株式会社ドワンゴ 専務取締役CCO ニコニコ超会議統括プロデューサー 横澤大輔

リアルとバーチャルの融合でお客様に新しい遊び方の提案を

株式会社ドワンゴ 専務取締役CCO ニコニコ超会議統括プロデューサー 横澤大輔 (よこさわ だいすけ)

■プロフィール

1981年東京都生まれ。
株式会社ドワンゴのコンテンツ戦略担当として、2001年よりドワンゴの携帯コンテンツ制作を始め、ニコニコ動画公式生放送や様々なイベント、新規事業を立ち上げる。ニコニコ超会議では統括プロデューサーとして16万人超規模のイベントを手がけ、伝統芸能の歌舞伎とデジタルを融合させたオリジナル新作超歌舞伎「超歌舞伎」の総合プロデューサーを務めている。2000年のニコニコ超会議(春、夏)はオンラインで開催、「ネット総来場者数」は1,773万8,806人となり日本最大級のオンライン参加型イベントを手がけた。
今年は、『ニコニコネット超会議2021』と題し、日本に存在する様々なエンターテインメントを集合させた日本最大のインターネットの祭典を8日間に渡って実施させた。

ニコニコ動画やニコニコ超会議で知られる有名IT企業である一方、教育の事業にも力を入れている株式会社ドワンゴ。ネットの中で人間らしさを追求し、お客様に提供するというニコニコ動画の構想を作って実現させた専務取締役CCOの横澤大輔氏に、ドワンゴの強みと複雑化する社会で求められることについてお話を伺った。

リアルの良さを伝えるために

私たちドワンゴは4つのメイン事業を通して、バーチャルとリアルの融合を目指しています。一番大きな事業は、ニコニコ動画を中心としたポータル事業です。ここでは、ニコニコ動画やニコニコ生配信の運営、運用、開発を主に行っています。また、それらに付随するニコニコ静画やニコニコニュースなどのサービスの運営、運用も行っています。ネットの進化に伴い、新しいものを取り入れ、デジタルとアナログを組み合わせてよりよいビジネスモデルを作ることを目指しています。

2つ目の事業であるモバイル事業は、以前は着メロや着うたに力を入れていましたが、今は時代にあったコンテンツを模索しています。

3つ目の事業となるのが、ニコニコ超会議などのイベント事業です。サブカルチャーやコスプレ、声優のリアルイベントやネットとリアルを融合したイベントを開催しています。リアルの楽しさをネットで伝えるために見せ方を工夫し、興味を持ってもらえるような面白い企画を沢山考えています。最近では初音ミクと歌舞伎というバーチャルとリアルが融合した超歌舞伎も製作し、上演もしました。歴史がある伝統文化の良さを最新技術で引き出して深められた、画期的な作品となりました。

そして、4つ目の事業として、ドワンゴでは教育事業も行っています。N高等学校、S高等学校はネットと通信制高校の制度を組み合わせた高校で、2万人もの生徒がいます。第一線で活躍する様々なジャンルの講師の授業を自宅で受けることができます。生徒は自分の好きな時に勉強できるので、自分の好きなこと、やってみたいことを探す時間が生まれます。N高のNは「New」や「Next」といった前向きな意味合いを持っています。生徒一人一人が自分のNを見つけて、好きなことに出会えるチャンスを掴んでほしいという思いがあります。

ドワンゴは「好きが仕事になる会社」

ドワンゴでは、社員の好きなことがそのまま仕事に繋がることが多いです。仕事をやらされているのではなく、好きなことを仕事にする感覚が強いんですね。自分が心から楽しめることから漏れ出たものこそが、エンターテイメントだと私は思います。ですので、ドワンゴの社員は自分の好きなことが明確で、社員同士で各々の「好き」を共有しています。

ドワンゴでは、アニメ、芸術、将棋、歴史、政治など、様々な分野でコンテンツを発信していますが、その分野が好きな社員がプロジェクトの担当となり、足りないスキルは周りがサポートするケースが多いです。スキルよりもその人の「好き」を大事にしているせいか、ドワンゴから生まれるコンテンツは温かく、人間味があります。組織を超えて仕事が進むこともあり、みんなの「好き」が繋がって仕事になっているとつくづく感じます。

では、自分の「好き」をどうやって仕事にすることができるのか。それは、自分の好きなものを何と組み合わせていくかがだと思います。また、誰もが好きになる大衆向けするものよりは、コアなファンがいるコンテンツや仕掛けづくりにも力を入れています。万人に受け入れられるものよりも、自分しか好きではないかもしれないニッチな分野を、「ほかにも好きな人がいるかもしれない」と思いながら、掘り下げることが得意です。その根底には、一人一人の好きを尊重し、居場所を作ってあげられるようなコンテンツを提供したいという想いがあります。その結果として、ニコニコ動画は8000万人という大勢の会員を抱えているのだと感じます。 今後の展望についてですが、現状では、デジタルとアナログが融合していない分野がまだまだ沢山あります。デジタルの良さである効率化や合理化に、アナログの良さである温もりや曖昧さを掛け合わせる。こういったあるようでないものを、ドワンゴはこれからも生み出していきたいと考えています。

複雑化した社会へ対応するには

これから、ますます社会は多様化、分散化していくと思います。情報が増え、自分の好きなことや興味のあることは簡単に探せる時代になりました。社会はより複雑化していくので、多岐にわたって才能を伸ばすより、得意な分野を極めることが求められます。ベースとなる総合力は今後も必要ですが、取捨選択することも大切です。自分が苦手なことや出来ないことは周りに頼る勇気を持つこと。不得意なことに時間を割くよりも、自分の強みを伸ばすことに時間を割く方がいい。全員の得意なことを合わせて、役割分担をし、チーム全体で力を発揮できればいいのです。また、努力なしの努力が出来る事を探すことも大切です。周りから見れば大変そうに見えるけれど、自分にとって苦ではないもの。そういったストレスなく出来ることを伸ばし、大きくしていくといいでしょう。色々なことに取り組み、取捨選択し、人に頼る。何か欠けているけれど、好きなことで生きていける人は価値が高いです。

大学生へのメッセージ

大学生の皆さんには、「何をやりたくて大学に通っているのか」を明確にしてほしいです。大学は自分が将来やりたいこと、作りたい世界を逆算して、勉強する場所です。私は大学にいたときよりも、社会に出てからの方が学んだことが多かった。知識をため込むことより、その知識をどう生かすのかを明確にするといいと思います。大学に通うことは目的ではなく、将来やりたいことに繋げる手段です。そのために、まずは好きなものを見つけましょう。今までやってきたことはどんなことであれ無駄にはなりません。色々なことに向き合って、好きなものに出会い、好きなものを組み合わせて新しい価値観を生み出してください。

学生新聞オンライン2022年7月8日取材 明治大学 4年 酒井躍

法政大学3年 鈴木悠介 / 慶應義塾大学3年 伊東美優 / 法政大学1年 佐伯桜優 / 津田塾大学4年 大川知 / 明治大学 4年 酒井躍

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