東急株式会社 取締役社長 社長執行役員 堀江 正博

開発地域の価値を高める、比類なき東急のまちづくり

東急株式会社 取締役社長 社長執行役員 堀江 正博(ほりえ まさひろ)

1961年、福岡県生まれ。1984年に慶應義塾大学卒業後、東京急行電鉄(現:東急)入社。2002年、東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント社長。2003年、東急リアル・エステート投資法人執行役員(代表)。2015年、東京急行電鉄執行役員生活創造本部リテール事業部長。2016年、取締役執行役員生活創造本部リテール事業部長。2020年、取締役執行役員ビル運営事業部長。2022年、取締役常務執行役員を経て2023年6月、社長就任。

鉄道と不動産を中心に、スケールの大きなまちづくりを長期的な視点で手掛ける東急。多様な事業を展開する東急グループだが、その地域コングロマリット型経営について、トップとして舵を取る堀江社長に学生時代の経験や東急入社の決め手、まちづくりにかける想いなど東急の今後の展望とともにお話を伺った。

 私は慶應義塾大学法学部出身ですが、在学中は体育会競走部に所属し、短距離走を専門とする選手でした。特に400メートルリレーには力を入れ、インカレ2位、日本選手権3位という成績を収めました。しかし、当時の筑波大学は圧倒的な強さを誇り、日本代表のリレーチームのほとんどが筑波の選手で構成されていました。勝つことの難しさを痛感すると同時に、強い相手と競い合うことの面白さを学びました。

 在学中は競技だけでは飽き足らず、「関東法学部学生親善陸上競技大会」という公認大会を立ち上げました。これは体育会、同好会を問わず参加できる大会で、多くの学生アスリートに挑戦の機会を提供することが目的でした。キャッチフレーズは「健全なリーガルマインドは健全な肉体に宿る」。運営にはスポンサー集め、競技場や審判団の手配など多くの困難がありましたが、それを乗り越えた経験は、社会に出てからのキャリアにも活きています。

 また、学業にも力を入れ、政治・経済・社会学など幅広い分野について学びました。当時から将来的には企業の経営に関わる仕事をしたいと考えていました。

◾️東急を就職先に選んだ理由

 東急を志望する決め手となったのは、まちづくりや生活サービス事業など、鉄道以外にもさまざまな事業領域で仕事ができることに魅力を感じたからです。入社後の配属面談では「10年間で5カ所異動したい」という希望を出し、鉄道部門で駅務や車掌を経験し、その後、不動産、ホテル、リテール事業と多岐にわたる部門を経験しました。こうして多様な業種を経験することで経営の全体像を学ぶことができました。

◾️東急グループの経営の特徴

東急の特徴は「地域コングロマリット型経営」です。鉄道、不動産、リテール、ホテル、エンタメなど多様な事業が相互に連係しながら発展しています。たとえば、鉄道の沿線開発が進むことで人口が増加し不動産価値が向上、商業施設やエンタメ施設の需要が高まるといった好循環を生み出します。そのため、業種が異なっても配属された部署に柔軟に適応し、前向きに挑戦する姿勢が求められます。私は「どんな部署でも学びがあり、経験は必ず将来に活きる」と考えています。

 また、一般的に鉄道会社としての印象が強かった東急ですが、実際は、単なる鉄道会社ではなく、まちづくり全体に関与する企業です。都市開発に携わる仕事に魅力を感じて入社し、まちづくりの最前線で働くことのやりがいを認識しました。私のキャリアの中で特に印象的だったのは、都市開発や再開発に携わったことです。再開発を進める際には、地域の状況を把握しながら適切な計画を立てることが重要です。まちづくりは単なる建物の建設ではなく、周囲の環境や交通、商業施設とのバランスを考えながら進めていくものです。地域の課題を解決しながら、そこに住む人々の暮らしをより豊かにすることが、まちづくりに携わる者の使命だと考えています。

◾️まちづくり会社としての東急

 東急は鉄道と不動産開発を核としながら、商業施設や住環境の整備を一体的に進め、渋谷や沿線といったエリアに長期的に関与することを特徴としています。たとえば、渋谷の再開発では鉄道、オフィス、商業施設、ホテル、エンタメなど多様な要素を組み合わせて、まち全体の価値向上を目指して開発を行います。また、コロナ禍のさなか、新宿では東急歌舞伎町タワーを建設し開業にこぎつけました。インバウンド需要を見据えた施設設計、文化・芸術を取り入れたイベントの開催など、あらゆる角度からまちづくりを行い、まち全体の付加価値を上げるべくさまざまに取り組んでいます。

 当社は「循環再投資モデル」を採用し、商業施設やインフラの収益をまちの発展に再投資することで、長期的な視点で地域の価値を向上させる戦略性を有しています。この長期的な視点を持った都市開発こそが、東急のまちづくりの強みであり、企業としての独自性を際立たせる要素です。そのため、単に建物を建てるだけでなく、鉄道やバス、オフィス、商業施設、住宅などあらゆる用途の利便性向上に努め、まちの魅力を持続的に高めています。

*message*

 最後に、大学生の皆さんに伝えたいことが3つあります。1つ目は、「海外や地方を巡り、視野を広げてほしい」ことです。社会人になるとまとまった時間を取るのが難しくなります。今のうちに多様な文化や価値観に触れる経験を積んでください。2つ目は、「さまざまなアルバイトを経験してほしい」ことです。社会に出てからの仕事と共通する部分が多くあると思います。実践的な経験は、どんな業界に進んでも役立ちます。3つ目は、「20代はじっくりと仕事に向き合う」ことです。最初の会社でしっかりと経験を積み、専門性を磨くことが将来的なキャリアの基盤となります。すぐに転職するつもりで働くのではなく、まずは目の前の仕事に全力で取り組み、自分の価値を高めることが重要です。

 どんな経験も糧になります。皆さんの挑戦が、未来のまちづくりや社会の発展につながることを期待しています。

学生新聞2025年4月発刊号 慶應義塾大学3年 能願結

武蔵野大学4年 西山流生/慶應義塾大学3年 能願結

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