テリー伊藤 コラムVol.48 祇園で舞妓さん、芸妓さんと会った

大学時代の友人に会うため、久しぶりに京都に行って来た。年始めの同窓会に各地から旧友が京都に集合し大変な盛り上がりを見せた。普段なら食事をするだけの集いだが、その後に豪華に老舗料亭に向かう事に。「一見さんお断り」の由緒あるお店、京都在住の地元で名士の学友のおかげで有難い事に入ることが出来た。料亭までの道中も祇園の街も観光客で凄い混雑。人波をかき分けやっとのことで到着。しかし一歩暖簾をくぐるとそこは別次元。100年を越す格式ある佇まいは、江戸時代にタイムスリップしたと思える静寂さ。きしみ音のする階段を上り私達は2階のお座敷に案内された。

暫くすると襖が開き「おいでやす」の挨拶で静々と登場した舞妓さん、芸妓さんに一同大歓声。お酒も飲めず、遊び方も知らない私は失礼にもいきなりの質問攻め。「どうして舞妓さんを志したの」「出身地は何処」「修行は大変では」「辛いことは」「将来の夢は」と場の空気も読まずにまるで芸能レポーターのように矢継ぎ早に聞いてしまった。二人は嫌な顔ひとつせずにおっとりとした祇園言葉で答えてくれた。芸妓さんは高知、舞妓さんは茨城の出身で、共に中学時代に「都をどり」を見てこの道に入ろうと決意したそう。これって甲子園大会を見て将来プロ野球の選手になりたいのと一緒じゃないか。動機がわかり易くていい。祇園言葉を覚えることはとても大変だったようで、特に東北育ちにはイントネーションで苦労するらしい。困惑するのは、各料亭に向かう道中や横断歩道待ちで外国人観光客に強引に写真を撮られる事のようだ。心配なのは、舞妓さんのなり手が年々減少している事と顔を曇らせた。現在京都の舞妓さんはたった11名しかいないらしい。3年から5年の舞妓時代を経て芸妓さんになるのだが、先ずは舞妓さんになるための見習い期間として1年の仕込み時代があり、この時に辞めてしまう少女も多いそう。この4月に沢山の新人さんが入ってくれるのを期待していると、その表情は真剣にそのもの。

話を聞いて俄然関心が湧いてきた。応援したくなる。高級料亭に行ける身分ではないが、舞妓さん希望者がそんなに少ないのは困る。日本文化の継承を手助けしたい。宴の最後は先輩芸妓さんの三味線の音色に合わせて2人の舞いを見せて貰った。これが素晴らしく美しい。格式ある座敷で見ていると、まるで討ち入り前に祇園で遊興した大石内蔵助になった気分に。この奥深い遊びこそ日本の伝統文化に違いない。

如何ですか、貴方の周りに舞妓さん、芸妓さんに興味のある方はいらっしゃいませんか。先ずは4月に京都で開催される「都をどり」を見に行きませんか。人生変わりますよ。

テリー伊藤(演出家)

1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry

関連記事一覧

  1. No comments yet.