参議院議員 吉川ゆうみ
誰もが幸せに生きられる、サステイナブルな社会を実現したい
■プロフィール
三重県桑名市生
桑名市立深谷小学校、桑名市立成徳中学校、私立メリノール女子学院高等学校
1997年3月 東京農業大学 農学部 国際農業開発学科 卒業
2000年3月 東京農工大学 大学院 修士課程 農学研究科 修了
現在、三重大学 大学院 博士課程 地域イノベーション学研究科 在籍
テュフラインランドジャパン(株)、日本環境認証機構(JACO)
2007年 (株)三井住友銀行
2013年 参議院議員 三重県選挙区 初当選
2019年 参議院議員 三重県選挙区2期目当選
2019年10月 参議院 文教科学委員長
2020年10月 自民党 女性局長
高校生の時から日本が直面する環境問題に関心を持ち、「私が地球を守る!」という固い意志を抱いたというのが、政治家の吉川ゆうみ氏。そんな強い決心と共に大学時代から熱心に勉強し、政治家になってもなお、環境・エネルギー、農業など社会的課題やサステイナビリティに熱心に取り組んでいる。政治家になる前に培ってきた様々な経験をはじめ、吉川氏が政治家になるまでの道筋と今後の展望について伺った。
■「環境問題を解決したい」の想いから、農学部へ
ちょうど80年代頃、砂漠化や酸性雨などが地球全体で問題となり始めた頃で、まだ日本では、環境問題と言えば公害問題として捉えられることが多い時代でした。当時、高校生だった私は、世界で認識が拡がりつつある地球環境問題を受けて、「地球を守らなければいけない」と強く感じ、環境問題に取り組める大学を探しました。しかし、当時はインターネットも普及しておらず、大学情報誌や大学や研究室等へ問い合わせの手紙を書いたりしなければ調べることができなくて、とても大変だった記憶があります。そこで出会ったのが、東京農業大学です。まだ日本には大学で環境学部などの環境を専門に学ぶ学部はなかった時代でしたが、東京農業大学に砂漠緑化など環境問題に取り組んでいる研究室があると知り、東京農大へと進学しました。
■自分自身の問題意識が高まった「ロイヤルプロジェクト」
サークルは他大のインカレサークルでオーケストラに参加するなど、学生生活も楽しんでいましたが、依然として環境やサステイナビリティに対する関心は変わりませんでした。1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議が開催され、世界的にも環境問題に対する関心度は徐々に高まっていました。
夏休みや春休みなどの長期休暇の際は、農業をするためにタイ山岳部のカレン族など山岳民族の村をはじめ、台湾、長野や石垣島など、国内外のどこかしらに行っていました。様々な活動を行うなかで特に力を入れていたのが「ロイヤルプロジェクト」です。当時、タイなどの山岳民族は、生計を立てるために焼き畑農業などを行っていました。焼き畑農業は本来持続可能な農法ですが、山岳民族の村にも資本経済が浸透することで、本来の生態系を守るための期間や範囲を超えて山を焼き払って農業を行っていたため、環境に大変な悪影響を及ぼしていました。また、お金を得るためにケシ栽培を行うことでアヘン中毒が蔓延するなど大きな社会問題にもなっていました。そこで、北部山岳地帯という地理的特性を生かし、タイでは高く売れる桃や柿、菊など温帯作物を栽培することで山岳民族が生計を立てられるようにとタイの王様が始めたのがロイヤルプロジェクトでした。
大学の卒論のテーマにもしましたが、ロイヤルプロジェクトは、人類にとって貨幣経済や資本主義経済とは、本当の幸せとは何か、を私自身が深く考えるきっかけとなりました。この時の経験は、政治家としての現在の仕事にも大きくつながっているように思います。
■「私たちの税金を、現実の声を反映し、正しく使ってもらう」ために国政へ
東京農大のあとも同じ思いを持って東京農工大学の修士課程に進学し、修了後はISO14001環境マネジメントシステムなどの国際基準やオーガニックなど環境配慮型農業のコンサルタントや審査、CO2排出抑制のプロジェクト、企業のCSRなどサステイナビリティの取り組みの検証などを行う審査機関を経て、金融業界でも働きました。金融機関からは、「いま、企業は環境への取組みを行わなければ生き残ることができない。それらの企業を理解して支援できる人を探している」ということで声をかけてもらい、金融を通じてサステイナビリティを実現するという新しい分野に挑戦しました。企業は環境などの取組みを行わなければ取引をしてもらえない状況となっているにも関わらず、未だ環境は「外部不経済」であり、マイナスをゼロにもっていくための物であり、なかなかプラスにして企業価値向上に繋げることができない。苦労して環境に取り組む企業を応援するため、環境やCSR、リスク管理などサステイナビリティに配慮した企業を支援する金融商品やサービスを開発し、企業支援を行ってきました。