山梨県都留市長 日向美徳
富士山が見える学生のまち、都留市で教育と未来をひらく

山梨県都留市長 日向美徳(ひなたよしのり)
■プロフィール
昭和61年 山梨県立谷村工業高等学校 卒業
昭和61年 陸上自衛隊 滝ヶ原駐屯地 入隊
昭和63年 〃 退職
昭和63年 日向組 入社
平成16年 有限会社日向組 代表取締役 就任
平成27年 都留市議会議員 就任(当選3回)
令和5年 都留市議会議長 就任
令和6年 〃 退任
令和7年 都留市議会議員 辞職
令和7年 第8代都留市長 就任
山梨県都留市は「平成の名水百選」に選ばれた十日市場・夏狩湧水群を有するなど、自然豊かなまちとして知られている。また、人口約3万人のうち約1割が学生であり、市内に3つの高等教育機関を有する「学生のまち」でもある。地域の声に応え、教育と子育て支援を軸に持続可能なまちづくりをすすめている市長に、現在の取り組みから未来への展望を伺った。
少年時代は、自分が政治の世界に進むとは想像もしておらず、野球に打ち込む毎日でした。当時の山梨では甲子園を目指す高校が注目を集めていましたので、目の前の練習に全力を注いでいました。
中学卒業後は父の事業を継ぐことを考え、工業高校へ進学しました。本当は大学へ進学したかったのですが、家庭の事情で断念しました。その思いがあったからこそ、自分の子どもたち三人は大学に進学させました。学ぶ機会を持つことの大切さは身をもって感じています。
工業高校を卒業した後は自衛隊に入隊しました。規律や礼節、整理整頓を徹底する環境で過ごした二年間は、今の行政運営に取り組む姿勢の基盤になっています。組織の中で責任を果たすこと、決まり事を守ることの重要性を学びました。
そのような経歴の私が政治に関わろうと思ったのは、平成26年2月に山梨県全域を襲った記録的な大雪がきっかけでした。地域の市議会議員が不在となり、住民の声を行政に届けることができる人がいなくなりました。「誰かが政治をやらなければならない」という状況の中で、地域の皆さんから声をかけていただきました。そのことが私の政治活動の始まりです。
■学生のまちとして都留市の強みを生かす
都留市の大きな特徴は、三つの高等教育機関があることです。都留文科大学、産業技術短期大学校、健康科学大学があり、人口約3万人のうち約3千人が学生です。学生比率が一割という構造は、地方都市としては大きな可能性を秘めています。
この特色を活かすため、教員養成の伝統を大切にしながら、教育環境の充実と人材育成に力を入れています。これからの時代に必要なIT・AI分野の人材育成や、就職後も最新の技術や知識を習得するためのリカレント教育の支援も視野に入れた、教育を核としたまちづくりを進めていきたいと考えています。今後も、若い世代が学び、地域に携わり、定着する流れを作りたいと考えています。
■市民の声から生まれる政策
私の公約は「市民の声が届くまちづくり」です。3つのビジョンと19の施策を掲げ、一人ひとりの声を聞きながら政策に反映していきます。まず、物価高騰への対策として、学校給食の無償化やすべての子どもの保育料無償化を実施・推進していきます。また、物価高で家計が苦しいという市民の切なる要望に応えるため、当初は地域商品券の配布も考えましたが、時間や経費を踏まえたうえで、より速やかで直接的に支援が届く現金給付へと転換しました。また、商店街支援のためのポイント還元策も進めています。
また、水や自然がきれいなことも都留市の誇りです。富士山の湧水地である十日市場・夏狩湧水群は平成の名水百選にも選ばれています。生活排水の管理やごみ対策など、環境保全にも丁寧に取り組んでいます。
■教育と子育てに格差を生まない
私自身が大学進学を断念した経験から、教育機会の格差をなくしたいという思いがあります。保護者の経済状況によって子どもの教育環境に格差が生じないよう、塾、習い事、スポーツ教室など学校外教育への負担軽減のための支援策を検討しています。
英語教育も保育段階から小学校、中学校まで切れ目なく触れることができる機会を広げています。部活動では専門指導者が不足している種目もあり、大学生の力を借りることも考えています。子育て支援では、保育料や給食費の無償化とあわせて、男性の育児休業取得を含め、多様な働き方を企業に呼び掛けています。
■人口減少と公共交通への挑戦
都留市は山に囲まれた地形です。高齢化が進み、免許返納後の移動手段が課題となっています。現在AIデマンドタクシーの実証実験を行っていますが、坂道が多い地域特性を踏まえて、交通弱者の移動手段の確保を第一に、よりきめ細かな仕組みを検討しています。経費とのバランスを取りながら、持続可能で全市民が不自由なく利用できる公共交通の整備をめざしています。
また、人口減少が進む中でも、学生人口を含めた交流人口・定住人口を増やすことで活力を保つことは可能だと私は考えています。IT・AI分野の教育機関の充実や大学との連携強化はその一環です。また、大学との連携は教育だけにとどまらず、学生の力を地域課題の解決に活かす仕組みづくりを進めたいと考えています。例えば、商店街のデジタル化支援や観光PRの企画立案など、実践の場を市内に用意することで、学びと地域経済を結びつけます。学生が地域と関わる機会が増えれば、卒業後の地元就職や起業という選択肢も広がります。若者が挑戦できる土壌を整えることは、地域の成長力の強化にもつながっていきます。そのためには、市民・大学・企業が連携し、それぞれの強みを持ち寄ることが不可欠です。対話を重ねながら、都留市らしい成長モデルを築いていきたいと考えています。
■大学生へのメッセージ
学生の皆さんは、日本と地域の未来を担う存在です。皆さんは今、自由に挑戦できる貴重な時間を過ごしています。学業だけでなく、アルバイトや地域活動、国際交流など、さまざまな経験を通じて視野を広げてください。自分の可能性を信じ、失敗を恐れず挑戦してほしいと思います。皆さんの成長が、やがて地域や社会を支える力になります。私はその環境を整えることが使命だと考えています。
学生新聞オンライン2026年2月10日取材 京都芸術大学1年 猪本玲菜

津田塾大学3年 山下さくら/京都芸術大学1年 猪本玲菜/東京家政大学2年 篠田陽菜乃


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