和光大学 学長 半谷俊彦

考えることをやめない大学でありたい

和光大学 学長 半谷俊彦 (はんやとしひこ)

■プロフィール
学歴
1991年3月 東洋大学大学院経済学研究科博士前期課程を修了
1991年10月〜1997年10月 ドイツ・ヘッセン州立フィリップス・マールブルク大学大学院経済学研究科博士課程在籍

職歴
2000年4月〜 和光大学経済学部(現経済経営学部)専任講師
2003年4月〜 和光大学経済経営学部助教授(2007年4月〜准教授)
2008年4月〜 和光大学経済経営学部教授(現在に至る)
2014年10月〜 和光大学経済経営学部長
2017年10月〜 和光大学図書・情報館長
2018年9月〜 和光大学副学長
2018年9月〜 和光大学副学長
2020年4月〜 和光大学学長代行
2020年11月〜 和光大学学長

民主的な大学運営と、自由な学びを大切にする教育方針のもと、和光大学の舵を取る半谷俊彦学長。学生時代の経験から研究者の道を選び、現在は学長として大学の運営に向き合う。大学教育の在り方や、変化する社会の中で求められる学びとは何か。これまでの歩みとともに、大学生へのメッセージを伺った。

私は大学1年生から3年生くらいまでは、勉強よりもアルバイトとサークル活動に多くの時間を使っていました。バブル期の学生でしたので、夏はテニス、冬はスキーという、いわゆるスポーツシーズンサークルに所属していました。
アルバイトは、理化学器具を卸す会社で倉庫係として働いていました。倉庫でのアルバイトを通じて、決まった時間に同じ作業を行う働き方よりも、「自分はより裁量を持って働ける専門職で力を発揮できるのではないか」と感じるようになりました。
そこで専門性を磨きながら成果を積み上げられる税理士に魅力を感じ、その中でも税務・会計の分野に興味を持ち、税理士を目指して学習を開始しました。
大学院進学には試験免除制度もありましたが、実際に学び始めると制度以上に学問の奥深さに惹かれ、研究を続けたいという思いが強まりました。そうした中で和光大学が私を採用してくれたことには、今でも強い感謝の気持ちがあります。

■トップダウンではなく、対話で支える学長の役割

和光大学は、昔ながらの民主的な運営を大切にしてきました。学長も選挙で選ばれます。2000年頃から全国的にはトップダウン型の大学運営が進みましたが、和光では今も「みんなで話し合って決める」という姿勢を守り続けています。
私が学長になったのは、権限や肩書きを求めたからではありません。和光大学の運営は、誰か一部の人だけが担うものではなく、教員一人ひとりが責任を持つ仕組みです。その中で、自分が引き受けるべき役割が巡ってきた時、「大学のためにきちんと向き合おう」と決断しました。学内の運営は、誰かが担わなければ成り立ちません。その責任を自分のこととして引き受ける覚悟を持った結果が、学長という立場だったのだと思っています。
学長として心がけているのは、意見を遮らず、すべてを聞くことです。多様な考え方がある以上、簡単に結論が出ることはありません。その分、会議は長くなりがちですが、拙速に決めるよりも、一度引き取って整理することを大切にしています。運営に携わる人たちと相談し、検討を重ねた上で、次の会議で改めて方針を示します。
私にとって責任とは、「何かあったら辞めること」ではありません。辞めても問題は解決しないからです。どうすればうまくいくのかを考え続け、最善を尽くすことこそが、責任を果たすことだと考えています。重い役割ではありますが、大学全体に関わることができる貴重な経験でもあり、大きなやりがいを感じています。

■理念を守りながら社会に向き合う、教育方針

和光大学の教育の根幹には、「自由な研究と学習の共同体」という建学の精神があります。教員は自由に研究し、学生は自分が学びたいことを自由に学ぶ。その自由と自主性こそが、大学らしい大学の本質だと私は考えています。
和光大学ができた1966年は高度経済成長期の真っ只中で、進学率は約15%でした。当時は大学に行くだけで将来が安泰と考えられがちでした。そうした時代背景の中で、和光大学は「入ることが目的ではなく、入ってから何を学ぶかが大事だ」というアンチテーゼを掲げてきました。やりたいことが見つかって退学するなら、それも一つの選択だという考え方です。
その根底には、「大学は就職予備校であってはならない」という強い思いがあります。大学は、すぐに役立つ知識を教える場である前に、考える力を育てる場所だと考えてきました。
一方で、現代において就職やキャリアが重要であることも否定できません。人口減少や高齢化が進み、産業構造は大きく変化しています。一人ひとりが生み出す付加価値を高めなければ、社会全体の生活水準は維持できません。終身雇用的な仕組みが残っていたとしても、今後はキャリアチェンジを前提に生きていく時代だと思います。
だからこそ和光大学では、大学らしい自由な学びを土台にしながら、キャリア教育にも力を入れています。単に就職をあっせんするのではなく、「職業人生をどう築くのか」「変化の中で、どのように自分の人生を選び取っていくのか」を考える教育です。
また、専門を深めるためには幅広い教養が欠かせません。穴を深く掘るには間口が広くなければならず、山を高くするには裾野が必要です。自由に学び、興味とやる気を引き出すことが、結果として深い学びにつながると信じています。

■大学生へのメッセージ

大学で身につけてほしいのは、「ちゃんと考える力」です。学問の本質は、すべてを疑い、一つひとつ自分で確認していくことにあります。
先生が言うことや本に書いてあること、SNSで流れてくる情報は、どれも一見もっともらしく見えます。しかし、それをそのまま信じるのではなく、「本当にそうなのか」と立ち止まって考えてほしいと思います。
今は情報が溢れ、誰かの意見に簡単に流されてしまう時代です。だからこそ、自分で調べ、自分の頭で考え、判断できる力が必要になります。その力は、社会に出てからも必ず役に立ちます。
大学には国からの支援も入っていますが、それは社会が大学で学んだ人材を必要としているからです。社会から託されている期待に応えられるような学生生活を、ぜひ送ってもらいたいですね。

◆ご紹介者 テリー伊藤様のコメント

和光大学はとにかく明るく、風通しのいい学校だと感じました。「大きくない大学」であること自体が魅力で、大規模校では見えにくくなりがちな学生の空気感や思いが、ここにはきちんと息づいています。強い主張を前に出すのではなく、人や場の雰囲気を通して自然に伝わってくるものがある。個性的でユニークな先生が多く、それぞれの良さを引き出している点も印象的でした。時代に合わせた柔軟さと、ぶれない信念。その両方を大切にしている大学だと思います。

プロフィール
1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。

学生新聞オンライン2025年12月23日取材 津田塾大学3年 石松果林

津田塾大学3年 石松果林/慶應義塾大学4年 松坂侑咲

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