アーティスト 與 真司郎
「人生そんなもん」と笑って進む

アーティスト 與 真司郎(あたえ しんじろう)
■プロフィール
1988年生まれ。京都府出身。現在は日本と海外を拠点に活動中。男女混合のパフォーマンスグループ、AAA(トリプル・エー)のメンバーとして、 2005年にデビュー。グループは2021年、AAA初となる6大ドームツアーを終えたタイミングで本格的な活動休止に入る。2023年7月、「與真司郎 announcement」にて、自身が同性愛者であることを無料招待した約2000人のファンの前で公表。現在は自身の人生を題材にしたドキュメンタリーをハリウッドにて制作中。著書に『すべての生き方は正解で不正解』(講談社)などがある。ソロアーティストとして、最新シングル「Kizuketa」を2024年10月30日に配信リリースし、11月には5都市9公演を回る「SHINJIRO ATAE LIVE BAND TOUR & BIRTHDAY TALK SHOW 2024」を完走。
小学生でダンスに出会い、芸能界へ。カミングアウトを経て、ありのままの自分で生きることの大切さを伝え続ける與真司郎さん。新たに出版したフォトエッセイ「人生そんなもん」では、家族や恋愛、葛藤の日々を赤裸々に綴りました。これから挑戦したい未来への思いと、大学生への温かいメッセージを伺いました。
小学校5年生のときにダンスに出会い、夢中になりました。もともとは野球少年でしたが、ダンスを習ううちに、「ダンスの先生になりたい」と思うほど好きになったんです。芸能界に憧れていたわけではないのですが、周りの人たちに勧められてオーディションを受けたら、合格してしまって。スターになりたい気持ちは特になかったので、合格したときは驚きましたし、「自分で大丈夫かな?」と不思議な気持ちになりました。
その後、高校に通いながらレッスンを重ね、デビューが決まったタイミングで学校を辞め、芸能活動に専念する決断をしました。中途半端にどちらも続けるよりも、自分の夢に賭けたいと思ったからです。若かったこともあり、不安よりも覚悟の方が強かったです。親も「好きなことをやりなさい」と背中を押してくれたのは、ありがたかったですね。
■ファンとのつながりが生きがい
芸能界でのやりがいは、何といってもファンのみなさんと直接会えることです。特にカミングアウト後も変わらず応援してくれているファンのみなさんには、ものすごく愛を感じます。愛をもらうと、僕も返したいと思うし、お互いに愛を育んでいるような感覚になります。
ライブやイベントはもちろん、最近は地方にも足を運び、普段なかなか会えない人たちと触れ合える機会が増えたのは本当にうれしいことです。最近ではコメントやダイレクトメッセージもできるだけ目を通すようにしていて、みなさんの応援が大きな励みになっています。フォトエッセイの発売を記念して、お渡し会も実施します。ファンのみなさんと直接会える場なので、うれしいです。みなさんの顔を見ると、「本当に来てくれたんだ」と感動しますし、イベントのたびに生きがいを強く感じます。
■芸能界で感じた葛藤とメンタルの成長
華やかに見える芸能界ですが、実際には厳しい現実もたくさんあります。特に、人と比べられることや、アンチコメントに耐えることは大きなストレスでした。デビュー当時は自信がなかったので、小さな否定の言葉にもすごく傷ついていました。
そんな自分を変えたくて、26歳でアメリカに渡りました。英語も話せず、知り合いもいない環境でしたが、小さな挑戦を重ねる中で、「自分って意外とできるんだ」と自己肯定感を育むことができました。9年間のアメリカ生活は、メンタルヘルスを大切にするきっかけにもなり、自分を愛するという考え方を学ぶ大きな転機になりました。
一人で世界を旅した2カ月間も、人生を変える大きな経験でした。異国のカフェで偶然隣に座ったおばあさんと会話を交わしたり、知らない土地で髪を切ったりと、小さな冒険の積み重ねが自分に自信を持たせてくれました。行動するたびに、「なんだ、できるじゃん」と思えたことが、自分らしさを育てる土台になったと思います。
■カミングアウトとフォトエッセイ「人生そんなもん」に込めた思い
カミングアウトの前後では、正直、メンタルの浮き沈みも激しかったです。カミングアウトする前は周囲の反応が怖く、した後もアンチの声に悩んだことがありました。それでも今は、カミングアウトして本当によかったと心から思っています。苦しかった時期があったからこそ、今の自分があり、自分らしく生きることの大切さを実感できています。
今回出版したフォトエッセイでは、家族との関係や恋愛についても正直に書きました。元彼の話や、海外で感じた自由さ、日本との違いなど、なかなか普段は話せないこともすべて詰め込んでいます。
この本を読んだ誰かが、「こんなクレイジーな人生もあるんだ」と思ってくれたり、「自分も頑張ろう」と思えるきっかけになったりしてくれたら、うれしいです。自分を偽らずに生きることは、簡単ではないかもしれません。それでも、自分らしく生きることが、自分の心を楽にする一番の手段だと、今では心から思っています。
■大学生へのメッセージ
大学生のみなさんには、ぜひ自分を信じて、恐れずに行動してほしいです。失敗を怖がらずに動けば、必ず何かが得られるし、失敗さえも自分を成長させてくれるものです。そして、自分を理解してくれる仲間や友人を大切にしてください。自分らしくいられる環境を見つけることが、これからの人生にとってとても大切な支えになります。
行動力は本当に大事です。頭で考えるだけでなく、少しでもやってみること。動くことで世界が広がり、やがて自身へとつながっていくはずです。
完璧を求めすぎず、うまくいかないときは「人生そんなもん」と肩の力を抜いてください。人生は白か黒かだけではなく、グレーでもいい。力を抜きながら、自分だけの道を楽しんでください。自分を大切にしながら、自分の人生を堂々と歩んでいってほしいと思います。
学生新聞オンライン2025年3月29日取材 津田塾大学2年 石松果林 / 昭和女子大学1年 阿部瑠璃香




津田塾大学2年 石松果林/城西国際大学1年 渡部優理絵/昭和女子大学1年 阿部瑠璃香
カメラマン 下田航輔
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