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Archive for 運営スタッフ

学生新聞インターン

脚本家 野木亜紀子

あなたが受け取ったものこそが作品のメッセージ 脚本家 野木 亜紀子(のぎ あきこ) ■プロフィール脚本家。1974年生まれ。2010年ヤングシナリオ大賞受賞後デビュー。ドラ マ『アンナチュラル』『コタキ兄弟と四苦八苦』『獣になれない私たち』『MIU404』『フェンス』『海に眠るダイヤモンド』『スロウトレイン』、映画『カラオケ行こ!(和山やま原作)』『ラストマイル』など。 「逃げるは恥だが役に立つ(海野つなみ原作)」、「アンナチュラル」など数々の脚本を手掛ける野木亜紀子さん。作中のキャラクターやセリフの数々は、さまざまな感情を引き出してくれる。このような映画やドラマを生み出す野木さんに、脚本家になるきっかけや脚本を書くうえで大切にしていることなどを伺った。 ◾️脚本家になるきっかけは何ですか  私は日本映画学校という専門学校に通っていました。映画の道に進んだのは、もともと映画が好きでしたし、当時のアルバイト仲間に勧められたこともきっかけになりました。写真やデザインにも興味があったのですが、映画は動きがあって広がりがあるので表現者として一番可能性を感じました。  映画監督になるための就職先はそんなになく、最初はテレビのドキュメンタリーを作っている制作会社に就職をしました。仕事は取材、現場、撮影、編集などすべてをやりました。しかし、自分は現場には向いていないなと感じ、編集や構成を考える方が合っていると思うようになりました。本当にやりたかったのは何かと改めて考えた結果、脚本コンクールに応募し、そこから脚本家の道へ進みました。 ◾️脚本とはどういうものなのですか  テレビや映画の面白さは共同作業であることです。いわば総合芸術なのです。その中で脚本は設計図に当たります。私が作った設計図を基に、スタッフやキャストの皆さんがどんな家を建てるか。小説を書きたいとは思いません。自分が書いた文章を読みたいわけではないので。例えるなら、その上に立った家や装飾、色などの全体を見て「すごい家ができたな」と感じるときが一番楽しいです。脚本を全部書き終わったときも「終わったー!」という達成感はありますが、お芝居になることを見込んで書いているところもあるので、完成して世に出たものが作品だと思っています。   しかし、脚本という設計図から作品になるまでは多くの人が関わっているので、自分が思っていたものと違うものが出来てしまうこともありました。最近はなるべくそうならないように、「ここは、こうならないよう気を付けてください」「これはNGです」など、特に初めての人と仕事をする場合は時間をかけてしっかり確認するようにしています。受け取り方は人それぞれですので、逐一、言語化して確認するようにしています。 ◾️脚本に込める想いをお聞かせください  私自身はそんなに強固にメッセージを伝えようとしていません。受け取った人次第だと思っています。最近、答えを求め過ぎると感じています。「伝えたいのはこういうことです」とテキストで聞いてしまったら、作品を見る必要 はなくなってしまいます。ドラマと映画でも違いますが、一つの作品を一つのメッセージで描いていないこともあります。世の中はそれほど単純ではないし、答えは一つではないからです。それに付随するいろいろな問題やさまざまな見方を多角的に描いた上での一本の作品だったりします。あなたが受け取ったものこそがメッセージなのです。  いろいろな視点を持って作 品を作ろうと思っていますが、きっと取りこぼしているところはあるはずです。難しいですが、一面的にならないように常に意識して手を尽くしていくしかありません。 ■学生へのメッセージ  とにかくいろいろなことをやった方が良いと思います。無駄だと思うこともその後の人生に活かされることはたくさんあります。ただ、何事も雑にやっていると結局なんの役にも立たなくなってしまうので、どうせやるならしっかりやることが大切だと思います。そして、働き出すと、お金はあっても時間が取れなくなります。ぜひ体力と時間がある今のうちにやれることをやってください! 学生新聞2025年4月号 東洋大学2年   越山凛乃 津田塾大学2年 石松果林/東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 池濱百花/国際基督教大学2年 渡邊和花/昭和女子大学3年 竜澤亜依/東洋大学3年 太田楓華/大妻中野高等学校3年 加藤眞優花/国際基督教大学2年 丸山実友/城西国際大学1年 渡部優理絵

学生新聞インターン

小説家 朝井リョウ

小説は「雨」のようなもの。気付いたら濡れていて影響を及ぼしている 小説家 朝井リョウ(あさい りょう) ■プロフィール小説家。1989年岐阜県生まれ。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年、『何者』で第148回直木賞、2014年、『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞、2021年、『正欲』で第34回柴田錬三郎賞を受賞。最新刊『生殖記』がキノベス!2025の第1位に選出。  小説は「雨」のように心に届くものだ。気付いたら濡れていて自分に影響を及ぼしている。この出どころが分からないからこそ届く距離感が小説にあると語る朝井リョウさん。自身の内面に蓄積されたアイディアを掘り出しながら、新たな物語を生み出し続けている。その執筆のモチベーションなどを語っていただいた。 ◾️物語で表現する魅力とは何ですか  物語の魅力の一つに、異なる思想の人々を同じ場に置ける、ということがあります。現実では社会や情報の分断が進んで対話が難しい状況もありますが、小説の中では全く違う価値観を持つ人たちを同じ地平に置けます。また、片方の意見だけでは標語のようになってしまうので、私の作品にはよく対極の者同士の対話が出てきます。それはどちらも自分自身の一部だったりするんですが、異なる思想の人間同士を物語という密室に閉じ込めることで、思いも寄らない言葉が出てきてくれたりするんです。  また、物語にできることとして、「ホースから出る水」ではなくて「雨」として言葉を届けられる、ということもあると思っています。ホースは自分で握っているし、軌道も操りやすいので、狙いを定めて勢いよく水を発射させられます。だけど水の軌道がよく見える分、避けることも可能だし届く範囲が狭かったりもしますよね。それに対して雨は、出どころが分からないまま広い範囲に影響を及ぼせます。これを小説に置き換えると、作者の問題意識やテーマを明かして本を届けるよりも、それらを全部物語で覆い隠して差し出すことによって、そのテーマにもともと何の関心もなかった人たち、むしろ拒否反応を抱いていた人たちにも届けられる可能性があるということです。これは大きな魅力だと感じています。 ◾️小説を書くモチベーションは何ですか  このデジタル時代に小説を書くのは、ある種「癖」のようなものだと思います。小説は執筆に時間がかかるし、年に1、2冊しか出版できません。なので、私の場合は、合理的なモチベーションというよりも、「こういうものを書いたらどうなるだろう」という実験的な気持ちが執筆のモチベーションになっています。  また、今は日々新しいニュースが出てきて、時代や状況は絶えず変化しますよね。今日は丸だと思っていたものが明日には四角になり、明後日には三角になるような世の中です。そんな中でも、「この“丸”については考えてしまう」という物事があれば、その執着自体がモチベーションになります。変化だらけの毎日の中でこの“丸”が頭から離れない=書かなきゃいけないってことだ、みたいな感覚です。 ◾️アイディアをどのように形にしていますか  普段の生活の中で考えていることが自然と体内に蓄積されていて、それが小説になる感覚があるので、「よし、アイディアを形にするぞ」という瞬間はないんですよね。普段生きている中で、思考のタンクみたいなものが徐々に溜まっていて、それを小説という形式にするためにどうするか、みたいな感覚です。丸太を削って木彫りの熊を作る過程に似ているんじゃないかな。自分の中から作品を掘り出していく、みたいな。 ■学生へのメッセージ  最近よく思うのは、学生のときに大切にしていた感覚、たとえば「これくらいの年齢でこういう自分でありたい」とか、「恥ずかしいからこういうことはしないでおこう」みたいな判断基準って、今の自分からは超ズレているんですよね。社会もだけど、自分自身も容赦なく変わっていくんです。価値観も常識も無責任にどんどん変わるので、いい意味で今の自分に固執しすぎず、今“恥”と認識しているものをそう捉えすぎず生きてほしいと思います。 学生新聞2025年4月号 早稲田大学4年 西村夏 東洋大学3年 太田楓華/早稲田大学4年 西村夏/慶應義塾大学3年 松坂侑咲/城西国際大学1年 渡部優理絵/N高等学校2年 服部将昌/東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 吉川みなみ/立教大学4年 緒方成菜/上智大学1年 張芸那/日本大学4年 鈴木準希

学生新聞インターン

読売ジャイアンツ球団特別顧問 高橋由伸

いかにして言葉を伝えるかが大切 読売ジャイアンツ球団特別顧問 高橋由伸(たかはし よしのぶ) ■プロフィール1975年(昭和50年)4月3日生まれ。千葉県出身。現役通算18年で打率291、321本塁打、打点986。慶應義塾大学3年生の春に、東京六大学野球リーグで三冠王をとる。同リーグ通算23本塁打は現在も歴代最多記録。1997年、ドラフト1位で巨人に入団。2004年、アテネ五輪日本代表として銅メダル獲得。2015年に現役引退。翌年から3年間、巨人軍第18代監督。現在は巨人軍特別顧問、野球解説者。  高校生のころからメディアに注目され、「天才打者」と呼ばれていた高橋由伸氏。プロ入り1年目から今日に至るまで活躍し続けている。選手、監督、解説者とさまざまな経験をしてきた高橋氏の野球との出会いや野球観についてお話を伺った。  高校卒業後は慶應義塾大学へ進学しました。慶應を選んだのは同じ桐蔭学園の先輩にあたる髙木大成選手が在籍していて、「先輩と同じ道を辿れば自分にもプロの可能性があるのではないか」と感じたからです。小学校4年生から地元のクラブチームで始めた野球。当時はプロ野球選手になれるとは思ってもいませんでしたが、大学3年生のときに髙木さんがプロ1年目で活躍しているのを見て、「努力すれば自分にもできるかもしれない」と思い、プロ入りを考えるようになりました。しかし当時は、試合で結果を残すことで、チームメイトや家族に喜んでもらえるといった周りの人のために野球をしていたように思います。プロになってからは、「仕事である以上は自分のために稼ごう」と考えるようになりました。   野球はチームスポーツと言われますが、チームの成績よりも個人成績が自分の評価につながります。つまり、打たなければ今すぐにでも居場所を失ってしまうということです。自分で自分を管理する大切さを実感し、技術面だけではなく体調管理にも気を配るようになりました。  監督を引退した現在は、主に野解説者として実況中継をしています。解説者の役割は、目の前で起きていることを分かりやすく説明することです。野球の魅力は筋書きがないところ。一発逆転の試合もあれば、相性の良いチームに番狂わせで負けてしまう試合もあります。視聴者の方々に、選手や監督の経験を活かした予測やコメントを楽しんでもらいたいと思っています。  野球の魅力を存分に伝えるために大切にしていることは、「いかにして言葉を伝えるか」です。私は長らくこの業界にいたので、「これくらい説明すれば伝わるだろう」と、つい言葉足らずになってしまうことが多いです。野球をしたことがない人でも、観る人誰もが監督になった気分で観戦できるように意識しています。「自分だったらこうするのに」といろんな可能性を考えられるところも野球の楽しさですよね。 ◾️学生へのメッセージ  苦しいときは、どうしても何かのせいにしたくなるものです。しかし、苦しさから逃げてばかりでは何も身に付きません。もがきながらも自分を振り返る時間を大切にすれば、少しでも階段を上ることはできます。自分が置かれた場所で努力しながら道を開いていってほしいです。 学生新聞2025年4月号 青山学院大学1年 桑山葵/早稲田大学4年 西村夏 N高等学校2年 服部将昌/早稲田大学4年 西村夏/青山学院中等部3年 吉田侍人/青山学院大学1年 桑山葵/武蔵野大学4年 西山流生

