脚本家 野木亜紀子
あなたが受け取ったものこそが作品のメッセージ

脚本家 野木 亜紀子(のぎ あきこ)
■プロフィール
脚本家。1974年生まれ。2010年ヤングシナリオ大賞受賞後デビュー。ドラ マ『アンナチュラル』『コタキ兄弟と四苦八苦』『獣になれない私たち』『MIU404』『フェンス』『海に眠るダイヤモンド』『スロウトレイン』、映画『カラオケ行こ!(和山やま原作)』『ラストマイル』など。
「逃げるは恥だが役に立つ(海野つなみ原作)」、「アンナチュラル」など数々の脚本を手掛ける野木亜紀子さん。作中のキャラクターやセリフの数々は、さまざまな感情を引き出してくれる。このような映画やドラマを生み出す野木さんに、脚本家になるきっかけや脚本を書くうえで大切にしていることなどを伺った。
◾️脚本家になるきっかけは何ですか
私は日本映画学校という専門学校に通っていました。映画の道に進んだのは、もともと映画が好きでしたし、当時のアルバイト仲間に勧められたこともきっかけになりました。写真やデザインにも興味があったのですが、映画は動きがあって広がりがあるので表現者として一番可能性を感じました。
映画監督になるための就職先はそんなになく、最初はテレビのドキュメンタリーを作っている制作会社に就職をしました。仕事は取材、現場、撮影、編集などすべてをやりました。しかし、自分は現場には向いていないなと感じ、編集や構成を考える方が合っていると思うようになりました。本当にやりたかったのは何かと改めて考えた結果、脚本コンクールに応募し、そこから脚本家の道へ進みました。
◾️脚本とはどういうものなのですか
テレビや映画の面白さは共同作業であることです。いわば総合芸術なのです。その中で脚本は設計図に当たります。私が作った設計図を基に、スタッフやキャストの皆さんがどんな家を建てるか。小説を書きたいとは思いません。自分が書いた文章を読みたいわけではないので。例えるなら、その上に立った家や装飾、色などの全体を見て「すごい家ができたな」と感じるときが一番楽しいです。脚本を全部書き終わったときも「終わったー!」という達成感はありますが、お芝居になることを見込んで書いているところもあるので、完成して世に出たものが作品だと思っています。
しかし、脚本という設計図から作品になるまでは多くの人が関わっているので、自分が思っていたものと違うものが出来てしまうこともありました。最近はなるべくそうならないように、「ここは、こうならないよう気を付けてください」「これはNGです」など、特に初めての人と仕事をする場合は時間をかけてしっかり確認するようにしています。受け取り方は人それぞれですので、逐一、言語化して確認するようにしています。
◾️脚本に込める想いをお聞かせください
私自身はそんなに強固にメッセージを伝えようとしていません。受け取った人次第だと思っています。最近、答えを求め過ぎると感じています。「伝えたいのはこういうことです」とテキストで聞いてしまったら、作品を見る必要 はなくなってしまいます。ドラマと映画でも違いますが、一つの作品を一つのメッセージで描いていないこともあります。世の中はそれほど単純ではないし、答えは一つではないからです。それに付随するいろいろな問題やさまざまな見方を多角的に描いた上での一本の作品だったりします。あなたが受け取ったものこそがメッセージなのです。
いろいろな視点を持って作 品を作ろうと思っていますが、きっと取りこぼしているところはあるはずです。難しいですが、一面的にならないように常に意識して手を尽くしていくしかありません。
■学生へのメッセージ
とにかくいろいろなことをやった方が良いと思います。無駄だと思うこともその後の人生に活かされることはたくさんあります。ただ、何事も雑にやっていると結局なんの役にも立たなくなってしまうので、どうせやるならしっかりやることが大切だと思います。そして、働き出すと、お金はあっても時間が取れなくなります。ぜひ体力と時間がある今のうちにやれることをやってください!
学生新聞2025年4月号 東洋大学2年 越山凛乃

津田塾大学2年 石松果林/東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 池濱百花/国際基督教大学2年 渡邊和花/昭和女子大学3年 竜澤亜依/東洋大学3年 太田楓華/大妻中野高等学校3年 加藤眞優花/国際基督教大学2年 丸山実友/城西国際大学1年 渡部優理絵
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