参議院議員 塩村あやか

与党を動そう。野党だからできる事がある

参議院議員 塩村あやか(しおむらあやか)

■プロフィール

1978年7月広島県で被爆2世として生まれる。共立女子短期大学卒業。
放送作家(オフィス・トゥー・ワン所属)として「シューイチ」「24時間テレビ」などを担当。動物ボランティア活動等を経て、2013年世田谷区より東京都議会議員選挙に初当選。2017年衆議院議員総選挙に出馬し惜敗の後、2019年参議院選挙にて東京都選挙区で初当選。

様々な仕事をしていく中で見えてきた社会問題。自身のライフワークでもある動物愛護。様々な社会問題に目を向け積極的に行動している塩村あやか氏。これまでの取り組みに加えて、1人の女性政治家として世の中をどう動かしていくのか。今後の展望についても伺った。

■「女性の働き方」を意識した放送作家時代

大学時代は仕送りがなかったため、奨学金と稼いだお金のみでの生活をしなければいけなかった。本当にお金を稼がなければ暮らしていけなかったので、バイト尽くしの学生時代を送りましたね。学校に行って、その後生活をしていくためのお金を稼ぐためにアルバイトをする。その往復の学生時代でした。友達と遊びに行ったのは、1回ぐらいしかないですね。

大学卒業後は、就職はせず、非正規でモデルやタレント業をしながら、アルバイトをしていました。いわゆる「就職氷河期」でした。その後は、海外にも行ったりしましたね。20代後半には『恋のから騒ぎ』という番組に出演していました。その時に、番組スタッフである放送作家に興味を持ち、その番組に出演しながら、女性放送作家講座に通いだしました。それをきっかけに、放送作家として仕事をスタートしました。
しかしながら、放送作家の仕事は、非正規なのでボーナスもないし、休みもない。産休や育休がない。仕事自体は奇跡的に軌道にのりましたが、30歳を超えて周りを見渡すと、女性は作家講座の仲間を含めて殆ど残っていませんでした。それも当然のことで、待機児童問題が酷い時期で、不安定な非正規だとポイントが足りず、保育所に入れず子どもは自分でみることになる。安定した会社員の夫婦の方がポイントが高く優先的に保育所に入れる時代でした。放送作家はフリーランスですから、休んだ瞬間に収入は0になる。非正規産休もない時代で、育休も然りです。その時、自分自身に対する将来が不安になるのと同時に、「これはどういうことなのか。女性の働き方をどうにかしなければ」と考えました。
「女性の社会進出が必要だ」といいながら、安定した家庭のお子さんは保育園に入ることができるのに、非正規の女性がいる家庭は保育園に子供を預けにくい。その現状をなんとかしたいと私は思いました。そこで、この問題に真っ向から取り組むために、政治スクールに通い、2013年の東京都議選に出馬したのです。

■放送作家時代から力を入れていた動物愛護

政治家になる前携わった『今日のわんこ』という番組では、リサーチの仕事をしていました。個人的にも、関東圏の保健所に入った猫の里親探しをして、里親に猫を渡す動物愛護の活動を続けていました。
また、いまだに記憶に残るのが、東日本大震災です。当時、放送作家としてラジオの仕事もしていたのですが、番組で応募してもらった犬のことが心配で、連絡を取ったりもしました。
当時、動物愛護団体にも入っていたのですが、被災地から寄せられる連絡は悲惨なものが多かったです。さらに、その後、原発による警戒区域として封鎖された福島に行き、犬の保護活動でのボランティアもしました。以降も、私はずっと動物愛護について発信を続けていきました。特に私も保護猫と暮らし、家族同然でしたので、災害時のペット同行避難についても発信をしていきました。

政治家になった後、直面したのが、劣悪なペットショップで10年以上動物が放置されていたという事件です。どうにかしたいと思ったのですが、こうした事例は全国でもでも初めてとのことで、日本初の行政処分が下されるまで60回以上の指導を重ね、期間としては1年間くらいかかりました。なぜ、こんなに時間がかかるのかというと、動物愛護法には、飼育環境の劣悪さや飼養施設面積に対して、法的な数値がないから、行政の介入しづらいのだということに気が付きました。数値規制がない中、日本初の行政処分を下させた実績を買われ、当時都議会議員だった私は超党派の国会議員で構成される動物愛護議連のアドバイザリーボードに任命され、2019年に改正された「数値規制」の実質的担当として何度も環境省と対峙をすることになりました。無事に法改正が成立し、2021年、ようやく、飼育環境に関する数値を決めることができました。

■今後求められるのは、不妊治療への法整備

今、生まれている新生児のうち、16人に1人が不妊治療で生まれています。それだけ多くの子どもが不妊治療によって生まれているにもかかわらず、長い間、議論が後ろ向きで、ちっとも整備が進んでいませんでした。多くの人は、不妊治療を経て、精神的、肉体的、経済的な負担に苦しんでいるのに、それを表向きには出していません。
現在、税金がいかに無駄に使われているかを考えると、こうした不妊治療に苦しんでいる女性に向けた補助の引き上げや保険適用に使うべきだと私は考え、当選後早速党内で不妊治療のワーキングチーム(WT)の設立を党幹部に直談判に行きました。紆余曲折あったものの、国会の中でいち早くWTができ、衆参の本会議で「不妊治療の保険適用か、同等の補助の拡大」を訴え、この動きをメディアも大きく取り上げました。

そうなると、与党の中にも同じ考えの人達もいて、動くんです。結果として来年度には、不妊治療の保険適用がスタートする予定です。メディアはこうした動きは報じませんが、これが政治であり、野党や女性議員が必要な大きな理由です。

費用面はクリアになったものの、卵子提供や精子提供などの高度生殖医療では、「遺伝子上の親」「産んだ親」「育てた親」が一致しないケースも出てきます。「知る権利」なども含め、子どもを一番に考えた議論が必要になってきます。また、同姓カップルに対して、精子や卵子の提供は違法ではないものの、認められていません。それゆえ、ネット上での売買も行われていますが、トラブルやリスクは高いです。本来ならばきちんと法律を作るべきなのに、様々な意見があり、時間をかけて議論する必要があります。不妊治療に関するベースができたので、議論を起こす口火は切れたはず。今後は苦労して築いたこの土台の上に、いかに多様なケアを進めていくことができるのかが論点。期限を区切って一定の方向性を出すことになっています。

■長期の目標に向かって、逆算する人生を歩んでほしい

学生時代は、遊びも勉強もしっかり楽しんで欲しいです。学費の面で、バイトも大変だとは思いますが、友達と遊ぶ事も大切だと思います。もっと言いたいことは、若いうちは何回失敗しても大丈夫。私自身、何度も仕事が変わっていますが、なんとか生きていけています。何を目的にして仕事をしているのかという芯があれば、仕事はどんな事でもこなせると思います。やりたいことをやって、悔いのない人生を是非送って下さい。私は過去様々な事で失敗してきましたけど、振り返るといい経験になっています。ですので、若いうちにいろいろ挑戦してみて下さい。
あとは、目先に惑わされない人生を送ることも大切です。人は「いまある目の前のことをやらないといけない!」と思ってしまいますが、長期的な目標の方が実は大切です。ですから、短期、中期、長期というそれぞれの目標を立てるなかで、何よりも長期の目標に向かって逆算する人生を大切だと思います。あと、何もしないと環境は変わりません。ぜひ、自らきっかけを掴むために大胆に行動してほしいと思います。

学生新聞オンライン2021年3月1日取材 東洋学園大学1年 田澤涼夏

東洋学園大学1年 田澤涼夏 / 津田塾大学2年 宮田紋子

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