学生新聞インターン

ブラッド・ピット 昨日までの自分を超えていく

俳優・映画プロデューサー ブラッド・ピット ■プロフィール ミズーリ大学卒業を目前にロサンゼルスに移住し、演劇の道へと進む。TV出演を経て、1988年に『リック』で映画初主演を果たす。『セブン』(1995年)『ファイト・クラブ』(1999年)などで世界的な人気スターに。1995年には映画『12モンキーズ』でアカデミー賞助演男優賞に初ノミネート。『ベンジャミン・バトン   数奇な人生(』2008年)、『マネーボール』(2011年)でも同賞主演男優賞にノミネート。2020年、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でアカデミー賞助演男優賞を初受賞。近年では多くの作品にプロデューサーとしても関わっており、その手腕にも注目が集まる。 2024年12月18日に61歳を迎えたハリウッドスター、〝ブラピ〟ことブラッド・ピット。甘いマスクで名をはせた若い頃をはじめ、色気あふれるイケオジとして現在も活躍している。「トップガン マーヴェリック」のジョセフ・コジンスキーが監督する新作映画『F1/エフワン』がもうすぐ公開する。 ■卒業式の2週間前に俳優になることを決意 私が大学生のとき、ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻し、広告業界のアートディレクターを目指していました。当時、自分が学んでいた環境からは、俳優になるというキャリア選択などはありえないことでした。しかし、映画が大好きで芝居への興味を断ちがたく、卒業を控えた2週間前に俳優を志すことを決意して大学を中退し、わずかな所持金を握りしめてロサンゼルスに行きました。 ロサンゼルスでは新聞の募集広告を見てエキストラに応募したり、ファストフードチェーンではキャラクターの着ぐるみを着て客の呼び込みをするなどしながら、生活費と俳優養成所の学費を稼いでいました。はじめは端役ばかりでしたが、『テルマ&ルイーズ』(1991年に公開)をきっかけに、ようやく俳優としのキャリアを歩むことができたのです。 ■自分にしかできない自分らしい仕事をする 仕事を通して学んだことは、いつでもどんなときでも学べるということです。学びに費やされる時間は個人差がありますが、私たちは学ぶための能力を持っています。常に新しいもの、違うものを探究するようにできています。その学びの過程の中で、失敗や痛みを伴うことはもちろんあります。辛くて眠れない夜もありましたが、幸いにも生き残ることができましたので、自己改革をし続けることが最も大切なことだと思っています。かつての私は、心の痛みをどう扱っていいのか分からず、辛い感情を避けるために逃げていました。そのときは逃げる手段しか考えていなかったのですが今は違います。今は何からも逃げたくないと思っています。全身で観て、聴いて、感じることで辛い夜さえもあえて過ごしてみたいと思えるようになりました。このような気持ちになったことで、自分自身を深く理解できるようになりました。そして人だけではなく、鳥や木など全ての命あるものに対して、感謝の気持ちが自然と生まれるようになりました。このように自分を深く理解できるようになったことで、自分にしかできない、自分らしい仕事ができるようになったと思います。また、俳優として出演する作品や、やりたい仕事を選ぶときは、ストーリーの作者によって決めることにしています。映画は監督の手に委ねられることになりますので、よく書かれた脚本であることも重要ですし、やはり映画を尊敬している製作者たちと仕事をしたいと思っています。これまで長い間仕事と向き 合っていますが、自分が尊敬 している好きな人たちと仕事をしながら、好きなことを好きなだけ探求していきたいと思います。そうすれば不安は消え、本当の自由を得られるのではないかと思っています。人生の中で何を大切にしなければならないかが見えてくるのです。 ■映画によって自分を語りたい 私にとって大好きな映画という存在は、未知の文化や場所を見せてくれるものです。私が自分の言葉では語れない素晴らしいものを見せてくれるのが映画なのです。私たちは自分のことがわからず、相手を困らせてしまうことがあります。しかし映画は、私たちは皆同じであることに気付かせてくれます。皆さんは自分が興味のある     ものに対してとことん追求していってほしいです。私はあのときもっと自分が興味のあるものを追求していればよかったと思うことがあります。俳優として、ただ機械的に同じように演じるのではなく、自分だけのストーリーを語るべきだったと思います。自分らしさが生まれない仕事は虚しくなりますし、良い仕事もできません。皆さんも自分だけの”らしさ”を追求していってください。 映画『F1/エフワン』舞台は空から陸へー! 『トップガン マーヴェリック』監督作×ブラッド・ピット主演常識破りのカリスマF1レーサーが仲間を導き、昨日の自分を超えていく! 最弱チームは強敵たちを相手に逆転できるのかー?! 重力も追いつかない、時速300㎞超の映画体験―。超高速"体感"エンターテイメント! 監督:ジョセフ・コシンスキー『トップガン マーヴェリック』プロデューサー:ジェリー・ブラッカイマー『トップガン マーヴェリック』脚本:アーレン・クルーガー『トップガン マーヴェリック』 出演:ブラッド・ピット/ダムソン・イドリス、ケリー・コンドン/ハビエル・バルデム配給:ワーナー・ブラザース映画 2025年6月27日(金)公開! 公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/f1-movie 公式X:https://x.com/f1movie_jp 学生新聞2025年4月号 学生新聞編集部

中高生新聞

川栄李奈 決断を正解にするために、努力する気持ちが大切

俳優 川栄李奈 (かわえい りな) ■プロフィール俳優。1995年2月12日生まれ。神奈川県出身。映画『変な家』『ディア・ファミリー』、ドラマ『となりのナースエイド』などに出演。2021年後期、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』ではトリプル主演。舞台「千と千尋の神隠し」では、主演・千尋役を務める。 アイドルから俳優へと転身。幅広い役柄をこなし、実力派俳優として活躍する川栄李奈さん。2021年後期、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で、朝ドラ史上初の三世代ヒロインの一人、ひなた役を演じ、大きな話題となった。仲間との絆、運と努力を大切にしながら、俳優としてさらなる高みを目指す川栄さんの想いを伺った。 ■仲間と築いた絆に支えられた高校時代 高校1年生の終わりにAKB48に加入したため、キラキラとした学校生活はほとんど送れませんでしたが、その分「友情」というかけがえのないものを手に入れられたと思っています。友人に誘われたことがきっかけでAKB48のオーディションを受けたのですが、彼女は今でも私の背中を押してくれる大切な存在です。友人や周囲の応援に支えられ、新しい世界に飛び込むことができたのは、今でも本当に感謝しています。AKB時代は、私にとってまさに「学校」そのものでした。メンバーたちと過ごす時間は家族以上に長く、お互いに同年代の悩みを共有し合い、支え合っていました。そして、この時期に築いた友人との深い絆は、現在に至るまで私にとって心強い支えとなっています。また、上下関係の大切さや礼儀など、この時期に学んだことは今でも仕事をする上で役に立っています。当時の経験は私を大きく成長させ、現在の自分を形作る大切な基盤となっています。 ■お芝居に魅せられて進むべき道を決断 歌やダンスがあまり得意ではなかったことやなかなか休みが取れず、仕事に追われる忙しい日々が続くことで、いつしか仕事を事務的にこなす感覚に陥ってしまったのです。そんなときに、「演じる」お仕事があってそれが本当に楽しく、お芝居の魅力にどんどん引き込まれていって、心の底から「これがやりたい」と思えるようになりました。自分が本当に楽しいと思えることを追求したいという思いが募り、AKBを卒業した後は、役者の道に踏み出しました。アイドルから俳優への転身を決めたときに、私は「朝ドラのヒロインになる」「大河ドラマに出演する」「日本アカデミー賞を受賞する」という3つの夢を掲げました。そのうち2つは実現しましたが、最後の夢であるアカデミー賞受賞もこれから必ず叶えたいと思っています。 ■常に前向きな心を忘れずに挑戦 私の人生は「運とご縁」で動いていると感じていますが、それを活かすためには日々の努力が欠かせません。特に、運が巡ってきたときにそれを活かせる準備を整えておくことが何より大切だと思っています。オーディションに関しても、私は「自分をアピールできる貴重な機会」とポジティブに捉え、落ちても「今回はご縁がなかっただけ」と割り切ることで、失敗を引きずらずに前に進むようにしています。この前向きな考え方が、諦めず挑戦し続ける力になっていると思います。私は役を演じる際、監督やプロデューサーの意向をしっかりと受け止める柔軟さを大切にしています。AKB時代に個性豊かなメンバーと過ごしてきた経験から、状況に合わせて行動することの大切さを学びました。それが今の私の強みになっていると思います。また、仕事に臨む際は、仕事とプライベートをはっきりと分け、台本をしっかりと読み込んだ状態で、現場で役を作り上げるようにしています。そうすることで役にのめり込みすぎず、複数の作品を同時にこなす際にも役立ちます。そして何より「楽しむこと」を大切にし、常にポジティブな心構えを意識しています。 ■人とのつながりが何よりも大切 俳優として活動していく中で、人とのつながりを大切にしています。また、体力がなければ撮影や舞台を続けることができないので、日頃から健康管理にも気を遣っています。昨年はドラマと舞台の両立で多忙を極め、心身ともに辛い時期もありましたが、自分の限界を知る大きな学びとなりました。当時は共演者の方々にサポートしていただき、人とのつながりが仕事をする上で何よりも大切だと改めて感じました。アイドルから俳優に転身した際に、「卒業したらもうテレビで見なくなるよね」と思われたくないという思いが原動力となり、計画的に仕事に取り組むことを意識してきました。出産後も復帰まで2、3カ月という短期間で戻ることを決断したのは、「産休後に見なくなった」と言われたくないという強い意志があったからです。もちろん、どんな仕事も楽しいことばかりではありません。時には気持ちを奮い立たせて挑むこともあります。そうした状況でも「どうせやるなら楽しくやろう」と考えることで、自分の気持ちをポジティブに切り替えるようにしています。「これを終えたら楽しいことをしよう」と自分を励まし、前向きな気持ちで乗り越えるようにしています。皆さんに伝えたいのは、どんな決断も決断に正解はありません。その決断を正解にするために、自分が努力する気持ちが大切なのです。 中高生新聞2025年4月号 国際基督教大学2年 若生真衣 ドラマ「ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします」 ドS上司の無茶ぶりに翻弄されながら、崖っぷちタレントたちのために芸能界を駆け回る新人マネージャー役として主演。毎週日曜よる10時30分から日本テレビ系で放送 <学生新聞2025年4月号 芸能コーナーインタビュー> 挑戦するなら、「心から楽しい」ことを ◆芸能界に入るきっかけを教えてください高校1年生の終わり頃です。友人に誘われて受けたAKB48のオーディションに合格したことが、私の人生を大きく変えました。もともと引っ込み思案な性格で、人前に立つのは苦手な方でした。しかし、AKBに入り、礼儀や挨拶の大切さを学ぶにつれ、私にとって「学校」のような存在となりました。ここでの経験が人生の基盤を築いてくれたと思っています。活動初期は、歌やダンスが得意ではなかったため、つらい時期もありました。しかし、お芝居と出会ったことで「心の底から楽しい」と思える瞬間が生まれました。それ以来、「楽しいことをする」という生き方を大切にしています。 ◆俳優としての挑戦と夢をお聞かせください AKB48卒業後、私は役者としてのキャリアをスタートさせました。卒業のときに掲げた「朝ドラのヒロイン」「大河ドラマ出演」「日本アカデミー賞受賞」という3つの目標のうち、2つを達成しましたが、まだ最後の夢が残っています。この夢の実現に向けて挑戦を続けていきます。また、人生において「運とご縁」が重要だと感じており、それを掴むために努力を重ねていきたいです。 ◆学生へのメッセージをお願いします 学生の皆さん、たくさん遊び、たくさん学ぶ中で、楽しいと思うことを見つけてください。そして、自分が選んだ道を信じて突き進んでほしいと思います。決断が正しいかどうかは誰にも分かりませんが、自分自身の努力でその選択を正解にしてほしいです。失敗も楽しみ、その経験を糧に成長してください。 学生新聞2025年4月号 津田塾大学2年 石松果林 N 高等学校2年 服部将昌/城西国際大学1年 渡部優理絵/東洋大学3年 太田楓華/国際基督教大学2年 若生真衣/津田塾大学2年 石松果林 <中国語記事> 川栄李奈你要付出努力来做出正确的决定。 演员 川栄李奈(kawaei rina) ■简介演员。 1995年2月12日出生。神奈川县出身。她曾出演过『変な家』『ディア・ファミリー』等电影,以及电视剧『となりのナースエイド』。 2021年下半年,她将在NHK晨间剧『カムカムエヴリバディ』中担任三重主角。在舞台剧「千と千尋の神隠し」中饰演主角千寻。 从偶像到演员。川栄李奈是一位演绎过多种角色的才华横溢的演员。 2021年下半年,她在NHK晨间剧『カムカムエヴリバディ』中饰演晨间剧史上首批三代女主角之一的日向一角,引发热议。我们与川栄李奈谈论了他的想法,他立志要作为一名演员达到更高的高度,同时重视与队友之间的联系、运气和努力。 ■ 我的高中时光得益于我和朋友们建立的友谊 我在高中一年级末期加入了AKB48,因此我的校园生活并没有那么光鲜亮丽,但我相信,我收获了无可替代的东西:「友谊」。我是受朋友邀请参加AKB48试镜的,她现在仍然是我前进的重要推动者。我仍然非常感谢我的朋友和周围的人对我的支持,并给我机会去探索这个新世界。对于我来说,在 AKB 的时光就像“学校”一样。我和其他成员在一起的时间比和家人在一起的时间还多,与同龄人分享烦恼,互相支持。那时我与朋友们建立的深厚友谊至今仍是我巨大的支持源泉。此外,我在那段时间学到的东西,例如等级关系和礼仪的重要性,对我今天的工作仍然有用。当时的经历帮助我成长,并成为塑造今天的我的基础。 ■ 迷恋演戏,决定走自己的路 我唱歌和跳舞都不太好,很难找到休息时间,而且工作总是很忙,所以不知不觉中,我开始觉得自己只是在以官僚的方式做着自己的工作。那时,我接触到一份与表演有关的工作,我非常喜欢这份工作。我越来越被表演的魅力所吸引,开始从内心深处感受到「这就是我想做的事情」。她对追求真正喜欢的事物的渴望越来越强烈,因此在从AKB毕业后,她走上了演艺道路。当我决定从偶像转型为演员时,我给自己定下了三个梦想:「成为晨间剧的女主角」「出演历史剧」「获得日本电影学院奖」我的两个梦想已经实现,但我决心实现我的最后一个梦想——获得奥斯卡奖。 ■ 始终以积极的态度迎接挑战 我觉得我的生活是由「运气和人脉」驱动的,但为了充分利用它,每天的努力是必不可少的。特别是,我认为当好运来临时,做好准备去利用它是最重要的。对于试镜,我会以积极的态度对待,将其视为「一次展示自我的宝贵机会」即使失败了,我也会接受「只是这次不行」的事实,并努力继续前进,不再纠结于失败。我相信这种积极的心态给予我力量,让我不断挑战自己,永不放弃。当我演戏的时候,我很看重灵活性,能够充分接受导演和制片人的意愿。从我在 AKB 与性格各异的成员一起工作的经历中,我学到了根据情况采取行动的重要性。我想这就是我今天的力量。此外,当我接手一份工作时,我会明确地将工作与私人生活分开,仔细阅读剧本,然后在片场塑造我的角色。这有助于我避免过于专注于一个角色,也有助于我同时处理多个项目。最重要的是,「我们重视乐趣」并始终努力保持积极的态度。 ■ 与人之间的联系比什么都重要 作为一名演员,我重视与人之间的联系。而且,如果没有体力,就不可能继续拍摄或舞台表演,所以我每天都非常注意自己的健康状况。去年是极其忙碌的一年,我同时兼顾戏剧和舞台工作,有时身体上和精神上都很辛苦,但对于我来说,这是一次很好的学习经历,让我认识到了自己的极限。那时,我得到了很多合作演员的支持,这让我意识到在工作中与人之间的联系比什么都重要。当我从偶像转型为演员时,我的动机是我不想让人们认为「一旦我毕业,我们就不再在电视上见面了」所以我有意识地以有计划的方式对待我的工作。我决定在生完孩子两三个月后就回去工作,因为我决心不被告知产假结束后我已经停止工作了。当然,并非所有工作都是有趣的。有时我必须激励自己去接受挑战。即使在这种情况下,我也会努力保持积极的态度,告诉自己:「如果我要做这件事,我最好玩得开心」我鼓励自己说:「一旦我完成这件事,我会做一些有趣的事情」并尝试以积极的态度度过难关。我想告诉大家的是,任何决定都没有正确答案。重要的是你要付出努力来做出正确的决定。 翻訳担当:中山美緒

