宮澤佐江 出会いを大切に。焦らず、見つけた夢や希望を将来に繋げて

女優 宮澤佐江(みやざわさえ)

■プロフィール
1990年、東京都生まれ。2006年に「AKB48」に加入。「SNH48」、「SKE48」を経て2016年にグループを卒業。AKBグループ時代から映画、TVドラマ、舞台にと俳優として活動を開始、2016年のミュージカル『王家の紋章』以降、『ピーター・パン』(17年~)、『ウエスト・サイド・ストーリー』season2(20年)、『キングアーサー』(23年)などミュージカル作品への出演多数。昨年はテレビ東京「ウルトラマンデッカー」など活躍の場を広げている。

AKB48グループのアイドルとして10年間活動したのち、今は女優として活動の幅を広げている宮澤佐江さん。「好きなことを仕事に」と笑顔で語る彼女に、AKB48に入ったきっかけから、アイドルから女優への転身。さらに久しぶりの映像作品だという映画『犬、回転して、逃げる』の出演について伺った。

■好きだった「アイドル」を仕事に そこで出会った新しい夢

アイドルのオーディションを受けたのは2005年、中学3年生の頃でした。地元のダンススクールに通ったり、家族で頻繁にカラオケに行ったりしていたので、踊ったり歌ったりすることはもともと好きでした。小中学生のころは特に、アイドルに興味を持ち、追いかけるうちに自然に「自分もアイドルになりたい!」と思うようになったのを覚えています。オーディション雑誌にはカラフルな広告ばかり掲載される中、唯一白黒で掲示していたAKB48になぜか惹かれ、受けることにしました。
AKB48在籍中にバラエティや雑誌、ミュージカルなど、様々なお仕事を経験させてもらい、その中で自然と「お芝居」に興味を持つようになりました。AKB48のお仕事ももちろん楽しかったのですが、もっと新しい世界で新しい人々に出会って交流してみたいという気持ちがだんだんと膨らんでいきました。そして、「後輩に教えられることはもうすべて教え切った」と感じたAKB48在籍10年目の節目に、ついに卒業しました。

■アイドル時代も今も、変わらず魅力なのは「出会い」

私は新しい場所に行ったり、新しいことを始めたりすることが好きなので、AKB48を卒業後に大きなミュージカルの出演が決まったときは「楽しみ!」という気持ちでいっぱいでした。しかし、私はアイドルをきっかけにミュージカルの世界へ入らせていただきましたが、ミュージカル俳優を志してこの世界に飛び込み、キャリアを積んでこられた方もたくさんいらっしゃいます。そのような方々と、「元アイドル」である自分とのレベルの違いを目の当たりにし、ミュージカルを実際に演じていく中で、自分の実力不足を感じることも多々ありました。その実力不足を少しでも埋められるよう、毎日勉強中です。
アイドル時代も、アイドルを卒業した今も、変わらずこの仕事の魅力として感じるのは「人と人との出会い」です。演者だけではなく、スタッフさんたちと一緒になって、お金を払って観に来てくださるお客様のために、同じ熱量で一つの作品を作ることはすごく尊いことだと思っています。加えて、そこで出会った方々と、また違う場所でご一緒することが、今の自分がお仕事を続けていくうえでのモチベーションになっています。

■「なぜ生きているのだろう」という問いを題材とした『犬、回転して、逃げる』

『犬、回転して、逃げる』という映画は、よくあるテーマとは少し違う、すごく独特な作品だと思っています。初めて台本を読んだときは、頭の中にたくさんの「?(ハテナ)」が浮かびましたし、撮影中も「これはどんな作品なのだろう」と常に頭の片隅で考えていました。ナレーションが入る作品だったので、それを計算しつつのお芝居は不安もありました。
一方で、舞台やミュージカルで身についた「間を埋める演技」は自分の中で自信がある部分だったので、怖さはありつつも、楽しむことが出来ました。舞台では、自分にセリフがないシーンでもお客様に注目されることもあります。だから、「舞台上では常に役として生きる」という感覚を持っていたのですが、それが今作では非常に役立ったと思います。
この映画の題材のひとつは「生きる意味とは?」という大きな問いです。本作では、この問いは明るく捉えられていますが、人間誰しも「なぜ生きているのだろう」と考えてしまうことは多々あります。
今回私が演じた眉村ゆずきは、刺激のない日常の中で「早く世界が終わればいいのに。毎日がつまらないな」と思って生きています。私自身も「なぜ生きているのだろう」「誰のためにこの仕事を頑張っているのだろう」と考えることはよくあるので、その部分で彼女にも、この作品にも共感できました。
人によっては、「生きる意味とは」という問いへの答えが、些細な出来事で見つかることもあるでしょう。この映画の登場人物も、コミカルに描かれた日常の些細な出来事から生きる意味を見つけます。この映画を通じて、クスクスと笑いながら、「もう少し生きてみようかな」と思ってくれる人が一人でも増えてくれたらいいと考えています。

■大きな夢や希望を見つけることが、今の自分の目標

私自身、今は新しい夢をつくることが目標です。与えられたお仕事において、ひとつずつ丁寧に自分の役割を果たすことが今の自分にできることだと思って、一生懸命に頑張っています。「こうなりたい」と明確に見えていないことが、時に自分を苦しめることもあるので、早く人生における新しい目標や夢を見つけたいです。
「女優」という仕事が本当に自分に合っているのかが、最近はわからなくなることもあります。それでも、舞台やドラマなどを見ていると、「素敵な役者さんがいらっしゃるな」「自分だったらどのように演じるのだろう」と考えます。多分、「自分もそんな風に思われるような役者さんになりたい」という思いが、心のどこかにあるからこそ気になるのだと思うので、今は自分を見つめ直したいです。

■焦らず、自分の夢を見つけてほしい

大きな夢や目標が見つからず、「この先どうしよう」と何となく悩むことは、私でもあります。大学生の皆さんは焦らないでいいですし、やりたくないことを無理してやる必要もありません。やりたいことが見つかるまで悩めばいいし、自分の心がすり減ってしまうような、自分に合わないことはやらなくていいと思います。何かしらご自身が「楽しい」と思えることが、将来につながってほしいと願っています。人生は長いので、自分に合った人生を見つけるまでに、どうかたくさんの時間を使ってください。

学生新聞オンライン2023年1月30日取材 上智大学2年 勝見文音

映画『犬、回転して、逃げる』

長妻怜央(7ORDER) 宮澤佐江
なだぎ武 中村歌昇 三戸杏琉
小坂涼太郎 ワタリ119 仁科亜季子/登坂淳一

脚本・監督:西垣匡基
配給宣伝:アイエス・フィールド
企画・製作:TUFF STUFF

2023年3月17日(金)シネ・リーブル池袋、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開

2022年/日本/カラー/82分/ビスタサイズ/5.1ch/G

Ⓒ2023映画「犬、回転して、逃げる」製作委員会

公式WEBサイト http://isfield.com/inukaiten_movie/
公式Twitter @inukaiten_m

上智大学4年 八木彩花 / 日本女子大学4年 神田理苑 / 上智大学2年 勝見文音

スタイリスト:藤井エヴィ  ヘアメイク:伊藤里香

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