山梨県知事 長崎幸太郎

山梨が世界へ羽ばたくために挑戦を恐れない

山梨県知事 長崎幸太郎(ながさきこうたろう)

■プロフィール
昭和43年東京都生まれ。東京大学卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。在ロサンゼルス総領事館領事、山梨県企画部総合政策室政策参事、財務省主計局地方財政係主査などを歴任。平成17年9月から衆議院議員を通算3期務める。平成31年2月に山梨県知事に就任し、現在2期目。県民一人ひとりが豊かさを実感できる山梨の実現に向け、県政運営に全力で取り組んでいる。

ジュエリーやぶどう、桃などの特産品で知られる山梨県だが、実はリニア中央新幹線の開業を見据えた地域交通の高度化や水素エネルギーの実用化、医療機器産業の海外展開など世界基準の挑戦を続けている。「頑張れば報われる地域社会をつくる」ことを根本的な価値感と位置づけ、日々奮闘されている長崎知事に地域づくりや山梨県の展望について伺った。

大学時代を振り返ると、前半2年間は決して勉強一筋ではありませんでした。東京大学ではゴルフ部に所属し、ゴルフや麻雀に夢中になる日々を送っていました。実はゴルフ部に入部したきっかけは、数学の家庭教師をしてくださっていた林修先生とのご縁からです。自分の将来について真剣に考えるようになったのは2年生の終わり頃です。当時はバブル景気の真っただ中でしたが、その一方で経済格差も広がっていました。私は税制や財政の仕組みを通して社会をより良くしたいと考え、大蔵省(現在の財務省)を目指して猛勉強をしました。元々、政治への関心がありましたが、当時、政治家の家に生まれていない人間が政治家になるには、霞が関を経由することが現実的な道でした。そのためまずは霞が関を目標にしたのです。

■政策を形にしたいという思い

大蔵省勤務を経て衆議院議員となり、政策づくりに携わるようになりました。しかし無所属議員となった時期には思うように政策形成へ関われず、もどかしさを感じました。
その分、地域に根付いた活動を行い、重度心身障害児の受入施設の不足や非正規労働者の将来不安など、さまざまな問題が見えてきました。自らの責任で地域を変えたい、思いっきり自分を試してみたいという気持ちが強くなり、山梨県知事選への挑戦を決意しました。

■「頑張れば報われる地域社会をつくる」

これが県政の根本的な価値観です。働く世代には学びやスキルアップに努めてもらい、それが企業の収益向上につながったならば、賃金上昇という形で正当に還元される社会を目指します。
これまで日本では、企業収益が伸びても賃金に十分反映されず、働く人が努力の手応えを感じにくい状況が続いてきました。しかし、頑張っても報われない環境では意欲は育ちません。だからこそ、成果を適切に分かち合う仕組みが必要です。
一方で、挑戦する機会そのものが家庭環境によって左右されてはなりません。経済的な事情で勉強やスポーツを諦めることがないよう、あらゆる子どもが学びや指導を受けられる環境をつくるため、少人数教育を進めています。

■医療機器産業への挑戦

本県の機械電子工業は半導体製造装置関連が中心ですが、半導体産業は景気変動の影響を受けやすく、雇用の不安定さが課題でした。
そこで、半導体製造装置で培われた技術を医療機器産業へ展開する取り組みを進めています。医療分野は今後も成長が期待される産業です。右肩上がりの市場へ進出することで、安定した雇用を生み出し、県民が将来の見通しを持ちながら人生設計を描ける社会の実現を目指しています。

■リニアが変える山梨の未来

山梨県の未来を語る上で欠かせないのが、リニア中央新幹線です。私は、富士山登山鉄道構想から生み出された「富士トラム」という新たな交通システムを推進しています。「富士トラム」はレールを敷設せず、道路の白線などを読み取りながらタイヤで走行する次世代型モビリティで、電車とバスの特徴を併せ持つ交通システムです。環境への負荷を抑えながら、富士山観光と地域交通を両立できる仕組みとして期待しています。
「富士トラム」は富士山のオーバーツーリズム対策として提案したものですが、現在はリニア駅との接続を視野に入れた検討も進めています。富士山の玄関口にすることでリニア山梨県駅の乗降客数を増やし、リニアの停車本数の増加につなげたいと考えています。
リニアが開業すれば、品川まで約25分。羽田空港へも約1時間で移動できます。豊かな自然の中で暮らしながら都心へ通勤できる、新しいライフスタイルも実現できると考えています。

■若者の挑戦を応援する県づくり

私は、若い世代には積極的に挑戦してほしいと考えています。山梨県では少人数教育をはじめ、インドやベトナム、アメリカ・カリフォルニアとの国際交流、アート交流など、多様な価値観に触れる機会を提供しています。外を知って刺激を受けることで選択肢が増えると思います。
さらに、起業を志す若者を支援する拠点づくりや、先輩起業家との交流機会を増やし、挑戦へのハードルを下げる環境づくりも進めています。
山梨には、昔から甲州財閥に代表される開拓者精神があります。地域全体で挑戦する人を支える文化が根付いていることも、本県の大きな魅力です。

■世界へ挑む山梨

現在、山梨県は水素エネルギーの分野で世界最先端レベルの実用化を進めています。その取り組みは海外からも高く評価されており、人口2億5千万人のインド・ウッタルプラデーシュ州などとも連携が進んでいます。また、フィジカルAIの時代においても、山梨県の企業は世界中のメーカーに不可欠な部品や材料を作り出すことができます。完成品だけが価値を持つ時代ではありません。世界を支える基盤技術こそ、山梨の強みだと思っています。
賃金水準という課題を乗り越えれば、山梨県は世界と直接つながる大きな可能性を持っており、その景色を必ず実現したいと考えています。

■大学生へのメッセージ

大学生活は、自分の可能性を広げられる貴重な時間です。私自身も学生時代は遊びに夢中になった時期がありましたが、将来について真剣に考えたことで人生が大きく変わりました。挑戦には失敗もあります。しかし、挑戦しなければ新しい景色は見えません。ぜひさまざまな人と出会い、多様な価値観に触れ、自分の可能性を信じて行動してください。その経験は必ず将来につながります。皆さん一人ひとりの挑戦が、日本、そして世界の未来を切り拓く力になることを期待しています。

学生新聞オンライン2026年7月1日取材 京都芸術大学1年 猪本玲菜

中央大学1年 服部将昌/京都芸術大学1年 猪本玲菜/法政大学3年 高原明希/情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/中央大学1年 大山祥

関連記事一覧

  1. No comments yet.