韮崎市長 内藤久夫

予期せぬ転身とリーダーの葛藤

韮崎市長 内藤久夫 (ないとう ひさお)

■プロフィール
慶応義塾大学法学部卒。㈱内藤の代表取締役を務める傍ら、市教育委員長や市商工会長を経てH26年11月韮崎市長に就任。”チームにらさき”を掲げ、特産葡萄を活かしたワイナリー誘致や、人口対策として「カムバック支援事業」を市民協働で始動し「青少年育成プラザMiacis(ミアキス)」を開設。現在市長3期目として、ウェルネスの実現にむけ市営新体育館を整備することでスポーツコミッション充実等に取り組んでいる。

大学時代は山登りや歴史研究に没頭していたものの、偶然のきっかけから政治の世界へ進んだと語るのが、山梨県韮崎市長の内藤久夫氏。その後手探りで市政を担い、現在は駅前コンパクトシティ構想や若者支援を統括している。その経験から人とのつながりを大切にしながら歩んできたキャリアや、街の魅力、仕事への思い、そして今後の展望について話を伺った。

■政治への想い

山梨の韮崎市に生まれ、中学・高校は地元の学校に行き、大学からは上京して法学部政治学科に入りました。上京した後は、長年身近にあった山がなくなってしまった都会の風景に落ち着かず、山登りの同好会に入り日本全国の山に登っていました。勉学としては歴史が好きでしたので、政治学科といっても国際政治史の研究や事例研究などを中心に、東南アジアやアジア全体を対象に中国政治史専攻で学んでいました。
政治学科でしたが、私は学生時代から政治家を目指していたわけではありません。父親が政治家だったこともあり幼少期から政治には触れていたのですが、選挙をする際いろいろなマイナスの意見や嫌な思いもたくさんしていたので、政治家になるという意識はありませんでした。
そんな私が市長になったきっかけは、私の前の市長さんが辞めるとなった時、候補になる人があまり居なかったがために街の人から「市長選に出てくれないか」と声をかけてくださったことがきっかけです。当時の私は議員経験もない上に、とても急な話でしたから当初はお断りしていました。しかし、街の方々が「『うん』と言ってくれるまで帰らない」ととても熱意を持って強く背中を押してくれたので、それに絆される形で、ありがたいことに市長に就任することができました。

■自然豊かな気候と街の風土

韮崎市内はどこに行っても富士山がとても綺麗に見えます。その風景に影響されてかはわかりませんが、この街ならではの優しさや風土があると感じています。たとえば、移住者の方が入ってきてもあたたかく受け入れたり、ギクシャクせず争い事があまり起こらなかったりと、気持ちが温かい人が多いことは、大切な財産だと思っています。そんな韮崎市ですが、残念ながら現在は人口減少が激しく、大きな問題となっています。どうやって若い人にいてもらうか、あるいは外から入ってきてもらうか、といった若者支援に現在は力を入れています。たとえば、地域おこし協力隊という全国で若者が主に進めている団体があるのですが、そこからきていただいた方を10名受け入れたり、中学生・高校生のための第3の居場所を作るため、「青少年育成プラザMiacis(ミアキス)」という施設を運営したりしています。
このMiacisは、学年関係なく一緒に集まって勉強したりゲームしたりといろいろなことを自由にしているのですが、たとえば将来的にどういう職に就きたいかという相談も、地域おこし協力隊で入ってきてくれた方が運営スタッフとなって聞いてくれたりする場面もあります。そのほかにも学生自身でクラウドファンディングをしてデンマークに行くと計画を立てていたりと、海外の人たちと交流したりと、高校生とは思えない行動力を見せる方も多いです。

■目指す未来

現在、限られた人数のなかで職員の働き方改革に挑んでいます。まずは業務時間調査を行い、時間外労働の多い部署を特定してデジタル化による負担軽減を進めている段階です。また、市民の皆様に向けては、窓口での申請に時間がかからないよう、デジタル化を一つずつ進めています。「書かない窓口」の完全な実現はこれからですが、コンビニで申請できる手続きを増やすなど利便性を高めています。
私自身もAIをよく活用しており、職員が用意してくれた原稿と私が考えた内容を掛け合わせ、スピーチの参考にしています。どうしても硬くなりがちな文章を、できるだけ私の言葉で届けられるよう工夫を凝らす毎日です。
また今後、私たちの街は韮崎駅を中心とした「コンパクトシティ」を目指しています。狭い範囲に商業施設、学校、病院が集まっており、中心部にいれば大体の用事が足りてしまうという生活のしやすさが自慢です。
ただ、若い世代のリアルな声に耳を傾けると、高校生たちからは「市長、スタバやサイゼリヤを呼んできて!」と、お馴染みの商業施設への憧れをよくぶつけられます。彼らの気持ちに共感しつつも、実は今の韮崎には、個性的で面白いお店がどんどん増えています。たとえば、いつも予約でいっぱいの3,000円のパフェ専門店があります。大盛りで美味しく、昼食代わりになるほど贅沢な一品です。他にも、ラーメン屋だった建物を改装し、イタリアから石窯を取り寄せた本格的なピザ屋があったり、昭和の長屋が生まれ変わったりと、新旧が織りなす街の変化に私自身とてもワクワクしています。

■大学生へのメッセージ

100人の学生がいれば、そこには100通りの夢があるはずです。私は、夢は絶対に追いかけるべきだと思いますし、そのためのチャレンジで失敗したとしても、それは決して無駄にはなりません。私自身もこれまで手探りで進むなかで多くの失敗をしてきましたが、今振り返ると、そのすべてが大切な学びになっています。若いうちの失敗はいくらでも取り返せますから、恐れずに挑戦してほしいです。
そして、学生時代に学びと同じくらい大切なのは「生涯の友」を作ることです。私が選挙に出馬した際、地元の中高の同級生はもちろん、遠方にいる大学時代の友人たちまでが駆けつけ、私を支えてくれました。
友達は人生において本当にかけがえのない財産です。学生生活の中で、一人でもいいから、心から信頼できる大切な友達を見つけてください。応援しています。

学生新聞オンライン2026年5月15日取材 情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥

京都芸術大学1年 猪本玲菜/情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/城西国際大学2年 渡部優理絵

■青少年育成プラザMiacis(ミアキス)
中学・高校生の拠点。「中高生にとっての家でも学校でもない第3の居場所」
問合せ先:NPO法人河原部社
https://kawarabe.com/youth-center/

(手前)ユースワーカー/地域おこし協力隊 向山ひかり / ユースワーカー/地域おこし協力隊 津原一樹

(奥)情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/京都芸術大学1年 猪本玲菜/城西国際大学2年 渡部優理絵

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