返してインプットをしていきました。

■これからも面白いことを追求し続けたい

僕は、とにかく自分が面白いと思えることに興味があって。これからも「面白い」を追求し続けられる環境にいたいなと思っています。そのためには自分で動いて企画を出し続けることも重要だと思っています。周りにいる作家さんやチームのみんなと喋っていると出てくるアイディアもあるし、誰かと会って話していると「良い企画を思いついたんだけど聞いて」と言ってもらえることもあります。その時、もらった企画やアイディアの種を、自分の価値観の中でブラッシュアップして「こうやったら面白いかも」「ABEMAだったらこのやり方がいいかも」と考え、企画としてまとめたりすることもあります。今後も、何か新しいことを思いついたら、ぜひチャレンジしていきたいですね。

■大学生へのメッセージ

とにかく多くの経験を積んでほしいです。漫画の中のセリフなのですが「出来る出来ないじゃなくて、やるかやらないかだ。」という言葉を人生においてすごく大事にしていて。出来る・出来ないで判断して、チャレンジしないのは簡単ですが、「とりあえずやってみよう」とチャレンジすることを大切にしてほしいです。やってみてダメならダメで良いし、向いてないと思ったら数時間や一日で辞めたって良いけれど、その一分すらやらない人もたくさんいると思います。自分自身も学生時代は色んな学生団体に入って人生経験が増えたし、自分がどういうことに対してネガティブ、またはポジティブな気持ちになるのか知ることが出来ました。ぜひ、皆さんも色んな環境に自分を飛び込ませてあげてください。

学生新聞オンライン2024年8月26日取材 東洋大学2年 越山凛乃

■樫尾さんがプロデューサーを務める『キミとオオカミくんには騙されない』

第1話~3話、最終話を「ABEMA」にて無料配信中
配信URL:https://abema.tv/video/title/90-1820

武蔵野大学4年 西山流生/東洋大学2年 越山凛乃/法政大学4年 鈴木悠介

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