株式会社いーふらん 代表取締役会長 渡辺喜久男
理想を掲げ、信念をもって生きよ。
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株式会社いーふらん 代表取締役会長 渡辺喜久男(わたなべ きくお)
■プロフィール
1947年6月19日生まれ。茨城県石岡市出身。1970年に拓殖大学を卒業後、家庭用品の百円均一販売を始め、1975年に日用品市場株式会社を設立。骨董品、美術工芸品、海外の商品などを扱うようになる。2000年、横浜市に「おたからや」本店を出店。2008年にフランチャイズ展開を開始。様々な事業を行う中で、物販ビジネスにはない魅力を買取ビジネスに見出し、一般顧客から買い取る業態を確立した先駆者である。
貴金属やブランド品の買取を手掛ける「おたからや」は、国内1,300店舗以上(2025年1月現在)展開しており、リユース市場で急成長を遂げている。同社の渡辺喜久男会長に高いシェアを獲得できた秘訣や売上高840億円達成の背景、そして1兆円企業への成長に向けての想いを伺った。
私が学生の頃は、ちょうど学生運動が盛んな時期でした。しかし、私自身学生運動には全く興味がなく、アルバイトばかりしている学生でした。野球場の弁当売りやトラックのドライバーなど、色々しましたね。アルバイトを通じて、自身の社会人生活を模索していたんでしょうね。就活についてはあまり真剣に考えておらず、会社員になるとの考えもありませんでした。むしろ「自分で何かやりたい」という考えの方が強かったです。実家が貧乏だったので、会社員では生活するお金が足りないんじゃないかという感覚を持っていました。ただ、大学生の私は何をやりたいかは分からなかったので、行き当たりばったりで色々とやってみました。その中で「これだ!」と思ったのが、家庭用品の100円均一ショップです。当時はまだ100円均一は今のように一般的な事業ではなかったので、家庭用品に絞って挑戦しました。物珍しさもあったのか、スーパーでの店頭やデパートの催事などに出店するたびに、集客も問題なく、よい売れ行きを叩きだしていました。
■「おたからや」は趣味の延長線から生まれた
同時に、自分が好きな骨董品や収集品の仕事も行っていました。事業内容としては、刀剣、切手、古銭などを仕入れて販売するというものです。私自身の趣味に近いのですが、これがおたからやの原点になっています。買取事業は当時は一般的ではなく、質屋が主流でした。しかしながら、買取事業が少ないからこそ、逆に伸びしろがあるなと感じました。それまで、様々なビジネスをしてきましたが、市場が小さいから成長できないと思うことも多々ありました。ですが、買取は海外展開も含めると大きな市場があります。そこに目をつけたんですね。
その後、「ブランド品があるほうが売上も多いな」と思ったことがきっかけで、本格的に現在のおたからやの原型が出来てきました。おたからやをはじめた当時、私はすでに50歳を越えていました。普通の起業に比べると、かなり遅いスタートではありました。最初の5、6年は鳴かず飛ばずでなかなか糧が回っていなかったのですが、現社長の鹿村が入社してきた時に、「この人にやってもらいたいな」と思ったのをきっかけに、フランチャイズを始め、大きく成長できました。今の事業形態はフランチャイズと直営の2本立てで、全国店舗数1,300店と、同業種の中で一番の店舗数になっています。今後は、おたからやを世界中でフランチャイズ展開することを考えています。きっと、今ここまで考えている会社は他にはないのではないでしょうか。現在、香港、台湾、シンガポール、タイ、インドネシアの店舗は全て決まり、次の決算となる6月までに、全店オープン予定です。
■1兆円企業を目指して
私はおたからやを売上が1兆円以上の「1兆円企業」に成長させたいと思っています。1兆円企業は日本全国でも意外と少なく、60社ぐらいしかないんです。現実的に考えて、国内展開だけで1兆円企業を目指すのは難しいです。だからこそ、海外にも目を向け、展開を進めています。それに伴い、経営の面で2つのことを意識しています。
1つは優先順位を決めることです。これは事業の中で非常に大事な部分になります。現在の経営方針は、現状に則しているかなど、常時しっかりと見極める必要があります。会社の経営では、資金繰りと利益の獲得が重要です。私は、絶対に赤字を出さないという方針を置きつつ、しっかりと優先順位をつけて物事に取り組むようにしています。
2つ目は、社員を大切にすることです。現在、社員の幸福度日本1を目指しており、100種類の福利厚生を目指すなど、かなり力を入れています。バスツアーも毎月開催していますし、クルージングも毎週開催しています。毎週、月曜日には20名ずつ高級ホテルビュッフェでの昼食会も開催しています。また、100坪弱の休憩室にはマッサージチェアや運動器具、水素吸引器やマッサージルームなども導入しています。そして、私自身の休みも、全て社員と過ごしています。ゴルフには週3回行くのですが、新卒社員も含めた社員と一緒にプレーしています。
私は「社員の人と長く一緒にいたい」という気持ちが強いので、社員とのつきあいで遊びも仕事も全て完結したい。だから、社外の人と食事することもほぼありません。このスタンスは、死ぬまで続けたいです。
また、社員と接する機会を増やすのは、よい人材を見抜くためでもあります。多くの創業者は、後継者に親族を立てることが多いのですが、私はその気が全くなく、いつもダイヤの原石を探しています。なので、わが社の場合は、新卒で入っても、若くして役員になれる可能性は大いにあります。現在、私は77才なので、今後何があるか分かりませんが、今後の人生も、深く社員と関わっていきたいですね。
■大学生へのメッセージ
今の若い人は「仕事は仕事」と割り切っている人が多いと感じます。でも、その考えでは上には行けません。上にいく為には、ときには自分の時間も使わないといけません。そして、自分自身が変わらないと、会社の役職につくことも難しいです。また、上に行けば上に行くほど、何かを捨てないと、何かを得ることが難しくなります。もし、上にいきたいなら、自分自身が変わらないと無理です。変化自体は、何でも良いんです。仕事について考える時間を捻出するために、たばこ辞める、お酒辞める……などでも良い。ただ、それぐらいの意思がないと、人の上に立ってより重い責任のある立場に立つことはできません。
戦国武将の織田信長の言葉のなかに、私が好きな言葉があります。「理想を掲げ、信念をもって生きよ」。皆さんも、信念を持って、強い意志を持って自身の人生をより良い方向に向けるために、また仕事を楽しんでしまうためにチャレンジしてみてください。
学生新聞オンライン2024年12月23日取材 法政大学3年 佐伯桜優
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慶應義塾大学3年 松坂侑咲 / いーふらん 渡辺喜久男会長 / 法政大学3年 佐伯桜優
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