中高生新聞

成田悠輔 「徒競走」ではなく「盆踊り」で未来をデザイン

経済学者 成田悠輔(なりたゆうすけ) ■プロフィール経済学者・データ科学者・事業家・三流タレント。データ・アルゴリズム・思想を融合しビジネスと公共政策をデザイン。多分野で研究発表し、企業・自治体と共同事業を展開。報道・討論・お笑い・アート・ファッションなど多様な企画・出演にも携わる。 【夜明け前のPLAYERS】未来の日本を作る 変革者「PLAYERS」と成田悠輔の予測不能な対談番組。地上波、YouTube、公式HPで、それぞれさまざまな形の番組視聴が可能です。このインタビューの様子は「第26夜 学生記者とゾンビマネーの夜明け」で視聴できます。https://www.youtube.com/@yoakemaeplayers 『22世紀の資本主義やがてお金は絶滅する』(文春新書) お金の夢から醒めろ。株価も仮想通貨も過去最高値を更新。生成AIの猛威が眼前に立ち現れ、かつてなく資本主義が加速する時代。お金や市場経済はどこへ向かうのか。 ■どんな学生時代を過ごしていましたか 寝てばかりの高校時代でした。学校の授業はほとんど寝ていて、目が覚めると図書館や古本屋、レコード屋や映画館をふらふらする。ただあらゆるものを目的なく眺める時間でしたね。目的に向かって正常に前進する日常から逃げたかったのかもしれません。あの頃の私には、夢や目標はありませんでした。ただ、焦りもなかったです。何も考えていなかったからです。 ■データがもたらす未来についてお聞きします 目標や目的がないと、たいていのことはどうでもよくなります。たとえば偉くなるとか、お金を人より稼ぐとかに執着がないです。でも、お金というのは不思議ですね。お金は「過去の記憶をざっくりと表現した装置」だと思います。ただこのお金という仕組み、1万円の持ち主がどんな価値を生み出してきたのか、その1万円からは区別できないという弱さがあります。しかし、「データ」というピンチヒッターが出てきました。現代の技術は、私たちの属性や日々の行動、それらから染み出す価値観を細かく記録するようになりました。そういったデータは、お金に変わる感謝と信用の基盤になりえます。 ■学生へのメッセージ 未来の世界ではお金の評価や働き方が大きく変わるかもしれません。競争の意味についても、これまでは速さや強さ、賢さを競う「縦の競争」が支配してきました。勉強では偏差値で、運動会では速さや強さで、社会人になれば営業成績や年収で評価されます。順位がつくわけです。しかし、お金のような単純な尺度より複雑なデータが大事になっていくこれからの社会では、「横の競争」がより大事になっていくと予想しています。たとえば運動会。かけっこで順位をつけるかわりに、みんな自由に踊る。人より速いか遅いかではなく、どれだけ自己満足できるかを競い合うような文化です。競争や評価が消えるわけではなく、競争の形が徒競走のように速い遅いや大小・高低を競うものから、盆踊りのように違いと変化を楽しむものに変わっていく。私たちが人と比べることから解放され、もっと自由に生きられる未来への第一歩だと思います。 学生新聞2025年4月号 法政大学 4年 島田大輝 <中高生新聞別冊eスポーツ特集2025年4月号 表紙スペシャルインタビュー> ■価値観や世界観のごった煮を食べた時代 寝てばかりの高校時代でした。学校の授業はほとんど寝てて、目が覚めると図書館や古本屋、レコード屋や映画館をふらふらする。ただあらゆるものを目的なく眺める時間でしたね。目的に向かって正常に前進する日常から逃げたかったのかもしれません。部員が3人しかいない山岳部の部室の棚の上でもよく寝てました。部と行っても名ばかりで、ときどき山に登って何日も何日もひたすら歩く。それだけです。南アルプスを一週間くらいかけて縦断していて、突然開けた視界に遥か彼方の山々の尾根が夕陽に照らされて飛び込んできたとき、世界は違う場所に溢れていると感じることもありました。あの頃の私には、何の夢や目標もありませんでした。ただ、焦りもなかったです。何も考えていなかったからです。そういう時間を過ごしたことが、今ここと向き合うコツを教えてくれた気がします。無駄なことに悩まず、劣等感や優越感で自分を駆りたてず、死に向かって淡々と流されていく姿勢を授けてくれたように思うのです。今も夢や目標はないままです。 ■お金を超える未来 目標や目的がないとたいていのことはどうでもよくなります。たとえば偉くなることにもこだわりがないですし、お金を人より稼ぐことにもそんなに執着がないです。でもお金というのは不思議ですね。お金は「過去の記憶をざっくりと表現した装置」だと思います。いまお金を持っているということは、自分や自分の保護者が過去に何か価値を生み出して他人から感謝されたということですよね。誰かからの「ありがとう」の痕跡がお金です。でもこのお金という仕組み、雑すぎませんかね。1万円の持ち主がどんな価値を生み出してきたのか、その1万円からは何もわかりません。慈善事業で生み出された1万円と詐欺恐喝で生み出された1万円を区別できないという弱さです。お金は個々人の背景や行動の詳細を消し去ってしまう消しゴムなのです。だからこそどんな人でも過去に囚われずにお金さえあれば物が買えるという利点もあるわけですが。しかしここに来て、お金の弱点を埋めるピンチヒッターが出てきました。データです。スマホが捉える膨大な行動データ、SNS上での発言や繋がりの情報…現代の技術は私たちの属性や日々の行動、それらから染み出す価値観を細かく記録するようになりました。そういったデータはお金に変わる感謝と信用の基盤になりえます。たとえば、スーパーで商品を買うとき、お金ではなく、過去の行動データを基に信用されて商品を手にする。そんな世界が現実になるかもしれません。もちろんそれが「いい」世界なのかは謎です。お金がいらないデータ社会はディスピア的になる可能性もあります。ただ、ユートピアとディストピアはいつも紙一重で裏表です。お金という仕組みの限界を乗り越え、より柔軟で新鮮な形で「ありがとう」や信用を伝達する装置を作れるかどうか。私たちの想像力と実装力にかかっています。 ■縦の競争から横の競争へ 競争の意味も変わります。これまでは、速さや強さ、賢さを競う「縦の競争」が支配してきました。勉強では偏差値で、運動会では速さや強さで、社会人になれば営業成績や年収で評価されます。順位がつくわけです。しかし、お金のような単純な尺度より複雑なデータが大事になっていくこれからの社会では「横の競争」がより大事になっていくと予想しています。横の競争、つまり個性や逸脱を競い合う競争です。たとえば運動会。かけっこで順位をつけるかわりに、みんな自由に踊る。そういう変化がすでに生まれつつありますよね。人より速いか遅いかではなく、それぞれがどれだけ勝手気ままに奇天烈に踊れるか、どれだけ自己満足できるかを競い合うような文化です。勉強も全員一律の授業や教科書・試験ではなく、それぞれの興味や得意不得意に応じて一人一人にカスタマイズされた教育が当たり前になっていきます。競争や評価そのものが消えるわけではありません。ただ、競争の形が徒競走のように速い遅いや大小・高低を競うものから、盆踊りのように違いと変化を楽しむものに変わっていく。私たちが人と比べることから解放され、もっと自分自身として生きられる未来への第一歩だと思います。 ■勉強してる暇があったらゲームしなさい そんな未来にとって鍵になるのが、eスポーツ、というかゲームや仮想空間ですね。ゲームというと真面目な大人たちが眉をしかめるので、eスポーツと呼び直すのは賛成です(笑)。あちらの空間では、こちらの現実世界で生きづらさを感じる人々も新しい人生を作れます。たとえば身体的なハンディキャップを持つ人がゲームの世界で体を動かし、現実では得られない喜びや繋がりを築く。現実世界での制約を超えて、仮想空間で自分の新しい別の価値を発揮し逸脱する人が増えていくでしょう。先ほどお話しした新しい競争そのものです。それはゲームに没頭して時間を浪費することではなく、新たな人間、新たな社会、新たな現実を創り上げる行為そのものなのです。 法政大学4年 島田大輝 N 高等学校2年 服部将昌/国立音楽大学4年 岡部満里阿/法政大学4 年 島田大輝

