前田旺志郎 俳優は人間力が試される仕事。だからこそ、自分を磨き続けたい

前田旺志郎(まえだ おうしろう)©︎Photographer HIRO KIMURA

■プロフィール

2000年生まれ。大阪府出身。2007年から兄の前田航基とともにお笑いコンビ「まえだまえだ」として活躍。2021年は連続テレビ小説「おちょやん」(20/NHK)に出演し、注目を集めた。公開待機作に『キネマの神様』(21年8月6日公開/山田洋次監督)、『うみべの女の子』(21年8月20日公開/ウエダアツシ監督)、『彼女が好きなものは』(21年秋公開/草野翔吾監督)などがある。

小学生の頃からお笑い兄弟コンビ・まえだまえだとして多くの番組に出演し、M-1グランプリ準決勝進出も果たした経験を持つ前田旺志郎さん。現在、俳優として活躍する前田さんに、芸人として活躍した幼少期の思い出や役者としての魅力、そして今後の展望について、生き生きと語ってもらった。

■まえだまえだとして活動した幼少期

 子供の頃から明るいタイプでした。友達とワイワイ遊んで、いつもふざけていて。3歳の頃、何をやっているのかもわからず、養成所に入りました。完全に兄の影響です。弟ならではの「兄がやっているものは自分もやりたい!」という(笑)。自分の中では「仕事」というよりは、完全に習い事という感覚でした。ある時、漫才を教わる授業があって、そこで僕と兄と先生とで協力して1本のネタを作ったんです。活動をしていく中で、「やるからには出てみたい」という気持ちでM-1グランプリにも出場しました。準決勝まで進んだことをきっかけに、テレビに出させていただく機会が増えました。忙しくて学校に行けない日もありましたが、行けるときはきちんと通って友達ともしっかり遊んでいました。当時は、仕事も学校もとにかくずっと楽しかったです。ただ、大人になってからもこの仕事をしようとはまだ思ってなかったです。

■高校進学時に、役者の道に進むことを決めた

 実は、芸能界で頑張っていこうと覚悟を決めたのは、高校進学のときです。それまでは、基本的に頂いた仕事をただ楽しくやっている感覚が強かったんです。しかし、高校に進学する時に直面したのが、大阪と東京のどちらの高校に進むかという問題でした。俳優をちゃんと続けるのであれば東京の学校に進むべきですが、大阪の学校で旧知の友人たちと楽しく学校生活を送りたいという気持ちもありました。東京に行って活動するとなると、やはり今までの取り組み方ではダメで、覚悟を決めてやらなくてはいけないのだろうとも感じていました。その時に初めて、自分の将来について向き合い、「俳優の仕事を頑張ろう」と決めて、東京の学校へと進学しました。

■大学へ進学したのは、自分の選択肢を増やすため

 その後、大学へも進学しましたが、それは「役者という仕事しか知らないのはもったいない」と思ったからです。もちろん、役者だけに専念する道もありました。でも、役者の道では、仕事の中では演者さんや演出家さん、技術さんなど、制作する側の人たちとしか触れ合うことができません。それでも素敵な出会いはありますが、自分はできるだけ色々なことに触れて自分の視野を広げたい。だからこそ、大学へ進学しました。
 今は役者を続けていきたいと思っていますが、一生この仕事を続けていくかはわかりません。一番初めに出会った職業が役者であっただけで、他にやりたいことが出てくるかもしれません。だからこそ、多くの人や職業を知って、それでも役者をやりたいと思うのか、選択肢の中から選ぶことはまた何か違ってくるのではと思ったんです。
 僕の通っている学部は、本当に色々な方向で頑張っている人がたくさんいて、芸能活動もその一つの活動として応援してくれる人が多いです。また、尊敬できる刺激的な人たちに囲まれながら大学生らしく生活できることは幸せですし、この環境を選んで良かったなと思っています。

■「ただそこにいるだけ」の芝居ができたら、最強

 一昨年、初めて「最貧前線」という作品で舞台に出演しました。ドラマや映画の撮影をするときは撮る順番がバラバラなので、そのシーンを成立させるためにどう演じるかということを考えていたのですが、舞台はお客さんの目の前で、区切りなく最初から最後まで演じます。そのため、その人がどんな人で、物語の中でどう生きているのかを一貫して考えて演じることが必要でした。舞台出演を通じて、自然とその感覚を意識できるようになったのは、大きな経験だったなと思います。
 俳優というお仕事は、その人の個性や人間性が出るお仕事です。もちろん努力や経験も必要ですが、俳優としての経験より人間としての「人間力」が出てくる部分が大きいのではないかと。だからこそ、自分の生きてきた20年間を信じ、自分が現場を経て、学んだ知識や経験から感覚を磨き、表現していくことが一番なのかな、と思っています。
 一方で、僕は演技する上で自分を表に強く表現しようとしていません。大切なのは、そのシーンにどれだけ自分が馴染めるか、そのシーンに存在できるかということ。いかに意識の外側で意識できるか。「ただそこにいるだけ」の芝居をできたら最強じゃないかと思っています。決められたセリフも、その場にいる人間として自然に発せられる役者になりたいです。そのために、よくやるのが、現場をプラプラ歩くことです。たとえば、いまは学生の役が多いのですが、その教室や学校のことをきちんと知れていないと「ただその場にいる」のが非常に難しい。だから、先に学校を散歩したり、教室の中身を見ておいて、体を使って視覚的に想像して、その場に馴染む努力をしています。

■10年後も芝居を楽しむために、上のレベルを目指す

 今はまだ、「将来はこうありたい」という明確な目標があるわけではありません。今は、お芝居をすることが本当に楽しいんです。お芝居をしているときが、自分自身が一番生き生きしていると感じますし、その状態でいられることは本当に幸せなこと。だから、死ぬまでずっとこの状態が続いたらいいな、という考えは漠然とあります。しかし、10年後も今と同じように楽しく仕事するのは、今の技量のままだったら絶対できないと思います。だからこそ、自分が芝居を楽しむための努力はしていきたいですし、もっと役者というお仕事と真剣に向き合って上のレベルを目指していきたいなと思います。

■大学時代こそ、「自ら経験を掴みに行く努力」を

 僕自身も心掛けていることですが、大学生のうちにたくさんの経験や、試行錯誤を繰り返してほしいです。大学生活は自分から貪欲に何かをしないとあっという間に終わってしまいます。また、大学生というだけで力を貸してくれる大人はたくさんいますし、若さや情熱があれば、味方してくれる人はたくさんいます。だから、今しかできないこともたくさんあると思うんです。大学生活の間にできるだけ自分の足を使って、自分から経験を取りに行くという気持ちを持ち、自ら経験を掴みに行く勇気を出してほしいです。

学生新聞オンライン 2021年4月11日取材 津田塾大学 4年 川浪亜紀 

明治学院大学 4年 小嶋櫻子 / 津田塾大学 4年 川浪亜紀

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