聖心美容クリニック 統括院長 鎌倉 達郎
目指すゴールに近づくための環境づくりこそが大切
聖心美容クリニック 統括院長 鎌倉 達郎(かまくら たつろう)
■プロフィール
宮崎県出身。日本美容外科学会(JSAS)理事。聖心美容クリ ニック全10院を統括。2007年に世界初の脂肪幹細胞豊胸術を執刀。2016年にアメリカの権威ある形成外科学誌「Plastic and Reconstructive Surgery」のベストペーパーアワードを日 本人美容外科医として初めて受賞。アメリカ・フランス・中国など海外講演も数多くこなす。
「とことん真面目に、美容医療。」をモットーに、1993年の開業から今日まで、上質な医療を提供し続ける聖心美容クリニック。鎌倉統括院長は全員がチームプレーをする意識を持つことが大切だという。この考え方は学生時代にスポーツによって培われたようだ。国内10院を束ねる院長に、仕事の魅力や目指すゴールについてお話を伺った。
1983年、宮崎医科大学医学部(現・宮崎大学医学部)へ入学しましたが、国家試験で忙しくなるまでは、バスケットボールに注力する生活でした。中学時代の経験が功を奏してキャプテンにもなり、大会では二連覇の成績を収めたこともあります。バスケットボールは1人が頑張るだけでは意味がなく、チーム全員が当事者意識と思いやりを持って動くことが求められるスポーツです。この経験を通して「チームとして何かを成し遂げる楽しさ」を学びました。このことがあったからこそ働く上でも一つのチームとして結果にこだわる考え方になったと感じています。
◾️美容医療でQOL向上に貢献
大学卒業後、九州大学の医局に入った私は、第二外科で6年間勤務をしました。当時、第一外科よりも厳しくて大変と噂のあった第二外科ですが、「どうせ働くなら思いっきり壁にぶつかり悩みながら研鑽していきたい」と思ったのです。結果論ではありますが、そこに所属していたからこそ、後年、美容医療に関心を持つきっかけに出会えたのです。「迷ったらたやすい道ではなく、険しい道を選択する」というマインドをみなさんにもお薦めします。
大学病院で勤務後に、美容外科医として働き始めたわけですが、美容医療には他の診療科との決定的な違いが2つあります。一つ目は、「誰もが見た目で施術の結果を客観視できる」点です。癌を始め内臓系の手術は、専門的な知識を持ち合わせた医者にしか結果の判断はできませんが、その点美容医療は異なります。その手術が成功したかどうかはご本人のみならず、周りの誰もが一目で判断できるのです。分かりやすいからこそ患者さまが抱く「なりたい姿」もどんどん具体的かつ複雑になってきます。だからこそ医療を提供する側は、常にスキルを磨き続けなければなりません。
二つ目は「行きたくて行くのが美容医療」という点です。病院に行く理由の多くは体調がすぐれなかったり、精密検査の結果を聞くためだったりとネガティブな理由がほとんどです。しかし、美容医療に来る患者さまは、「理想の姿になれるかもしれない」「悩みを解決できるかもしれない」と希望を持って来院される方ばかりです。
美容医療を受けようとする動機は人によってそれぞれ違っていたとしても、「ここで生まれ変わって生活のQOLをあげたい」と願う気持ちはみなさん同じです。その期待に応えられる医者でありたいと思っています。施術を受けられたご本人の納得感と満足感が、我々医者のスキルを図るための有効な物差しなのではないでしょうか。
◾️人材育成を以て業界への貢献を志す
2004年からは統括院長として、国内10医院に属する19名の医師たちを見守る立場にいますが、それぞれの医師が現在に至るまでのバックグラウンドやそこから形成される感性が異なるために、なかなか一筋縄ではいきません。加えて外科医は一種の「職人技」ですから、個々の医師が持つ「こだわり」を生かしつつ、全体的にも常にハイレベルなスキルを保てるように腐心しています。
具体的にはスキルアップ方法や仕事に対する取り組み方の一方的な押し付けはせず、あくまでも一人ひとりの医師たちが目指すゴールに近づけるような環境づくりに徹するということです。お互い価値観の違いを受け入れながら高い視座を持ち、選択に迷ったときは、「患者さまにとってそれがベストな選択なのかどうか」、「聖心美容クリニックのメンバーとしてふさわしい姿かどうか」という基準に立ち返ることができる人材を育てていきたいですね。この達成感は、彼ら・彼女らの飛躍が美容医療業界の発展につながったときに初めて得られるものだと考えているので、まだもう少し先かも知れません(笑)。
1980年代から拡大した美容医療ですが、そこから40年余りで業界は大きく変化しました。「大手組織としてのブランド力」と「医師個人の発信力」が掛け合わされる時代になったのです。今後、ある一つの分野に特化した専門クリニックが増えたり、低価格化にとことんこだわった手軽なクリニックが増えたりするかもしれません。そのような中で、聖心美容クリニックとしては、「ここに来たらどんな悩みも限りなくゼロに近づくことができ、理想を現実に変えられる」という場所であり続けたいです。その実現に欠かせないのは、安心感と信頼感だと考えています。
◾️message
昨今の風潮を見ていますと、もはや「学生だから」と線引きするのはナンセンスなのではないでしょうか。若いうちから大人と関わる機会を増やし、そこで得た知識は蓄えるのではなく、実践を通してトライアンドエラーを繰り返してみてください。社会に出ると、正解が「決められているもの」から「自分で作るもの」へと変化していることに圧倒されるかもしれません。しかし、立ちはだかる壁に向かって試行錯誤した経験がきっと支えになってくれることでしょう。一瞬一瞬を大切に、探究心を持って行動してください。
学生新聞別冊2022年7月1日発刊号 日本女子大学4年 神田理苑
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