中高生新聞

陸上自衛隊 木更津駐屯地 第1ヘリコプター団パイロット

自衛隊訪問 ─ 陸上自衛隊「見る・撃つ・運ぶ」を担う、現場を"空"から支える操縦士陸上自衛隊 木更津駐屯地 第1ヘリコプター団パイロット 陸上自衛隊 木更津駐屯地 第1ヘリコプター団パイロット 左: 森正平(もりしょうへい)右: 榎本壽迪(えのもととしふみ) 任務遂行の際に、安全に素早く現地に送り届ける責任を負うパイロット。どのような使命感を抱いてコックピットに座るのか、榎本さんと森さんのお二人にお話を伺った。 ■パイロットになった経緯を教えてください 榎本 中学3年生のときに自衛隊のサイトを見つけたのがきっかけです。実家のある北海道で農家を継ぐ未来を想像できず、違う進路を探していたときに陸上自衛隊の高校である高等工科学校の存在を知りました。身体を動かすことや乗り物に興味があったので、不安というより半ば勢いで入学を決めました。数ある職種の中でもパイロットは特にかっこいいイメージがあり、「陸上自衛隊の中でパイロットになれるのはどの部隊かな」と探して就きました。 森 子どものころから飛行機が好きで、中学生のときに航空機を見に行っていた基地で勧誘を受けたのがきっかけです。当時はオフィスで働く仕事のイメージがわかず、自衛隊ならおおよそ想像がついたのです。将来の自分の姿も想像できるし、好きな飛行機に少しでも近づけるのではないかと思ってパイロットを目指しました。海上自衛隊や航空自衛隊でもパイロットの募集はあるのですが、募集人数が少なく、結果的に陸上自衛隊のパイロットになることに決めました。 ■どのようなお仕事をされているのですか 森 陸上自衛隊の航空機は主に「見る・撃つ・運ぶ」の三要素を担っています。災害現場の様子や敵情偵察をする「偵察(見る)」、有事の際に攻撃をする「攻撃(撃つ)」、現場に人や物を運ぶ「輸送(運ぶ)」です。私は主に輸送を担っていて、山火事の際は大きなバケツを運んで空から消火したり、パラシュート部隊を現地に運んだりしています。使用するヘリコプターは、一度に約30人を運べたり機体の腹の部分に荷物をぶらさげたりできるので、出動の要請を受ければ人員や物資を積んで現場の応援に行くイメージですね。 榎本 私は主に偵察を担当しています。この部隊で使われる機種は固定翼であり、他の機体より速く長く飛べるのが特徴。そのため、何か起こったときにいち早くかけつけて現場の様子を本部に伝えたり、現場に指揮官を送り届けたり、「部隊の目になる役割」を担います。このように、各部隊は機種の特徴に合わせてそれぞれの能力を発揮できるように動いています。また、飛行の際は、飛行計画や機体の整備、任務後の成果の分析までを行い、常に非常時に最大の力を発揮できるように訓練しています。 ■仕事で意識していることはありますか 森 安全管理ですね。私たちは上空の仕事ですが、任務をやり遂げるためには現場の地上部隊と協力しなければなりません。そのため、彼らとスムーズに連携を取るためにも機体について知ってもらうようにしています。たとえば、ヘリコプターには上だけでなく下にもプロペラがあることを伝えて、すぐに近寄らず安全な距離を取ってもらっています。専門が違う隊員たちと意思疎通を図ることは今後も注力していきたいですね。 榎本 決断力も重要だと思います。機体は多くの隊員や物資を乗せて速い速度で動いているので、パイロットとして操縦しながら素早く状況を判断しなければならないからです。現場の様子や気象情報など、全ての情報を含めて判断する難しさもありますが、その分、任務を終えて地上に降り立ったときは大きなやりがいを感じます。 ■中高生へのメッセージ 榎本 外に出て友達と遊ぶことを大事にしてほしいです。人と話すとコミュニケーション力も付きますし、集まってくる情報を整理し、自分の頭で考えて判断できるようにもなります。周りと協力しながらタスクをこなすときに役立つと思います。 森 自衛隊には、実はいろいろなキャリアがあります。航空機の操縦や現場の指揮、国際的な仕事のための英語の教官といった仕事もあります。陸上自衛隊でもパイロットになれることなどもわかりますので、ぜひ一度自衛隊に来てみてください。きっと多くの将来が見えると思います。 中高生新聞2025年4月号 上智大学3年 吉川みなみ 武蔵野大学4年 西山流生/津田塾大学1年 石松果林/東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 吉川みなみ

DX・WEBマーケティング

アサヒグループジャパン株式会社 執行役員 DX統括部長 山川知一

DXで会社を進化させ、社会の要請に応えるのが使命 アサヒグループジャパン株式会社 執行役員 DX統括部長 山川知一(やまかわともかず) ■プロフィール製薬業界担当システムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後製薬会社の情報システム部に18年間従事。2020年12月アサヒビール株式会社に入社。2022年1月より現職。 2022年1月、アサヒグループの日本事業を統括するために始動したアサヒグループジャパン。その中にあって、山川DX統括部長は社内でDXを実現するための基盤を整える業務を担っている。なぜ今DXが求められているのか、そもそもDXとはどのようなものを指すのかなど、DXの必要性や魅力についてお話を伺った。 アサヒグループジャパンに入社する以前は、製薬会社の情報システム部で働いていたのですが、コロナ禍で日々変わりゆく社会を目の当たりにする中で、何か新しいことに挑戦したいと考えていました。そのタイミングで声をかけていただいたのがアサヒグループでした。アサヒは飲料や食品など生活に密着したものを扱っており、社会と接点が多いメーカーならではの魅力を感じ、自分の専門性を生かしたDXの領域で携わることになりました。アサヒグループジャパンの一部門として、国内各社のDX・IT関連を戦略的に統括するのがDX統括部です。システムがどのような過程で作られているのか、かつてシステムの制作側にいたからこそ分かる経験を生かしながら挑戦を始めました。 ■システムをマッピングする アサヒグループには300から400ものシステムがあったので、どんなシステムが使われているか、どこでデータが集約されているのか、まずはシステムの全体像を可視化する必要がありました。それをもとにどの機能とどの機能がどのように接続されているのか、使われていない機能や重なっているものはないか、どこからどのような技術を用いて最新化するかなどを考慮し、システムの将来像をデザインしました。全てを一度に最新化することはできませんが、個々のつながりを意識しながら、将来像に近づけるように一部分ずつ変えていく作業を行っています。時代や環境変化を鑑みて、今あるシステムが今後も継続して必要なのかを検討し続けることも大切です。DX統括部は社内全体のシステム基盤を作る部署なので、従業員にシステムの利便性を感じてもらいながら安心、安全な環境を提供できるように取り組んでいます。 なぜ今、DXが必要なのか アサヒグループジャパンのDX統括部では、単にデジタルサービスを導入するだけではなく、業務や働き方の進化を後押しする役割を担っています。なぜ今DXを推進するのか、大きな理由として2つあると考えています。まず1つ目は、近年、技術の進歩が目覚ましく、新しいテクノロジーを使用する垣根が低くなってきているからです。システムを作るためにはコーディングが必要ですが、それがある程度のシステムであれば自然言語で作れてしまう環境が整ってきています。今までは我々のような専門的な部門が全てのシステム構築を担っておりましたが、これからは業務部門の方々でも自身でシステムを作るといったことが可能になってきています。大学生の皆さんも普段からChat GPTなど生成AIを使用する機会が多いと思います。かつては使う側にもプログラミングや技術知識が必要でしたが、今は誰もが簡単に高度なことができる時代になってきました。従業員の方々が自らテクノロジーに触れ、それをきっかけに業務の進化を検討する大きな機会であると思います。DX統括部はセキュリティには十分に気を付けながら新しいテクノロジーに数多く触れる環境を提供したいと思います。2つ目の理由は、社会環境の大きな変化に伴い、対応する課題が複雑になってきているからです。たとえば環境破壊につながるような問題に対しては、部門を超え、会社を超えて社会全体で取り組まなければなりません。他社と協力することで配送効率を高め、環境負担を抑える取り組みなども検討しています。このような活動において、DXは欠かせません。リアルタイムに複雑な状況を可視化して共有するなど大きな役割を果たします。 ■人生に寄り添うサービスを アサヒグループは、長い歴史の中で数多くの商品を展開してきました。人生のライフサイクルに関わるサービスを提供することで、何よりもお客様に楽しんでもらうことが大切だと思っています。人それぞれ好きなものもライフスタイルも違う多様性の時代だからこそ、多様なニーズに応えられるかが今後の重要な鍵になってくると思います。欲しいタイミングで欲しいものを、その人の人生に寄り添うようにサービスを提供し続けたいと思っています。 メッセージ 私たちは今、まさに変動の時代を生きています。何が正解なのか判断に迷うこともあると思います。そのときに自分はどんなものを好きで、何を心地良いと感じるか、自分の感性を大切にできるようにしてほしいです。特に学生の間はいろいろなことに挑戦できる時間であり、感性の土台を作るチャンスだと思います。そして、デジタルサービスも同様、作り手の感性をもとに、「技術を使ってこんな世の中になったらいいな」という思いが込められています。技術やデジタルサービスに関心のある方は、実際に触れて作り手の思いを感じてみてください。 学生新聞2025年4月号 上智大学3年 白坂日葵

大学理事長・大使館

iU(情報経営イノベーション専門職大学) 学長 中村伊知哉

イノベーションを起こして世の中を変える人材を育てる iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長 中村 伊知哉(なかむら いちや) 1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。MITメディアラボ客員教授、スタンフォード日本センター研究所長、慶應義塾大学教授を経て、2020年4月よりiU学長。内閣官房、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省などの参与・委員を歴任。 iUではイノベーションを起こし、世の中を変えていく人材になってほしいと願い、「全員起業」を掲げて実践を通じた学びを提供している。社会の最前線で活躍する人材を育成するためには今何が必要か。世界で一番面白い大学になることを目指す中村学長に、iUのあるべき姿についてお話を伺った。 ◾️どんな学生時代を過ごして来られましたか 学生のとき学校に毎日通ってはいたものの、授業はそっちのけでバンド活動に熱中していました。当時はミュージシャンになろうと思っていたのですが、プロになった人たちを見ていると勝てるとはえず、表現者たちのプロデュースをする道に方向転換しました。そこでテレビ局や通信会社などの全てのルールを作っているところに行けば表現をする人たちの役に立てると考え、郵政省に行き、メディア行政の仕事をしました。その後、省庁再編を最後の仕事に郵政省を退職し、MITで客員教授、スタンフォードで日本センター所長を務めるなど、興味の赴くままに仕事をしておりました。 ◾️大学をつくろうと思った理由をお聞かせください MITやスタンフォードにいて思ったことは、“日本の問題点は大学にある”ということです。たとえば、MicrosoftもFacebookもアメリカのハーバード大学の学生が作りました。Yahoo!もGoogleもスタンフォード大学の学生が作りました。日本にはウォークマン、ファミリーコンピューター、初音ミクなど素晴らしいものがたくさんありますが、学生が作ったものは何もないのです。そこで素晴らしいものを作る学生を輩出する大学を日本でも作れないかなと思い、慶應義塾大学で新たに大学院を作るというプロジェクトをやりました。その後、新しいことができるような場を作ろうと思い、大学を作りました。それがiU(情報経営イノベーション専門職大学)です。 ◾️大学の特徴について教えてください iUの特徴は「全員起業」です。起業をすると、最初は訳が分からずほぼ間違いなく失敗します。しかし、失敗からは多くのことが学べます。当大学では、“在学中に全学生が起業にチャレンジする”ことを目標にしていますが、実は起業家を輩出することを目的とした大学ではありません。根底にある理想は、イノベーションを起こして世の中を変えていく人材になってほしいという思いがあります。世の中を変えていくやり方はさまざまにあると思っています。また、今までは全員起業を目指す大学でしたが、これからはさらに一歩進めて“世の中を作っていく”ことを実現するために、さまざまなプロジェクトが行われている大学にしようと思っています。5年後には「eスポーツといえばiUだよね」や「ポップカルチャーといえばiUだよね」というように、そのプロジェクトで知られる学校になりたいです。そして10年後の目標は世界で一番面白い大学になることです。いわゆる普通の大学が目指すのは賢い大学や役に立つ大学ですが、iUは面白い大学を目指したいと思います。 ◾️学生へのメッセージ 何が自分の能力で、その能力をどう活かしていけばよいのかわからない学生も多いのではないかと考えます。でもそれは世の中でコミュニケーションを続けていく中で少しずつわかってくると思います。これからはとても変化する社会になって行きます。ぜひその変化を楽しめる人になってください。 学生新聞2025年4月発刊号 城西国際大学1年 渡部優理絵 城西国際大学1年 渡部優理絵/法政大学3年 佐伯桜優

