株式会社コメ兵 代表取締役社長 山内祐也
情熱と挑戦が、未来と仲間を動かしていく。

株式会社コメ兵 代表取締役社長 山内祐也(やまうち ゆうや)
■プロフィール
1977年、岐阜県各務原市生まれ。法政大学卒。
2000年4月にコメ兵入社。入社後はカメラ部門に配属、2009年に営業企画部門の立ち上げに携わる。2017年に経営企画部、事業開発部の部長を兼任しM&Aや海外進出を推進。2025年6月、㈱コメ兵の代表取締役社長に就任。創業家以外から初めてコメ兵の社長に就任。
中古の高級ブランド品を扱う株式会社コメ兵 代表取締役社長の山内祐也氏。学生時代は陸上競技に打ち込み、現在は日本を代表するリユース企業のひとつ「コメ兵」を率いる。挑戦を恐れず、「人の想いをつなぐ」ことを信念に走り続けてきた山内社長が、仕事への情熱と仲間とのつながりを語る。
■陸上で学んだ、結果よりも「勝つまでのプロセス」
私は中学から大学まで陸上競技一筋で、100mと200mに取り組んできました。高校時代には東海大会で優勝。大学では全日本学生選手権で4位でした。学生時代の大半はグラウンドにいて、学食や寮での生活、体育会の仲間たちと過ごした時間が今でもよい思い出です。部活中心の毎日で、自分の生活の時間やエネルギーすべてを陸上競技に費やしていました。
競技生活では怪我による入院などもあり、その苦しさを乗り越える中で、ネガティブなことをポジティブな側面からも捉える力や、粘り強さが自然と身についたと思います。また、勝つことよりも勝つまでのプロセスを考える力も学びました。
何事もいきなり結果は出ませんが、小さな改善を積み重ね、調整し、また挑戦するといったトライアンドエラーの中に成長があります。それは、今の経営にもまったく同じことが言えると思います。会社の成果も、日々の努力と失敗の積み重ねの上に成り立っています。ですから私は、どんなときも「次をどう動くか」を考え続けています。
■自立と楽しさが、組織を強くする
コメ兵に入社したのは、「日本一の会社で働きたい」という想いがあったからです。キャリアを積み重ね、気がつけば社長という立場になりましたが、私の中では今も挑戦者であることは変わっていません。現在はグループ会社のK-ブランドオフの社長も兼務しており、名古屋・東京・金沢を拠点に動きながら仕事をしていて、毎日が社内のメンバーとの対話や、社外の方との面談、そして重要な意思決定の連続です。
大切にしているのは、「役職よりも役割」という考え方です。上下関係ではなく、それぞれが何を担うかという役割を意識したいです。現場には現場のプロがいて、経営には経営の視点があります。これらはどちらも欠けてはいけないものです。だからこそ、コメ兵の特徴は、社員一人ひとりが自律的に考えて動く文化があります。トップが指示を出すだけの組織では、変化のスピードについていけません。一例として、私が初めて社長を任されたブランドオフのM&Aのとき、正直、社内にはM&Aに対して反対の声もありました。赤字も抱えていましたし、周囲も「不安要素が大きいため、やめておいたほうがいい」と言っていました。しかし、やりがいとブランドオフというチームの可能性を強く感じたので引き受けました。
困難なときこそ、人の本気が問われると思います。そして、その中で結果を出すことで、みんなの考え方が変わるものです。実際、私が本気で、Kーブランドオフの経営に携わり、チームとの信頼関係を強化していったことで、組織は大きく変わりました。
ではK-ブランドオフの経営再建は苦しいものだったかというと、コロナ禍ということもあり大変なことは多々ありましたが、チームのメンバーは皆がポジティブでした。変化し、成長していくことへの期待と、実際に改善が繰り返されていく実績を皆が体感することができました。ここに仕事の「楽しさ」がありました。
