富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 代表取締役社長 浜 直樹
変化の先を見据え、新たな価値を創り続ける

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 代表取締役社長 浜 直樹(はまなおき)
■プロフィール
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 代表取締役社長。生産管理、営業、新規事業など幅広い業務を経験し、事業変革に携わってきた。写真フィルム市場の縮小やコロナ禍による環境変化を乗り越えながら、現在はDXやITソリューション事業の拡大を推進。変化を前向きに捉え、挑戦を続けることを大切にしている。
複合機やプリンターを起点にお客様の業務を支えてきた富士フイルムビジネスイノベーション株式会社。近年は、DXやITソリューションを通じて企業の業務変革を支援している。
今回は、代表取締役社長の浜直樹氏に、事業変革への挑戦や、その原動力となる考え方についてお話を伺った。
■ラグビーで培った「チームに貢献する」という考え方
学生時代に熱中したことは、高校から大学まで続けたラグビーです。中学時代に肩を壊して野球を断念したことをきっかけに、新しいスポーツとしてラグビーを始めました。大学生時代に所属していた慶應義塾大学のラグビー部は大学選手権決勝に出場するほどの強豪校で、とても厳しい環境でした。その中で、レギュラーを目指し努力を重ね、四年目にしてようやく試合に出ることが叶いました。その後、チームは日本選手権で社会人チームを破り日本一にまでなりました。このような厳しい指導やレギュラー争いがある環境に身を置いたことで、「チームをどう強くするか」「自分はどのようにチームに貢献していくか」をよく考えるようになりました。今振り返ってみると、ラグビーを通じて肉体的、精神的に鍛えられただけでなく、組織の中で自分の役割を考える機会が与えられたことは、とても良かったなと思っています。また、レギュラーを目指して努力してきた経験は、社会に出てからも「自らを戦力として活かし、社会というフィールドで活躍したい」という思いの根底につながっていると感じています。
■現在のキャリア形成を支えている、回り道に見えた過去の経験
就職活動をしていた当時は商社や金融が人気の就職先でしたが、私は「自分たちでものをつくって、売る」という仕事に就きたいと思っていたため、メーカーに興味を持ちました。その後ご縁があって富士フイルムに入社しました。入社後6年半は、工場の生産管理の仕事を担当しました。将来は海外で仕事をしたいと思って富士フイルムに入社したため、初配属先を聞いたときは驚きました。しかし、その仕事を通して、需給や原価管理など、ものづくりの仕組みを学ぶことができました。今振り返ると、会社が人材育成の一環として貴重な経験を与えてくれたのだと思います。その後、写真フィルムの営業を希望していましたが、実際に担当したのは、非感材(写真フィルム以外)の営業でした。最初は落胆もしましたが、その仕事では営業活動にとどまらず新規事業の立ち上げやマーケティング、企画にも携わる機会を得ました。当時の写真フィルム市場は、デジタル化によって急速に縮小しており、会社としても新たな事業の創出が求められていたため、新規事業に携わる立場になれたことは結果的に幸運だったと感じています。その後は、事業部長や高機能材料開発本部長などを歴任し、レガシー事業の立て直しにも携わりました。そして2022年から富士フイルムビジネスイノベーションの社長をしています。決して直線的なキャリアではありませんが、思い返すと回り道に見えた様々な経験が、現在に繋がっているように感じます。
■お客様との接点を強みに、新たな価値を創る
当社は、複合機や印刷機器、そしてソリューションの提供を主力事業としています。かつての複合機は「1分間に何枚印刷できるか」という性能が競争軸でした。しかし現在は、技術性能や単純な価格競争ではなく、セキュリティや業務効率化、環境配慮などの新たな価値が重視されています。また、ペーパーレス化の進展により、複合機市場そのものも変化しつつあります。こうした環境変化の中で当社が強みとしているのが、長年にわたり築いてきたお客様との接点です。複合機の導入や保守を通じて培ってきた信頼関係を生かし、現在はソリューション事業の拡大に力を入れています。
例えば、これまで複合機のメンテナンス担当だったエンジニアがPCの設定やIT保守などの運用支援までできる体制を整えています。また、Windows移行やセキュリティ対策、クラウド環境の構築など、企業のIT環境を幅広く支援しています。こうしたサービスを通じてお客様の業務を支えることで、次の複合機の切り替え時にも「富士フイルムビジネスイノベーションの製品を使いたい」と選んでいただける関係性を築いています。
さらに製品開発においても将来を見据えた取り組みを進めています。その一つが再生機事業です。回収した複合機の84%の部品を再利用し、残りの16%には再生プラスチックを用いる再生機事業を展開するなど、資源制約や環境負荷への関心が高まる中、私たちは製品を売って終わるのではなく、資源を循環させながら使い続ける仕組みづくりにも取り組んでいます。このような事業改革を通じて、数年後の会社や世の中を見据え、自ら変化を生み出していくことの大切さを現在の社員に伝えています。
■コロナ禍がもたらした決断と転機
大きな転機になったのはコロナ禍でした。職場に足を運ぶことすらできず、オフィスにおける印刷需要が急減し、複合機ビジネスの収益構造に大きな打撃を与えました。こうした社会変化を受け、従来から取り組んできたソリューション事業をさらに強化する判断をしました。この判断は、結果として良い方向に進んでいると思っています。もちろん、どんな挑戦にも失敗はつきものです。重要なのは、方向性が違うと感じたら、早い段階で修正して、正しい方向にもっていくことです。このように決断と修正を繰り返しながら進んできたことが、当社の事業変革を支える原動力になっていると感じています。
■国や地域の特性に合わせた事業展開
現在は、インドや欧米、アフリカなど、成長が期待される市場への進出に力を入れています。私は、グローバル展開において重要なのは、同じ商品やサービスをどの国にも一律に展開することではなく、それぞれの国や地域の文化や価値観、生活習慣を理解することだと考えています。例えばインドでは、結婚式や誕生日などのイベントを華やかに行い、写真という記録に残す文化が根強いため、写真に対する需要が非常に高いという特徴があります。また、インドのお祝いの席での衣装は鮮やかな色のものが多いこともあり、高品質な写真出力に関する事業に可能性があると感じています。今後も、各国の特性や文化を見極め、やみくもではなく各地域の特徴に合わせた事業展開を進めていきたいと考えています。
■学生へのメッセージ
迷ったら躊躇せずにやってみることを大切にしてほしいです。かつては「一度決めたら最後までやり抜くべきだ」という価値観が強かったかもしれません。しかし、実際にはやってみなければ分からないこともあります。やってダメだったら、辞めてもいいし、軌道修正していけばいいのです。学生時代は、限られた時間の中でさまざまなことができる貴重な期間です。自分が「やりたい」と思ったことに、積極的にチャレンジして「自分の人生の主人公」として行動してほしいと思います。
学生新聞オンライン2026年6月22日 成城大学2年 小澤実桜

京都芸術大学 1 年 猪本玲菜/ 慶應義塾大学 4 年 山本唯那/東京薬科大学 4 年 庄司春菜 / 情報経営イノベーション専門職大学 2年 山田千遥 / 法政大学 3 年 高原朋希/ 上智大学 2 年 石川仁菜 /武蔵野大学 4 年 吉松明優奈 / 早稲田大学 3 年 伊藤健太/日本大学 2 年 原田達司 / 法政大学 1 年 山田賢彦/成城大学2年 小澤実桜


この記事へのコメントはありません。