横河電機株式会社 取締役 代表執行役社長 重野邦正
挑戦を続け、社会インフラの未来を支える

■プロフィール
1968年生まれ。岡山県出身。九州工業大学卒業後、1991年横河電機に入社。エンジニアとしてキャリアをスタートし、海外でのプロジェクトマネジメントや中東・アフリカ地域の現地法人の経営に携わる。「A commitment made is a commitment kept」(有言実行)という座右の銘のもと、社会とお客様の課題の解決に向けてYOKOGAWAグループをけん引している。
1915年に創業された横河電機株式会社。石油・ガス、化学、電力、食品、医薬品、水処理など、社会インフラを支える産業向けに製品やソリューションを提供し続けるB to B企業である。63ヵ国で事業を展開しているグローバル企業だ。横河電機株式会社は、「社会を支える企業を支える会社」だと語る重野社長にお話を伺った。
学生時代は夏休みや冬休みに地元へ帰り、白桃やマスカット、スイカなどの販売アルバイトに打ち込んでいました。スーパーの店頭ではハチマキを締めて威勢よく呼び込みをし、百貨店ではスーツにネクタイ姿で接客をしていました。同じ商品でも売る場所によってお客様も売り方もまったく違います。販売する現場ごとの空気を感じながら、「どうすれば商品を手に取ってもらえるか」を常に考え、工夫を重ねる日々でした。
■商売の原点はアルバイト
スーパーで呼び込みをしていたとき、お客様から「どれが一番おいしいですか」とよく聞かれました。最初は一番良いものを勧めていましたが、最後には百個近い商品をすべて売り切らなければなりません。なので、どう説明すれば最後まで納得して買っていただけるのか、どうすれば売り切れるのかを必死に考えていました。また、売上が一定額を超えたらインセンティブを支給するという制度もありました。当時は必死に売りましたが、今振り返ると、その目標は社長が絶妙に設定したものだったのだと思います。人が挑戦したくなる仕組みやモチベーションの大切さを、このアルバイトを通じて自然と学ぶことができました。今思えば、商売や経営の面白さを知った原点だったのかもしれません。
■横河電機との出会い
大学では理系を専攻し、研究室で横河電機の製品を使用していました。教授から「横河電機は宣伝をしなくても売れるほど品質が高い会社だ」と聞き、その言葉をきっかけに横河電機という会社を意識するようになりました。当時はバブル期で、生涯賃金という言葉もよく聞かれる時代でした。メーカーの中でも待遇面に魅力を感じていたことに加え、品質への信頼や世界で活躍できる可能性に惹かれ、入社を決意しました。
■現場で知ったものづくりの感動
入社後はエンジニアとして、工場やプラントの制御システムの立ち上げを担当しました。特に印象に残っているのが、台湾の製鉄所での仕事です。スクラップから溶かした1500度超えの真っ赤な鉄を使うのですが、その巨大な設備を何カ月もかけて調整し、初めて製品として鉄が流れ出た瞬間は感動的でした。現場にいた技術者全員と、作業の手を止めて万歳をしたことを覚えています。サイトマネージャーが涙を流す姿は今も忘れられません。
一つのプラントを完成させるためには、多くの企業、多くの技術者が力を合わせます。自分たちの技術が社会を支えていることを実感できた瞬間であり、ものづくりの仕事を選んで良かったと心から思いました。
■社会インフラを支える使命
横河電機は創業110周年を迎えました。主力製品である制御システムは50年以上にわたり世界中のプラントで使われています。
私たちの技術は、石油・化学プラント、発電所、浄水場、ごみ焼却施設など、人々の生活に欠かせない社会インフラを支えています。24時間、365日止めることのできない設備だからこそ、高品質・高信頼が何より重要です。
現在は売上の約73%が海外です。世界各国で営業・サービス体制を築き、納入して終わりではなく、その後も長期間にわたりお客様を支える「Trusted Partner」であり続けることを大切にしています。
■信頼を積み重ねることが最大の強み
私たちの仕事は、製品を納めて終わりではありません。プラントは何十年にもわたって稼働し続けるため、導入後の保守や更新、トラブル対応まで、お客様と長い時間を共にします。設備に不具合が起これば、生産や社会インフラに大きな影響を及ぼす可能性があるため、迅速かつ誠実な対応が欠かせません。
私が横河電機の最大の財産だと考えているのは、人です。技術力はもちろん大切ですが、お客様の立場で最後まで責任を持って向き合う姿勢こそが、長年にわたる信頼につながっています。世界中で事業を展開する現在でも、日本で培ってきた品質へのこだわりや責任感は変わりません。だからこそ、困ったら横河電機に相談しようと思っていただける存在であり続けたいと考えています。こうした信頼の積み重ねが、創業から100年以上にわたり事業を続けてこられた理由であり、これからも大切に守っていきたい企業文化です。
■挑戦する会社へ変わる
これからの横河電機は、単にお客様からの依頼に応える会社ではありません。AIによる自動化やCO₂削減、省エネルギーなど、新しい価値を自ら提案する企業へ変わろうとしています。
そのためには、現状維持ではなく挑戦が欠かせません。私は社員に、「現状維持では脱落していく」と伝えています。失敗を恐れず、挑戦してほしいと伝えています。新しい技術や発想に挑戦する人が、これからの会社をつくっていくと考えています。
■大学生へのメッセージ
就職活動では、自分の強みや志望動機を一生懸命考えると思います。しかし、そこにこだわり過ぎる必要はありません。仕事は何十年も続きます。本当にやりたいことや自分の強みは、社会に出てから見つかることも少なくありません。
だからこそ、自分の可能性を最初から狭めず、幅広い視野でさまざまな会社や仕事に触れてください。若いうちは失敗を恐れず挑戦できる大きな強みがあります。その挑戦の積み重ねが、自分自身の成長だけでなく、社会を支える力にもつながっていくと私は信じています。
学生新聞オンライン2026年7月9日取材 京都芸術大学1年 猪本玲菜

京都芸術大学1年 猪本玲菜/成城大学1年 牧村実知/早稲田大学3年 伊藤健太


No comments yet.