テリー伊藤 コラムVol.10 面白い出合い、一日何回ありますか

「可愛い」この言葉、誰もが幼い頃から頻繫に使う言葉ですよね。赤ちゃんにとっては生まれて最初に耳にする言葉かもしれない。「可愛い赤ちゃんの寝顔」「野に咲く花は可愛い」「アイドルの踊りは可愛い」「パンダのしぐさが可愛い」などが定番の活用法だが、ここ数十年「可愛い」の解釈が格段に広がりをみせている。特に女子高生は凄まじく「パンチパーマのお兄さんの巻き具合が可愛い」「殴られたプロレスラーの倒れ方が可愛い」「赤提灯で飲んだくれて一升瓶を枕にして寝ているおっさんが可愛い」など、解釈範囲が拡大している。そこには彼女達のボキャブラリー不足が要因として考えられるが、言葉なんていつも時代と添い寝している訳なので、楽しんだ方が面白い!

「面白い」と言えば…先日女子高で1時間半の講演をした際、後日生徒の皆さんから感想文を送っていただいたのだが、その中に「テリーさんの講演で至る所に面白いの言葉が出てきて興味深かった。」と。指摘された通り、確かに私、日頃から人生を面白い視線で見ることにしている。それも、日常を通り越し人生過酷になればなるほど面白思考が回転するのだ。

例えば、混雑を回避しようと裏道を走ったら同じ考えのドライバーで大混雑、にっちもさっちも行かなくなり余計に時間が掛かった。これって面白い。コインパーキングで料金を払った後、隣の車の番号と間違えたことに気付く。間抜けさが面白い。2時間掛けてやっと到着したお目当てのレストラン、本日臨時休業の看板。寝ずに考えた番組企画書を提出、すべて採用されず薄笑の帰還。本当にガックリだが、そんな自分を傍から見たらきっと面白いはず!街を普通に歩いていただけなのに転んで顎から出血、すぐに止まると思っていたが全く止まらず、あっという間にワイシャツが血だらけ。慌ててドラックストアに飛び込むとお店が大騒ぎに。あまりの痛さに仕事帰りに病院に行くと、何と7針縫うことに。薬を待つ廊下でしみじみと、今日の俺ってなんだったのか?普通に歩いていただけなのに。改めて自分に問う。疲れていたのか、他の事をボーっと考えていたのか、誰かが呪いを掛けているのか、答えは出ない。まぁいいか、1週間すれば皆に笑い話として聞いて貰える。これっておいしいかも。何年もネタとして使える。面白いじゃないか!そうか、私の面白いは後日皆に楽しんで貰える。

第一、他人は私の事など大して気にしていないし思ってもいない。それが良いんです。だから人生面白いのでは!

テリー伊藤(演出家)

1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry

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