テリー伊藤 コラムVol.21 ウサギとカメ貴方はどちら
慶應義塾長の伊藤公平氏が読売新聞のインタビューで、日米の大きく異なる価値観をユニークな着眼点で答えている。イソップ童話『ウサギとカメ』に於いて、日本では昼寝して怠けたウサギに比べ、たゆまずに進んだカメが主役とされている。「才能ではなく努力で勝つ」という話。一方米国では「なぜ足の速いウサギが遅いカメに負けたのか」「相手を見くびるな」という視点で語られている。つまりウサギが主役なのです。
欧米の競争社会は、優秀なウサギが主役となり国や経済を引っ張り、伸びる子は徹底的に伸ばし格差は気にしない。優秀なウサギが集まる環境整備が優先される。伊藤氏は競争が悪いと言っている訳では無く、日本が追いつこうとする欧米の競争社会は「日本になじむのか?」という疑問を呈したのだ。「慶応大学には多くの留学生が学んでいる。当初は貪欲な実力主義と思われた学生が、日本人学生と交わる度に学生証の受け取り方や買い物の仕方を教わり、順番を守るようになった。さらに感化され、後輩の面倒を見たり、日本人の英語論文のアドバイスも。空気を読んで和を保つ文化を身につけながら勉学に励むようになる。日本スタイルは『和を以て貴しとなす』(わをもってとうとしとなす)の精神、コツコツ努力する“カメ”の姿勢と感じました。一歩一歩階段を上り、気が付いたら誰よりも高い頂に立っていた“カメ”的な美学は日本の真骨頂。“ウサギ”が成功例とは限らないのです。」と語っている。
さすが伊藤慶応義塾長、将来を見据えた洞察力が素晴らしい。ウサギの視点で『ウサギとカメ』の競走を考えた事は今まで無かった。しかしこれからの実社会で予想される出来事は、カメをなめて不覚にも寝てしまったウサギが、負けを教訓に“反省したウサギ”となってレースに挑んできたら、我が日本カメ軍団は勝機を見出せるのか!
突然ですが私、いつも「不自由の中の奇跡」を考えています。文字通り、規制や不利な条件、環境のおかげで新しい文化や発明が生まれ、そこから日本は多くの産業を生み出した。小さ過ぎると酷評されていたが温暖化対策で見直さる軽自動車、短かいと言われた制服のスカート丈から流行した女子高校生のコギャル・ルーズソックス、暗い人と言われていたのに世界の主役となるオタク文化やアニメ・コスプレ。土地が広ければ生まれなかった回転寿司、カラオケBOX等。今やワールドワイドに愛されている日本の大発明だ。これらの成功のキーワードは「狭い」「ゴチャゴチャ」「何か変」、でも「楽しい」「面白い」。
そうなんです、世界が驚く新たな成功ビジネスはこんなところに隠れているかも。勿論、見つかったら後は“カメ”になって真面目に地道に頑張りましょう。
テリー伊藤(演出家)
1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ」
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry
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