
株式会社リップス 代表取締役 的場隆光
信じた道に妥協のないカッコいい可能性を創り続ける 株式会社リップス 代表取締役 的場隆光(まとばたかみつ) プロフィール1989年に株式会社フェイズに入社。スタイリストとしての基礎を学んだのち、1999年4月に東京・原宿にヘアサロン「LIPPS(現「LIPPS hair」)」を開業。2000年5月に株式会社リップス(現「株式会社リップスヘアー」)を設立。2008年4月に、メンズコスメ商品の企画・販売、ヘアサロンFC事業を営む株式会社レスプリ(現「株式会社リップス」)を設立し、代表取締役を務める。 「Boys, Be Beautiful!」という経営理念のもと、男性の”カッコいい”を創造し続けてきたリップス。お客様や現場の声を丁寧に拾い、既成概念を覆すヘアスタイルや商品を次々と生み出し、ヘアサロン、コスメブランド、アイブロウサロンを展開。上場を果たしたリップスを支える的場社長の熱い想いを伺いました。 岡山の田舎で育った私は、小さい頃から東京に強い憧れがありました。テレビで見た東京の人のファッションや流行っていたヘアスタイルを目にし、高校2年生で美容師を目指し始めました。高校卒業後、東京の美容専門学校へ進学。卒業後は確かな技術を身につけたカッコいい美容師になりたい一心で、当時多くの雑誌に掲載されていた師匠の店で働くことを志願し、修行の機会を得ることができました。それが契機となり、10年間美容師としての修行を積みました。何をしても続かなかった私ですが、美容師の仕事だけは違いました。ヘアスタイルやトレンドは変化し、お客様も毎日違います。終わりのない仕事だからこそ「もっともっと」と探究心に駆られ、趣味が仕事だと言えるほど10年の修行も楽しく続けることができました。修行後は、原宿に一号店をオープンし、美容師としてのキャリアを本格的にスタートさせました。 ■メンズヘアサロンとしての確立 長年「ファンが多く、必要とされ選ばれる美容師になりたい」という想いを胸にお客様と向き合っていました。そんな中で、2000年ごろから男性誌のヘア特集が増え、掲載するヘアスタイルを担当してほしいという依頼がたくさん舞い込んできました。当時の美容業界では、お客様の大半が女性であるヘアサロンが多くを占めていました。男性がヘアサロンで髪を切ることは、まだ一般的とは言えない時代だったため、男性誌のヘア特集の依頼を断るヘアサロンも少なくありませんでした。私自身も初めは、女性のお客様を中心に担当していましたが、「これからメンズヘアの時代が必ずやってくる」と確信し、時代に先駆けてメンズヘアの研究や作品制作を積極的に始めました。当時、男性のヘアスタイルは、男らしさを全面に出したものが主流でした。そんな中、リップスはミディアムくらいの髪の長さで、どこか女性的な柔らかさやオーラを纏った新しいスタイルを打ち出しました。これが大きな反響を呼び、雑誌を見た男性のお客様が来店されるようになり、徐々に男性比率が高まっていったのです。その後も、中性的なスタイルのニーズを掴み、積極的に打ち出し始めたのですが、ある問題に直面しました。 女性のヘアスタイルとは違い、男性のヘアスタイルを立体的に見せるスタイリング剤がなかったのです。 同時に、技術マニュアルも必要となり、研究と開発を重ねました。 新しいスタイリング剤ができるとカットの技術も上がっていく。 こうしてメンズ中心のヘアサロンとして確立していきました。 やがて、スタッフや店舗が増えていく中で、自然と現場に立つことが難しくなり、気づけば経営へとシフトしていました ■現場から生まれる商品開発の舞台裏 現在は、男性向けの化粧品企画販売とヘアサロンのフランチャイズ運営を行っています。リップスの強みはヘアサロンを基盤としている点にあります。ヘアサロンを運営しているからこそ、私たちは日々お客様と触れ合い、また現場で働く美容師たちの生の声を聞くことができます。ライフスタイルに合わせたヘアスタイルがある中で、劇的な変化ではなく日々少しずつ変化するニーズやトレンドを美容師たちへのヒアリングを重ね、リアルタイムで掴んでいく仕組みが生きています。例えば、ヘアワックス。これは元々業務用として作っていたものをお客様からの「譲って欲しい」という声から始まりました。「プロの人が使いやすいものはお客様も使いやすいはずだ」と業務用と一般販売用の品質を変えず、ヘアワックスの既成概念を壊すべく「持ち歩きたい、愛される、ライフスタイルをくずさないデザイン」をコンセプトに商品開発を進めてきました。自分の信じたことを疑わずにやりたい。世の中にあるものは誰かが作ったもので、それが本当に正しいのかは、自分が試してみないとわからない、と常に考えています。その背景には、どうカットするか、どんなスタイリング剤を使うのか、当社に必要なものは何なのか、という問いかけの地道な積み重ねがありました。 ■男性の“カッコいい”を応援するブランドへ リップスは、男性の“カッコいい”を応援するブランドになることが目標です。商品を提供するだけではなく「これを使えばカッコよくなれる」と信じてもらえる商品を届けたいです。しかし、ヘアサロンだけでは限界があります。私たちはヘアスタイルを作り、そのヘアスタイルが顔を引き立て、雰囲気全体を作っています。そこで、近年力をいれてきたのが、コスメなどの商品の開発です。さらに、「もっとヘアサロンの可能性を世の中に認めてもらいたい」という想いから、上場を目指してきました。雲を掴むような想いで努力を重ねた末、2025年6月にようやく上場を果たしました。一緒に働く仲間に共通して求めるのは、「美容が好き」「おしゃれが好き」というシンプルな気持ちに尽きます。また、ヘアサロンで働く美容師には「自己プロデュース力」や「美容師としてのプロ意識の高さ」を求めています。これらを大切にしている人は、自然と立ち振る舞いが美しく、良い印象を与えます。そして、その姿は自分の立場だけではなく相手を尊重して物事を考えられている証拠であり、そこに美の始まりがあると感じています。専門的な技術や知識はもちろん大切ですが、本気でこの仕事がしたいと思っている人は、理屈ではなく感覚として伝わってきます。美容師は、お客様の大切な髪をお任せいただく仕事です。だからこそ、ヘアサロンが起源である私たちは、自分たちに厳しくあるべきだと考えています。 ■学生へのメッセージ 今の学生さんは考える力や行動力があり、素晴らしいと心から思います。だからこそ、自分に自信を持ってのびのびと突き進むというのが一番良いのではないでしょうか。山のようにある選択肢の中から、「自分はこれだ!」というものを見つけて信じ、ぜひ挑戦し続けてください。応援しています。 学生新聞オンライン2025年7月29日取材 武蔵野大学3年 吉松明優奈 東洋大学3年 越山凛乃/國學院大學3年 寺西詩音/武蔵野大学3年 吉松明優奈