群馬県知事 山本一太
人生に無駄なことは一つもない、全てが役に立つ
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群馬県知事 山本一太(やまもといちた)
■プロフィール
1958年群馬県吾妻郡草津町生まれ。中央大学法学部卒業後、米国ジョージタウン大学大学院修士課程を修了。国際協力事業団(JICA)などでの勤務を経て、1995年に群馬県選出の参議院議員として当選後、4期約24年の間に内閣府特命担当大臣、参議院予算委員長などを歴任。2019年に群馬県知事に就任し、現在2期目。
参議院議員を長く務め、閣僚も経験したのち、現在は群馬県知事として活躍する山本知事。他にもシンガーソングライターや、執筆継続20年以上でAmeba政治家部門ランキング1位を長く維持するブロガーとしての顔も持つ。多方面へ情熱を持ち続ける山本知事のこれまでの歩みと県政についてお話を伺った。
◾️遊びに夢中だった学生時代
学生時代は、正直言ってあまり勉強しませんでした。ただ、力を入れたことがなかったわけではありません。情熱を注いだのは、ロックバンドの活動で、夏場には小さなライブハウスでライブも開催していました。また、冬場になると草津温泉で何十人もの友達とスキーをしていました。とにかく、勉強よりも遊びに夢中でした。
そのような中でも、英語は一生懸命勉強していました。留学したいという気持ちが強くて、毎日授業のある英語の塾に通っていました。そこで他大学の友達がたくさんでき、結果的にすごく大きな財産になったと思います。
◾️留学先で国際政治を学び、外交に興味を持つ
大学を卒業して、アメリカのジョージタウン大学院で国際関係論を学びました。アメリカでの大学院時代は、日本の大学時代とは大違いで、必死で勉強しなければとても授業にはついていけませんでした。だから、留学中は毎日図書館で夜の3時くらいまで勉強していました。
当時、日本のODA(政府開発援助)は世界一だったこともあり、日本の国際的な立ち位置について強く関心を持つようになりました。最初はジャーナリストになりたいと思い、朝日新聞の記者になりましたが、わずか数ヶ月で辞めてしまいました。その後、一人でアジアを旅しながら、自分が本当にやりたいことは何なのかを考えた結果、日本の外交に関わる仕事をしたいと思い、JICA(国際協力機構)に入ることを決意しました。
◾️国連での経験と政治家への転身
JICAでは、UNDP(国連開発計画)に出向し、ニューヨーク本部で3年間勤務しました。経済協力や援助の面で、環境関係の業務に従事していたのですが、国連にいると日本の国際的な立ち位置が嫌でも突きつけられました。
一方で、父は政治家で、国会議員として活躍していました。自分は政治家になるつもりはありませんでしたが、父が体調を崩し、その後急逝したことをきっかけに、周囲の勧めもあって政治の世界に飛び込むことになりました。国連での経験がなければ、政治家になる決断はしなかったかもしれません。
◾️国会議員から「プレーヤー」である知事へ
政治家になってから、国会議員として20年以上活動しました。国会議員の最大の役割は法律を作ること、つまりルールメーカーです。しかし、国会議員時代は政策決定のプロセスに直接関与できる場面は限られていました。それに引きかえ、知事は現場で先頭に立って仕事をする「プレーヤー」です。自ら政策を決め、それを実行するための予算を編成することが出来ます。知事の判断で地域の未来を大きく変えられる圧倒的な臨場感があります。
例えばコロナ禍では、群馬県民を得体の知れないウイルスから守らなければいけません。知事の主導し編成した予算次第で、県民の命や健康に直接影響が生じてしまいます。プレッシャーで夜眠れないこともありましたが、そんな中でも知恵を絞りました。毎日が小さな決断の連続でした。
決断の際は、政策や予算が県民全体の利益に繋がるかどうかを念頭に置いています。一部の人たちの利益になることか、それとも県民全体の利益になるのか。そこを意識しながら判断しています。その中でも一番のポイントは「お天道様のもとでできないことはやらない」ということを強く意識しています。
◾️群馬県職員ナンバーワン
6年間知事を務めてきて、群馬県職員が全国の都道府県の中でナンバーワンだと思っています。もちろん、県庁は大きな組織で色んな人がいて100%完璧というわけではありませんが、コロナ対策も、デジタル戦略も、全国の都道府県と比べても、群馬県の職員はとても優秀です。ご当地キャラのぐんまちゃんのプロモーションも日本一になりましたし、YouTubeの登録者数の伸びも全国トップ。これら全て職員の頑張りのおかげです。だから私は色々なところで「群馬県職員はナンバーワン」だと言い続けています。やっぱり、リーダーとして大事なことは、相手を本当に頼りにすることだと思います。頼って信頼するほどに、人は一生懸命頑張ってくれるのだと思います。
◾️デジタル・クリエイティブ産業を群馬の新たな主要産業に
現在の群馬県の主要産業は製造業で、自動車関連産業が集積していますが、今後の群馬県の発展を見据え、新しい主要産業として「デジタル・クリエイティブ産業」に力を入れています。「デジタル・クリエイティブ産業」とは、日々猛烈に進化していくデジタル技術を活用したコンテンツ制作、デザイン、映像、ゲーム、アプリ開発など、クリエイティブな分野に特化した産業を指します。産業の集積を図るためには、人材育成が不可欠であることから、群馬県内に在住、在学の小中高生が無料で利用ができる人材育成拠点として「tsukurun(ツクルン)」を整備しました。また中央アジアのアルメニアが開発したTUMOセンターを誘致して、中高生向け教育機関「TUMO Gunma」も今夏、オープンします。
また、映画会社とも連携し、大規模なロケ誘致を進めています。すでに多くの映画やドラマが群馬県で撮影され、エンタメ産業の拠点としての存在感を増しています。
群馬県を単なる「東京の劣化版」にはしたくありません。東京で流行しているものをそのまま持ち込むのではなく、群馬ならではの強みを生かした独自の文化と経済圏を築くことが重要です。そのためにも、デジタル・クリエイティブ産業を軸に、若者が定着し、活躍できる環境を整えていきます。
◾️大学生へのメッセージ
67歳になった今、振り返って思うことは「人生に無駄なことは一つもない」ということです。回り道だと思っても絶対に無駄なことはありません。学生時代にロックバンドやスキーに熱中したこと、ジャーナリストを目指したこと、国連で働いたこと、そのすべてが、今の自分にとって価値のある経験になっています。
だからこそ、無駄なことをしたり、失敗したりすることが、最終的に魅力的な人間になると思うので、恐れず進んでいってほしいです。
学生新聞オンライン2025年3月17日取材 N高等学校2年 服部将昌

立教大学4年 須藤覚斗/東洋大学2年 越山凛乃/N高等学校2年 服部将昌
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