しかし、相当な数の企業支援を行ってきましたが、どんなに大企業でも、民間企業には国家予算を組むことも法律をつくることもできないことに限界を感じていました。またその頃、環境省や国交省など省庁の委員を務めてきました。省庁の人たちは予算のなかで様々な制度や仕組みを作るなど重要な役割を果たしていますが、現場で働いている訳ではなく、本当の意味で現実を肌身で感じて知る事はできない。省庁等の様々な制度創設に関わる中で、そのことに大きな違和感を覚えていました。また、サステイナビリティをボランティアやCSRとしてだけではなく、企業も経済的メリットを享受しながら本質的に進めるための「ESG投資」について、日本でも一刻も早く拡げなければならないにもかかわらず国としても理解が進んでおらず、世界から大幅に遅れていることにも大変危機感を覚えていました。そして、「現実をしっかりと分かっている人が法律をつくり、国家予算の配分をしていかなければ。そのためには国会議員にならなければならない!」と思うようになり、様々なご縁を得て、環境などサステイナビリティに取り組む企業等が企業価値を向上させ、経済的にも成長するという意味を込めて、「環境と成長」というキャッチフレーズをかかげ、女性議員としての人生をスタートさせました。
昨年の11月、菅総理が国会で所信表明演説を行い、「経済と環境の好循環」を成長戦略の柱に掲げ、グリーン社会の実現に注力する考えを表明しました。そのなかで、地球温暖化対策として2050年までに温室効果ガスの排出を「全体としてゼロにする」と話し、脱炭素社会の実現を目指すと宣言しました。積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要だとの考えを示しましたが、これは、まさに私が最初の選挙の際に掲げた「環境と成長」です。私が18才の時から考えて30年近く様々な立場から取り組み、いま政治という分野の中で携わっていることが、やっと国の方針となった!という喜びがありました。実現はまだまだ先ですが、確りと取り組んで行こうと思っています。
■サステナイビリティの世界を日本に
現在、三重大学の大学院博士課程に在籍し、地域活性化やサステイナビリティを研究しています。いま、多くの企業が環境や地域活性化、防災などリスク管理や社員の働き方などサステイナビリティを重視する時代になりつつあります。例えば、人材派遣会社のパソナが淡路島に本社を移転しましたが、これも企業の大きな変化のひとつです。今後は、東京一極集中ではなく地方の特性をいかに活かし日本全体で持続可能な形で発展していくための仕組みをどう考えていくのかが問われると考えています。この流れは、コロナ禍によって一層加速されると思います。
また、いま自民党の女性局長を務めていますが、自分にとって大きな課題は、日本や地域の経済をしっかりと上向かせながらも同時に社会的弱者に寄り添った政策をとっていくことです。現在、新型コロナウイルスの影響による休業等で多くのパート・アルバイトの女性の仕事が減り、経済的に困窮に陥っている人も多く、また児童虐待や教師のわいせつ問題、不妊治療保険適用の議論も進められ、変化が求められています。コロナ禍により、社会全体が将来に不安を抱え、またこれまでの社会システムが変容している現在、少しでも不安を払拭し、未来に希望を持てるような新たな社会のあり方や可能性を示していくことが、私たち政治家の役割だと考えています。
■前を向き、声を上げ、自分の夢の実現に向かう努力を
大学生の皆さんへメッセージとして伝えたいことは「絶対にあきらめずに、前を向いていてほしい」ということです。あとは、人生を悲観しないことです。悲観的な人は様々な機会を失います。どんな状況であっても、敢えて前向きに、長い目で見ながら続けていけば、必ず何かに繋がります。これまでの私の話を聞いて、私が恵まれた環境で来たのではないかと思われた方もいるかもしれませんが、私の身内には国会議員はいませんし、父が営んでいた事業は私が大学生の時にバブル崩壊の影響で廃業し、私は大学院も奨学金でアルバイトをしながら通い、社会人になってからは実家に仕送りをしながらギリギリの生活をしてきました。でも、夢を持つこと。前向きに取り組む事。諦めないことで、色々な人と出会い、今こうして思いを叶えています。世の中捨てたもんじゃないですよ。
また、自分の可能性を自分で捨てることもいけません。「声を上げてもどうせ変わらない」という話をよく聞きますが、政治に関しても若い人が自ら声を上げなければ、自分たちの意見というのも通りません。声を大にして、でも気持ちはラクにして思い詰め過ぎず、どうか自分の夢の実現に向かって頑張って下さい。
学生新聞オンライン2021年3月8日取材 東洋学園大学1年 田澤涼夏
この記事へのコメントはありません。