女優 菊池日菜子

役者の仕事は”天職”。これからも、素敵な役と出逢い続けたい

女優  菊池日菜子(きくちひなこ)

■プロフィール
菊池日菜子(きくちひなこ)2002年2月3日生まれ。福岡県出身。
2021年は映画「私はいったい、何と闘っているのか」(監督:李闘士男)、舞台「醉いどれ天使」(演出:三池崇史)に出演し、2022年には『月の満ち欠け』(監督:廣木隆一)で第46回 日本アカデミー賞新人賞を受賞。
2025年は映画『か「」く「」し「」ご「」と「』(5月30日公開)、主演映画『長崎ー閃光の影でー』(8月1日全国公開)など、公開待機作も多数控えている。

CM、ドラマ、映画、舞台など、様々なメディアに出演。第46回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、今注目の女優・菊池日菜子さんが映画『長崎―閃光の影で―』の主演に大抜擢。戦争を経験していない世代だからこその本作への向き合い方、考え方、覚悟を伺いました。

■役者としての覚悟

この仕事に対して、受け身になったことは一度もありません。役に対して悩みすぎてしまい、苦しむこともありますが、それ自体も「やりたかったことができている」という喜びの上にある感覚だと思っています。基本的に仕事と向き合っているときは、自分が一番生き生きしていると感じますね。
かっこよすぎる言い方かもしれませんが、私にとって役者の仕事は天職だと思っています。仮に普段の生活でとても落ち込むことがあっても、「きっといつか役に活かせる」と考えて、受け入れられる。なぜなら、落ち込めば落ち込むほど、どん底まで行ったときの気持ちを知ることができるので、いざ自分がそうした役柄を演じるときに、大きな支えになるはずだと思えるからです。

映画『長崎―閃光の影で―』への思い

以前から、戦争を題材にした映画をよく観ていたので、戦争映画が人に与える影響力の大きさは知っていました。だからこそ、映画『長崎―閃光の影で―』のお話をいただいたときに、これまでの私が受けた影響をすべて乗せた映画にしたいと強く思いました。
さらに、初めて主演を務めることへの不安もあったので、台本をいただいてから、何度も何度も読み込みました。台本の他にも、映画の元になった実際の看護婦の方々の手記も読ませていただいたりして、撮影の準備期間を過ごしました。
この作品では、初めて「役にのまれる」という経験をしました。ですが、「役にのまれる」というのは、それだけ役と真剣に向き合っている証拠だとも思います。最初から最後まで、苦労しても、この役とは向き合い続ける覚悟がありました。もちろん「自分がイメージしている通りの芝居ができるだろうか」という不安もありましたが、その思いをそのまま受け止め、自分が感じたままに田中スミという役と向き合えたと思います。
私は、戦争を経験した方々が感じていたことを、実際には知らないまま役を演じています。そのため、心がけたのは、一瞬でも「自分が田中スミになりきれている」と思い込まないこと。田中スミと自分に共通点があるとは思わず、撮影が終わるその瞬間まで、田中スミという人物について考え続け、追いかけ、演じようと決めていました。
また、戦争を全く経験していない分、戦争経験者の方や、原爆による影響を少しでも受けられた方に対して、誠実でいたいと思っています。この作品に参加したからといって、戦争を経験したことにはなりません。この惨劇を忘れないこと、思考し続けることを止めないことが、私に今できることだと思っています。
この作品は、1945年に起こった出来事を、2時間にわたって私達に観せてくれる作品です。メッセージというメッセージがないのが、見どころだといえるかもしれません。「これを観て、このように思ってください」とは思っていません。観てくださる方それぞれの目線で、この映画を通じて戦争や原爆というものを捉えて、伝えていただけたらいいなと思っています。

■これからも素敵な出逢いを

「素敵だな」と思える役と出逢い続けることが、一番の目標です。とてもありがたいことに、この映画『長崎―閃光の影で―』もそうですし、映画『か「」く「」し「」ご「」と「』でも、とても素敵な役と巡り逢えました。素敵な役と巡り逢うたびに自分自身が人間として成長し、ステップアップできているという実感があります。
どの作品に出演しても「もっとこうできれば」という何かしらの反省点を見つけるので、この先「よし!もう満足だ!」と感じることはないと思います。私自身、映画を観るのが好きで、映画が持つ力を信じているからこそ、これからも素敵な作品と素敵な役に出逢っていきたいです。
新たにチャレンジしたいのは、ラジオのお仕事に関わることです。もともとラジオを聴くことが大好きなのですが、最近は自分で話すことも楽しいと思うようになってきました。そのため、ラジオのお仕事を通じて、新しい自分に出会えるのではないかと思っています。

■学生へのメッセージ

私は、コロナ禍真っ只中に大学へ入学したため、友達を作る機会がなかなかありませんでした。数学の専門的な知識を学ぶ学部に在籍していたのですが、YouTubeを活用しながら、撮影現場のスキマ時間に、数式を解いていた記憶があります。
そのような日々を過ごす中で気付いたのは、「3年生になったらインターンに行き、4年生になったら就職する」といった、社会の決まったレールに必ずしも縛られる必要はない、ということです。進路や就職に悩む学生の方も多いと思いますが、そうした固定観念を一度頭の中から取り払ってみても良いんじゃないかと思っています。私もまだまだですが、好きなものを追いかけていると、いつかそれが自分の力になる時がきっと来ます。そして、自分自身の幸福を一番大切にしていたら、穏やかな毎日が過ごせるのではないかと思います。

学生新聞オンライン2025年6月5日取材 城西国際大学2年 渡部優理絵

映画『長崎―閃光の影で―』
7月25日(金)長崎先行公開 / 8月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国公開

出演:
菊池日菜子
小野花梨 川床明日香
水崎綾女 渡辺大田中偉登
呉城久美 坂ノ上茜 田畑志真 松尾百華 KAKAZU
加藤雅也 有森也実 萩原聖人 利重剛 / 池田秀一 山下フジヱ
南果歩 美輪明宏(語り)

原案:「閃光の影で―原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記―」(日本赤十字社長崎県支部)
監督:松本准平
脚本:松本准平 保木本佳子
主題歌:「クスノキ ―閃光の影で―」(アミューズ/Polydor Records) 
 作詞・作曲:福山雅治  編曲:福山雅治/井上鑑  歌唱:スミ(菊池日菜子)/アツ子(小野花梨)/ミサヲ(川床明日香)

制作プロダクション:SKY CASTLE FILM ふればり
配給:アークエンタテインメント
©2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会
後援:長崎県 長崎市 公益財団法人 長崎平和推進協会

昭和女子大学2年 阿部瑠璃香 / 城西国際大学2年 渡部優理絵 / 東洋大学3年 松岡果梨

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