株式会社ローソンストア100 代表取締役社長 小栗知義
人生を豊かにする食の伝統を守り革新を創造する
株式会社ローソンストア100 代表取締役社長 小栗知義(おぐりともよし)
◾️プロフィール
慶應義塾大学卒業後、同大学院へ進み、在学中に米国カリフォルニア大学 奨学研究員として情報通信を研究。2004年4月三菱商事株式会社入社。英国ロンドンビジネススクールMBA。2007年米国三菱商事NYC、2014年ファーストリテイリング・アジア大洋州EC Director、2017年ユニクロタイランド最高経営執行責任者COO、2022年3月株式会社ローソン マーケティング戦略本部、2023年3月株式会社ローソンストア100上級執行役員を経て2024年4月同社代表取締役社長に就任、現在に至る。
今後の展望として「記憶に残るブランドに、そして印象に残る代表的な商品を創っていきたい」と語ってくれたのは、株式会社ローソンストア100の小栗知義社長。コンビニとスーパーどちらの便利さも持つローソンストア100の魅力や特徴、大切にしているお客様への想いまで伺った。
◾️世界の広さを知った学生時代
大学では電子工学を学びエンジニアとして情報通信に関する研究を行っていました。卒業後も、研究を続けるため大学院へ進学しました。国際学会で論文発表した際、世界には沢山の大学や研究機関があり、様々なバックグラウンドの人たちが世界をより良くする目標に向かって切磋琢磨しているのだなと感じ、海外の大学に身を置いてみたいと思うようになりました。類似領域の研究を行っていたカリフォルニア大学の教授に「一緒に研究させてもらえませんか」と論文を送り、大学院2年の時、奨学研究員として同大学院のラボで研究を行いました。色々な国籍の方々との生活を通じ「世界は広いな」と改めて感じ、非常に多くの刺激をもらった日々でした。
◾️自分のパフォーマンスや成長スピードを若いうちから感じ加速させたい
将来何をしようかと考えたときに、学生時代は消費者寄りの研究ではなく基礎研究の領域にいたからこそ、「自分のやっていることが世の中にどういうインパクトをもたらせるのか」とより強く考えるようになりました。人生を通じ色々な世界を見て影響を受ける中でどんどん自分の興味も変わっていくだろうと感じていたので、自分の仕事を自分で定義し、発展させられそうな仕事がしたいという理由で三菱商事に入社しました。
エンジニア出身であったため配属においてはIT系や通信、宇宙関連等のお話を頂きましたが、全く異なるコンシューマー領域で自分の培ってきたエンジニアの知見を活かし自分自身を試したいという思いから、アパレル部署への希望を出し配属されました。重厚長大な領域と比較し、若い頃から自分がどういうパフォーマンスを生み、どういうインパクトを出しているのかがよりスピーディに分かりやすい領域だと考えたからです。幸せなことに社会人として早い段階から非常に優秀で志の高い先輩方に恵まれ、「世界に貢献する経営者になろう」という刺激を受けていました。日々の仕事を通じて出来るだけ早く自分を成長させ、経営者になろうと考えていました。
◾️コンビニとスーパーの間のポジションであるがゆえの特徴
都市圏を中心にコンビニはあらゆるエリアにありますが、スーパーは割と大型で、時間があるときに少し離れたところへ出かけるといった方も多いのではないかと思います。ローソンストア100はその間を目指し、小型でありながらも大規模なスーパーに行かなくても簡単に買い物ができるエリアを捉え、東・名・阪を中心に644店舗(2024年10月末まで)を展開しています。商品構成としてはお弁当や飲料など、コンビニの強みであるその場ですぐ食べられる商品だけでなく、生鮮品や練り物などご家庭で食卓に出すものや、食品以外の生活必需品も多く取り揃えています。商業ビルやオフィス街よりもある程度住宅立地に近いエリアの方がお客様のニーズに近いと考えています。駅前立地と住宅立地の割合は2:8で日常の食卓の買い物や買い足しなど、地域・ご家庭の冷蔵庫代わりにご来店頂くケースが多いです。
◾️感情も動く買い物と、本当の意味でのお客様のためを目指して
