株式会社トリガー 代表取締役社長 大塚雅彦

監督のカラーを活かした多様なオリジナル作品を世界中に

株式会社トリガー 代表取締役社長 大塚雅彦(おおつかまさひこ)

■プロフィール
2011年にガイナックスを退社し、同年8月、今石洋之・舛本和也と共にアニメーションスタジオ・株式会社トリガーを設立し代表取締役に就任。近年では『サイバーパンク:エッジランナーズ』『The Elder』(スター・ウォーズ:ビジョンズ) など脚本・監督として携わり、スタジオ経営と後進育成を重視した人材育成にも尽力している。

『SSSS.DYNAZENON』『プロメア』『キルラキル』など、個性豊かなアニメーション作品を制作するスタジオ・トリガー。そんなトリガーの社長である大塚雅彦さんに、ジブリやガイナックスなど著名なスタジオでの経験や独立の経緯、さらにはトリガーの強みや今後のビジョンについてお伺いした。

もともと僕は大阪芸術大学の映像学科に所属していたのですが、当時はアニメーションではなく実写制作に進むつもりでした。将来は映像の仕事に就こうと決めていたので、学校の勉強よりも自主制作の映画作りを一生懸命やっていましたね。アルバイトをしながら制作費を捻出していたので、映画作りとアルバイトが学生時代の80%くらいを占めていたような気がします。いわゆる普通の就職活動をしたことはなくて、仲間や先輩のツテを頼って少しずつ仕事をもらうようになり、そこから人脈を広げていきました。

■高畑勲監督との出会いを機にアニメ業界へ

本格的にアニメに関わるきっかけとなったのが高畑勲監督との出会いです。大学時代の後輩が映画の予告編を作る会社に就職したのですが、その会社はスタジオジブリの作品も担当していたんです。ジブリ作品は好きだったので羨ましいなぁと後輩に言っていたら、たまたま高畑監督の助手を募集中だという話を聞きました。当時高畑監督が本屋などに寄り道をしてそこで何時間も費やしてから会社に来るのが問題になっていたらしく、真っ直ぐ会社に連れてくるための送り迎えをさせる人を募集していたのです。高畑監督や宮崎駿監督に会えるかもしれないというミーハー根性で受験したのですが、働かせていただけることになりました。『平成狸合戦ぽんぽこ』や『耳をすませば』などに携わる中で、そんなに絵は書けなくてもディレクションはできるということを知りました。そこで、自分も演出や監督ができるまでやってみたいと思い、そのままアニメ業界に進むことにしました。

■ガイナックスへの移籍、そして独立へ

『耳をすませば』の仕事がほぼ終わるタイミングで、『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビシリーズを作り始めていたガイナックスが「人手が足りない」といっていたことから、手伝いに行くことになりました。当初はテレビシリーズが終わるまでのジブリからの出向だったのですが、映画だけでなくテレビシリーズも手掛けている上、近い世代が多いガイナックスの方が活躍する機会が多いのではないかということで、正式にガイナックスに移籍をしました。ガイナックスの人々は、とにかく作品を作ることに命をかけている集団でした。大変なことも多かったですが、作品作りに没頭ができましたし、技術もどんどん増していく感じがして楽しかったですね。また『エヴァンゲリオン』などは作品自体も大きな話題になり、自分たちの作ったものにこれだけ反響があるんだと励みになりました。ガイナックスは非常に自由な社風ではあったのですが、作品に対しての責任を持つ意識やファンとの接点を作ることに、より積極的に取り組みたいといつしか考えるようになり、独立してトリガーを設立しました。

■監督のカラーを活かした個性豊かなオリジナル作品を

トリガーでは特にオリジナル作品に力を入れています。オリジナル作品を作るのにはノウハウが必要で、どの会社でも出来ることではありません。その意味ではガイナックスには『エヴァンゲリオン』を始めとしてオリジナル作品を作る先輩たちがいたので、そのような環境にいた意味は非常に大きかったと思います。そんな先輩たちの姿を見ていたからこそ、私たちもオリジナル作品を作れるスタジオでありたいなと常に意識をしてきました。もう1つの特色は、監督のカラーを大切にしているということです。そのため、監督が変わればトリガーのカラーも変わりますし、その監督が誰と組むかによっても変わってきます。一人ひとりが能力を存分に発揮するからこそ、個性豊かな作品が生まれ続けているのだと思います。このようなノウハウや環境を継承していくために、最近力を入れているのは若手の育成です。近年は私たちの時代に比べて少し真面目というか従順な人たちが多くて、それはありがたいことではあるのですが、一方で「君がやりたいことは何?」「どんな作品を作りたい?」と尋ねると具体的に出てこないこともあります。もっと若手に自分がやりたいことを意識してもらうために、それを引き出すための取り組みにも力を入れています。自分でこんな作品を作りたいという強い意志がある方には、ぜひトリガーに来て欲しいですね。

■多様性を保ちながら作品を世界へと届け続ける

日本だけではなく海外の方にも評価していただけることも多いのですが、だからといって海外に向けた特別な作り方をするというよりは、今までの軸をぶらさないことを意識しています。ハリウッドのような大作を作ろうとしてもまともに勝つのは難しい。逆に海外にはないものだからこそ評価されている側面もあると感じます。なので、海外にウケるためにはどうすればいいというよりも、素直に自分たちがやりたいものをやろうと意識しています。私たちは万人受けする訳ではない若干ニッチな作品を作っているかもしれませんが、それが世界中に広がれば日本国民全員が観ているのと同じくらいの人が観てくれていることになる。私たちの強みでもある多様性を活かしながら、世界へ作品を届けていきたいですね。

■大学生へのメッセージ

色々と不安のある時代ですが、何かやりたいことに打ち込んで欲しいですね。私の場合はそれがアニメです。私や監督一人ひとりの力は微々たるものかもしれませんが、それがつながっていけば世界平和への一歩になるはず。アニメに限らずみなさんには何か打ち込めるものを見つけていただいて、有り余るエネルギーを注力してもらえたらと思います。

学生新聞オンライン2026年2月24日取材 法政大学3年 島田尚和

法政大学3年 島田尚和/津田塾大学3年 山下さくら

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