学生新聞インターン

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長 足立正親

“自発”“自治”“自覚”の三自の精神で挑む新しい価値提供 キヤノンマーケティングジャパン株式会社 代表取締役社長 足立 正親(あだち まさちか) 1960年生まれ。1982年、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)株式会社に入社。2007年、MA販売事業部金融営業本部長を経て、2015年取締役常務執行役員に就任。その後、キヤノンマーケティングジャパングループのキヤノンITソリューションズ株式会社代表取締役、キヤノンマーケティングジャパン株式会社取締役専務執行役員などを経て、2021年より現職。 物販主体から価値創造企業へ。社会の変化とともに新しい価値を創造し、社会課題の解決へと導く、キヤノンマーケティングジャパン。これまでの挑戦は、社員一人ひとりの努力が生み出した結果である。そう語る足立社長に同社の歩みと未来への展望について話を伺った。  大学時代は経済学部に所属していましたが、高校時代の野球部の経験を買われて、付属高校の女子ソフトボール部のコーチを任されていました。当初はソフトボールを始めたばかりの部員が多かったのですが、目標は高く東京都2部リーグの1位を掲げました。将来のチームのありたい姿を描き逆算して切磋琢磨し、3年後には優勝できました。このとき、人を育てることの難しさや面白さ、やりがい、チームのパフォーマンスの上げ方の基礎を学んだと思います。  就職活動では、金融系の仕事に憧れていましたが、就活を進めていくにつれてシステムや技術分野の方が合っていると思いました。最後は自分の感性を大事にして、実力主義だがアットホームな社風に引かれた当社(当時のキヤノン販売)に入社しました。  入社したときは東証2部に上場して間もない頃で、会社の規模は今ほど大きくはありませんでしたが、それでも社長になるとは夢にも思っていませんでした。仕事でチャンスをもらったときは、周りに何か貢献したいと考えていました。与えられた仕事をこなすのは当たり前なので、自らがワクワクすることを探し、常にチャレンジしていたことが今の自分につながっているのだと思います。 ◾️ソリューションビジネスで新たな価値創造企業へ  当社は、昔と比べて会社の内容が随分と変化してきています。昔はカメラやプリンターなどキヤノン製品の販売が中心で、代理店を通じた販売が主流でした。しかし、2006年に社名を現在のキヤノンマーケティングジャパンに変更した頃からは、キヤノン製品事業とITソリューション事業を組み合わせたソリューションビジネスへとシフトが加速しています。  現在の当社は大手企業から中堅・中小企業、そして個人のお客様まで、幅広い領域でビジネスを展開しています。また、カメラ・ビジネス機器・半導体製造関連装置などお客様に合わせた製品の販売からSI(システムインテグレーション)サービス、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)ビジネスに至るまで多種多様なソリューションを提供できることが強みで、他社との差別化になっています。  しかし、実現するためには、優れた人材が不可欠です。素晴らしい商品やシステム、技術があっても人材が揃わないと絶対に成功しません。だからこそ人材投資に本気で取り組み、ビジネス拡大のためにどのような人材とスキルが必要かを定義し、教育とスキル獲得を実施しています。 ◾️顧客の課題解決を超えた先にあるもの  私たちが取り組むのは顧客の課題解決だけでなく、その先にある社会の課題解決です。「ここは任せたい」と言ってもらえる、期待される、愛される、魅力のある存在でなければなりません。そうした思いから2024年1月、「未来マーケティング企業」を宣言し、私たちの社会的な存在意義としてパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を掲げました。重要なのは強い領域を持つこと。知見や技術、ノウハウなど、私たちならではの確かな強みを磨き上げ、発展させていきます。取り組みの一つとして、同じタイミングで発足したR&B(リサーチ&ビジネスデベロップメント)チームを中心に、ウェルビーイング、ビジネストランスフォーメーションの領域で、社会の構造的な課題に真正面から取り組んでいきます。私たちは技術とマーケティング力、そして熱意を武器に、社会に新しい価値を提供し続けます。選ばれる企業、期待される企業、そして社会と共に成長する企業を目指して私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。 ◾️失敗を恐れずに楽しみながら成長  一緒に働きたいと思うのは、私たちが大切にしている「自発」「自治」「自覚」の姿勢で前向きに仕事に取り組む「三自の精神」を実践できる方です。そして失敗を恐れずに挑戦してください。挑戦する中での失敗は成長の証です。  また、仕事には愉しさとワクワク感が欠かせません。まじめで頑張る社員が多いのは当社の良さですが、それだけでなく、もっと将来に向けた“夢”をふくらませてほしい。社員が愉しんでいなければ、お客様にもその愉しさや素晴らしい未来は伝わりません。そして、会社は馴れ合いではいけません。個がしっかりと強みを発揮しながらも相手をリスペクトし、思いやりを持つことで「和」が生まれます。和と思いやりこそが、強いチームを作る土台になるのです。 *message*  20代は可能性を広げる最高の時期です。たくさんのことを経験し、そして失敗を恐れないでください。失敗から学ぶ姿勢こそが最大の武器になります。新しいことへの挑戦、知らないことへの好奇心、学び続ける意志。これらが皆さんの未来を切り拓く力となります。私たちと共に社会課題に立ち向かい、未来を創造したいと思うなら扉は開かれています。皆さんの情熱と可能性を心の底から応援しています。 学生新聞2025年4月発刊号 明治大学大学院2年 酒井躍 明治大学大学院2年 酒井躍/東洋大学 3 年太田楓華/東洋大学 2 年 越山凛乃/日本大学 4 年 鈴木準希

DX・WEBマーケティング

トヨタ自動車株式会社 Chief Digital Officer 山下義行

データという数字に隠れた人の動きを感じ取る トヨタ自動車株式会社 Chief Digital Officer 山下義行(やましたよしゆき) ■プロフィール 1989年電通に入社。ビジネスディベロップメント&アクティベーション局 局長後、2019年トヨタ自動車へ出向し、副本部長として国内販売事業に従事。2021年1月、デジタル領域の業務推進のためトヨタ自動車に転籍し、2023年4月より現職。また日本自動車工業会において、デジタルタスクフォースのリーダーとして、MSP(モビリティスマートパスポート)構想を担当。 ※取材当時の肩書です。 「日本を元気にしたい」。トヨタ自動車の熱い想いだ。日常生活の移動から経済活動を支える物流まで、モビリティには人々を笑顔にする力があるという。これまでデータを活用した新規事業の立ち上げに携わるなど、データによる技術革新の可能性を感じてきた山下義行さんに、自動車DXについてお話を伺った。  トヨタといえば、世界中に多種多様なモビリティを展開しているイメージがあるかと思います。軽自動車からトラック、さらにはハイブリッド、燃料電池車、水素自動車など、裾野の広さは最大の魅力であり、今日もトヨタ自動車は世界中で走っています。トヨタの想いは、「地域で最も信頼され、愛される会社になる」ことです。ただ車を届けるだけではなく、地域に密着していることが、世界中でトヨタ自動車が受け入れられる理由だと考えています。  自動車産業は、原材料の確保や部品の調達など、生産から販売までに数多くの人が関わっています。サプライヤーとの関係が大きい業界だからこそ地域との関わりが必要不可欠なのです。トヨタブランドが地域に根付いていると言えるのは、地域の中でサプライチェーンが確立し、仕事を生み出していることも大きな理由です。 ◾️データを活用したデジタル化への取り組み  皆さんは“自動車メーカーにおけるデジタル化”と言われて、何を想像するでしょうか。一口にデジタル化と言っても、その方法は管理システムの導入やビジネスチャットなど多岐にわたりますが、私が取り組んでいるのはデータを活用したデジタル化です。大企業ではともすれば縦割りになりがちなオペレーションを統一したり、データを用いて顧客との接点を生み出し、世の中のニーズを把握したりしてます。購入後の顧客との接点と言えば、サービスサポートや車検など、タイミングが限られますが、車の走行時に集められたデータを活用すれば、所有者それぞれの車の走り方が見えるようになります。これまでは自動車の「走る・曲がる・止まる」という3要素のみでしか計れなかったものが、今では通信環境の整備によって高速道路などと「つながる」ことができ、新しいデータを得られるようになったのです。これらの情報はサプライヤーとも連携して活用されるので、データがスムーズに流れる仕組みを整えることも仕事の一つです。 ◾️DXでビジネスを変革する  私たちはまさに今、変動の時代を生きています。直接感じることは少ないかもしれませんが、これまで人の手で動かしていたシステムがあっという間にデジタルに置き換えられ、仕事の効率化が図られています。たとえば、自動車を購入するとき、従来は販売店に行って試乗するというのが一般的でしたが、今はインターネット上での契約や決済ができるようになりました。このような販売システムの整備は、まさにデジタル化を活用してビジネス自体を変革するDXに当てはまります。そして、現代の社会課題の複雑さから、トヨタだけでは完結しない問題も出てきました。その一つが環境問題です。カーボンニュートラルが叫ばれている中、自動車の生産や輸送の段階で温室効果ガスを削減する取り組みも始まっています。これまでは、特に同業他社で競争関係にあったものが、社会課題の解決へ向けて共に取り組む協調関係へと変化しつつあるのです。地球環境に良い生産プロセスに変革することは、まさにDX領域に踏み込んでいると言えるでしょう。 ◾️パーソナルなサービス提供に活用  データを活用する事例や可能性についてここまで述べてきましたが、データは個々人に還元されてこそ役割を果たします。だからこそ、企業はビジネスになるデータばかりを活用するのではなく、データを分析して一人ひとりに合ったサービスの提供に注力しなければなりません。得られるデータが増えたということは、データの価値に柔軟性が出てきたということです。最近は契約者と利用者が異なる場合や、レンタカーの利用が増加しているため、利用者の属性が明確になると、よりニーズに合わせたサービスを展開できる可能性があります。一方でデータには自助・公助・共助の観点があり、データが個人のものなのか企業のものなのか、どこに活用するのか、誰にとって役に立つのかを丁寧に判断しなければなりません。データの有用性と安全性には難しいバランスがありますが、安心・安全にデータが流れ、必要なときに必要なデータを得られる仕組みが整ってこそ、個々人に意義のあるサービス提供につながると思います。 *message*  データは冷たくて無機質なものだと思われることが多いのですが、本当は暖かくて温もりを感じるものです。データというのは、人間の行動や発言が記録されたものです。だからこそ、データという数字に隠れた“人の動き”を感じてほしいのです。私たちのミッションは「データでありがとうをつくる」ことです。喜んでくれる誰かの笑顔を想像しながら日々尽力しています。皆さんもぜひデータに対する見方を変えて、手触りを感じとってほしいです。 学生新聞2025年4月発刊号 上智大学3年 白坂日葵 東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 白坂日葵/東京薬科大学2年 庄司春菜