ローソンストア100の経営として就任した際、「衣料品と食べ物では市場が大きく異なるため環境も考え方も全く異なるのでは」と想定していました。勿論、様々な違いはありますが、より大きな括りで見ると同じコンシューマー向けの小売領域として、本質的なところや原理原則はブレないと感じています。
ローソンストア100はローソングループの中で、コンビニ仕様でありながら生活必需品などスーパーの商品構成があることを特徴とした、コンビニエンスストアとスーパーマーケットの中間のポジションにあります。その中で商品カテゴリ毎のブランディングを確立するのは非常に重要なことで、日々「あったらいいな」「あっと驚く」というような商品を打ち出しています。
お客様が単にお買い物されるだけではなく、感情的にも「面白いな」「ワクワクするな」と感じて頂ける売場にしたいという願いがあります。そのため、効率良くエネルギーを摂取できる高カロリー食品や、あえてソーセージや玉子焼きなど、おかずを一種類だけに絞った超シンプルな「だけ弁当」等、少し尖った商品を発売しています。「だけ弁当」シリーズは累計592万食(2024年10月末まで)以上でローソンストア100を代表する商品の一つになっています。
どのような商品を提供していこうかと考える際に、“我々として”商品や価格を考えるのではなく“お客様が”本当の意味で感じている・求めているニーズは何かを深く考えます。我々の利潤ファーストではなく、本当の意味でお客様が「何を」「どんなクオリティで」「どんな価格で求めているか」を考える上では、事業として矛盾や葛藤のある局面が沢山あります。しかし、売上こそが我々に対するお客様からの評価であり通知表であるので、本当の意味でお客様に貢献出来ない限り企業は成長していけないと考えています。
そのために、様々なシーンで常に“お客様”という言葉を使うようにしています。会議の中でも「お客様」を主語にすることで意思決定の視点が変わっていくので、意識的に言葉にして議論することが大切だと考えています。
◾️「食」における伝統と革新
ローソングループのスローガンである「マチのほっとステーション」の実現に向けて、食の世界が日々進化している中で、事業のアプローチの仕方もそれ以上に進化させていかなければならないと考えています。コロナもあり人々の食生活・ライフスタイルは大きく変わりました。我々はコンビニグループとしての強みを持つと同時に、各ご家庭の生活ニーズにいかに貢献できるかを常にアップデートしていこうと考えています。
食の文化はとても伝統的で、関東と関西で出汁が違うなど地域性も大きく、土地に定着し習慣化され伝承されています。脈々と根付いてきた伝統的な要素を重視しつつ、同時に時代をリードする革新性も必要だと考えています。当社として時代をリード出来るような新しい考え方やアプローチをこれからも追い求め、提供していきたいと思います。
今ある商品構成の中でも皆さんに知って頂くことで「いいな」と思って頂ける商品は沢山あると感じています。コーポレートブランディングや商品毎のマーケティングはまだまだ伸びしろが大きいので、我々は誰なのか、作っている商品は何か、提供している価値は何なのかをしっかりと伝えていくことを強化していきます。
◾️学生へのメッセージ
どんな事でも良いので毎日の成長の積み重ねを大切にして頂きたいと思います。私自身、毎日成長したいと考えており、若い頃からこの考えをとても大切にしています。一日1%成長すると一年後には1.01の365乗で38倍成長する。それが二年、三年になると何千倍、何万倍の差になります。昨日の自分よりも毎日1%、気持ちの面でもスキルの面でも何でも良いので、一歩前に進めているか・成長出来ているかを大切にして欲しいなと思います。
食べることで笑顔になったり、誰かと一緒に食べて嬉しくなったり、人生が豊かになる瞬間が「食」の本質だと感じています。我々はそういった大きなトピックに対して向き合っているので、社会や世の中に対する貢献に向けた志を持っている方とぜひ一緒に働きたいと考えています。
学生新聞オンライン2024年10月16日取材 東洋大学2年 越山凛乃
武蔵野大学4年 西山流生 / 東洋大学2年 越山凛乃 / 津田塾大学2年 石松果林 / 慶應義塾大学3年 山本彩央里 / 上智大学3年 白坂日葵
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