株式会社HIKKY 代表取締役CEO 舟越靖 / CVO(Chief Virtual Officer) 動く城のフィオ

バーチャルの可能性を追いかけて 現実世界にバーチャルを

年に2回、バーチャルの世界でリアル商品や3Dアイテムなどの売り買いができる「バーチャルマーケット」。数百~数千人規模の一般クリエイターによる3Dモデルの展示販売や、過去類を見ない大手企業やアーティストの参加もあり、期間中は世界中から120万人以上が訪れ熱い盛り上がりを見せている。いわば現実とバーチャルの良いとこ取りの空間である。そんな夢のような世界を提供している株式会社HIKKY・CEOの舟越さんと、同社CVOの動く城のフィオさんのお二人に話を伺った。

<株式会社HIKKY 代表取締役CEO 舟越靖(ふなこしやすし)>

■プロフィール


大手通信会社退職後、⾃身の夢だったクリエイティブ分野へ進出。2008年からクリエイターの潜在力を既存市場以外で活かす挑戦を試みる。あらゆるシーンで成果を得て、ハードウェアからゲーム・アニメ・映画など様々なコンテンツ制作・広告サービス、サービス開発を手掛ける法人を複数社立ち上げた。2018年メタバース事業に特化した「株式会社HIKKY」を設立。

■“動く城のフィオ”との出会いで、バーチャル世界へ参入

学生時代、意識して作っていたのは学校外のネットワークです。親が事業をやっていたため、中学生の頃から経営には触れていました。そこで働き方やお給料の話を聞いていたので、経営においてのメリットやデメリットなどを感覚的に覚えていきました。在学中からお花屋さんやアルバイト斡旋など複数の事業を立ち上げどれも上手くいきました、そこから一度全てを畳んで勉強のために大手通信会社へ就職。しばらくして退職後に複数のクリエイティブにまつわる会社を立ち上げることになりました。そのうちの一つが今のHIKKYです。
バーチャル関係の仕事を始めるにあたってのとまどいは、フィオちゃん(動く城のフィオ ※以下 フィオ)が払拭してくれました。正直、VRビジネスは難しいです。しかし、フィオは「バーチャル世界で生きていきたい」という強い希望と施策を持っていました。その本気度をフィオに感じたので、自分が学生時代や会社を経営していて培った得意分野を生かして、バーチャル世界の可能性を最大化させつつ彼の夢と僕のやりたい事も実現できると考えました。

■「バーチャルマーケット」にある商品や作品が輝くように

我々は「バーチャルマーケット」という、メタバース(仮想空間)上のマーケットを作っています。
元々「バーチャルマーケット」は、アバターなどの3Dモデルを制作している一般のクリエイターさんのためのイベントとして始めましたが、クリエイターさんの活躍をみて、興味を持ってくれる企業さんが増えました。クリエイターさんと一緒にやってきたからこそ、実現できたことだと思います。
企業からは、バーチャルという新しい手段でのPRやブランディングができることに注目していただきました。バーチャルマーケットでは車、医療、エンターテインメント、ゲーム、音楽、地方自治体や省庁など、様々な業種の企業や団体とコラボをしています。バーチャルの中に様々な業種を持ってくることができたのが、他にはない強みです。新しい取り組みはSNSやメディアで話題になり、評価をもらってから、有難いことにバーチャルマーケットに出展したいという来場者数も増えていきました。
これからもバーチャルマーケットは”行くだけで楽しい夢の国のような場所”を提供したいという想いで開催していければと思っています。 

■バーチャルの可能性を常に追いかけて実現していく人と働きたい

クリエイティブな世界は常に進化しています。バーチャル業界も素晴らしい発展を遂げています。さらにバーチャルの世界や可能性を広げるために、次の挑戦やアクションができる人。そんな人たちと仕事をしていきたいです。

■大学生へのメッセージ

時代がだいぶ変わってきていて、 経済的に日本は斜陽を迎えかけていると感じています。ただ、経済が落ち込んでいる時こそ、商売の考え方を展開すると、非常に有利に立ち回れます。そうした先を見据えている会社を就職先に選ぶ、または自分で起業するのも良いと思います。こんな時代ですけど、希望を持って考え方を変えれば十分に立ち回れる。むしろチャンスはたくさんあるんじゃないかと感じています。

学生新聞オンライン2024年10月30日取材 東洋大学 3年 橋本千咲

<株式会社HIKKY CVO(Chief Virtual Officer) 動く城のフィオ>

■プロフィール


世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット(Vket)」創設者。大手広告代理店やエンターテインメントのベンチャー企業を経て、2018年2月、VR空間に生きることの可能性を見出し、アバター姿での活動を開始。現在はVketの世界観・コンセプト設計などを担うプロデューサーとして活躍中。VR空間での生活圏・経済圏を確立する未来を提唱し、2022年『メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方』を出版。

■学生時代はプロマジシャン!?

