最高を超える山田錦プロジェクト2024
日本酒の人気銘柄「獺祭」を醸造している旭酒造株式会社(本社:山口県岩国市、代表取締役社長:桜井一宏)は、6回目となる「最高を超える山田錦プロジェクト」の2024年度の表彰式を、2025年1月12日(日)に、帝国ホテル東京にて開催しました。
見事グランプリを受賞された、栃木県大田原市の五月女農場 代表の五月女文哉さんと旭酒造株式会社の会長 桜井博志さんと社長 桜井一宏さんにお話を伺いました。

■グランプリ 五月女農場 五月女文哉
今回初めてグランプリを受賞させていただき、率直に信じられない気持ちでいっぱいです。長年努力してきたことが、ようやく実を結んだと思いました。小さい頃から手伝ってくれていた子供たち、そして30年間ずっと一緒に頑張ってくれている妻の存在があってこそなので、今回の受賞は本当に嬉しいです。また、先輩方や、同年代、後輩たちとお互いに良い影響を与えながら情報交換をしてきたので、関わってくださっている方々全員に感謝しています。私たちは、これからもより良い山田錦をつくっていけるよう頑張っていきたいと思います。
■旭酒造株式会社 会長 桜井博志 / 代表取締役社長 桜井一宏
この大会を開催されたその想いや背景とは?
会長:山田錦の使用量がある時期に急激に増え、結果的に他の業者が山田錦を確保できなくなるといった問題が起こりました。それをきっかけに、兵庫県だけでなく他県にも山田錦の産地を広げる必要性を感じ、農家の方々と直接向き合うようになったんです。その中で「山田錦は作りにくい」「飼料米のほうが補助金も多くて楽だ」という農家の本音を聞き、正直、夢のない農業の現実を目の当たりにしました。でも、夢がない現状に甘んじていてはいけない。農業が「ワクワクするもの」になるよう、そして農家さんたちが誇りを持てるようにと、この大会がスタートしました。
社長: “夢を農家さんに持ってほしい”というのが一番の想いです。農家という職業はどうしても「辛い」「苦しい」といったイメージが先行してしまい、若い人たちが興味を持ちにくい、夢を抱きにくい現状があります。私たちは国ではないので、補助金を出して支援するような形は取れません。だからこそ「スペシャリストになろう」「プロとして高みを目指そう」と、農家さんたちが前向きに頑張れるよう、私たちができる形でお手伝いをしたいという気持ちでこの大会を始めました。プロフェッショナルの道を目指すことで、農業界全体を盛り上げられると信じています。
開催して、参加者からはどのような声がありましたか?
会長:今日も皆さんが笑顔で帰っていく姿を見て「ああ、これが全てだな」と思いました。「来年もぜひ参加したい」と言っていただけることが何よりの励みです。大会を通じて喜びや達成感を感じていただけたことが伝わってきて、本当に開催して良かったと思います。
社長:これまでこういう全国規模の大会はほとんどありませんでした。例えば、県単位での大会で優勝しても、賞金が少し出るくらいで終わるものが多いのではないでしょうか。でも、この大会では「自分たちが真剣に頑張って、良いものを作る姿をしっかり見せられる」という点で、多くの方に喜んでいただいています。「他の酒造がチャレンジしているなら、俺もやってやるぞ!」と周りに影響を与えるような競争心が生まれ、それが農業界全体の活性化につながっていると感じます。
日本酒の文化としての魅力とは?
会長:日本酒は、ある意味「切磋琢磨すべきもの」なんです。数量的にも品質的にも、まだまだ将来的に伸びる可能性があります。特に品質面では今後も伸び続ける余地が大いにあると感じています。それを実現するには、やはり努力を惜しまないことが大切です。昔、稲盛和夫さんが「仕事への関与度は99.9%、残りの0.1%で家族のことを考える」とおっしゃっていたことを思い出しますが、現代社会ではその精神をもう一度見直すことが必要だと思いますね。
社長:文化というものは、完成した瞬間に止まってしまえばそれで終わりです。ユネスコなどで認められるのは素晴らしいことですが、「これで完成」としてしまうのではなく、常に挑戦し続けることが大事だと思っています。この大会も、その挑戦の一環だと考えています。若い人たちに農業や日本酒作りに興味を持ってもらい、「これから先の50年、100年、1000年の文化を作っていこう」という気持ちを共有したいですね。
若者へのメッセージ
会長:人生を信じて、自分自身を信じて歩んでいってほしいです。それができれば、きっと素晴らしい人生が待っています。頑張ってください!
社長:世界には、若いから経験がないという理由で挑戦を諦めるのではなく、どんどん先に進む若者がたくさんいます。学生の皆さんも、今しかできない挑戦があると思います。失敗を恐れずに挑戦してください。そして、頑張るだけでは人生は大変なので、ぜひお酒などを楽しむことも忘れないでください。仕事を頑張ることも大事ですが、それと同じくらい人生を楽しむことも大事です。
学生新聞オンライン2025年1月12日 城西国際大学1年 渡部優理絵

武蔵野大学4年 西山流生 / 城西国際大学 1年 渡部優理絵 / 旭酒造 桜井一宏社長 / 旭酒造 桜井博志会長 文化服装学院2年 橋場もも
■取材した感想
今回のコンテストを通じて、農業全体の課題や可能性について深く学ぶことができました。グランプリ受賞者のスピーチからは、日々の努力や家族の支えの大切さが感じられ、農業にかける情熱が伝わってきてお酒づくりの魅力を大いに感じました。また、酒粕を使った料理からも、素材の魅力を再発見させるという取り組みがあることを知りました。農業の現状と未来、そしてその可能性について考えさせられる貴重なコンテストでした。 (武蔵野大学4年 西山流生)

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