株式会社アデランス 代表取締役社長 津村 佳宏

時代の変化に対応して恐れずに挑戦、チャンスを掴む

株式会社アデランス 代表取締役社長 津村 佳宏(つむら よしひろ)

■プロフィール

1963年生まれ。広島県出身。早稲田大学人間科学部卒業。 1982年3月、株式会社アデランス入社。2017年3月、代表 取締役社長兼グループCEO就任(現任)。内閣府認定公認社団法人 日本毛髪科学協会 毛髪診断士認定指導講師、早稲田大学マー ケティングイノベーション研究会所属、金沢工業大学 派遣研究員、 看護理工学会 評議員。

2018年に創立50周年を迎えたアデランス。この節目の年に、安定志向をものともせず、ベンチャースピリットこそ成長の源泉だとして社内改革を断行。その結果、創業当時から連綿と続く毛髪事業のほかに、アイブロウサロンや美髪エステなどのビューティ事業が好評を呼ぶ。このような大改革を行った津村社長に、会社の目指すべき方向についてお話を伺った。

アデランスは、私が入社したころは男性用のオーダーメイド・ウィッグ専門の会社でした。当時、ヘアデザイナーを募集していて、私は芸術や美術が好きでヘアデザインに興味があったので入社しました。新入社員は80人くらいでしたが、同期の中で居残り組になった社員が5人いました。その中の一人が私です。特にパーマがうまく巻けず、居残りで勉強しました。会社からは、このままでは技術者としての配属は難しいと言われ、デザインをやりたくて入社した私は、技術力を上げるために一生懸命に練習しました。

老人ホームや介護施設で無料のカットに参加したり、街中の人に声をかけてカットモデルをお願いしたりして技術を磨いていきました。同期が先に進んでいることに悔しさもありましたが、技術力を上げるための努力を積み重ね、ついにはアデランスの技術大会で優勝するまでになりました。鍛錬すれば不器用な人でも上手になる、努力は必ず報われることを学びました。

◾️社員の可能性の芽を摘まない

アデランスには「目指せ世界のブランド アデランス」という創業当時から掲げる大きなビジョンがあります。毛髪事業からスタートした会社は、日本だけでなく世界中に展開し、女性用のウィッグや医療分野への進出も果たしました。また、CSR活動の一環として、お子様の髪の悩みを心の傷にしないためにウィッグをプレゼントする「愛のチャリティ」にも創業10年目の頃より取り組んでいます。

創業50年という節目の年に、毛髪事業で培った技術やノウハウを生かし、美容、医療、健康のウェルネス産業に進出しました。髪が綺麗になれば顔や体も綺麗にしたくなるものです。さらにはヘルスケアのための医療も必要になってきます。

このように、事業領域の拡大を図るためには、社員にどんどんチャレンジしてもらいます。また、アデランスは海外の社員の方が日本人の社員よりも多く、ダイバーシティの考えから国籍や人種に関わらず活躍できる風土も備わっています。社員一人ひとりのやりがいが私自身のモチベーションにもなっています。

一方、部署によっては進歩がなく、業績が止まっているケースもあります。それはマネジメントの問題だと考えました。上司が長年の知識と経験から部下の意見を否定してしまい、活性化しないのです。社員一人ひとりの行動が生産性の向上につながります。もしかしたら失敗するかもしれない。しかし激動の時代を生き抜くためにも、思い切ってチャレンジする部下の、可能性の芽を摘まないことが大切です。

アデランスが54年間も続いているのは、ウェルネス産業を通して人々を笑顔にするという理念の下に、お客様への心からのおもてなしを徹底しているからです。社員全員でアイディアを出し合い、会社を活性化させ、全ての社員に活躍してもらいたいと思っています。

◾️年齢にあった美しさを引き出す

アデランスはオリジナリティにこだわっていて、これが差別化につながっています。化粧品や美容機器を取り扱っているビューステージというブランドがあります。コンセプトは「いつの時代も美しく」。本当の美しさは若いというだけでなく、その人なりの年齢の重ね方だと思います。どの年代でも美しくあるためのサポートをしたい、そう考えています。そのためには専門性が高い機関や会社と協力し、研究開発を進めていくことも必要です。

創業時より知的財産の特許を国内毛髪関連業界ではトップレベルで取るほどに、最高の技術をお客様にご提供させていただくことにこだわってきました。美容業界は約9兆円という巨大産業で競争がとても激しい。その分、潜在顧客がたくさん存在する魅力的な産業でもあります。未開の地が多い美容業界ですので、止まっている市場を見つけ出し、最高の商品を生み出したいと思っています。これがイノベーションとなり、レッドオーシャンだった美容業界をブルーオーシャンに変えてきています。

今後の美容業界はさらに二極化していくと思います。大手企業だからと言って簡単に勝てる時代ではありません。デジタルマーケティングやSNSをうまく活用し、市場を獲得していく必要があります。コア事業に頼り過ぎて保守的になると前に進めません。立ち止まっているとあっという間に市場を取られます。新しいことにチャレンジしていくことが大切です。

アデランスは4年前に50周年を迎えました。創業者の意思を引き継ぎつつ、ベンチャースピリットを持ちながらこれからもチャレンジを続けていきます。

◾️message

大学生の皆さんに伝えたいのは、年齢は最大の武器であり、可能性は無限です。将来、何をしたいか、どうなりたいか、今はまだ先が見えないかもしれません。まずはチャレンジしましょう。いろいろな経験をすることが大切です。それが血肉となって、今後のビジョンが見えてきます。始めるなら今、若ければ若いほど有利です。

学生新聞別冊2022年7月1日発刊号 明治大学4年 酒井躍

國學院大學3年 島田大輝/國學院大學3年 峯松諒太/明治大学4年 酒井躍
/日本女子大学4年  神田理苑/津田塾大学卒業 脇山真悠

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。