テリー伊藤 コラムVol.36 大谷選手は余韻すら与えてくれない

改めて言うまでもなく、今期の大谷選手の活躍は想像を絶する凄さだ。今シーズンが始まる前、彼には二つの大きなアクシデントがあった。昨年末に肘の治療の為トミー・ジョン手術を受けたこと。そして、長年苦楽を共にした水原通訳の裏切りの違法賭博事件がおきたこと。連日のマスコミ報道の状況下、私自身内心「満足に野球に打ち込む事が出来るのか。昨シーズン程の成績は望めないのでは。」と…。しかしそれは完全に杞憂に終わった。世界中の野球ファンが息を吞むほどの活躍はとどまるところを知らず、それどころか9月に入ると勢いは加速し、50&50の記録達成後も異次元に進化、覚醒してゆく。

50&50達成までは、少しはプレッシャーがあるのかと感じていたが、気配すら見せなかった。ファンとしては大谷選手の大記録達成の余韻に浸りたかったのだが、彼はそれすら許さなかった。与えてくれたのは、驚きと感動、何より日本人としての誇り、そして不世出のスーパースター大谷翔平と同時期に生き、目撃したという現実ではないか。

シーズンが終わり最高の成績を残しても大谷の野球人としての旅は未だ途中。今大谷翔平が何を見つめているのか。現ソフトバンク王貞治球団会長が大谷選手について自らの現役時代を振り返りながら「彼のように幅広く深く考えていなかった。アメリカは初めて当たるピッチャーと勝負する事が多い。だから日本で打つより難しい。技術だけでは無く自分が考えながら相手と勝負しないと良い結果が出ない。」と語っている。ホームランを打つ為に必要なものとして「バットを強く振れる体」と即答している。アメリカンリーグ・エンゼルスからナショナルリーグ・ドジャースに入団した大谷選手の、今シーズン放った本塁打の相手投手の殆どが初対面だった。如何に事前の予想研究をしていたのか。

来シーズンは投手復帰、31歳となりマウンドに立つ。ファンは最も活躍した投手に贈られる「サイ・ヤング賞」獲得を願っているが、容易なことではない。病み上がりの肘が心配になる。大谷選手はかつて「投手生命は決して長くない。投げられる期間は大切にしたい。」と語り、来シーズン不退転の覚悟で挑む決意が伝わった。心配性の私など吹き飛ばし、再び想像を超える活躍を見せてくれるのか。

今は、余韻に慕っている時ではない。来期に向けスーパースターが何を考えどう行動するか、一挙手一投足目が離せない。大谷を知る事は自分自身の人生を高める事になるのではないか。

2024年9月24日

大谷選手の夢って何?

またドジャース大谷翔平選手の事を考えている。50&50達成出来るのか、気になって仕方が無い。と言うか、その事で頭の中が一杯で仕事が手につかない。試合で大谷選手がホームランを打ってくれれば満足なのだが、盗塁は出来なかったのか、盗塁が出来た試合でもホームランは出なかったのか、と更なる期待をしてしまう。ホームランを打つだけでも、盗塁をするだけでも見事なのに、ファンは両方を期待する。これってハンバーグとエビフライが同じお皿に乗っている感じ。元来ハンバーグ本体だけでも美味しいのに、ある時エビフライが加わると2倍の楽しみに。そうなるとハンバーグ単体だとちょっと物足りない感じになってくる。

そんな状況下、大谷の愛犬「デコピン」の登場!びっくり!ワイドショー番組では大谷選手のホームランよりデコピンとの始球式に時間を割いている。確かにあの始球式は凄すぎた。マウンドにデコピンを残し、大谷選手がキャッチャーの位置に移動。いくら事前に練習していても、大観衆の中、普通なら心細くなって後を追って歩き出してもおかしく無いのに、健気にマウンドで待つ。そして合図と共にボールをくわえて一目散にキャッチャー大谷の元に。そしてハイタッチ!この瞬間、世界で一番有名なワンちゃんになってしまった。今まで野球にあまり興味の無かったワンちゃん好きの皆さんにも大注目となる。これってハンバーグ、エビフライに目玉焼きが乗った最強メニューでは。例えが貧弱ですみません。

ファンの大谷選手への夢は分かった。では大谷の本当の夢とは。ドジャースに入団する会見で「僕が後何年、現役選手でいられるかわかりませんが、だからこそ勝つことを最優先にしてチームを選んだのも理由の一つです。」と発言している。そうなんです、50&50を達成して球史に残る個人的な大記録より、彼はレギュラーシーズンを勝ち抜きその先にあるワールドシリーズ優勝、チームメイトと美酒を浴びることに照準を合わせている。

と、原稿を打っている間に大谷3盗塁の報道が…。困った、大谷の記録達成のスピードに原稿が追いつかない。印刷までのタイムラグも。これって私だけではない。世界中のマスコミが大谷選手の活躍に振り回されているのでは。こんな嬉しい事はない。時差ボケした記事も振り返れば改めて彼の凄さを再確認出来る。

ところで、大谷選手にはなれないが、デコピンと同じ犬種を飼う事はできるかも。いや、もう既に大人気のなのでドッグショップでは無理かな、欲しいな、無理かな。

2024年9月3日

テリー伊藤(演出家)

1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry

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