日本生命保険相互会社 代表取締役社長 社長執行役員 清水博

お客様の人生に寄り添う「安心の多面体」の提供

日本生命保険相互会社 代表取締役社長 社長執行役員 清水 博(しみず ひろし) 

■プロフィール
徳島県生まれ。83年京都大学理学部卒業、同年日本生命保険入社。商品開発部長、総合企画部長などを経て、18年4月から現職。

1889年に有限責任日本生命保険会社として発足し、日本の保険業界で有数の歴史を持つ日本生命保険相互会社。長年にわたる歴史の中で、常に時代や顧客のニーズに合わせた多様な保険商品を提供し、信頼性と安定性を築いてきました。今回は、同社社長の清水博さんに同社の魅力や、ご自身の経歴について伺いました。

■得意な数学を活かせる場が日本生命だった

 高校卒業後は、地元の四国・徳島を出て、京都大学の理学部に進学しました。当時は、毎日好きな勉強をして、暇な時間は読書や芸術鑑賞をしていました。特別な何かには熱中せずいろんなものに触れた4年間で、今思えば、もっと違う過ごし方ができたかなと思いますが、後悔はしていません。
通っていた大学では、1、2年生で幅広い知識に触れた後、大学3年目に専門を決めるのですが、私は数学を選びました。世界の成り立ちをシンプルに説明する数学に、美しさを感じたからです。言葉では説明できないアートも好きでしたが、自分自身はアートではなくロジックの世界の方が向いていると気づき、ロジックから成る数学の世界を選びました。
 保険業界を選んだのは、自分の数学の知識が活かせると考えたからです。保険業界は、20-30年後の将来を予測し、死亡率、病気の発生率などを鑑みて、商品を作る仕事があります。その仕事に興味を持ち、日本の保険業界でトップである「日本生命」を選びました。
数学を含めた理系では大きな問題を小さな問題に分解して問題にアプローチしていく思考法が求められるのですが、会社の直面する問題を紐解くことは数学に似ています。学生時代に身に着けたこの思考が、いまだに日々の仕事に役立っていると思います。
 入社後は、商品開発部や主計部などに在籍し、会社全体の決算も担当しました。数字で会社全体のことを把握できるような仕事につけて幸運だったと思います。その後、資産運用に携わる中で、海外に目を向けるようになりました。
 40代で念願の留学の機会に恵まれ、イギリスにも行きました。もともと、MBAに行くチャンスがありましたが、異動の関係で諦めた過去があったので、「いつかは海外に行ってやろう」と、ずっと思っていました。夢が叶って嬉しかったです。
 その後、総合企画部長になった際に社長との接点が増え、近しい立場で議論をする機会を得るようになりました。身近に社長の考えを感じ、経営に対して、いろんな考えを持つようになったのです。

■信念は、お客様に寄り添うこと 

現在、日本生命では、約5万名の営業職員が約100の支社、約1600の拠点で営業を進めています。「営業職員が営業にいく」このビジネスモデルは古いと思われるかもしれません。しかし、生命保険は将来の不安に対して、20年、30年のロングスパンで引き受けるものです。信頼関係を作って加入してもらい、担当の職員が、契約の追加や変更など、お客様のその時の状態に寄り添って、対応します。近年では、ここにデジタルを組み合わせ、”人とデジタルの最高のかけあい”を目指しています。人中心の営業職員チャネルを大切にしつつもデジタルをかけ合わせて、お客様に安心をお届けしたいです。
 この仕事で大切なことは、商品を売るのではなくお客様の将来を支えること。営業は「商品を売ればいいだけ」という発想に陥ってはいけません。生命保険は人の人生を預かる商品です。「お客様にとって意義がある商品を扱っている」という意識を持ち、お客様のニーズに相応しい商品を薦め、加入後もお客様と寄り添い続けてほしいのです。ですから、自分の仕事が社会の役に立っていることに喜びを感じる人と一緒に仕事したいですし、商品の重要性を心から理解して営業できる人を、一人でも多く育てていきたいと思います。

今後、私たちが目指すのは、「安心の多面体」をお客様に提供することです。2023年にニチイホールディングスを買収したので、介護という新たな安心をお客様に提供することができます。他にもアセットマネジメント、ヘルスケア、介護、保育などの要素も追加することで、お客様の人生全部に寄り添える「安心の多面体」を提供できる企業を目指しています。
 日本は人口が減少しているので、生命保険の契約数自体は減っています。ですが、長生きしたいというニーズは変わりません。今後は、長生きに伴う経済的不安に備えるために、資産形成のニーズに応える商品にも力をいれていきます。
 また、日本生命はサステナビリティ経営を事業運営の根幹と位置付けています。人・地域社会・地球環境の3つの領域で社会課題解決への貢献に取り組み、「誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会」を目指します。
日本生命が120年以上業界トップを維持できる原動力は2つあると考えています。
 1つ目は、商品開発力がすぐれていること。2つ目は、多くの女性が活躍していることです。戦後まもなく、戦争で夫を亡くした女性に職と安定した生活を提供しようと発案したことが、現在でも多くの女性が当社で活躍する要因となりました。彼らがこれまで一生懸命お客様のもとへ足を運び続けてきたことが、業界トップを維持する強力な原動力になっています。
 そして、トップを維持し続けるためには、後ろ指をさされない誠実な仕事をすることが大切です。業界ナンバー1だからこそレベルの高い仕事をすることを常に意識しています。また、首位の座を維持するために新しいことへのチャレンジも続けていきたいです。

■大学生へのメッセージ

大学生は、すごく忙しいと思います。授業やバイト、サークル、プライベートなど、いくら時間があっても足りないかもしれません。ですが、会社に入ると、もっと忙しくなります。時間のコントロールやマネジメントが自由にできるこの大学4年間に、学生時代の今しかできないことに、大いに時間を使ってほしいです。

学生新聞オンライン2024年4月8日取材 慶應義塾大学3年 塚紗里依

慶應義塾大学3年 塚紗里依/日本大学1年 大森雨音/立教大学4年 須藤覚斗/国際基督教大学2年 渡邊和花

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