株式会社ぐるなび 代表取締役社長 杉原 章郎
食を通じて、世界を良くしたい! “現場主義”社長の思いとは
株式会社ぐるなび 代表取締役社長
杉原 章郎(すぎはら あきお)
1969年広島県生まれ。1996年 慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。
1996年3月 インターネットサービス会社起業。1997年2月 株式会社エム・ディー・エム(現楽天株式会社)の共同創業者として参画。2018年10月 楽天株式会社 常務執行役員 オペレーションディビジョン CHO (Chief Health Officer) シニアディレクター( Operation Division)。2019年6月 株式会社ぐるなび 代表取締役社長に就任。
楽天の共同創業者の一人である杉原氏。数々の新規事業に携わり、楽天経済圏の礎を築く。その後、営業、開発、管理部門などさまざまな経験を経て昨年、ぐるなび社長に就任した。ぐるなびはこれからどう変わっていくのか、新しいぐるなびに求められる人物像とは? 新社長の本音を伺った。
学生時代はアルバイトに明け暮れていましたね。2年目に入ってからは、大学のプロジェクトが面白くなり、学校に入り浸りながら大学の先生の仕事を手伝っていました。
当時はパソコンの黎明期だったので、プレゼンテーションの資料づくりや、パソコンを使ってプランニングができる人が少なかったのです。それが基礎力となって、その後の進路、そして今の自分に繫がっています。
起業したばかりの頃は、仕事の基本がわからなくて苦労しました。きちんと納品したのに、いつまでたってもお金が支払われない。「あの…、代金は…」と聞いたら、「請求書を発行しないと支払いできないよ!」と言われました。そりゃそうですよね(笑)。そんなことすら知らないレベルからのスタートでした。
ネット関係の仕事をする会社だったので、楽天社長となる三木谷浩史氏とは仕事を通じて出会い、後に楽天の創業メンバーとして参画することになったのです。当時の三木谷さんが抱いていた自己実現への強い思いや、「社会を良くしたい」というパワーに触れることができたのはラッキーでしたね。そのパワーに自分も感化され、「楽天をもっと大きくしよう」と、新規事業開発に取り組んでいきました。
ぐるなびの社長になってわかったこと
楽天がぐるなびと資本業務提携したことで、昨年、ぐるなび社長に就任することになりました。同じIT業界とはいえ、飲食店情報サイトを扱うのは、私自身は初めてのことです。そこで、社長になっていちばん最初にした仕事は「現場まわり」です。全国20拠点をすべてまわり、ぐるなびに加盟いただいている飲食店様を訪問し、生の声を聞きにいきました。
これはぐるなびの良いところや悪いところ、他の飲食店情報サイトにあってぐるなびにない点など、率直な意見を聞きたかったのです。飲食店様がぐるなびに期待しているサービス、改善してほしい点など、〝現場〞の声を今後われわれが提供するサービスに生かしていきたいと考えています。
外食産業は競争が激化しており、どこのお店も新しいメニューを開発したりして、お客様にリピートしてもらえるように、日々努力しています。
だからこそ地方の名店や個店の飲食店様の経営を総合的にサポートし、ぐるなびを使ってたくさんの人に知ってもらいたい。これが現場をまわって実感したことです。
ぐるなびで、現場の人といっしょに仕事をすればするほど、今まで働いてきた楽天の理念と似ていると感じました。「地域から全国へ、日本から世界へ」、この思いです。
食が好きで、日本の飲食店を世界に広めたい、お店の価値を高めたいという思いで集まっている人たちでこの会社は満たされています。それがぐるなびの魅力でもあります。しかし、それだけでは他社には勝てません。今はちょっとしたアイデアでもネットを使えばすぐ始めることができるので、飲食に関するサービスはカオス状態です。だからこそ、われわれの強い想いを後世に届けていくためにも、センスを磨き続け、新しいサービスを取り込むようにしています。いち早く新しいことに着手して、世の中に提供していくことが差別化のポイントだと思っています。
根底がひっくり返るようなアイデアを
社長になってからのこの1年間は、食に関することを真剣に考えてきました。「社会をよくするために、ぐるなびは何ができるか」をつきつめて考えると、食を通じて街を活性化することがライフワークに出来そうだとあらためて思います。街中に、単に飲食店を並べるのではなく、毎食、毎食、食を通じて健康や活力を得ることで、人々の生活をサポートする仕組みができないかと考え、ワクワクしています。若い人たちには新しい発想をどんどん出してもらいたい。いろいろなことを根底からひっくり返すくらいの勢いのある人が出てきてくれるといいなと思います。
*message*
多くの体験や経験を大学生の間にしてほしいです。今の日本の大学生は真面目に授業に出て勉強していると聞きますけれど、それでもまだ海外の大学生に比べたら時間がたっぷりあります。なんでも経験できる時期だと思うので、常に新しいことを考えて未来を切り拓くために頭を使ってほしいと思います。
旅行は歳をとってからでもできますが、冒険は若い時にしかできません。私は大学時代、バイト代を貯めて車を買ったのですが、今思えばその
お金を冒険につぎ込めばよかったと後悔しています。ほかの人がしないような経験をすることで、それが自分の強みとなり、さらに成長できます。それが社会で通用する発想力の元になっていくはずです。コツコツ努力できる人、言っていることがブレずに変わらない人は伸びます。
学生新聞2020年4月20日号より(日本大学4年 藤澤歌奈)
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