株式会社プロラボホールディングス代表取締役会長・グループ代表兼CEO 佐々木広行

働くこと、仕事をすることの目的を突き詰めていく

株式会社プロラボホールディングス代表取締役会長・グループ代表兼CEO 佐々木 広行(ささき ひろゆき)

■プロフィール

早稲田大学卒業後、一部上場企業勤務を経て、1998年総合マーケティング会社を設立。ブランディング戦略やPR企画などの企業コンサルティングを手掛ける。その後、2002年に株式会社エステプロ・ラボ(現・株式会社プロラボホールディングス)を設立し、代表取締役に就任。ブランド立ち上げから15年で、国内約13,500店の美容・健康施設と海外9ヵ国に展開するサロン専売ブランドに成長させる。

インナービューティプロダクツを国内外に展開しているのが、プロラボホールディングス。「経営者になりたい」という思いから起業した佐々木社長の身の上に次々に起こったトラブル…。詐欺被害にまで遭って、とことん自分を見つめ直した末に見えてきた経営の本質とは?熱いトークを伺ってきました!

■経営者になりたいと思い続けた学生時代

 学生時代から「いつか経営者になろう」と心に決めていました。田中角栄氏、マクドナルドの藤田田氏などに憧れ、彼らの本をよく読んでいましたね。だから「就職」という選択肢は自分にはないと思っていたのですが、友人の就活に付き合って、1社だけ受けたところ、たまたま内定をいただきました。それでも気が進まなかったのですが、社会人の先輩から「とりあえず経験を積んだら」と助言を受け就職しました。

30歳で起業したものの、受注ゼロが続く日々

 その後、「自分で何かやりたい!」という思いから、30歳のときに独立しました。起業の資金は川崎市創業支援制度を活用し、1100万円の融資を受けて、フリーペーパーの広告ビジネスを始めました。田園都市線沿線で新聞への折り込み情報誌として20万部のペーパーを発行したのですが、6ヵ月の間、1日120件まわっても1件も受注できず…。
 また、紙面も広告がベタベタとただ掲載されているだけだったため「、読みづらい」といったクレームも多くありましたね。何のノウハウも実績もなく、楽観的な見通しで始めたため、今考えればうまくいくはずがないのですが、お金をもらって仕事を取るにはこんなにも「信用」が大事なのか、と痛感しました。
 6ヵ月が過ぎたころ、知り合いの社長が広告掲載してくれたことを契機に、少しずつ案件が増えていきました。そして紙面のクオリティを上げるために、デザインや校正などプロの方を募集し採用したところ、ぐっと良い紙面になり、クレームも減ったんです。
 素直に助けを求め、学びを請うことの大切さを知りました。

■やっと成功したと思った矢先の急展開

 紙面リニューアルを担い、私を助けてくれたのは、多くの女性でした。「かつてバリバリと働き、スキルと経験を豊富に持った女性」にたくさん出会ったんです。
 そこで、主婦の空き時間で得意な仕事をしていただく「ミセス人材バンク」のアイデアを思いつきました「。田園都市ミセス1万人ネット」と銘打ってサービスを始めると、政治家や不動産などの広告が集まり始めました。やがて女性の集客やマーケティングに強い会社のような存在になってきた。ビジネスはどんどん軌道にのり、社員も30名くらいに増えていったんです。
 そんな時でしたね。詐欺で7000万円を騙し取られてしまったんです。
 銀行の借入金が返せなくなり、自分の給料も2年間ゼロ、社会保険も払えず、保険証も取り上げられてしまいました。子どもが風邪をひいても、(保険が効かなくて)高額だから病院に行けない。働いている人たちも不安に駆られ、続々と退社…。35歳の頃のこの時期が、いちばん苦しかったです。

■どん底の経験が教えてくれたことは

 こんなに一生懸命取り組んでいるのに、なぜ上手くいかないのだろう…と考えました。考えて考えて、どんな結論に至ったと思いますか?
 それは、受注ゼロやクレームも、そして詐欺被害も「すべての原因は自分にあった」ということでした。環境のせい、タイミングのせい、詐欺のせい…と、いろいろなことに責任を転嫁してきたけれど、それを招いたのはまぎれもなく私自身、自分の「思い」がそうさせていたことに気づいたんです。自分の成功、自分の幸せしか考えていない一生懸命は、偽りなんですよね。
 良い思想の種を植えて、人格を造り、良い運命が創られていく。この時の気づきは、今の当社の社員教育内容の大きな根幹をなしています。

■会社は誰のために存在しているのか

 先ほどの自分原因説に加えて、「目的経営」を最重要視しています。会社には目的がないと長続きしません。目標の先にある、目的。つまり何のために、誰のために会社は存在しているのか、ということです。
 単なる金儲けを目指す経営をすると、必ず会社は崩れてしまいます。何のために?誰のために?そう自問自答していくと、やがて会社の存在意義──目的が見えてきます。この自分と真摯に向き合う工程は、楽なものではありませんが、欠かせないものであり、「自分に向き合う」姿勢を持つことは、社員にも徹底的に教育しています。
 プロラボホールディングスの目的は、仕事を通じて人格を高め、家族が豊かに存在すること、そしてお客様に幸せになってもらうこと、世界中の人を健康にすることです。目的の軸を「他人を幸せにすること」に置くと、ベクトルの合う良い人材が集まってきます。人に喜んでもらいたい、自分だけ良ければいいのではなく、社会を良くしたい。そんな利他の心がある社員とともに、会社を成長させていきたいのです。

■message

 いまは情報がたくさん集まる時代です。でも、情報に振りまわされない力を育ててください。本質を見抜く感性を身につけてください。
 興味があることは、レールから逸脱してもいいからチャレンジ精神をもって実際にやってみる。失敗してもやり直しはきく。私みたいにね(笑)。
 人生において、その情報は本当に必要なのか。社会に出てからも、もまれながら考えていってほしい。本当の幸せは、目標の先にある目的を自問自答していくことで見えてくるんじゃないかな。

学生新聞2020年4月号 慶應義塾大学4年 山本アンナ

慶應義塾大学4年山本アンナ / 慶應義塾大学1年 伊東美優 / 早稲田大学1年 田中智里 / 日本大学4年 藤澤歌奈 / 学生新聞アンバサダー 近藤智美

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