株式会社串カツ田中ホールディングス 代表取締役社長CEO 坂本壽男

居酒屋の枠に囚われない挑戦で串カツを日本の文化に

株式会社串カツ田中ホールディングス 代表取締役社長CEO 坂本壽男(さかもと としお)

■プロフィール

1976年4月生まれ、長崎県島原市出身。慶応義塾大学経済学部卒。
2000年4月に日本酸素㈱(現日本酸素ホールディングス㈱)入社。2004年11月公認会計士に合格。同年12月新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入社。
前社長(現会長)、貫啓二に誘われ、2015年2月に株式会社串カツ田中へ入社。CFOとして同社の株式上場をけん引する。2022年6月、株式会社串カツ田中ホールディングスの代表取締役社長 CEOに就任。

全国に300店舗以上を展開し、日本中に串カツを普及させた串カツ田中。運営する串カツ田中ホールディングスの代表取締役CEO・坂本壽男氏は、化学メーカーの勤務や公認会計士、同社のCFOを経て現職に就任した。そんな坂本氏に、事業拡大を目指す社内の取り組みや、串カツ田中ならではのこだわりを聞いた。

大学時代はやりがいや社会との接点を求め、アルバイトに力を入れていました。アルバイト先の喫茶店にはカラオケやパーティールームもあり、それをアルバイト店長として、1人で回すという多忙な日々を過ごしていました。私以外にも店長を任されている学生アルバイトが数人おり、日々ローテーションでシフトを組んでいました。だから、情報交換は大切にしていましたね。夏休みには喫茶店の仕事以外にも社長が所有するコテージの予約を対応したり、マルチに色々な仕事ができて楽しかったのを覚えています。アルバイトは社会勉強をする機会を多く与えてくれました。
また、バイト先には、当時は家にあるのが珍しかったパソコンがあり、それでよく社長に教えてもらいながら会計の勉強をしていました。今思えばその経験が、公認会計士を目指した原点だったのかもしれませんね。

■多くの挑戦と迷いを経てたどり着いたのは串カツ田中への入社

卒業後は化学メーカーに3年間勤務したのですが、働く中で「自分には会社員は合わない」と感じることがあり、独立を考え始めました。というのも私は長崎県の田舎出身で、周りには農業や漁業など自営業の家庭が多く、幼い頃からみんなが自由で楽しそうに働く姿を目にしてきたからです。そのような環境で育ってきた私にとって、敷かれたレールを進むことや毎月必ず給料をもらえる環境は、少し物足りなさを感じていたのです。
ちょうどその時、税理士の資格を取得した友人がいたのですが、その友人のように頑張れば頑張るほど評価されて先祖代々継げる士業に興味を持つようになりました。そこで、公認会計士の資格を取得して、独立を目指しました。会社を退職後は、貯金を切り崩しながら朝から晩まで勉強し、2年半後に無事に国家試験に合格することができました。
公認会計士になってからは、まずは監査法人に就職しました。10年で独立すると決めていたので、監査法人を退職する間際に、取引先の一つである串カツ田中の貫社長(現会長)にも独立の報告をしました。その際「独立なんて大変だから絶対失敗するよ。それならCFOとしてうちに入社しないか」と声をかけていただいたのです。当時の串カツ田中はまだ小さな企業で上場を意識し始めた頃でした。独立かCFOか迷いましたが、ご縁や家族と仕事の将来を考え、入社を決めました。
串カツ田中に就職後は、組織づくりに関わる様々な仕事に携わりました。まだ管理体制や経理、社内規程などが整っていなかったため、会社を上場させるための体制も整えました。
CFOから代表取締役社長CEOに就任したのも、貫からの提案でした。「300店舗まで会社を広げられた今、目標の1000店舗まで成長させるには、経営や金融の専門的な知識が必要だから坂本さんに任せたい」と言っていただけたのです。

■目指せ1000店舗。串カツを日本の文化にする。

串カツ田中は、早い段階からフランチャイズ展開に力を入れています。まだ2、3店舗の時、模倣店が出てきたことがあったのですが、そこの串カツを食べてみると美味しくありませんでした。メジャーな食べ物なら1店舗の味でイメージはつきませんが、串カツのような珍しい食べ物ならば、初めての1店舗の味が美味しくなければそのままのイメージがついてしまいます。串カツを寿司やラーメンに並ぶ日本の文化にしたい私たちにとっては非常にまずい状況です。当時はまだ資金もなく、打開策として始めたのがフランチャイズでした。店舗数を伸ばしていくうちに地元に根付いた経営が大切になることに気がつき、現在でも地方はフランチャイズに任せています。
店舗の場所にも工夫があります。大通りに面していたり、一階に限定していたり、目につく場所にあるので、店舗を展開するほど広告になります。
目標は1000店舗ですが、質を落とさずにどう増やしていけるかが今後の課題になると思います。
そのほか、串カツを多くの人に広めるために様々な取り組みをしています。
そのひとつが、コラボ商品の開発です。直近だとアパホテルさんが出している「アパ社長カレー」や、エースコックさんの「スーパーカップ」とコラボしました。評判や売り上げもよく、多くの人に知っていただけたきっかけを作れたと思います。
そして、昔から力を入れているのは子どもたちに串カツ文化を知ってもらうことです。居酒屋は子ども連れで入りにくい環境ですが、串カツは世代を跨いで人気になってもらいたい。そのため、居酒屋では珍しいキッズメニューの用意や、こども本気じゃんけん(じゃんけんに勝つとドリンク無料)をはじめとした様々なお子様サービス、2018年からの禁煙化など、安全に楽しんでいただける環境を工夫しています。

■串カツ田中以外のブランドも拡大中

我が社では串カツ田中以外にも、鳥と卵の専門店「鳥玉」やタレ焼き肉と包み野菜の専門店「焼肉くるとん싸다」、海外進出を果たしたカツサンド専門店「TANAKA」などを運営しています。
コロナ禍で飲食業界は大打撃を受けました。そのような不測の事態に負けない会社を作るため、串カツ田中に次ぐ第二のブランドとして誕生したのが鳥玉と焼肉くるとんです。
また、以前から海外にも目を向けていて、どのような形でチェーン展開したらよいかは考えていました。お酒メインの居酒屋では文化的な違いもあり、海外では受け入れられにくく多店舗展開しづらい。そこで、アルコールを使わない新たな業態として「TANAKA」を出店しました。
今年中にアメリカにあと2店舗オープンする予定です。

■学生へのメッセージ

親に感謝することを忘れないでください。勉強するのにもたくさんのお金がかかります。今までお世話になったからには、親や周りの環境のせいにする人にはなってほしくないと思っています。感謝の気持ちを忘れず責任感を身につけながら、色々なことに取り組んでいってください。応援しています!

学生新聞オンライン取材2023年6月22日 慶應義塾大学2年 加藤心渚

中央大学2年 前田蓮峰 / 慶應義塾大学大学院2年 賀彦嘉 / 専修大学4年 竹村結
上智大学2年 網江ひなた / 國學院大学3年 島田大輝 / 慶應義塾大学2年 加藤心渚

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