大学生の時はプロマジシャンをやっていました。大学のサークルの新歓で財布から火を出している人がいて、「何だあの人!?」と衝撃を受け、その人にマジックを教えてもらいました。それからプロマジシャンに弟子入りをして、大学4年間は、レストランやバー、結婚式などのイベントでマジックを披露していました。マジックは、種がそのままだと楽しんでもらえないので、そこに話術や見せ方、キャラクター性などを組み合わせ、パフォーマンスをつくっていきます。クリエイティブなことを意識してやっていたわけではないのですが、小さい頃から自分で世界観を考えたり、モノづくりをしたりするのが好きでした。昔から楽しんでやっていたことが、現在にまで繋がっているなと感じています。

■直感を信じて飛び込んだバーチャルの世界

6年間勤めたリクルートを退社した後は、大好きなマジックやクリエイティブなことをやりたいなと考え、しばらくはマジックバーの経営に携わりました。しかし、その後、うつ病や対人恐怖症などを併発し、働けなくなるどころか、人の目を見て喋ることも出来なくなってしまいました。ひきこもりの状態が続く中、2018年、VTuberが多く出始め、VRが脚光を浴びるようになりました。それを見たときに「これかも!」という直感がありました。VRは一回被ったことがあるくらいだったのですが、その直感だけを頼りに、イチから勉強を始め、VRの世界に飛び込みました。
バーチャル空間はアバターが相手なので、以前のように社交的にコミュニケーションを取ることが出来ました。VRのユーザーさんやVTuberさんたちを集めて大きな配信企画を作っていくうちに、“バーチャル空間で生きていくこと”を真剣に考えるようになりました。私はバーチャル空間で何かを創ることやアバターの文化を最前線で知ることは得意ですが、一方でビジネス的なことや外に出て人と関わることは出来ません。そういう苦手な部分を助けてくる舟越さんたちのようなパートナーに出会えたことで、自分が思い描いていた世界が実現していきました。

■たくさんのきっかけが生まれる場所 “Vket”

バーチャルマーケット(通称Vket(読み:ブイケット))は、私たちが運営しているバーチャル空間上でのマーケットイベントです。現在は、ソニーや花王、サントリーなど様々な業種の多くの企業が出展するようになりましたが、元々は個人のクリエイターのためのフリーマーケットから始まっています。バーチャル空間は、誰かが何かを作らないと何もないので、まずはクリエイターたちにとって良いきっかけの場でありたいと思っています。Vket では、自分の作った作品を出展する場があるので、「次のVketで、このアバターを出そう!」というひとつの目標を持ってくださる方も多いです。人間は締め切りがあると頑張れるものなので、クリエイターたちにとって良いきっかけになっています。
また、作品を出展することで、Vketに来るユーザーの間にもきっかけが生まれます。インターネットの買い物はおすすめされたものが出てくることが多く、偶然の出会いが少ないです。でも、バーチャル空間なら、デジタルの空間なのにウィンドウショッピングのように見て回って、自分が今まで知らなかったクリエイターの作品や世界観に出会えます。クリエイターやユーザー、Vketに関わる多くの人にとって、“きっかけが生まれ、人生が変わっていく場所”。これがVketの根本的な価値です。そこに価値があるから出展したい人も来場者も増え続けています。実際「Vketで人生が変わった」という人はすごく多い。これからも、そういう場所を作っていきたいと思います。

■大学生へのメッセージ

現在バーチャルを仕事にしている人はごく一部で、まだ遊び・ゲームというイメージだと思います。しかし、今後は、バーチャル空間で暮らして、お給料をもらって年を重ねていくことが当たり前に選択できる社会にしたいと思っています。そして、私はその社会の到来にワクワクしています。大学生の皆さんも、自分が一番ワクワクするものを探して、本気で取り組んでみてください。それは、これからの人生における物事の取り組み方のベースになり、失敗しても成功しても大切な経験になります。今を大切にして、大好きなことだけをひたすらやる4年間にして欲しいなと思います。    

学生新聞オンライン2024年10月30日取材 東洋大学2年 越山凛乃 

中央大学3年 亀井義和喜/東洋大学2年 越山凛乃/東洋大学3年 橋本千咲

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