株式会社モバイルファクトリー 代表取締役 宮嶌 裕二

不遇な学生時代からの逆転劇、会社設立までの歩みに迫る

株式会社モバイルファクトリー 代表取締役
宮嶌 裕二(みやじま ゆうじ)

プロフィール

宮嶌 裕二(みやじま ゆうじ)
1995年に中央大学卒業後、ソフトバンク株式会社へ入社。
株式会社サイバーエージェントに転職し、事業を立ち上げた後、2001年にモバイルファクトリーを設立。位置情報を使って日本全国約9,000の駅を奪い合う「ステーションメモリーズ!」などのゲームや、月額制で楽曲を提供するサービスを展開。2018年からは、ブロックチェーン技術を用いたサービスの開発をスタートさせ、エンタメのアップデートを目指す。

モバイルファクトリーは、創業20年。時代に合わせてプロダクトを変化させ、常に新たな価値を生み出すためにチャレンジし続けている。だが、「起業のきっかけは?」そう聞くと、フィクション映画を語るかのように10代の経験をお話ししてくれた宮嶌氏。誰もが驚く起業までの道のり、そして熱い想いを語ってもらった。

■不遇な学生時代、のちの決断

実は私が18歳の時、実家の事業が倒産して。当時は連日取り立て屋が来る、まるでドラマのような生活を送っていました。なんとか親戚から援助をもらい、大学進学ができましたが、家からの仕送りはゼロ。自分で生活費を稼ぐ必要があったため、当時、浦和にあった栃木の県人寮に住み、アルバイトを週3〜5日はしていました。このような日常の中で、私はこう思ったのです。「この世の中窮地に立たされると救いがない、力が欲しい」と。そして、その力とはお金だ、と思ったのです。元々ハートは強い方でしたが、この思いが一気に自身の原動力となりました。こうしてお金持ちに、つまり起業家になることを強く決意し、就活をスタート。企業はすべて、起業家になりやすい証券会社や商社を中心に受けました。そして起業家として孫正義さんにあこがれていたこともあり、当時はまだ上場していなかったソフトバンクに入社を決めました。

■起業までの道のり

当時のソフトバンクは現在と事業内容が異なります。私が行っていたのは、BtoBの営業としてソフトウェアやハードウェアを、大手システムインテグレーターに提案販売することでした。起業家になることが夢だったので、猛烈に働きながら起業の準備も同時進行でしていました。ソフトバンクに5年勤務した頃、サイバーエージェント初期メンバーの1人から、社長の藤田さんを紹介してもらって、自分がやろうと考えていたサービスを話す機会があったんです。詳細を話したところ、「ウチでやらないか」とお声がけいただいて。1人でやるにはボトルネックが多いビジネスでもあったので、1999年にサイバーエージェントに入社することにしました。この頃はまだ、サイバーエージェントが社員10人程度の規模の時代でした。サイバーエージェントでは広告代理販売、メディア開発に従事しました。しかし2年間勤務後、サイバーエージェント内で立ち上げたオプトインメール事業が、GMO社に売却されることになったのです。今後どうするかとても迷いましたが、30歳になっていたこともあり、独立を決意しました。

■モバイルゲーム事業の背景

こうして2001年に設立されたのが、今の会社となります。モバイルファクトリーは、最初着メロのシステムをレンタルするという事業を行なっていました。それから、他社でゲームのプラットフォームがオープン化していく情勢を見て、2009年頃に我々もゲームでユーザーを増やしていこうと、ゲーム事業をスタートさせました。当時のモバイルゲームは多くがWeb版だったので、よりユーザー体験が快適なゲームを開発しようと思いました。ただ、社員のアイディアを元にゲームを何本も作りましたが、どれもヒットせず。2013年まで、ゲーム事業に関してはずっと赤字続きでした。しかし、数字を見るとたくさん開発したゲームの中でも唯一、継続率が高いゲームがあったのです。それが、「位置情報連動型ゲーム」でした。今では多くのゲームで利用されていますが、当時はニッチだった位置ゲームに可能性を感じ、使える全てのリソースを注ぎました。すると売り上げは伸び、2015年には上場が決まったのです。数字を分析し投資するべき事業を選択して、一点に集中していく。これは、私がとても大切にしている考え方です。やはり、使えるリソースは限られているので力をかけていく場所は絞った方が良いと思います。
また、他社との差別化と聞かれると、それはジャンルそのものだと考えます。実際モバイルゲームは大量にありますが、電車に乗りながら位置情報で楽しむ、というジャンルのゲームはほとんど存在しません。電車で遊ぶというジャンル内では、モバイルファクトリーのゲームは国内最大規模のユーザーが遊んでくれています。

■時代に合った「楽しい」を提供

私はモバイルファクトリーをゲームの会社だと思ってはいません。当社は、人をハッピーにすること、楽しませることをミッションとして掲げている会社です。つまり、楽しませることがゴールなので、良い意味でプロダクトが何であるかにこだわりはなし。実際にモバイルファクトリーは、創業から3回事業を変化させてきました。着メロから始まり、広告事業、ゲーム事業、そして現在はブロックチェーンを使ったエンタメをアップデートする事業にもチャレンジしています。このように、時代時代に合わせて事業内容も形を変えている。このようなことを踏まえ、私はまず、人を楽しませることが好きな学生を採用したいです。そしてもう一つは、変化に柔軟である学生。手段にこだわらず、その時代に最もマッチした「楽しい」を提供できる方法を考え、柔軟に選択できる人が弊社には合っています。新型コロナウイルスの影響で変化が激しい時代ですが、変化をポジティブに捉えて、主体的に突き進んでいける方を採用したいですね。

■モバイルファクトリーのこれからの歩み

今後の日本は、人口減少が懸念されていますね。しかし情報技術、科学技術はますます発展し、仕事における生産性は上がっていくでしょう。そうなると、人々は余暇を楽しむ余裕が出てくるため、エンタメはより求められる存在になると思います。その中でも、比較的低単価で楽しめるモバイルゲームなど、我々のコンテンツは需要が高いと感じます。
今の私の1番の願いは、学生時代に考えていた「お金」を手に入れることではありません。モバイルファクトリーのサービスを通してこの世の中の人にもっと便利に、楽しく、ハッピーになってもらうこと。1億人超のユーザーに使ってもらえるようなサービスをどんどん生み出したいです。

■大学生へのメッセージ

まず一言、言いたいのは「日本に生まれた、それだけでとても幸せなことだ」ということです。他の国に行ってみると、生き方を縛られる国が多い。でもそれに比べて、日本はどんな生き方でもある程度多様性を許容される。そして社会に出れば選択肢が無数にあります。挑戦する生き方、安定を目指す生き方。親の期待に沿う生き方、自分の意思で動く生き方。この国には、選択できる自由があります。今を不安がるのではなく、あまり考えすぎずに、多様性あふれるこの世の中を楽しんでほしいです。

学生新聞WEB2020年12月8日取材

  慶應義塾大学1年 伊東美優

慶應義塾大学1年 伊東美優 / 駒澤大学4年 如意太一

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