駆け抜けて軽トラ
性格も性別も体形も正反対のコンビが見つけた、お笑い業界の魅力とは
■プロフィール
2019年12月CX系列『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』にて、「昭和ポルノの世界」シリーズで優勝し、2020年1月NTV系列『ぐるナイ~おもしろ荘~』に出演し、一躍話題となる。
Youtubeにコンビとして「駆け抜けて軽トラチャンネル」、餅田1人で「餅田コシヒカリチャンネル」を更新中。また、ラジオアプリGERA「グロリアス性春」(毎週木曜20時更新)に出演中。
小学校時代から芸人を夢見た小野島と、「最初は女優を目指そうと思っていて、お笑いは全然興味がなかった」と語る餅田。そんな真逆の2人で結成されたのが、お笑いコンビ「駆け抜けて軽トラ」。彼らがどのようなきっかけの中で出会い、地上波、舞台上、はたまたYouTube内の幅広い場面で活躍しコントをしているのか。いま注目の目が語る2人のお笑いにかける熱い思いを伺った。
■学生時代はどのような過ごし方をしていましたか。
小野島:物心がついた時、とんねるずさんやウッチャンナンチャンさんをテレビで見て、床を叩きながら笑っている父親の姿に目を引かれ、芸人という職業に興味を持ちました。小学校時代は、とてもおチャラけていて、ひとつのことに集中できない人間でした。2年生の時には、当時の担任がそんな自分に皮肉も込めて「吉本興業に入れ」と言っていたのを覚えています。僕はそんな言葉を真に受けて、「吉本興業?響きもかっこいいし、行ってみたいな」と思ったのを覚えています。そこから、自分の夢は芸人で、卒業文集にも「夢は芸人です」と書いていたほど。大学時代は他大のお笑いサークルに入り、2か月に一度のお笑いライブに出るというような生活でした。そして、大学2年生時に、松竹芸能にスカウトをしてもらい、3年生になると事務所のライブなどにも出させてもらうようになりました。
餅田:私は高校時代、全国大会に行くような合唱部に入っていて、部活中心の生活でした。勉強はめっぽう苦手でしたね(笑)。高校1年生の最初からカンニングして停学になるような問題児でもあったので、大学進学は考えていませんでした。当時、急に女優になりたいと思ったこともあり、高校卒業後は演技が学べる専門学校に通いました。学校では劇団四季に入りたいと思い、歌とダンス含めミュージカルを頑張っていました。しかし、2年生の時に担当の先生に「太っている人は劇団四季に入れないんだよ」と伝えられ、進路に困っていた際、今の松竹芸能に声をかけてもらい芸人の道に進むことにしました。
■お笑いというものをどう考えていますか?
小野島:僕の中ではお笑いは魅力的なものであり、昔からぶれない存在でした。古風な考えで行くとアウトサイダーのように思われる職業なので、大学時代はどう親に切り出そうかとも悩んでいました。最初はサークル感覚の遊びでやっているくらいだからと伝えていて、あまり本気でお笑いを目指しているとは見せていませんでした。そんな時、タイミングよく今の事務所に声を掛けられ、段階を踏んで許しを得ることができました。両親の存在は、僕にとっては大きくて、その後、25歳ごろに悩んでいたとき、普段は僕にあまり干渉してこない父親から、「今更辞めたいとか言わせねーよ」と言われたときに、お笑いを真剣に頑張らないとな、と思いました。
餅田:実は、お笑いに対しては今の相方と会うまで興味がなかったです。一昨年は「M-1」よりも、テレビで高橋大輔選手のフィギュアスケートを見ていました(笑)。お笑い芸人という仕事をする上では、渡辺直美さんやイモトアヤコさんのように女優業をされる方もいたので、「別にやってもいいかな」くらいの感覚でした。
意識が変わったのは小野島さんが「私の中でのマイナスな部分は、お笑いの中で許されるもの」と伝えてくれたことが大きかったと思います。一般的には「ヤバイ人間」である私でも、お笑いの世界ではそれを面白いと思ってもらえる。女優を目指すと足を引っ張るポイントでしかない自分のこのアンバランスな体型が、お笑いをしていく上では武器になる。今は改めてお笑いという職業が自分に合っているなと感じる日々です。
■お二方が組まれたきっかけは?
