アサヒグループジャパン株式会社 執行役員 DX統括部長 山川知一

DXで会社を進化させ、社会の要請に応えるのが使命

アサヒグループジャパン株式会社 執行役員 DX統括部長 山川知一(やまかわともかず)

■プロフィール
製薬業界担当システムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後製薬会社の情報システム部に18年間従事。2020年12月アサヒビール株式会社に入社。2022年1月より現職。

2022年1月、アサヒグループの日本事業を統括するために始動したアサヒグループジャパン。その中にあって、山川DX統括部長は社内でDXを実現するための基盤を整える業務を担っている。なぜ今DXが求められているのか、そもそもDXとはどのようなものを指すのかなど、DXの必要性や魅力についてお話を伺った。

アサヒグループジャパンに入社する以前は、製薬会社の情報システム部で働いていたのですが、コロナ禍で日々変わりゆく社会を目の当たりにする中で、何か新しいことに挑戦したいと考えていました。
そのタイミングで声をかけていただいたのがアサヒグループでした。アサヒは飲料や食品など生活に密着したものを扱っており、社会と接点が多いメーカーならではの魅力を感じ、自分の専門性を生かしたDXの領域で携わることになりました。
アサヒグループジャパンの一部門として、国内各社のDX・IT関連を戦略的に統括するのがDX統括部です。システムがどのような過程で作られているのか、かつてシステムの制作側にいたからこそ分かる経験を生かしながら挑戦を始めました。

■システムをマッピングする

アサヒグループには300から400ものシステムがあったので、どんなシステムが使われているか、どこでデータが集約されているのか、まずはシステムの全体像を可視化する必要がありました。それをもとにどの機能とどの機能がどのように接続されているのか、使われていない機能や重なっているものはないか、どこからどのような技術を用いて最新化するかなどを考慮し、システムの将来像をデザインしました。全てを一度に最新化することはできませんが、個々のつながりを意識しながら、将来像に近づけるように一部分ずつ変えていく作業を行っています。
時代や環境変化を鑑みて、今あるシステムが今後も継続して必要なのかを検討し続けることも大切です。DX統括部は社内全体のシステム基盤を作る部署なので、従業員にシステムの利便性を感じてもらいながら安心、安全な環境を提供できるように取り組んでいます。

なぜ今、DXが必要なのか

アサヒグループジャパンのDX統括部では、単にデジタルサービスを導入するだけではなく、業務や働き方の進化を後押しする役割を担っています。なぜ今DXを推進するのか、大きな理由として2つあると考えています。
まず1つ目は、近年、技術の進歩が目覚ましく、新しいテクノロジーを使用する垣根が低くなってきているからです。システムを作るためにはコーディングが必要ですが、それがある程度のシステムであれば自然言語で作れてしまう環境が整ってきています。
今までは我々のような専門的な部門が全てのシステム構築を担っておりましたが、これからは業務部門の方々でも自身でシステムを作るといったことが可能になってきています。大学生の皆さんも普段からChat GPTなど生成AIを使用する機会が多いと思います。かつては使う側にもプログラミングや技術知識が必要でしたが、今は誰もが簡単に高度なことができる時代になってきました。従業員の方々が自らテクノロジーに触れ、それをきっかけに業務の進化を検討する大きな機会であると思います。DX統括部はセキュリティには十分に気を付けながら新しいテクノロジーに数多く触れる環境を提供したいと思います。
2つ目の理由は、社会環境の大きな変化に伴い、対応する課題が複雑になってきているからです。たとえば環境破壊につながるような問題に対しては、部門を超え、会社を超えて社会全体で取り組まなければなりません。他社と協力することで配送効率を高め、環境負担を抑える取り組みなども検討しています。このような活動において、DXは欠かせません。リアルタイムに複雑な状況を可視化して共有するなど大きな役割を果たします。

■人生に寄り添うサービスを

アサヒグループは、長い歴史の中で数多くの商品を展開してきました。人生のライフサイクルに関わるサービスを提供することで、何よりもお客様に楽しんでもらうことが大切だと思っています。人それぞれ好きなものもライフスタイルも違う多様性の時代だからこそ、多様なニーズに応えられるかが今後の重要な鍵になってくると思います。欲しいタイミングで欲しいものを、その人の人生に寄り添うようにサービスを提供し続けたいと思っています。

メッセージ

私たちは今、まさに変動の時代を生きています。何が正解なのか判断に迷うこともあると思います。そのときに自分はどんなものを好きで、何を心地良いと感じるか、自分の感性を大切にできるようにしてほしいです。特に学生の間はいろいろなことに挑戦できる時間であり、感性の土台を作るチャンスだと思います。そして、デジタルサービスも同様、作り手の感性をもとに、「技術を使ってこんな世の中になったらいいな」という思いが込められています。技術やデジタルサービスに関心のある方は、実際に触れて作り手の思いを感じてみてください。

学生新聞2025年4月号 上智大学3年 白坂日葵

上智大学3年 白坂日葵/城西国際大学1年 渡部優理絵/武蔵野大学4年 西山流生

関連記事一覧

  1. No comments yet.