株式会社 吉野家ホールディングス 代表取締役社長 河村 泰貴

一生懸命に努力することが 必ず成長につながっていく

株式会社 吉野家ホールディングス 代表取締役社長 
河村 泰貴(かわむら やすたか)

■プロフィール

1968年生まれ。大阪府出身。1987年に広島の高校を卒業後、アルバイトを経て1993年吉野家ディー・アンド・シーに入社。2001年、吉野家ディー・アンド・シー企画室グループ企画室に着任。2004年、はなまるへ出向し、経営再建に貢献。2007年、同社代表取締役社長に就任。2012年、吉野家HD社長に就任し、2014年に吉野家の社長を兼務。長期経営ビジョンNEW-BEGINNINGS2025を掲げ、「飲食業の再定義」を進めている。

大学に2度入り2度中退。吉野家でのアルバイトに楽しさを覚えた若者は、正社員となり、吉野家ホールディングスの社長になった。学歴は関係ない、失敗を恐れず、興味があることに一生懸命になれ。価値は「ひと」が生み出す、という河村社長だからこそ語れる大学生へのメッセージとは。

 私にとって、大学生になるということは代の自分とその自分を取り巻く環境からのエスケープであって、学業について語れることはあまりありません。ただ、いろんなアルバイトを経験しましたね。引越センターやゴルフ場などで体力勝負になるような仕事が多かったように思います。
 さまざまなアルバイトのなかでも、19歳のときにはじめた吉野家のアルバイトにハマりました。そこで尊敬できる大人に出会えたことが私にとって価値のあることでした。また、吉野家は当時時間365日営業でしたが、社員は基本的に1店舗に1人の配置でした。つまり、ほとんどの時間はアルバイトだけで店を回すわけです。そのため、アルバイトでも責任者になれば、自分で考えて効率よく仕事を進めることができて、いろんなことを任せてもらえるようになるのです。任される、ということにやりがいを感じて熱中した結果、大学には行かなくなり、中退してしまいました(笑)。
 その後、吉野家ではアルバイト店長が導入されたのですが、そのときに、店長を任せたいと言っていただいて、いろいろ悩んだ末に、そのお話をお引き受けしました。実際に始めてみると、店長の仕事はかなり大変で、2度目に入っていた夜間の大学も忙しくて行けなくなり、結局、中退してしまいました。
 吉野家でのアルバイトを続けながら、23 歳くらいになると、ついこの間まで一緒に遊んでいた友達が急にリクルートスーツに身を包み、髪型を整えて、就活生に変わっていくのを目の当たりにして焦り始めました。手に職があるわけでもないですからね。そんなときに正社員にならないかというお話をいただきました。こんな自分を雇ってくれる会社はもう他にはないと思い、入社することにしました。

■何よりも大事なことは、一生懸命やること

 いざ入社式に出てみると、同期になる新入社員はみんな新卒ばかりです。今考えればよいことだったと思えますが、当時は最年長である以上、人の何倍も努力して仕事を早く覚えなくてはいけない、なんでもできて当たり前でないといけない、と焦りました。
 それと同時に、アルバイトではなく社員なのだ、と社員として仕事に向き合うスイッチが入るきっかけになりました。私は、「こういうものだから」という言葉がとても嫌いなんです。何事もなぜだろうと考えますし、疑問に思ったことは追求しないと気が済まないタイプです。そのため、すべてのことに一生懸命取り組み、それが習慣になったことがとてもよかったです。
 努力しているかどうかって、人の目をごまかせても自分には分かりますよね。だからこそ、自分に嘘をつかないように一生懸命勉強して努力しました。人生で初めてあんなに勉強したんじゃないかな(笑)。私はなんの取柄もないアルバイトでしたが、ありがたいことに、仕事ができるようになると次のチャンスを与えてくれる会社だったので、それが次の成長へとつながりました。

■「ひと」が価値を生み出す会社になる

 私は、「ひと、こそが価値を生み出す源泉」だと考えています。感動的なサービスはロボットにはできません、「ひと」が行うことでその価値を高めることができるのです。一方で、人件費は単にコストとして捉えがちです。しかし、私はコストではなく付加価値だと思っています。この「ひと」を大切にするのは、グループ共通の価値感になっていて、吉野家ホールディングスの魅力だと思っています。
 幸せの定義は人それぞれであり、会社は一方的に社員に幸せを提供することはできませんが、当社では、努力する人には成長のための機会が平等に与えられます。だからこそ、学歴は関係がないと思っているので、実力主義を求める方に来てもらいたいですね。逆に、年功序列とかは全くないので安定を望む方には向いていないと思います(笑)。  
 与えられた機会に、自分がどこまでできるのか、食らいついて生き生きと活躍してほしいですね。さらに、飲食・サービス業は大変だというイメージを、「楽しくやりがいのある」イメージに変えていきたいです。

■message

 大学はブランドとか偏差値とかはまったく関係がなく、学びたいことを学んでほしいですね。興味のあることを深めていってください。そして若い人に希望を持ってほしいです。未来に希望を持って早く大人になりたいと思う社会でありたいと思っています。そうでない社会なのは、我々大人の問題でもあります。ぜひ、社会や未来に希望を持ってください。大人になったらいいことがたくさんありますよ。大失敗することもいいことなんです。今のうちに失敗を恐れず、いろんなことに挑戦して自分で道を切り開いていってほしいです。

学生新聞2021年4月号 東洋大学1年 濱穂乃香

津田塾大学3年川浪亜紀/慶應義塾大学1年伊東美優/東洋大学1年濱穂乃香/日本女子大学2年神田理苑/横浜市立大学3年小熊結菜/淑徳大学1年本村彩羽/慶應義塾大学1年宮田峻輔/日本大学3年大橋星南/日本大学3年辻内海成/駒澤大学4年安齋英希


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