学生新聞インターン

東京都知事 小池百合子

経験やひらめき、私の”好き”を大切に、主体的に挑戦する 東京都知事 小池百合子(こいけゆりこ) ■プロフィール1952年兵庫県芦屋市生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビキャスターを経て、1992年参議院議員当選。1993年から衆議院議員に。環境大臣、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策担当)、内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)、防衛大臣、自民党総務会長などを歴任し、2016年東京都知事に就任。現在3期目を務める。 ■学生時代について 私は昔から海外の大学へ進学したいと決めていました。父の本棚にあった中東についての本を目にしたことをきっかけに、エジプトのカイロ大学に留学。英語の他に将来プラスになると思い、アラビア語を選びました。私は「世界の全ての国を周る」夢を抱いていて、留学中も帰国後も、工夫して挑戦しました。訪れた国で必ず1泊するというルールを設け、モロッコやリビアなど、アラブ、アフリカから始めて、1カ国ずつ地図を塗りつぶしていきました。ソビエト連邦が崩壊した際に、夢は断念しましたが、今でも気持ちは変わりません。現場主義ですね。 ■子育て支援や女性が活躍できる環境づくりとは さまざまな調査では、結婚したら子どもは2〜3人欲しいとの答えが多いのですが、実際は子どもは1人で精一杯というのが現状です。出会いから結婚、妊娠・出産、子育て、教育まで、切れ目なく環境を整え、ニーズに沿った選択肢を増やすことで、次の世代を担う人材を育てたいと考えています。また、女性は学校で勉強ができたとしても、社会に出ると重要な仕事を任されない傾向がいまだにあります。性別による固定的な役割分担意識は解消しなければなりません。意思決定の場に女性を増やすためにもこれは重要です。東京都では、あらゆる場面で女性が持てる力を発揮できるよう、”Women in Action” を掲げ、その頭文字WA、つまり女性活躍の「輪」を拡げる取り組みを行っています。都の最大の財産は人です。性別や年齢に関係なく、誰もがやりがいを感じる、共感が生まれる都政にしていきたいですね。 ■学生へのメッセージを 東京都ではスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo」を開催しています。最先端の技術やアイデアで世界共通の都市課題の解決を目指します。2年前にゼロから始めた取り組みですが、早くもアジア最大級に育ちました。次世代を生きる若者の皆さんも、できることから積極的に挑戦し、主体的に生きていってほしい。ビル・ゲイツ氏やイーロン・マスク氏も、初めはガレージや小さな場所からスタートしています。若いときに皆さんが得る経験やひらめきをチャレンジの糧にして、将来の時代の牽引役になってくれることを期待しています。 現代社会は情報が溢れ、世の中の動きも激しい。だからこそ、自分の好きなことが最後の選択として残ります。人生は長い。“自分が好きなことは何か”を立ち止まって考えてみるのもよいと思いますよ。 学生新聞2025年4月号 国立音楽大学4年 岡部満里阿 <中高生新聞 スペシャルインタビュー> 2016年に東京都初の女性知事となり、今期3期目を務める小池百合子知事。知事は「東京大改革」を掲げ、子育て支援策や若者・女性など誰もが活躍できる環境づくり、経済の活性化などに取り組み、「世界で一番の都市・東京」の実現を目指して都政を運営している。このように大車輪で活躍中の知事に、重点政策について伺った。 人こそが最大の財産。誰もがやりがいの持てる社会の実現を! 父の本棚にあった中東についての本を目にしたことをきっかけに、エジプトのカイロ大学に留学しました。私は留学時代はもちろん、帰国後も「世界のすべての国をまわる」夢を抱いてたくさん旅をしました。特に体力がある若いうちは行きづらいところをまわろうと思い、アラブ諸国やアフリカを中心に旅をしました。中東戦争が始まって旅がしにくくなるまでリビア・アルジェリア・モロッコなどの北アフリカ、レバノン・シリア・ヨルダンなどの中東を訪れました。これらの旅を通して学んだことは、現場に行ってみないと分からないことがあまりにも多い。今やテレビやインターネットで知識をつけ、行った気分に浸ることはできます。しかし、その国の人々の生活や考え、においなどは、実際に訪れてみないと分からないと痛感しました。たとえば、当時飢餓が問題になっていたエチオピアに行ったときは、現地のTVでは痩せる体操を放送しており非常に驚きました。同じ国でも支配部族の首都と敵対勢力の地方では全く事情が異なるのです。その後、39歳のときに参議院選に出馬し、議員になるまでに約60カ国は訪問しました。本当はもっと速いペースでまわろうと思っていたのですが、キャスターとして毎日の生放送があったことと、1991年のソビエト連邦崩壊で多数の国家が次々と独立し、ゴールが遠のいたため、断念しました。今でも知らない場所に足を運んでみたいという気持ちは変わりません。政治家になった後も現場主義を大切にしています。 ■人という財産を育てる支援 昔も今も、結婚や子育てを望む人の理想は変わりません。さまざまな調査で子どもは2~3人欲しいとの回答が多い一方、出産・子育てのリスクや負担を懸念し、子どもは1人が精一杯と考える人も増えてきています。現代では共働きが主流となっていますから、男性も女性も育児をしやすい環境を社会全体で整えることが大切です。都では、皆さんの立場やニーズを第一に考え、出会い・結婚、妊娠・出産、子育てといったライフステージを通じたシームレスな支援に力を入れています。これまで、卵子凍結への支援、0歳から18歳のお子さんに月額5000円を支給する018サポート、第2子以降の保育料無償化など、国をも先導するさまざまな支援を次次に打ち出してきました。教育に必要な負担を減らすため、都内の全区市町村での学校給食費の無償化や、高校等授業料の実質無償化にも取り組んでいます。今年9月からは保育料等の無償化を第1子まで拡大するほか、10月には無痛分娩を希望する方への費用助成を始めます。また、妊娠時や出産後などに合計22万円相当の経済的支援を行っており、今年度からこれを5万円分増額します。人こそが東京の最大の財産です。暮らしやすく、学びやすく、子育てしやすい。一人ひとりの自己実現を全力で応援していきます。共感が生まれる都政にしていきたいですね。 ■次世代のイノベーターを育てる いまや時価総額ランキング常連のGAFAMを立ち上げたビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏も、最初はガレージからスタートしたと聞きます。日本でも、松下幸之助氏のパナソニックや本田宗一郎氏のHONDAは、小さな町工場から事業を始めました。彼らのように若いうちから自身のひらめきや情熱に従ってチャレンジし、将来の時代を引っ張っていくような若者を育てていきたいと私は考えています。デジタル化で学び方も変わり、学校の選択の幅も広がってきています。こうした教育環境や社会的ニーズの変化などを踏まえながら、自分らしく成長できる、自由で多様な学びをこの東京で展開していきます。また、若い人たちにとって、アントレプレナー(事業をゼロから創り出す起業家や事業家)から直接話を聞く機会は貴重です。都は、昨年からの新たな取り組みとして、アントレプレナーシップ育成プログラム“TIB Students”を実施しており、第一線で活躍するアントレプレナーによる中学・高校での出前授業や、Tokyo Innovation Base(TIB)での講演活動を行っています。TIBは、都が有楽町に設置した国内最大級のスタートアップ支援拠点で、一昨年のプレオープン以降、来場者は14万人を突破。多様な人々が集い、交流する結節点として機能しています。ここにはITAMAEという学生グループも活動していて、都が主催するスタートアップカンファレンス“SusHi Tech Tokyo”の学生パビリオンの企画立案・運営などを行っています。世界で活躍し、イノベーションを生み出す若者たちが、この東京からどんどん育っていってほしいですね。 ■中高生へのメッセージ 自分がこれにチャレンジしてみたいという気持ちを大切に、主体性を持つことが大事だと思います。今の世の中は動きが激しく、情報も溢れています。だからこそ一度立ち止まって、自分は何が好きなのか、何を大事にしているのかを考えてみてほしいです。人生は長いです。ぜひ好きなものを見つけて、素敵な人生を歩んでください。 中高生新聞2025年4月号 法政大学4年 鈴木悠介 法政大学4年 鈴木悠介/N高等学校2年 服部将昌/国立音楽大学4年 岡部満里阿/日本大学4年 鈴木準希/東京大学4年 吉田昂史

吉田昂史

キッコーマン株式会社 代表取締役社長CEO 中野 祥三郎

キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料に キッコーマン株式会社 代表取締役社長CEO 中野 祥三郎(なかの しょうざぶろう) 1957年3月生まれ。千葉県出身。1981年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。キッコーマン入社。国内営業、海外勤務などを経て、2011年、常務執行役員経営企画室長。2012年、CFO(最高財務責任者)。2015年、取締役常務執行役員。2019年、代表取締役専務執行役員。2021年、代表取締役社長COO(最高執行責任者)。2023年、代表取締役社長CEO(最高経営責任者)に就任。 60年以上前から海外に進出し、今では100カ国以上でしょうゆを販売しているキッコーマン。しょうゆを世界中で使ってもらうために、地道に続けてきた取り組みや、リーダーシップについて中野社長に伺った。キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする挑戦は、これからも続いていくに違いない。  私は大学生の頃から旅が好きでした。お金が貯まると夜行列車に乗って北海道など、遠方へ出かけていました。当時は青函連絡船が本州と北海道を行き来していたり、ローカル線には蒸気機関車が走っていたりと、今では想像もできないような時代です。夜行列車に乗ると、寝ている間に、いつの間にか向かいの席におばあさんが座っていたなどということもありました。このような旅先で出会う風景や人との触れ合いは、普段とは違う視点を与えてくれました。  大学時代は旅行の傍ら、テニスサークルに所属したり、新聞社の原稿取りのアルバイトをしたりと、興味の赴くままに行動していました。原稿を受け取りに都庁やホテルに行くのは、単純作業ながら責任の重い仕事でした。締め切り時間に遅れることは許されず、期限内にきちんと原稿を届ける粘り強さが要求された仕事だったと思っています。  私の家系は、江戸時代から続く野田・流山の醸造家が合同して誕生した野田醤油(現・キッコーマン)の創業家一族です。もっとも私は次男であり、就職先として金融機関などを考えていました。しかし、兄が体調を崩したことで私がキッコーマンに入社することになり、経営を学ぶために慶應義塾大学の大学院へ進んだのです。そこでは年上の社会人学生と一緒に、ケーススタディを中心としたビジネス論を学びました。ビジネススクールでは実地経験の豊富なクラスメイトとの議論を通じて、多角的に物事を考える視点を得られたと思います。 ◾️アメリカでの挑戦と社長の仕事  入社後は国内営業を経験し、30歳の頃にアメリカ西海岸へ赴任しました。今ではアメリカでもキッコーマンのしょうゆは広く受け入れられていますが、当時はまだ規模も小さく、まさに「じわじわと広げていく」段階でした。  現地の人は自分の意見を率直に主張します。給料や労働条件についても遠慮なく話し合う文化は、日本とは大きく異なる点でしたが、そこに違和感を覚えるよりも「何でもストレートに言い合うって面白い」と感じました。  アメリカに本格的に進出した当初より、しょうゆを「日本食限定の調味料」と捉えず、アメリカでよく食べられている肉料理や家庭の定番メニューにとり入れてもらう提案を続けていました。たとえば、魚の照り焼きを発想源として、アメリカの食卓で親しまれている牛肉や鶏肉を照り焼き風にするレシピを提案するのです。そうすると違和感なく受け入れてもらえ、現地の人たちにも好評でした。レシピ開発と試食販売という地道な活動を重ねた結果、しょうゆの認知度はじわじわと高まり、今ではアメリカの家庭用しょうゆのシェアの半分以上をキッコーマンが占めるようになりました。  私がキッコーマンの社長になったのは、今から数年ほど前のことです。ちょうどコロナ禍の時期と重なり、出張や社外行事が激減する一方で、社内に向き合う時間が増えました。そこで始めたのが、マネジャークラスを対象にした対話セッションです。営業や研究、製造など、異なる部門の管理職が一堂に集まり、会社全体のビジョンをどう自分たちの部署や仕事に落とし込むかを発表し合いました。  セッションでは、自分たちが2030年にどんな組織やチーム、成果を目指すのかを共有しました。他部署の事例から学び、時には「そのやり方はうちでも応用できそうだ」とヒントを得ることもあったと聞いています。会社全体の風土を育てるには、トップダウンだけでなく、こうした対話の積み重ねが必要だと改めて実感しています。 ◾️世界中の人たちが豊かで健康的に  キッコーマンの海外展開は、アメリカや欧州だけにとどまりません。アジア各国はもちろん、南米やインド、アフリカでの挑戦もはじめています。キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にするために、まだまだ多くの国や地域でしょうゆを使っていただく提案を続ける必要があると考えています。  しょうゆは重く単価が低い商品ですから、効率を考えると各地に工場をつくり、現地で生産し、現地で売るという形が望ましいのです。現在は海外の生産拠点が8カ所になり、さらにアメリカに9つ目の新工場も建設中です。世界中の人たちが我々の商品を使って豊かで健康的な生活を送ってほしいですね。そのために地道にレシピ開発と試食販売を続けながら、現地の食文化に合わせたしょうゆの使い方を提案することで、長く親しまれる商品になっていくと信じています。これは5年、10年ではなく30年、50年のスパンでじわじわと広まっていけばいいなと考えています。 *message*  これから社会に出る学生の皆さんには、「今、自分がなにをやりたいか」という強い思いを持ってほしいです。それはずっと変わらないものでなくてもいいです。とにかくそれに向けて学んだり、いろいろな経験をしたり、挑戦していくことで一生懸命自分を磨いてほしいと思います。また、企業に入ると自分一人で行動するのではなく、「組織の力を活かす」ことが大切です。そのためには柔軟性を持つことも必要です。その上でそれぞれの目標に向かって粘り強く進んでいく人が成功するのではないかと思います。 学生新聞2025年4月発刊号 東京大学4年 吉田昂史 立教大学 4 年 緒方成菜/国際基督教大学2 年 若生真衣/城西国際大学 1年 渡部優理絵/上智大学 3 年 網江ひなた/東京大学4 年 吉田昂史