小野島:事務所の勧めですね。自分は、ちょうど前の相方が引退した矢先で、ピンの楽しさを感じていたばかりだったのですが、大人が会議で決めたことだから断れないなという感じで餅田とコンビを組むことを承諾しました。餅田の印象はネタもやらず地方番組に出ているだけの人で、すぐやめるのだろうなと思っていました。
餅田:私がネタを書けない人間だったのもあって、ネタを書くことができる小野島さんを勧められました。最初は「お疲れ様でした」と挨拶をするくらいの関係性だったんですけどね。私は逆に小野島さんは事務所ライブでは1位を獲れるけど、テレビでは評価されない人って感じました。
小野島:まぁ、お互いの印象はよくなかったですね(笑)。
お二人共の話を聞いていて、とても仲がいいように感じました!
餅田:私が切符の買い方もわからないような人間なので、小野島さんは私の中で何でも教えてくれるお世話係のような存在です。
小野島:コンビというものはちゃんと話していく必要があると考えているので仲良くしていくべきとは考えています。
■仕事でのやりがいはどんな時に感じますか。
餅田:自分が子供のころから見ていた番組に出られたり、出演者に会えたりしたときには言葉にできない興奮を感じます。明石家さんまさんに会った時はオーラが、すごくて泣いてしまいました。ロケの中には、普通の旅行みたいな内容もあって温泉に入ったり、おいしいものばかり食べさせてもらったり、「こんな楽しいことで、お金をもらっていいのかな?」と感じる時もあります。楽しいことばかりではなくて、滝行などの体当たりロケもありました。同世代のOLだったら出来ないような経験も出来るので、それも逆にやりがいに感じます。
小野島:1年に数回あるか、ないかくらいなんですが、これどうかなっていう自信があるわけでもないネタがどーんとウケた時ですね。自分たちよりも面白い人たちがいる中でも、予想もしないくらいウケたときは、何とも言えない感覚というか……。神秘的な気持ちになります。
■お笑いをやっていく上での苦労はありますか。
餅田:私はボケとツッコミの役回りがわからないくらいお笑いの知識がないので、まず学ばなければいけないのが大変です。また、バラエティ番組の現場は共演者たちの勢いに圧倒されてしまい、怖くて一歩踏み出す勇気が出ないのがつらいです。
小野島:今が一番大変です。コンビとして出た際にも、インパクトのある餅田ばかりが切り取られてしまって、どうしたら僕を忘れ去らないでもらえるかを常に考えています。
■今後の夢はありますか。
小野島:「これぞ駆け抜けて軽トラだ!」というネタが欲しいです。今はYouTubeやラジオでコンビの仕事ができていますが、これをテレビでもやれたらなという風に思っています。
餅田:2人揃ってコンビでゴールデン番組に出たいですし、コーナー1枠でもレギュラーを持ちたいです。お笑いを頑張ると決めた分、賞レースでも結果を残せたらなと思っています。
■message
餅田:「将来の夢がない」という大学生が、最近多いと聞きます。そんな人こそ、自分が楽しいと思うことを自分の意思でやってほしいと思います。あと、友達は大事にしてください。
小野島:自分がやりたいと思うことは、周りが何と言おうとやったほうがいいと思います。それは自分ひとりの単独行動でいい。友達がいないから寂しいと思わなくて大丈夫。焦って群れたやつから失敗するので焦らないでください。
学生新聞オンライン2021年3月2日取材 埼玉大学 1年 成田裕樹
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