株式会社トリドールホールディングス 取締役 兼 CFO 最高財務責任者 山口聡

数字で支え、食の感動でこの星を満たす。

株式会社トリドールホールディングス 取締役 兼 CFO 最高財務責任者 山口聡 (やまぐちさとし)

■プロフィール
1974年、東京生まれ。金融、IT、戦略コンサル、電機メーカーなど多様な業界で約30年にわたり、財務・経営企画を中心にファイナンス業務に従事。2020年当社入社、ファイナンス本部長、執行役員兼CFOを経て、2023年より取締役兼CFOとして企業価値向上を担う。

サッカーに打ち込んだ学生時代、金融業界での思わぬ苦難と挑戦、そして食を通じたグローバルビジネスへ。数々の転機を経て、トリドールホールディングスのCFOとして企業価値の向上に挑む山口聡氏。その原点と、未来を担う学生へのメッセージを聞いた。

学生時代の軸にあったのは、サッカーでした。勝敗やポジション争いの中で、努力が必ずしも評価や結果に直結しないこともあり、いわゆる体育会的な厳しさや理不尽さに戸惑いを感じることもありました。それでもやり切る力や、気持ちを切り替えて前に進む姿勢が自然と身についたと思います。チームで成果を出すために必要なコミュニケーション力も、この頃に培われました。
アルバイトは外食やイベント運営など、さまざまな現場を経験しました。どの仕事にも共通していたのは「人が動くことで価値が生まれる」という実感でした。サッカーと同じく、個人ではなくチームで結果を出すことの大切さを学んだ学生時代でした。

■商学部で芽生えた、数字と経営への関心

私は大学では商学部で学び、会計や数字に強い関心を持ちました。卒業後は金融業界に進み、法人向けの仕事を中心に経験を積みました。しかし、入社から1年半で会社が経営破綻するという出来事に直面しました。
当時は就職氷河期で、会社に依存した働き方の危うさを強く感じました。この経験が、「自分自身の専門性で生きていく」という意識を決定づけました。その後は、企業の成長フェーズに関わりながら、経営や財務に近い立場で幅広い経験を積んできました。一貫して持ち続けているのは、「数字を経営にどう生かすか」という視点です。

■転職を重ねる中で形成されたキャリア観

金融機関の後はITベンチャー企業で経営企画業務を経験し、30代前半で戦略コンサルティングファームへ、30代後半にはグローバル電機メーカーで資金調達などの財務業務へとキャリアを重ねました。当時の日本は年功序列や終身雇用の価値観が依然として強く、一つの会社に長く勤めることが評価される時代でした。私自身も当初は、腰を据えて働くつもりでいました。しかし、社会に出て早い段階で環境の変化に直面したことで、組織そのものよりも「自分は何ができるのか」「どんな価値を出せるのか」を常に問い続けるようになりました。そうした中で、立ち止まることへの不安を強く感じるようになり、会社に依存せず、自分自身の強みを持つ重要性を強く意識するようになりました。結果として転職を重ねることになりましたが、振り返れば、変化のある環境や混沌とした状況の方が自分には合っていたのだと思います。思い通りにいかないことの方が多い中で、動き続けることでしか得られない経験が、自分の厚みを形づくってきました。

■社会意義と“形ある価値”を求めて

現在のトリドールホールディングスは、大学卒業後6社目の職場です。ファイナンス領域では約30年にわたり経験を重ねてきましたが、この会社を選んだ理由は、社会意義のあるビジネスであること、食という目に見える形ある価値を扱っていること、そして日本を基点にグローバル展開している点でした。何より、ここには本気で挑戦し続ける人材が集まっていると感じました。このような環境に身を置くことで、自分の専門性を社会にとって意味のある形で生かしたいと考えました。

■手づくり・できたてが生む圧倒的な体験価値

トリドールホールディングスは現在、世界で約2,100店舗、約20ブランドを展開しています。旗艦ブランドである丸亀製麺は、国内約870店舗をすべて直営で運営しています。私たちの最大の差別化ポイントは、「手づくり・できたて」という体験価値にあります。
たとえば、丸亀製麺では、塩・小麦・水のみを使い、店内で製麺しています。調理工程をオープンキッチンで見せることで、待ち時間さえも楽しさに変えています。全店舗に社内試験を通過した「麺職人」を配置し、看板に掲示することで誇りと責任感を醸成しています。また、「麺は打ちたて・茹でたての状態で提供するという」という厳格なルールを設け、品質基準を徹底しています。

■フロントは人、バックは合理化

お客様に見えるフロントの部分では、人を通じたワクワク感や距離感を大切にしています。一方で、見えない領域はDXによって徹底的に合理化しています。全店舗に需要予測AIを導入し、1時間単位で売上や来店数を予測することで、シフト設計や発注精度を高め、ロスの削減などのコストコントロールにつなげています。うどんを茹でたり、天ぷらを揚げることはお客様のご来店を見越して準備しますので、予測精度は極めて重要です。作りすぎず、少なすぎず、出来立ての商品の品質と効率を両立させる仕組みづくりが、現場を支えています。

■海外展開と大胆な投資判断

海外事業は現在、売上の約40%を占める、今後の成長ドライバーです。2011年の丸亀製麵のハワイ出店を皮切りに、トリドールの事業展開は世界29か国へ広がりました。大きな転機となったのが、2018年の「TamJai」買収です。非常に大きな投資でしたが、日常食であることやカスタマイズ性の高さに可能性を感じ、決断しました。成功の裏には失敗もありますが、その経験を次の挑戦に生かすことを大切にしています。

■少ない元手で大きな価値を生む財務戦略

CFOとして意識しているのは、ただ稼ぐことではなく、「少ない元手で効率よく稼ぐ」ことです。以前は店舗数の拡大が重要なKPIでしたが、現在は収益性に加え、投資効率を示す資本収益性指標も重視しています。守るべきところは守りつつ、限られた資源をどのように配分し、企業価値を高めていくか。その判断の積み重ねこそが、企業価値の持続的な向上につながると考えています。

■大学生へのメッセージ

とにかく、いろいろなことにチャレンジしてみてください。まずはやってみること。そして、没頭する中で、自分の得意や好きなことに気付いて欲しいと思います。変化を楽しみ、「我以外皆我師」という姿勢で学び続けてください。その積み重ねが、自分自身の力になります。為せば成る。その意識と行動を継続することが、必ず将来につながります。

学生新聞オンライン2026年2月5日取材 立教大学2年 塚本晴香

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