吉川みなみ

俳優 向井理

地道に努力することで初めて見られる景色がある 俳優 向井理(むかいおさむ) ■プロフィール1982年生まれ。神奈川県出身。『白夜行』(06)で俳優デビュー。近年の出演作にドラマ『パリピ孔明』(23)、『エンジェルフライト』(23)、『ダブルチート 偽りの警官 Season1』(24)、『ライオンの隠れ家』(24)、映画『イチケイのカラス』(23)などがある。 ◆大学時代から変わらないことはありますか ゴールから逆算して考える癖がついたことですかね。大学では遺伝子工学を勉強していて実験が多かったので、導き出したい答えのために何をするべきか、短期・中期・長期的に考えていました。いきなりゴールにワープはできないので、今できることでゴールにつながるものは何かを考える。これは役作りにもつながっています。たとえば時代劇をやるなら所作が必要だし、立ち回りをやるなら日本舞踊をした方がいいよね、というように考えます。直接ゴールに結びつかないとしても、中間地点につながる何かを見つけて地道に努力することは、大学時代と変わっていないのかもしれません。 ◆お仕事で大事にされている思いを教えてください 真面目にしかも必死でやることです。この仕事は自分を選んでもらうところから始まります。そこで一度“選別”が行われていることになります。選んでいただいた期待や信用に必死になって応えていきたいと思っています。たとえば、料理をする役のときは、料理学校に通って手元の作業もできるようになることで、手元の寄りから引きに流れるシーンも撮影できます。引きと寄りのカットが別の人で撮る場合もありますが、僕はそれだと自分がやる意味がないと感じています。プロとして自分にしかできない仕事をしていきたいですね。 ◆映画『パリピ孔明 THE MOVIE』の魅力を教えてください この映画は今までにないクオリティの音楽映画であるところです。ラップやバラードなどいろいろなジャンルの最前線を走っている方の協力があって、音楽フェスとして楽しめるほどです。観客もCGではなくて実際に入ってもらっているので熱気もリアルです。音響の良い映画館ではより音が響いていい意味で音楽の攻撃性が増すと感じています。それと同時に、撮影では孔明と英子の絆を描くドラマパートも重視していました。この作品の軸は二人の関係性で、ここがきちんと描かれるからこそ作品として深みが出て面白くなると思っていたからです。だからこそ、孔明と英子の間には絶対に恋愛要素を入れたくないと思っていました。英子を演じる上白石萌歌ちゃんと「孔明と英子はプラトニックな関係性だよね、とすら思われないようにしよう」と話したこともあります。異性関係ではなく、信頼関係を描きたかったので、見つめ合うシーンや喧嘩のシーンもラブが入らないよう意識していました。 ◆学生へのメッセージをお願いします 大学は社会に出る前の最後の学習の場だと思うので、一つでも多くの体験をしてほしいです。知識として将来に活きなくても、何かのきっかけで話のネタになるかもしれないし、仕事につながるかもしれない。失敗しないと見えてこないこともあるので、今しかできないことに挑戦してみてください。 ◆取材を終えて 「真面目に必死にやること」は、シンプルなだけになかなかできないことだと思います。向井さんは一つひとつの仕事の縁を大切にされていて、言葉の端々から仕事への責任感と愛情を感じ、尊敬の気持ちでいっぱいになりました。 学生新聞2025年4月号 智大学3年 吉川みなみ 映画『パリピ孔明 THE MOVIE』  4月25日(金)全国公開製作:フジテレビジョン 松竹 講談社FNS27社配給:松竹Ⓒ四葉夕ト・小川亮/講談社Ⓒ2025『 パリピ孔明 THE MOVIE』製作委員会 東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 吉川みなみ/東洋大学3年 太田風華 カメラマン 下田航輔 / ヘアメイク:中村了太 / スタイリング:外山由香里

学生新聞インターン

株式会社Integral Geometry Science 代表取締役 木村建次郎

人類の課題を数学の力で解決し、より良い世界を目指す! 株式会社Integral Geometry Science 代表取締役 木村建次郎(きむら けんじろう) ■プロフィール10年の歳月をかけて、応用数学史上の未解決問題である「波動散乱の逆問題」を世界で初めて解決することに成功。散らばった波の波紋から物体の立体構造を瞬時に再構成することが可能となり、“人間がものをみること”の根本概念を覆す、数々の観測技術の開発・実現に貢献してきた。散乱場理論をコアテクノロジーとして、医療、エネルギー、インフラ、安全保障等の分野にまで革新をたらすべく、不断の挑戦をし続けている。 数学の力で物体を透視し、数々の社会課題を解決するIGS。代表取締役である木村建次郎さんは、応用数学史上の未解決問題を世界で初めて解決し、革新的な技術を社会に提供しています。そんな木村さんに、起業に至るまでの道のりや研究の魅力、そして未来への壮大な挑戦についてお話を伺いました。 ◾️数学との出会い、そして京都大学へ 子どもの頃は、画家に憧れていました。通っていた小学校は、倉敷市の小さな学校でした。近所には風景画を描く先生が住んでいて、いつも大きな犬を連れて旅をしながら絵を描いていました。その自由気ままな生活に憧れ、芸術系の仕事を目指していたのです。しかし、中学生の頃にNHKの宇宙ロケットが発射される番組を観て、「カッコいいな」と感じたことから、宇宙工学を志すようになりました。宇宙工学を学ぶには、日本では東京大学や京都大学が最適らしいと知り、そこから4年間、1日3時間しか眠らず勉強に打ち込みました。その中で数学の面白さに気づき、次第に興味が移っていきました。親から「数学を世の中の役に立つ形で活用しなさい」と助言を受け、最終的に理学部数学科ではなく、工学部を志望することにしました。そして、無事に京都大学工学部への入学を果たしました。 大学在学中は、勉強にも遊びにも全力投球でした(笑)。学者としての基礎を築くために、3,000ページの物理の本を読み、数学の分厚い問題集を次々と解いていました。また、話のネタを増やすために、数えきれないほどのアルバイトを経験しました。アルバイトを通じて、人とのコミュニケーション能力もさらに磨かれたと思います。さらに、自分たちでテニスサークルを立ち上げるなど、積極的に活動していました。こうした忙しい学生生活を送る中で、自然と時間管理が上手になったと思います。また、自分は何かをゼロから始めることが好きなんだと気づくようになりました。 ◾️論文との戦い、その悔しさから起業へ 大学のゼミでは、原子やナノスケールで可視化できる顕微鏡を専門に研究している先生の指導を受けるゼミに入りました。研究内容としては、半導体に焦点を当て、その内部構造を透視するための理論や技術の開発に取り組んでいました。当時、半導体の開発において、半導体の「ナノ」の世界で何が起こっているのかがわからないため、どうすればより良いものを作れるのかがわからないという状況でした。そのため、半導体の中で何が起こっているのかを透視する技術が強く求められており、それをテーマに据えて研究を行っていました。 研究の世界では、論文の発表が非常に重要です。同じ研究内容であっても、先に論文を出した方に権威が与えられるからです。過去に一度、論文を提出したものの却下され、その後、海外で同じ内容が発表されたことがありました。その時は、とても悔しい思いをしましたね。その経験から、「論文が絶対」という現状に疑問を抱くようになりました。そして、特許を取る方が合理的ではないかと考えました。ただし、特許を取得するには資金が必要です。そんな時、教授から「会社を作ってみてはどうか」とアドバイスを受けたのが、起業のきっかけです。私たちの強みは、やはり特許を取得していることです。他社に模倣されない独自の技術を持っている点は、大きな優位性だと感じています。 透視したいと思っていたのは、大学にはいるよりもずっと以前でした。子供の夢のようなものですね。実は、いま私が開発しているあらゆる製品の原理、透視の原理は、理科と数学、特に幾何学が大好きだった子供のころに、想像していた世界のイメージがもとになっています。“世界は虫食いだらけ”、“世界は多角形で埋め尽くされている”という考えです。 いま僕は5人の子供を育てていて、大学でも多くの学生に授業をしていますが、本当に幼い頃の感性というのは後の人生のあらゆるシーンに影響を与えると思います。自分の感性を、本当に大切にしてほしいと思います。 ◾️数学の魅力、そして描く未来 数学の魅力は、その厳密さと課題解決力にあります。数学的に証明されているもの以上に確かなものはなく、世の中にある無駄や非合理を最適化・効率化することが数学の役目です。技術が追いつかないジレンマを解決できる点こそ、数学の持つ大きな可能性だと感じます。課題を見つけ、それを解明していく過程は非常に楽しく、まさに「好きだからこそできる仕事」です。もちろん、上手くいかないこともありますが、複数の事業を同時に進めることで成功の確率を高めています。 私たちの会社では、愚直に努力できる人を歓迎します。成果主義を採用しているため、迅速に行動できる人が活躍しています。「理想の組織」とは、効率よく、本能的に動ける状態を指します。また、研究においては時に無給での活動が求められるため、厳しい状況でも前に進める覚悟が必要です。その覚悟がある人こそが成功すると考えています。 将来的には、脳の構造を解明したいという大きな夢を抱えています。やりたいことが尽きることはなく、今の会社(約400億円規模)を5年以内に1兆円規模へ成長させることもその一環です。最終的な目標は、人が自分の死のタイミングを選べる権利を持つ社会を作ること。そのためにも、この世から理不尽な死をなくしたいと強く願っています。 ◾️大学生へのメッセージ 「好き」と「得意」は分けて考えるのが良いと思います。得意なことは続けていくうちに、だんだん好きになっていくものです。そして、自分のアイデアを活かせる分野こそ、最終的に楽しめる場になるのではないでしょうか。お金持ちになることがゴールだとは思いません。その人の構想に見合った額のお金を持つべきだと考えています。お金は、世の中のために使える人が持つべきものです。そして、大事なことに取り組んでいれば、後から自然とお金はついてくるものです。やりたいことが見つからない人は、まず指示してくれる人がいる場所に身を置いてみるのが良いでしょう。得意なことや好きなことがまだ見つかっていない人は、とにかく外に出て、自分の知らない世界を減らす努力をしてみてください。 学生新聞オンライン2024年10月28日取材 立教大学4年 緒方成菜 上智大学3年 網江ひなた / 立教大学4年 緒方成菜

人事

株式会社 U‐NEXT HOLDINGS 人事統括部 採用戦略部長 野村大河

株式会社 U‐NEXT HOLDINGS  人事統括部 採用戦略部長  野村大河(のむらたいが) ■プロフィール2009年、株式会社USENに新卒入社。企業向けネットワーク・セキュリティ・クラウドなどのICTソリューション営業に従事。その後、組織マネジメントや新規事業の立ち上げ、オフィスBGMの事業責任者を経て、2023年より、採用戦略部長に就任。現在は新卒とキャリアの採用責任者として戦略策定に尽力している。 動画配信の「U‐NEXT」、店舗BGMやDX化を推進する「USEN」など、エンタメ×テクノロジーで多様なビジネスを展開。世の中をもっと面白く、新たな価値を提供。 ※取材協力/新卒採用Unitマネージャー 川上若菜 ■事業の特徴を教えてください USEN&U–NEXT GROUPは、持ち株会社であるU–NEXT HOLDINGSと、USENやU–NEXTなど傘下の事業会社29社から成り立つ企業グループです。もともとは「有線音楽放送」という店舗BGMの会社として1961年に創業したのが始まりです。現在はコンテンツ配信、店舗・施設ソリューション、通信・エネルギー、金融・不動産・グローバルなど、多岐にわたる事業を展開しています。当社グループでは、どの事業においても、常に「社会課題の解決」という共通の目的を持っています。お客様の生活に直接触れ合う機会も多く、誰かの役に立てていることを実感できるとやりがいを感じます。今後もお客様に寄り添いながら事業に取り組んでいきます。 ■求める学生像を教えてください さまざまな事業を手がけていますので、好奇心旺盛で物事を多角的に捉えられる方を求めています。また、今まで培ってきたことを素養にして、そこからどんどん変化していける方が良いですね。変化できる人はさまざまなことに興味があるため情報感度が高く、誠実さも持ち合わせていると思います。面接では話している内容だけでなく、その方が持つ人となりや表情など「素の面」を重視して見ています。スキルがあるかどうかよりも「自分らしさ」をいかに表現できるかが鍵になります。就職活動に取り組むなかで、対話や内省を繰り返しながら本来の自分に対する理解を深めることで、視野や視点が変わり、表面的ではない本質的な質問の意図を汲み取れるようになると思っています。また、日常生活のなかでもスピード感を持ってアクションを起こすことを意識できる方は成長が早いです。 ■学生へのメッセージを 就職活動は学生と企業のマッチングのようなものだと思います。内定まで困難なことも多いでしょうが、是非楽しみながら、企業や社会を知って、面接ではイキイキとした姿を見せていただきたいです。また、家族や友人、周りの方々との対話も大事にし、自分の人生を振り返りながら「本当の自分」を見つけるきっかけにしてみてください。 学生新聞2025年4月号 国際基督教大学2年 若生真衣

