株式会社鎌倉新書 代表取締役会長CEO 清水祐孝
超高齢化社会に「メディア」として有益な情報を与え続ける
株式会社鎌倉新書 代表取締役会長CEO 清水祐孝(しみず ひろたか)
■プロフィール
1963年生まれ、東京都出身。慶応義塾大学卒業後証券会社勤務を経て、父の経営する株式会社鎌倉新書に入社。同社を仏教書から葬儀や墓石等の業界へ向けた出版社へと転換。さらに「出版業」を「情報加工業」と定義、セミナーやコンサルティング、インターネットサービスへと事業を転換。現在、終活関連のポータルサイトを運営し、高齢者の課題解決へ向けたサービスを提供。
新卒で証券会社に入社。その後、父から託された鎌倉新書とその想いを引き継いできた、清水祐孝会長。鎌倉新書の経営者として超高齢化社会に有益な情報を届けることで「終活」をサポートし、社会に還元してきた清水会長の思いと、日頃から大切にしているマインドについてお伺いした。
■現実の恐ろしさを知った大学時代
大学では企画や事業を行うサークルに入り、学生起業家のようなことを行なっていました。活動自体は非常に楽しかったのですが、在学中、とある事件が勃発します。そのサークルによく出入りしていた品の良いおじさんに仲間が騙されてしまうという出来事があったのです。この事件から、私は世の中の恐ろしさを知り、「もっと勉強して知見を広めなければ」と思うようになりました。
■鎌倉新書に入社するまでの経緯
大学では商学部に属していたこともあり、新卒で証券会社に勤めました。証券会社はセールス力が必要で、高額所得者のリストを元に毎日200件ほど営業電話を掛け続けていました。100件電話をかけても、契約を取れるのは2、3件ほど。知識を増やすために、日経新聞やエコノミスト、週刊ダイヤモンドなどあらゆる新聞や雑誌を読んでいました。自分とはあまり接点のないことでも世の中の感覚を知るために、意識的に情報収集していたように思います。
当時はバブル経済で、業績も給与もとても良い状況でした。そのため会社を辞める必要性は全くなかったのですが、ある時、父親から鎌倉新書が倒産の危機に陥っていることを知らされ、受け継ぐことにしました。もっとも、証券会社を辞めて鎌倉新書に再就職する間に、証券会社で知り合った方が運営する海外のゴルフ場に行きたいという下心も、少しはあったかもしれません(笑)。
■役割は「終活に関する有益な情報を提供すること」
鎌倉新書という会社は、超高齢化社会のなかで高齢者が明るく前向きに生きていくことに貢献する会社です。
「鎌倉新書」という名前の通り、最初は出版社としてスタートしましたが、現在ではインターネットを通じた情報提供を主な事業としています。今もなお鎌倉新書という名前を変えないのは、「求める人に有益な情報を届ける」という点でメディアであると考えているからです。例えば出版社の中にも漫画の版権を売買してテレビアニメを作る会社があるように、昔とビジネスモデルが様変わりしているメディアも多く存在しています。
最初の情報提供の領域は葬儀やお墓といった「供養」の分野のみでしたが、次第に人が亡くなる前後で初めて直面する課題、つまり「終活」と呼ばれる領域における課題を解決するお手伝いを行うようにもなりました。一度きりの人生を充実したものにするために、やっておくべき全ての活動を行う支援をしているのです。超高齢化社会に有益な情報を提供することは、鎌倉新書の社会における重要な努めであると考えています。
■儲けより社会還元を優先させるべし
すべての企業の本質は、社会に利益を還元し、社会を活性化させることだと思います。社会に還元するためには、儲けがないとやっていくことはできません。車で目的地にいくためにはガソリンがないと行けないのと同じように、社会に還元するという目的のためには社員のお給料を維持しなければならないのです。崇高な理念の大前提として、売り上げがないとやっていけないのです。
しかし、稼ぐことを、社会に還元することよりも優先してはなりません。それに気が付いたきっかけは、若い頃に京セラの創業者である稲盛和夫さんの講演会に足を運んだことです。儲かる方法を知るために参加したのですが、そこで言われたのは「親を大切にしないさい、神仏を敬いなさい」ということでした。当時は「やっぱり成功者というのは本当のことを教えてはくれないのだな」と思いましたが、今から思うとあれは正しかったのだなと思います。生まれてきたからにはそれぞれの役割があり、世の中に貢献できるのだと感じます。自分だけが得するのではなく周りの人にもいい影響を与えることで、成功はつかめるのだと思います。
■稼ぎと成長の副産物である
私は若い時、お金がなかったので稼ぐことを目的に生きていました。しかし、いろんな本を読んだり講演会を聞いたりするうちに40代のころに気がついたのは、稼ぎは、自分が学び、成長した時の副産物として生まれるということです。一緒に働く人にもこのことに腹落ち感を持って気がついてくれるといいなと思います。余談ですが、私は毎日神社に行くようにしています。信心深い訳ではありません。確かに最初は「会社が潰れませんように」と向こう側にいるであろう神様に向かって神頼みをしていました。しかし、これは長年やっていて分かったことなのですが、向こうにいるのは神様ではなく祈願している自分自身の存在なのです。
願い事が叶うのも神様が聞いているからではなく、その願い事を自分の脳みそが覚えていて、それを叶えるために必要な情報を収集するようにと潜在意識が働くからだと思うのです。科学的なことではないので証明はできませんが、経験としては生きてくると思います。そして何故かはわからないですが、古くから続いているものには意味があると思います。どんな慣習や伝統も、何かしらよいことがなければ廃れてなくなってしまうと思うからです。宗教チックなものを「宗教だ」と揶揄するのではなく、潜在的な力を発揮させるために活用してみるのもいいと思います。
■大学生へのメッセージ
社会に出てからこそ学びは加速化されると思います。そしてその基礎固めをするのが大学までの学びだと思います。社会人になると学生の時とは違い、長期的な学びが必要になるので、中長期的に学びを本格化させる意識を持ち続けてください。そして、歳をとると自分の責任の範囲は広がっていきます。若い時は自分のため。結婚したら子どもや家族のため。さらに歳をとると、地域あるいは社会のため……など自分の責任の範囲が広がっていくのです。色々な経験を積むことでどこまで自分の責任範囲を広げられるかがチャレンジになってくると思います。
学生新聞オンライン2022年6月16日取材 津田塾大学 4年 宮田紋子
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