NVIDIA 日本代表 大崎真孝
AIがつなぐ世界で、日本の強みを未来の力に

NVIDIA 日本代表 大崎真孝 (おおさき まさたか)
■プロフィール
1991年に日本テキサス・インスツルメンツ株式会社に入社。大阪でエンジニアと営業を経験後、米国本社へ移動。ビジネスディベロップメントを担当し、20年以上幅広い製品に携わりながら、様々なマネジメント職に従事。2014年、NVIDIAに入社。市場やエコシステムの拡大を牽引し、日本でのAIコンピューティングの普及に注力。首都大学東京で経営学修士号(MBA)を取得している。
アクセラレーテッド コンピューティングの世界的なリーダーであるNVIDIA。その日本代表の大崎真孝氏は、「AIによってすべてがつながれば、日本のものづくりやサービスには大きな可能性がある」と語る。エンジニアから営業、様々なご自身の経験を振り返りながら、これからのAI時代を生きる学生に「様々なことに興味を持ち、後悔しない挑戦」を呼びかけた。
学生時代、私は、皆さんのように立派な学生ではありませんでした。学生時代は仕事のこともあまり考えていなかったし、勉強もそれほどしていません。やっていたことといえば、アルバイトと波乗りくらいです。当時はバブル時代で、その雰囲気を味わいながら、その時を楽しんでいました。
近畿大学の原子力工学科に進んだのは、当時、それが最先端だと思ったからです。今後はエネルギーが重要になると考えていました。ただ、大学に入ってから熱中したわけではありません。「学生の時にもっと勉強したらよかった」という後悔は、社会人になってからも残っていました。そこで40歳になってから東京都立大学の大学院に入りました。
最初の就職先は、半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツでした。アメリカ企業らしいパーティーのような雰囲気と、フレンドリーな人事の方に惹かれたのがきっかけでした。23年間働いた後、2014年にNVIDIAへ入りました。40代半ばで「このまま60歳まで同じ会社にいるのか」と考えていた時に同社から声がかかったのです。そこで、ジェンスン・フアンCEOと話し、彼に魅了されたことも大きかったです。人生は一度しかない。後から後悔したくないと思い、家族にも相談して挑戦しました。
■半導体から「システム」へ
もともとNVIDIAはPCゲームなどのグラフィックスのための半導体、GPU (Graphics Processing Unit)を開発していましたが、その優れた計算能力が、科学技術計算の分野でも活用されるようになり、2008年には東京工業大学のスーパーコンピューター「TSUBAME」にNVIDIAのGPUが世界で初めてスーパーコンピューターに採用されました。その後、2014年に私が入社して間もなくAIの波が来ました。GPUを始めとするNVIDIAの技術が、画像認識、自動運転、医用画像診断など、さまざまな分野で使われるようになったのです。そこでNVIDIAはAIに大きく舵を切り、日本法人も急速に拡大しました。
NVIDIAは、GPUなどの半導体だけでなく、ソフトウェア、サーバー、冷却装置、ストレージまで含めたシステム全体を提案しています。自動運転、創薬、医用画像、ロボットなど、それぞれの産業に精通した専門家がいるのも特徴です。製品を売り込むのではなく、お客様が自分たちでシステムをつくるためのツールを提供し、長い時間をかけて開発者のエコシステムを育ててきました。
日本では、ファナック、安川電機、川崎重工などのロボット企業とも協業しています。特に力を入れているのが「フィジカルAI」です。AIを「脳」、ロボットを「身体」と考えると分かりやすいでしょう。AIがセンサーから情報を受け取り、考えて身体を動かすことで、ロボットが自律的に判断できるようになります。自動運転もその一つです。
■専門だけに閉じこもらず、世界を「楽しむ」人が伸びる
AI時代に活躍する人材について、私が重要だと思うのは、テクノロジーへの感度です。日本だけでなく、世界でどんな産業やイノベーションが起きているのかに敏感になる。そして、一つの専門だけに入り込まず、全体を俯瞰して見られる柔軟性を持つことです。
AIは、ゲーム、車、医療、大学、スタートアップなど、これまで分かれていた世界をつないでいきます。そうした変化を「楽しい」と思える人が強い。楽しいからこそ、いろいろなことに敏感になれるのだと思います。
NVIDIAでは、車、医用画像、ロボット、大学、スーパーコンピューターなど、それぞれの分野のエキスパートが働いています。日本法人は中途採用が中心で、その業界に精通している人や、技術・設計・開発に深く携わってきた人を採用しています。
これからは、専門性を持ちながら、その外側にも目を向けてほしい。AIがさまざまな選択肢を出してくれるからこそ、最後に何を組み合わせ、何を実現するのかを決める人間の発想力が重要になります。
■日本の強みをAIにつなぎ、新しい社会をつくる
私は、NVIDIAがアメリカの会社だからアメリカのために仕事をしているとは考えていません。日本の人たち、日本の産業、日本のために仕事をする。それが日本代表としての私たちの役割です。
AIに関していえば、日本はアメリカや中国、ヨーロッパ、インドなどに遅れています。ただ、日本はこれまでハードウェアやサービス分野に強みがあり、長い時間をかけて技術を磨いてきたクラフトマンシップなどがあります。そこに最先端のAIやソフトウェアを組み合わせれば、日本らしい安全性や精度の高いAIを生み出せるはずです。
実はNVIDIAの歴史にも、日本との深いつながりがあります。PCゲームで最初にNVIDIAを採用したのは日本のゲームメーカーのセガです。スーパーコンピューターでは東京工業大学の「TSUBAME」があり、日本のさまざまな産業が早い段階から技術を採用してきました。そのためNVIDIAでは、日本が一つの独立した地域として位置づけられています。
■大学生へのメッセージ
皆さんには後悔しないような挑戦をしてほしいです。
社会に出ると、「今日このお客さんに電話するか、しないか」といった小さな判断がたくさんあります。私はそのたびに、「今これをしなかったら、後から後悔するか」と考えてきました。
悩むことも、苦しむこともあるでしょう。でも、一つ一つ乗り越えていけば、その先にまた次の景色が見えてきます。小さな判断も大きな判断も大切にして、一歩ずつ前に進んでほしい。
これから世界はものすごく変わります。AIによって、これまでできなかったことにも挑戦できるようになるでしょう。だからこそ、「何かやってみたい」という冒険心を持ってほしい。皆さん一人一人に、これから大きな可能性があると思っています。
学生新聞オンライン2026年9月11日取材 法政大学3年 佐藤海都

法政大学1年 山田賢彦/情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/法政大学3年 佐藤海都/日本大学2年 原田達司/早稲田大学3年 中澤京平


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