TUBE 前田亘輝

いつかどうせ負ける。だからこそ負けに向き合い続ける。

TUBE 前田亘輝(まえだのぶてる)

■プロフィール
1985年6月にTUBEのボーカルとしてデビュー。3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」が大ヒット。
その後も「あー夏休み」「夏を抱きしめて」など、夏をテーマにした楽曲を中心に数多くの楽曲をヒットチャートに送り出し、”夏=TUBE”というイメージを広く世間一般にも定着させる。
35年以上継続して開催している毎夏恒例の横浜スタジアムでのライブは、夏の風物詩となっている。
今年、2025年の6月にはデビュー40周年を迎えた。

日本の夏を代表するロックバンドTUBE。数々のヒット曲を生み出してきたが、そこまでには数多の苦難もあった。長い歴史をもつアーティスト人生のなかで、貫いてきた信念や考え方は何だったのだろうか。今年デビュー40周年を迎え、記念コラボレーション・アルバム「TUBE ×」(チューブ・カケル)が8月6日に発売された。新たな挑戦を続けるTUBEのボーカル前田氏にお話を伺った。

音楽に惹かれたのは中学生の頃です。 先輩が洋楽を勧めてくれたことをきっかけに、70年代ぐらいのアメリカンロックを知りました。 TUBEのサウンドにも、そのアメリカンロックテイストはセンセーショナルに影響を受けています。 中学3年の時に文化祭でエアバンドを経験して「ステージに立つって気持ちいいな」と思うようになりました。 そして、高校2年生で初めて100人くらいのステージで歌った時、「これで一生食べていきたい」と思いましたね。
18歳くらいからデビューに向けて準備をしていたのですが、苦難の連続でした。ほとんど学校にも行っておらず、毎日練習の日々だったので、お金も無い。学校も行かずに練習している僕に対して、「いつまで夢見ているんだよ」と、周りからは冷ややかに見られていたと思います。その当時交流のあった音楽仲間は何百人もいて、自分たちと同じように音楽を目指していた仲間もいましたが、次第にどんどん少なくなってしまいました。結局残ったのは4人。今のTUBEのメンバーです。

■40年間続けてくることが出来た考え方とは?

作詞作曲する中で貫いてきたことは、背中をさするような曲作りをすることです。「こうあるべきだ」とか「負けるんじゃねえ」など、説教じみたことを言っている曲も過去にはありましたが、反省して、「負けてもいいんだよ」と背中を押すような歌詞になるよう心がけています。
僕たちの世代だったら「一緒に行こうぜ!」とできるけれど、僕たちのファンも家族をもったりお子さんが独り立ちをしたりした人もいるので、そこは世代を意識しながら作っています。あのおじさんたち楽しそう!って見えると思いますが……(笑)。
TUBEと言ったら夏というイメージがあって、「スイカ作ってるのか!」みたいに言われた時期もあり、それが本当に悔しくて、夏よりも冬に多くライブを行ったりもしていました。しかし、30歳過ぎた頃から世間からの圧力に抵抗していた時期のことを、「ああ、一番やっちゃいけないことやっていたな」と思うようになりましたね。
TUBEの楽曲で「そんなもんさ」という曲があります。冷ややかな目で見られたり、辛いことがあったりしても、「負けるやつがいるから世の中成り立っているんだ」という変な理屈で自分達を鼓舞していました。勝つためにやっているのではなく、いつか必ず負けてしまうのだから、負けても続けようぜと思うようにしていました。これが40年間続けてくることが出来た考え方ですかね。

デビュー40周年記念コラボレーション・アルバム「TUBE ×」(チューブ・カケル)について

40周年となると、トリビュートアルバムや色々な若い方がカバーをしてくれるのが主流ですが、僕たちはオリジナルを作りたかったので、自分達とは遠いスタイルのアーティスト8組とのコラボを企画しました。
一番初めにGACKTさんに声をかけてみたのですが、戸惑いもあったものの、納得してくれてコラボが実現しました。全音転調していく曲なのですが、「ここで転調するんだ!」というところや、イメージだとすごくロックな人だけれども、実に繊細で、一緒に音楽を作ってみないと分からない発見がありましたね。
若い世代ですと、FRUITS ZIPPERさんともコラボしました。「ファミリー・サマー・バケーション」という楽曲で、音楽番組ではお父さん役で登場し、一緒にダンスもしました。初めて挑戦するダンスのスタイルで、今までの人生で練習したことのないくらい練習することになりました(笑)。アイドルの皆さんは楽しそうにステージに立っているように見えますが、やはり水面下で努力しなきゃいけないんだなということを改めて実感しましたね。どのコラボでも、楽曲の骨組みの作り方やレコーディングも、全てやり方が違ったので苦労もありました。普段TUBEでボーカルを録る際はセルフでやっていたので自分達の判断で進めていたのですが、歌入れの立ち会いをお願いした曲もあって、作り手サイドが重きを置く場所の違いを感じる部分も多かったです。普通に作るよりも、かなり時間も要しましたね。普段は1曲あたり、70時間くらいでなんとなくミックスまでいくけれど、100時間は越えたんじゃないでしょうか。
それでもコラボレーションは良い勉強になりますね。自分とは違うコミュニティの方々と一緒にやると、世界が広がります。それを吸収しようとする貪欲さは幾つになってもあっていいのかなと思いました。

■今後の展望

TUBEの楽曲がありがたいことにアジアの国でリテイクされているので、色々な言語で録り直してみたいなと思います。今も中国語と韓国語を勉強していますよ。まだ発音の違いなど全然分からないけど、頑張っています。みんな還暦を迎えるようなおじさんたちだから1日でも長く音楽を続けていければなと思います。

■大学生へのメッセージ

自分が学生の頃「若い頃の苦労は買ってでもしろ」と先生によく言われましたが、それが自分のためならやっぱり努力はしておいた方がいいなと思います。人生の中で恐らく3回ほどチャンスが来るはずです。僕たちにもチャンスがあって、自分たちなりに努力していたからこそ今ここにいることができています。オーディションは何回も落ちましたし、全然ダメだと思っても練習だけはしていました。恵まれてないなと思っていても絶対にチャンスは来ます。ぼーっとしているとチャンスをチャンスだと気づけなくなってしまうので、常に努力して見逃さないようにしてください。

学生新聞オンライン2025年7月9日取材 慶應義塾大学4年 松坂侑咲

TUBE デビュー40周年記念コラボレーション・アルバム「TUBE×」(チューブ・カケル)

TUBEデビュー40周年を記念したコラボレーション・アルバム「TUBE×」(チューブ・カケル)が8月6日(水)に発売
世代やジャンルを超えた全8組のアーティストとの共作で完成した意欲作。
TUBEのサウンドとそれぞれのゲストアーティストの個性が融合した豪華なコラボレーション・アルバムとなっている。

デビュー40周年を迎えた TUBE 初の All Singles ベストアルバムも発売中
All Singles TUBEst -Whiteー【初回生産限定盤】
All Singles TUBEst -Blue-【通常盤】

情報経営イノベーション専門職大学 1 年 徳原拳聖/慶應義塾大学 4 年 松坂侑咲/昭和女子大学 2 年 阿部瑠璃香

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