大和ハウス工業株式会社 代表取締役副社長 技術本部長  村田誉之

「技術の大和ハウス工業」から「世界の大和ハウス工業」へ

大和ハウス工業株式会社 代表取締役副社長 技術本部長 村田誉之 (むらた よしゆき)

■プロフィール
1954年7月19日生まれ、埼玉県出身。東京大学工学部建築学科卒業後、1977年大成建設株式会社入社、建築工事作業所長などを経て、2009年大成建設ハウジング株式会社 代表取締役社長、2011年大成建設株式会社執行役員、2013年同社取締役常務執行役員、2015年同社代表取締役社長、2020年同社代表取締役副会長就任、2021年同社を退任後大和ハウス工業株式会社取締役副社長就任、2022年同社代表取締役副社長(現)

スーパーゼネコンである大成建設の社長や副会長を経験後、2021年には、業界最大手の大和ハウス工業の副社長に就任した村田誉之氏。当時、業界で話題となった移籍の理由からご自身の経歴について伺った。

◾️高校1年生から、建築士をめざす

私が高校一年生の春休みの時のことです。将来は国際弁護士になりたいと考えていたのですが、兄が法学部に入ったことから、「兄とは違う業界に行こう」と思いました。そこで、選んだのが建築の世界です。数学は苦手でしたが建築学科へ行くために理系を選択し、受験勉強に励みました。入学した東京大学理科Ⅰ類は、教養課程の成績が悪いと希望する専門課程に進学できないシステムでした。当時建築学科は一番人気があったのですが、何とか私はギリギリの点数で進学することができました。建築学科で自分が得意な分野、不得意な分野を見極め、卒論のテーマは戸建住宅でしたが、就職先はゼネコンに決めました。

勉強以外に取り組んだのは、体育会系のアメフト部の活動です。身体を鍛えることと苦手な団体行動にも慣れ、とてもよい経験になりました。

◾️大成建設へ入社

卒業後は、大成建設へ入社しました。理由はいくつかあります。まず、中学一年生の時からの友人の父親が大成建設の社員だったこともあり、「建設といえば大成建設」というイメージが強かったこと。さらに、リクルーターの方から風通しが良い社風だと聞いたからです。そして、何より「大きいものを作る仕事」に惹かれました。最初は現場監督として働き、工事課の主任や課長、現場の所長、そして最終的には社長を務めました。所長は社内のどの部門からも認められる立場なので、やりがいもあると同時に、自分に全て任されたという責任感を抱きながら仕事をするという面白さがありました。発注者や業者さんと共にプロジェクトをまとめることに楽しさを感じるようになりましたね。

◾️建築の5つの面白さ

私が考える建築の面白さは5つあります。1つ目は、一人ではできないものをみんなの力で作ること。2つ目は、作ったものが形になって残るということ。3つ目が、ものづくりのプロセスがやっぱり楽しい。そして4つ目が、お客さまの喜ぶ顔が見られること。最後に5つ目が、社会貢献に繋がるというところです。これは、私が若い頃から現在に至るまで、ずっと色あせることのない建築の魅力ですね。

◾️大和ハウス工業副社長に異例の就任

私は2020年に大成建設社長を退任し副会長に就任しました。社長時代にやり残したと感じていた「安全面の改革」と「働き方改革」を本気になってやろうと思いましたが、副会長は業務執行に直接関わることが少なく、物足りなさがありました。1年後に副会長を辞任することになり、何かやりがいのあることはないかと考えていたところ、大和ハウス工業の芳井社長(現会長)と食事をする機会がありました。その際に「是非当社に来て技術を見て欲しい」と声をかけていただいたのです。

芳井社長の話は今も憶えています。「当社 は1955年創業で100周年を迎える2055年に売上高10兆円という目標を掲げています。それにはもっと技術力の強化が必要です。ゼネコンとハウスメーカーの両方を経験したことは貴重です。是非うちに来て技術を見てもらいたい。技術の社員も喜びます。2055年には私はいないが、その為の組織をつくるのが自分の役割だと思っています」ということでした。

私は、円満に退任した後、大和ハウス工業に入って、もし芳井社長のお話の通りに役に立てたら、とてもやりがいがあるし、素晴らしい社会貢献になると思いました。私がひとつのピースになって、大きな会社が変わっていく様子を見てみたいと思い、直ぐに入社を決断しました。

◾️大和ハウス工業の良さ

大和ハウス工業の良さは、ハウスメーカー、ゼネコン、デベロッパーのハイブリッド企業であり、事業領域が広いことです。自社で住宅部材や建築鉄骨工場や技術研究所も持っています。また、創業者が掲げた創業100周年に売上高10兆円の目標を役職員全員が共有し、企業は右肩上がりで成長するものだというDNAがあります。ゼネコンは発注を待つ側なので受動的な姿勢になりがちですが、当社は自ら不動産投資をし、土地を購入して建物を建て、売却することで仕事を作り出しています。失敗を恐れず果敢です。出身校や前職のキャリアを問わないのも特徴です。また最近では社内から起業するプロジェクトが始動し、将来の新しい事業も考えています。

◾️日本の建設のこれから、そして世界の大和ハウス工業へ

大和ハウス工業はさらなる技術力の強化を進めます。スーパーゼネコンに引けをとらない技術力を目指します。DX(デジタル・トランスフォーメーション)を加速するため、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などには毎年投資を続け、既に業界のトップランナーですが、さらに加速していきます。建設業は衰退していくイメージを持たれがちですが、そんなことは無いと私は思います。建設技能労働者は確かに減っていますが、設計者や現場監督、研究者などの建設技術者は2011年3月11日に発生した東日本大震災以降増加に転じています。なぜ増えたのか、私はリアルなものづくりはやはり面白く、やりがいがあり、社会貢献に繋がるからだと思います。DXやBIMを駆使してスマートに仕事ができることが魅力になったのです。日本の建設業は衰退ではなく、新しい形に変わりつつあるのです。

また、日本の建設業、住宅産業、不動産業界は経済規模が大きく、企業成長に繋がります。当社は米国、オーストラリア、イギリス、オランダ、ドイツ、東南アジアなど海外でも事業を展開しており、技術力を持ったデベロッパーとして信頼を得ています。世界の大和ハウス工業になるための課題は、各国で信頼を得ること。そのために、DXとBIMを建設業界の共通言語として駆使して、世界各国でのビジネスを展開していくのが、私の将来の夢です。

◾️大学生へメッセージ

自分が何をしたいか、何が得意かを見つけることが重要です。学生時代に社会に出るときの仕事を実際に見て、何が自分に合っているのか、そのためには何をすべきなのかを考えてみてください。漫然と大学生活を送るのではなく、将来を見すえて行動して欲しいです。

学生新聞オンライン2025年3月27日取材 東京経済大学 1年 望月虎輝

東京経済大学 1年 望月虎輝 / 国際基督教大学 2年 渡邊和花 / 上智大学 3年 白坂日葵 / 国際基督教大学 2年 丸山実友

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