上記にあるように、私の経営の軸にあるのは「楽しさ」です。人は楽しいと感じるときにこそ本気を出せます。学術的にも「楽しさ」が仕事のモチベーションを上げるのに大きな影響を及ぼすことが実証されており、プラスして自分の成長を実感できる瞬間や、仲間と目標を共有できる時間が更なるモチベーションアップにつながるとされています。報酬や肩書きといったものは、この「楽しさ」という直接的な動機には適いません。K-ブランドオフの例を出しましたが、コメ兵だけでなく、コメ兵HDグループ全体が成長し続けている理由は、社員一人ひとりが仕事を楽しみながら挑戦しているからだと思っています。これからも我々コメ兵は仕事の本当の楽しさを追求していくチームでありたいと考えます。
■共に働きたいのは、情熱のある人、気持ちの良い人
リユース業というと、単に「中古品を売る仕事」と思われがちですが、私たちはそうは考えていません。私たちが目指しているのは「リレーユース」という新しい文化です。モノを売るのではなく、想いとその価値を次の人へつなぐ。その文化を世界へ広げたいと思っています。「服と言えばユニクロ」「車といえばトヨタ」と言われる大手企業のように、「リユースといえばコメ兵」と言われる存在を目指しています。実際のところリユースという概念にネガティブなイメージを持たれる方もまだいますが、今後の事業戦略においても品質やメンテナンス、店舗の雰囲気、接客スタイルまでこだわり抜くことで、中古品を買うという認識ではなく、価値を受け継ぐという体験に変えていきたいと思いますし、テクノロジーや他企業とのアライアンスなどを通じて今までになかったサービスを想像していきたいと思います。
そして、その事業戦略を推進するうえで非常に重要なのが「人材と組織」です。組織を動かすのに一番大事なことは、考える力である思考力、自ら動く自律性、コミュニケーション、そしてその源泉となる情熱だと思います。 コメ兵では「仕事のパフォーマンス」は「どんなスキルがあるか」と「どんな気持ちでやるか」のかけ合わせだと考えています。スキルはもちろん重要ですが、それと同等か、もしくはそれ以上に「気持ち」は重要な要素となります。
スキル以上に大切なのは一人ひとりの想いです。知識がある人よりも熱量がある人が、結局は周りを動かします。私はそんな「気持ち」をもった仲間たちと、これからのコメ兵をつくっていきたいと思っています。少し考えてみてください。一緒に働くなら気持ちの良い人と働きたいですよね。この気持ちの良い状態をコメ兵ではValueとして設定しています。「誠実であること、挑戦すること、協調すること、楽しむこと」とし、皆で組織風土を磨いていくと共に、これを更に細分化したものを評価制度の一部としても運用しています。
リユースの世界ではモノをつなぎますが、一緒に働く仲間たちにはぜひ想いをつなぐ人になってほしいです。そのリレーの先に、きっと自分だけの未来が待っています。
■大学生へのメッセージ
学生の皆さんには、ぜひ「周囲にインパクトを与えるか」という視点を持って仕事を選んでほしいと思います。どんな立場にいるかよりも、自分の仕事で誰にどんな影響を与えられるか、その方がずっと大事です。
たしかに若いうちは、思うように人が動いてくれないことも多いと思います。でも、そこで、「どうしたら伝わるか」「どうしたら動いてくれるか」を考えることが、社会人としての成長につながります。人を動かすのはポジションではなく、情熱とロジックです。これを若いうちに磨いてほしいですね。
そして、どんなときも「楽しむ気持ち」を忘れないでください。「楽しさ」は人から人へ伝播します。私も経営者として日々プレッシャーの中にいますが、仕事が楽しいから続けられます。壁にぶつかったときも、「どうすれば面白くできるか」を考えます。そうすると、自然と前に進めるようになります。変化を恐れず、自分の力を信じて挑戦してください。挑戦の先には、必ず新しい景色があるはずです。
学生新聞オンライン2025年9月17日取材 京都芸術大学1年 猪本玲菜

京都芸術大学1年 猪本玲菜


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