株式会社すららネット 代表取締役社長 湯野川 孝彦

EdTechによる教育事業が社会問題を解決する!

株式会社すららネット 代表取締役社長
湯野川 孝彦(ゆのかわ たかひこ)

プロフィール

湯野川 孝彦(ゆのかわ たかひこ)
大阪大学基礎工学部卒。
東証一部上場企業の事業開発担当役員として多くの新規事業を立ち上げる中、2005年に「すらら」事業を社内起業。2010年にMBOし独立。
日本eラーニング大賞 文部科学大臣賞、日本ベンチャー大賞 社会課題解決賞、SDGsビジネスアワード スケールアウト賞など受賞。
2017年東証マザーズ市場に上場。

学力や所得、地域に関わらず全ての子供が楽しく学習できるEdTech教材を提供するすららネット。その誕生の裏側には、創業者である湯野川社長のアイデアと行動力があった。周りに反対されても、自分のひらめきを形にすることで最終的に社会に求められる価値あるサービスが生まれたと語った。

学生時代は、勉強というより、アルバイトに精を出していました。遊園地や百貨店でなどで開催されるキャラクターショーでアクションものの舞台に出演していましたね。平日はチームの仲間とアクロバットや立ち回りの練習をして、土日はステージで披露するというような部活動に近い形で活動していました。毎回新しいストーリーを考えて、お客さんの反応を見ながら企画を進めていたので、自分たちの頭で考えてことを進めるということの楽しさを知りましたね。

■当時は珍しかった理系でコンサルティング会社へ就職

大阪大学基礎工学部だったので、大体の人はメーカー業界へ就職するんですよね。私もいくつか受けていたのですが、ある時友達の下宿でコンサルティング会社のパンフレットを見つけたんです。当時は理系でコンサルティング会社は珍しかったのですが「こういう仕事もあるのか、おもしろいな」と思い立ったことがきっかけで日本エル・シー・エーに就職することになりました。

■自分のアイデアを形にする

中小企業のコンサルティングは何でもやるんですよ。人事制度を作ったり、経営計画の策定や管理者研修をしたり。そこでの経験で一通り何でもできるようになりましたね。そんな中、ある夏の日に「これからはフランチャイズだろう」とふと思いついたんです。フランチャイズシステムに特化したコンサルティングをやろうと一人手を上げました。周りにはあまり関心を持たれなかったですけれど、その方向性が非常に正しくて、翌年にはチームになって、その翌年には課になってという形で最終的には事業部にまで成長しました。

■やりたいことを粘り強く提案し続ける姿勢

コンサルティングだけでは物足りなくなって、当時の社長に実業をやりたいと提案し始めました。最初は「コンサルが実業をやって失敗したら本業がダメになるからタブーだ」と反対されましたね。そう言われつつも、経営計画書に2,3年書き続けたら、ある日社長に呼び出されて「実業やってみるか?」と声がかかったんです。ダメでも諦めずにやっていると何かのタイミングで通ることがあるんですよね。 その後、イデアリンクという子会社の代表取締役社長も兼務することになって、「銀のさら」関西のエリア本部やオムライス専門店の「オムオム」の立ち上げをしたりしました。

■実業を通して分析する現場主義

教育系に携わるようになったのは個別指導の塾チェーンの支援を手掛けるようになってからです。自分たちも実際に経営をしてみないとわからないことがたくさんあるので、東京の下町で個別指導塾を一つオープンしました。生徒募集などのマーケティングの部分は上手くいったのですが、唯一生徒の成績を上げるというところだけが上手くいきませんでした。

成績が上がる子もいるけれど、学力の低い子は下がり続ける。教える人によってサービスの質に差が出るんですよね。提供すべきサービスの品質が担保されていないという個別指導塾の根本的な業務課題に気が付きました。それならいっそのこと理想のeラーニングを作ってしまおうと思い、社内に提案したのがきっかけで今の「すらら」が誕生しました。

■教育事業の問題点に気づく

教育事業は裕福な家庭の子をいい学校へ入れるという所にばかりフォーカスしがちなんですよね。塾の商品力は合格実績なので、あまり低学力の子を入れたがらなかったりします。

そこをカバーするのが低学力に強い「すらら」です。緻密に練られたアニメーションでインタラクティブに学習が進められるので、学校で成績がビリだった子やオール1の子でも効果が出るんですよ。ある日、中1の女の子が「生まれて初めて英語の勉強が楽しいと思った」と言ってくれたことがとても衝撃的でした。これは全国一の焼肉屋さんを作るよりも自分にとっては価値があるなと感じ、自分で「すらら」の事業を買い取って独立しました。

2010年の末に独立して、2011年の決算ではマイナス7千万という最初は大赤字の会社でした。門前払いを食らいながら資金調達に歩いている中、たまたまベンチャーキャピタル界のトップブランドの代表がお会いしてくれて、「すらら」の事業に賛同してくれました。このご縁がなかったら続けられなかったと思いますね。2013年には黒字化して、2017年に上場を果たすまで成長できました。

■社会問題解決につながるサービスを提供し続ける

どんな子でもわかるようにという所にこだわり、2017年には発達障害や学習障害に対応したコンテンツも出しました。また、スリランカやインドネシアといった発展途上国でも「すらら」だけで教える寺子屋を設立したりしています。クラウドサービスでは人件費などのコストが抑えられるので、スラム街などでは日本円で500円から1000円程の月謝で提供することができています。日本でも、人口減少が進んでいる地域に「すらら」を導入することで、人手不足や地理的問題にかかわらず塾の経営が可能になっています。今後も、国内外問わず、教育の力で社会課題の解決をしようという姿勢で事業を進めていきたいですね。

■message

これからどんどんと不確実性が高い世の中になってくると思います。自分の頭で考えて無から有を生み出したり、人が気づいていない課題を見つけて具体的に進めたりするような人材が求められてくるのではないでしょうか。失敗を恐れず、自分から色々とチャレンジしてみてほしいですね。

学生新聞web 2020年11月4日取材国際基督教大学 4年 鈴木菜桜

東洋大学1年 濱穂乃果  / 国際基督教大学4年 鈴木菜桜

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