人事

日本テレビ放送網株式会社 人事局人事部主任 秋山雅美

日本テレビ放送網株式会社 人事局人事部主任 秋山雅美(あきやままさみ) ■プロフィール 2008年日本テレビ入社。スポーツ局でディレクターとして野球や柔道、フィギュアスケートを担当し、オリンピックや大型スポーツイベントの現地取材などを多数経験。Going! のプロデューサーを経て、2022年より人事局人事部で新卒採用などを担当。 テレビ局は今、変革のとき。安全かつ正確な放送が使命なのはもちろん、地上波だけでなく配信やイベント、舞台、映画…。「多様なコンテンツの創造」を目指している。 ■業界の特徴を教えてください 業界の魅力は「文化」を創り出せることです。学校や職場の話題の中心になったり、社会現象の発端になったりもします。日本テレビでは今、「コンテンツ中心主義」を掲げています。テレビ離れと言われる昨今、実は「コンテンツ」自体は以前に増して求められており、出口がテレビだけでなくSNSや配信プラットフォームなど多様化してきているといったほうが良いかもしれません。また、海外マーケットでのフォーマット販売・コンテンツ販売にも力を入れており、『マネーの虎』や『はじめてのおつかい』など、世界中にそのフォーマットを販売しているコンテンツもあります。当社では常に良質なコンテンツをマス向けに作ることを意識しています。日本中の人たちに楽しんでもらえるように、また、安心して見ていただけるような信頼されるコンテンツ作りが一番だと考えています。 ■求める学生像を教えてください 1つ目は「普通の感覚」を持った人を求めています。マス向けに仕事をしているからこそ一般的な考え方、人の気持ちに寄り添える「人間力」のある人を求めています。また、テレビの仕事はチームワークが大切です。個人の能力よりもチームでいかに仕事ができるかが問われています。24時間テレビや箱根駅伝などは1000人以上のスタッフがかかわって仕事をしています。 2つ目は「課題解決力」のある人です。24時間、番組を放送しているからこそ問題を瞬時に解決できる力が必要です。最後の3つ目は「熱量を持って好きを突き詰めていける人」です。放送は締切があるものなので、追いつめられる瞬間もあります。いいものを作りたいという熱量を持って細部にこだわる人は、同時に“これのためなら”と最後まで諦めないタフな人でもあると思います。当社は若い人の成長を全力でサポートする体制があります。安心して仕事ができると思います。 ■学生へのメッセージを 学生らしいことをたくさんしてほしいです。アルバイトや旅行、テレビを見るなど、いろんなインプットをしてください。妄想、空想、想像することは将来すごく力になると思います。そして、気軽にエントリーしてほしいです。あなたの好きを仕事にできることが日本テレビには必ずあります。 学生新聞2025年4月号 東洋大学3年 橋本千咲 東洋大学3年 橋本千咲/東洋大学2年 越山凛乃/上智大学3年 網江ひなた

学生新聞インターン

東急株式会社 取締役社長 社長執行役員 堀江 正博

開発地域の価値を高める、比類なき東急のまちづくり 東急株式会社 取締役社長 社長執行役員 堀江 正博(ほりえ まさひろ) 1961年、福岡県生まれ。1984年に慶應義塾大学卒業後、東京急行電鉄(現:東急)入社。2002年、東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント社長。2003年、東急リアル・エステート投資法人執行役員(代表)。2015年、東京急行電鉄執行役員生活創造本部リテール事業部長。2016年、取締役執行役員生活創造本部リテール事業部長。2020年、取締役執行役員ビル運営事業部長。2022年、取締役常務執行役員を経て2023年6月、社長就任。 鉄道と不動産を中心に、スケールの大きなまちづくりを長期的な視点で手掛ける東急。多様な事業を展開する東急グループだが、その地域コングロマリット型経営について、トップとして舵を取る堀江社長に学生時代の経験や東急入社の決め手、まちづくりにかける想いなど東急の今後の展望とともにお話を伺った。  私は慶應義塾大学法学部出身ですが、在学中は体育会競走部に所属し、短距離走を専門とする選手でした。特に400メートルリレーには力を入れ、インカレ2位、日本選手権3位という成績を収めました。しかし、当時の筑波大学は圧倒的な強さを誇り、日本代表のリレーチームのほとんどが筑波の選手で構成されていました。勝つことの難しさを痛感すると同時に、強い相手と競い合うことの面白さを学びました。  在学中は競技だけでは飽き足らず、「関東法学部学生親善陸上競技大会」という公認大会を立ち上げました。これは体育会、同好会を問わず参加できる大会で、多くの学生アスリートに挑戦の機会を提供することが目的でした。キャッチフレーズは「健全なリーガルマインドは健全な肉体に宿る」。運営にはスポンサー集め、競技場や審判団の手配など多くの困難がありましたが、それを乗り越えた経験は、社会に出てからのキャリアにも活きています。  また、学業にも力を入れ、政治・経済・社会学など幅広い分野について学びました。当時から将来的には企業の経営に関わる仕事をしたいと考えていました。 ◾️東急を就職先に選んだ理由  東急を志望する決め手となったのは、まちづくりや生活サービス事業など、鉄道以外にもさまざまな事業領域で仕事ができることに魅力を感じたからです。入社後の配属面談では「10年間で5カ所異動したい」という希望を出し、鉄道部門で駅務や車掌を経験し、その後、不動産、ホテル、リテール事業と多岐にわたる部門を経験しました。こうして多様な業種を経験することで経営の全体像を学ぶことができました。 ◾️東急グループの経営の特徴 東急の特徴は「地域コングロマリット型経営」です。鉄道、不動産、リテール、ホテル、エンタメなど多様な事業が相互に連係しながら発展しています。たとえば、鉄道の沿線開発が進むことで人口が増加し不動産価値が向上、商業施設やエンタメ施設の需要が高まるといった好循環を生み出します。そのため、業種が異なっても配属された部署に柔軟に適応し、前向きに挑戦する姿勢が求められます。私は「どんな部署でも学びがあり、経験は必ず将来に活きる」と考えています。  また、一般的に鉄道会社としての印象が強かった東急ですが、実際は、単なる鉄道会社ではなく、まちづくり全体に関与する企業です。都市開発に携わる仕事に魅力を感じて入社し、まちづくりの最前線で働くことのやりがいを認識しました。私のキャリアの中で特に印象的だったのは、都市開発や再開発に携わったことです。再開発を進める際には、地域の状況を把握しながら適切な計画を立てることが重要です。まちづくりは単なる建物の建設ではなく、周囲の環境や交通、商業施設とのバランスを考えながら進めていくものです。地域の課題を解決しながら、そこに住む人々の暮らしをより豊かにすることが、まちづくりに携わる者の使命だと考えています。 ◾️まちづくり会社としての東急  東急は鉄道と不動産開発を核としながら、商業施設や住環境の整備を一体的に進め、渋谷や沿線といったエリアに長期的に関与することを特徴としています。たとえば、渋谷の再開発では鉄道、オフィス、商業施設、ホテル、エンタメなど多様な要素を組み合わせて、まち全体の価値向上を目指して開発を行います。また、コロナ禍のさなか、新宿では東急歌舞伎町タワーを建設し開業にこぎつけました。インバウンド需要を見据えた施設設計、文化・芸術を取り入れたイベントの開催など、あらゆる角度からまちづくりを行い、まち全体の付加価値を上げるべくさまざまに取り組んでいます。  当社は「循環再投資モデル」を採用し、商業施設やインフラの収益をまちの発展に再投資することで、長期的な視点で地域の価値を向上させる戦略性を有しています。この長期的な視点を持った都市開発こそが、東急のまちづくりの強みであり、企業としての独自性を際立たせる要素です。そのため、単に建物を建てるだけでなく、鉄道やバス、オフィス、商業施設、住宅などあらゆる用途の利便性向上に努め、まちの魅力を持続的に高めています。 *message*  最後に、大学生の皆さんに伝えたいことが3つあります。1つ目は、「海外や地方を巡り、視野を広げてほしい」ことです。社会人になるとまとまった時間を取るのが難しくなります。今のうちに多様な文化や価値観に触れる経験を積んでください。2つ目は、「さまざまなアルバイトを経験してほしい」ことです。社会に出てからの仕事と共通する部分が多くあると思います。実践的な経験は、どんな業界に進んでも役立ちます。3つ目は、「20代はじっくりと仕事に向き合う」ことです。最初の会社でしっかりと経験を積み、専門性を磨くことが将来的なキャリアの基盤となります。すぐに転職するつもりで働くのではなく、まずは目の前の仕事に全力で取り組み、自分の価値を高めることが重要です。  どんな経験も糧になります。皆さんの挑戦が、未来のまちづくりや社会の発展につながることを期待しています。 学生新聞2025年4月発刊号 慶應義塾大学3年 能願結 武蔵野大学4年 西山流生/慶應義塾大学3年 能願結

イベント・企業紹介

「新しい東武カード」発表会&アンバサダー就任記念イベント

左:公式アンバサダー 松下雄一郎さん/右:マッスル応援ゲスト 武田真治さん 東武マーケティング株式会社(本社:東京都豊島区、代表:鈴木熊野)は4月3日(木)、東京スカイツリーイーストタワー(東京都墨田区)にて、「新しい東武カード」発表会&アンバサダー就任記念イベントを開催しました。東武カードの誕生から40年を迎える節目に「スタイリッシュ&パワフル」をテーマに、新しい「東武カード」が、5月29日(木)より発行が開始します。イベントゲストには、公式アンバサダーに就任したタレントでフィットネスモデルの松下雄一郎さん、マッスル応援ゲストとしてタレントの武田真治さんが登壇しました。 ◾️東武マーケティング株式会社 代表取締役 鈴木熊野 新しい東武カードに構想3年、実準備3年、実に6年の歳月をかけて準備してまいりました。東武ポイントが始まったのが、2020年11月ですので、東武カードは東武ポイントが始まる前から裏側で準備を始めています。その当時から決めていたコンセプトが「スタイリッシュ&パワフル」です。それは、縦型のカードにスカイツリーが描かれたスタイリッシュなデザイン、そしてポイントは最大の還元率にすることを決めていました。 ◾️ アンバサダー 松下雄一郎 / 応援ゲスト 武田真治   松下:「今回、東武カードさんのテーマが“スタイリッシュ&パワフル”ということで、お声がけいただきました。実はこのCM撮影のために15キロダイエットをした上で臨み、編集前の素材を見て自分でも『いいな』と思うくらいの筋肉の隆起だったんですけれども、編集していただいたら大分ソフトになっていて、逆に名誉だなと感じました。本当に魅力あふれるパワーアップした東武カードなので、その魅力を1人でも多くの方にお届けできるように頑張って活動していきたいなと思います!」 松下:「脂っこい食事を控えて、コツコツと毎日1~2時間のトレーニングを積み重ねています。」 武田:「やっぱり、やってみたいことや、自分がやりたいなと思うことを日々楽しみながら生活の中に取り込むことで、スタイリッシュ&パワフルな人間になっていられると思います。」 武田:「今までポイントのことやカードのことをよくわかっていなかったんですけど、いろいろ勉強になりました。この東武カードを持ってポイントを貯めて、ますます楽しい豊かな生活を送りたいと思います!」 松下:「東武カードがパワーアップ!」 学生新聞オンライン2025年4月3日取材 昭和女子大学2年 阿部瑠璃香/城西国際大学2年 渡部優理絵