ローランド株式会社 代表取締役社長 CEO 三木純一

思い込みにとらわれず、新たな価値創造でファンをワクワクさせ続ける!

ローランド株式会社 代表取締役社長 CEO 三木純一 (みきじゅんいち)

■プロフィール

代表取締役社長 CEO 三木純一

1977年ローランドに入社。1994年に取締役(開発部門担当)に就任後、電子ピアノ等の鍵盤楽器の開発を中心に、開発部門やサポート機能、マーケティング企画等の部署を複数担当。その後、クラシック・ロジェクト担当執行役員、オルガンやクラシック・キーボード開発部門担当取締役を経て、2013年より代表取締役社長CEOを務める。

電子楽器のパイオニアとして、世界中の音楽愛好家から支持されるローランド株式会社。代表の三木社長は幼少の頃よりモノ作りが大好き。その能力を活かして「0から1」生み出すゲーム・チェンジャー製品を作り出し、新しい価値を創造し続けている。

小さいころから「モノづくり」が大好きだったので、将来的にはエンジニアになりたいと思っていましたから、大学は理工学部の電子電気科に進みました。入学してからは、憧れていたオートバイの免許を取って乗り回していました。でも、ただ乗るだけではなく、好きな色に塗り替えたり、改造したりすることにもハマっていましたね。バイクで遊ぶためにいろいろなアルバイトもやりましたけど、仕事の種類にはあまりこだわっていませんでした。ごく普通の学生時代だったと思います。

■ローランドとの出会い

就職活動をしているときに、たまたま見つけたローランドの募集広告を見て、「エンジニアが楽器を作れる」ということに衝撃を受けました。当時は名前も存在も知らない、小さなベンチャー企業だったのですが、実際に行ってみると、大学の「モノづくり同好会」のような面白そうな雰囲気だったので受けてみることにしました。実は、ほかにも何社かメーカーを受けていたのですが、採用してくれたのはローランドだけでしたね。

入社後は生産ラインでの組み立て、製品の修理、基礎開発部門でのチップ設計、サウンド・エンジニアとして音づくりを担当しました。その後、製品開発のリーダーに抜擢してもらった時は、これで念願の「モノづくり」ができると嬉しかったですね。当時の社長との面談時に、今思えば生意気にも、「やるからには自分の好きなようにやらせていただきます。」と言ったのを覚えています。最初に開発したホームピアノを皮切りに、ヒット商品を続けて出すことができたので、そのことば通りにやりたいことを自由に任せてもらえました。

人との信頼関係から生まれるチャンス

その後、最新機能をこれでもかというくらいに詰め込んだ電子チェンバロを作ったのですが、販売店さんにも当社の営業担当にもほとんど興味を示してもらえませんでした。どうやってその製品を売るかをさんざん考えた末に、自分でバロック音楽のイベントに持ち込むことにしました。知り合いのブースに頼み込んで置かせてもらったのですが、古典音楽のマーケットでは、電子楽器を受け入れない独特の雰囲気があって、お客さんがそのブースをわざわざ避けて通るくらいにアウェーな状況でした。
正直なところちょっと困っていたら、隣のブースの古楽雑誌の編集をしておられる女性が、「なんでこの電子チェンバロを作ったのですか?」と尋ねてくださったのです。製品についていろいろな想いをお伝えしているうちに、「なるほど。そういうことだったのですね」とお知り合いの方に声をかけていただき、さらに製品を紹介してくださいました。電子チェンバロは良い製品だという自信はありましたけど、良いモノだから売れるというよりは、人と人の信頼関係があって初めて売れていくということを実感しましたね。

■お客さまからの反応を見逃さない

お客さまの本当のニーズを探り当てて、それに対して具体的な提案ができるように常にアンテナを張っています。少し前に、Aerophoneという電子管楽器を作ったのですが、ある時、カスタマー・センターに、年配のお客様から「息が弱いのですが音は出ますか?」というお問い合わせをいただきました。その時に初めて、センサーの調整で弱い息でもいい音が出せることが、肺活量の低下したご年配のお客さまには大きな価値になるということに気がつきました。商品の本当の魅力は、こうした現場でのお客さまのちょっとした反応から見つけることができます。

■世代を問わず親しまれるブランドへ

ゲーム・チェンジャー商品を出すと、意図していなかった新しいマーケットが生まれることがあります。Aerophoneをインスタグラムで検索してみると、若い女性からの投稿が口コミで広がっていて、それは全く予想していなかったので驚いたのですが、日本では学校の吹奏楽部やブラスバンドのメンバーは女性が多くおられますよね。卒業とともに演奏機会が減ってしまったけど、管楽器の演奏を続けたい女性たちがAerophoneに興味を持っているということが分かりました。当社のお客さまには中年男性が多いのですが、Aerophoneでは管楽器に憧れをもつ年配の方や若い女性という、当社にとって新しいターゲット層が見えてきました。新しい製品を開発するときには、ターゲットとするお客さまに加えて、2~3倍の見えないお客さまがおられることを常に意識しています。

■今までにない新しいものを世に送り出す

これまでになかった全く新しいモノでマーケットを作り、お客さまが本当に喜んでいただいた時にやりがいを感じますね。電子楽器の開発は楽器ショーやライブ会場などで直接お客さまやミュージシャンと触れ合う機会も多く、そうしたユーザーのリアクションをダイレクトに見ることができるのはとても素晴らしいと思います。特に海外のミュージシャンは、新しいものに対して意欲的な方が多いので、新製品にはすごく興味を持ってくれて、ストレートに感謝や喜びの声を聞かせてくれるときは本当に嬉しいです。

■自分軸で生きる人と働きたい

社員採用に関しては、以前はその方のスキル、つまり、何ができるのか、というポイントを重視していました。しかし、最近はスキルセットよりもマインドセットを見るようにしています。「自分がどうありたいのか」、「どうしたいのか」、「どう思うのか」をしっかりと考えて、自分の軸で生きていることが重要だと思います。日本人は、人目を気にしたり、他者と比較したりという傾向がありますが、自分軸で動いている人は好奇心が旺盛で、やってみればなんとかなるという自信(根拠のない場合もありますが)を持っている方が多く、成長のスピードも速いと考えています。

■message

「学生」である期間は、大体のことは許される、言い換えればとても「護られている」時間だと思います。だからこそ、学生である期間に、思い切りリスクをとって新しいことにチャレンジして、視野を広げて欲しいと思います。思い込みに捉われず、自分軸を大切に、大胆に行動することで将来の可能性が大きく広がっていくと思います。

学生新聞オンライン2021年5月12日取材 国際基督教大学 4年 鈴木菜桜

国際基督教大学 4年 鈴木菜桜

【お詫びと補足】
弊社不手際により、2021年6月2日から6月8日まで、修正前の記事を掲載しておりました。
改めて2021年6月18日より、最終版の記事を掲載しなおしました。
ローランド株式会社様のファンの皆様、記事を読んでいただいた方々へご迷惑をおかけして、大変申し訳ございません。
今後はこのようなことがないよう、気をつけてまいります。
これからも学生新聞オンラインをご愛顧の程、よろしくお願い申し上げます。

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