ハウス食品株式会社 パーソナル食品事業部ビジネスユニットマネージャー 富田将史
お客様視点で考える。それが、長く愛される秘訣

ハウス食品株式会社 パーソナル食品事業部ビジネスユニットマネージャー 富田将史(とみたまさふみ)
■プロフィール
2001年ハウス食品入社。2007年まで研究開発部門においてシチューミクスほか、様々な製品の開発に携わる。2008年より企画部門において『うまかっちゃん』『とんがりコーン』『マロニーちゃん』など様々なブランドを担当。2025年よりレトルトカレーを担当。
バーモントカレーなどのカレールウや、咖喱屋カレーなどのレトルトカレーを中心に、幅広い分野で多くのロングセラー商品を生み出し続けるハウス食品。レトルトカレーのブランドの方向性から消費者の手に渡るまでの一連の流れを設計するのが、パーソナル食品事業部ビジネスユニットマネージャーの富田将史さんです。老若男女全ての人に愛され続ける製品を作り出す、その過程などを伺った。
元々食まわりのことには興味があり、大学も農学部で食品に関して学ぶ機会もありました。また、ものづくりやアイディアを出すのも好きだったので、開発や企画の仕事もしたいと考え、就職活動をしていました。食品会社を中心に食に関わる技術的な研究所などを受け、最終的にはハウス食品を選びました。その理由は、当時からカレーだけでなく、飲料(現在は事業譲渡)やスナック、ラーメンなど幅広い分野を扱っていたので、色々な製品の開発に関わることができて面白いのではないかなと思ったからです。
初めは研究所に配属され、企画で提案されたものを実際に形にする仕事をしていました。それから7年を経て、東京本社の企画部門に入り、製品を考える仕事を携わり、現在に至ります。手を動かして作るのが好きだったので、異動したての頃は、新たに任された仕事とのギャップにやっていけるか不安にはなりました。けれども、どちらの仕事もお客様に喜んで頂くためにより良いものを作るというゴールは一緒だったので、アプローチの違いはありましたが続けることができましたね。
■お客様に届く瞬間こそ最大の喜び
私は、レトルトカレーを担当するビジネスユニットでマネージメントをしています。具体的には、製品開発、ブランドのプロモーション、ネーミング、パッケージデザイン、利益管理、販売ルートなどを考え、各担当部署と連携して形にしていくことが主な仕事です。企画の時点からお客様が手にとってくださるまでの一連の流れを設計しているという感じですね。
メンバーと一緒に企画を行いお客様に製品を届けているので、自分が考えて色々な部署と作りあげたものが世の中に出て、お客様に使っていただけることが一番嬉しいですね。初めて自分が一から携わったブランドが店舗に並んだときは、お客様が買ってくれるところを見ようと店舗まで出向いたことはありました。お客様が商品を手にとってカゴに入れたことを見届けて、安心して帰っていましたね。(笑)
■アイディア発想で心がけていること
アイディアを考える上では、確実な正解はなかなか見つからないものです。お客様への調査はしますが、ターゲットの方は自分ではないですし、あくまで調査なので、全てがわかるわけではありません。たとえばシニアの方に食べていただくとしたら、シニア世代の生活の実体験のない私にはわからないこともたくさんあります。しかし、わからないままで終わってしまうと、ものづくりはできないと思います。大事なのは、わからないところをどれだけ想像で補えるか。また、想像だけで終わってしまうと、今度はそれを人に伝えるときに説明できません。自分の思いついたアイディアを企画にするには、他の人に納得してもらわなければならないので、想像したことを数字やデータで補って説明する必要があります。だからこそ、想像の部分と数字の部分とのバランスを考え、両方兼ね備えて説明できるようにしています。
アイディアは突然降りてくるものではないと思います。かと言って、机に向かってずっと考えていても出てはきません。心がけていることは、まずアイディアの基となるものを考えることです。すると日常生活の中で、ふと今まで気づけなかったヒントを拾えるようになります。まずは課題を考えておく。そして、そのことを頭の片隅においておくと、新たな視点に気づくきっかけが生まれるんですね。
あとは、一見関係ないと思うものも、掘り下げることです。デザインやネーミングのアイデアも考えることがありますが、全く関係のない知識が幅を広げたりしてくれることも多々あります。たとえば社会に出ても役に立たなそうだなと思っていた学生時代の勉強が参考になることもあります。そのため、私の部署には、普段から様々な物事への興味関心の感度が高い人が多いですね。ミーティングでも、一見関係のないけど自分が興味のあるものを共有して掘り下げる時間もとっています。また、考える土台を作るために、提案を出した人が一番そのテーマについて考えるようにも推奨しています。仮にアイディアを出したなら「なぜそれがいいと思ったのか」を深く掘り下げるのです。なぜなら、いいと思ったのには理由が必ずあるはずなので。その結果、何が重要かが見えてくるし、「これがこの商品の肝だ」と思ったら、その特長を生かして、どう製品化していくかを考えていくのです。
■製品を生み出す者としての挑戦
今はレトルトカレーを担当しているのですが、レトルトカレーはとても世の中の役に立つものだなと思う一方で、「レトルトでいい」という風潮が世の中にあるのを残念に思っています。なので、「レトルト“で”いい」ではなく「レトルト“が”いい」といっていただけるようにしたいと思っています。入社当時から比べると、技術の進化によって、レトルトカレーも味がとてもおいしくなっていると思います。レトルトの価値が伝わる製品を出し、自分が仕事を引退した後にもずっと残るようなブランドを作りたい。それが、入社時からの変わらぬ目標です。
■大学生へのメッセージ
純粋に勉強できる時期というものは、働きだすとなかなか作れないものです。学生の時は、「社会に出てこんな知識が本当に役立つのだろうか。もっと実践的な知識を学べた方がいいのに」と思っていました。でも、実践的な知識は社会に出てから、学ばざるを得ないことが多いです。逆に、本当にアカデミックな知識は、働きだすと勉強する間はありません。だからこそ、今だからできる勉強をしっかり学んで社会に出る方がいいと思います。その知識が、全く予想もしなかったような関係ない分野でも活きてくることもあるので、自分の幅を広げるためにもいろいろな勉強をしておくことをお勧めしたいと思います。
学生新聞オンライン2025年9月24日取材 武蔵野美術大学1年 石井生成

お茶の水女子大学 1年 家田有彩 / 昭和女子大学 2年 阿部瑠璃香 / 情報経営イノベーション専門職大学 2年 山田千遥 / 武蔵野美術大学 1年 石井生成


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