立教大学 総長 西原廉太
真理にこだわり、自分のオリジナルなものを持つ
立教大学 総長 西原廉太(にしはられんた)
■プロフィール
1987年京都大学卒業。1994年聖公会神学院修了。1995年立教大学大学院文学研究科組織神学専攻博士課程(前期課程)修了。博士(神学)。1998年に立教大学文学部専任講師となり、助教授、教授、副総長などを経て、2021年4月より立教大学総長。
社会で活躍していくためには「真理とは何か」にこだわり続けることだという。
たくさんの情報の中から本物を見抜く目を養わなければならない。そのためには実際に自分の目で確かめることが大切だと話してくださった。そしてファーストクラスの人間であれと説く立教大学の精神を西原総長に伺った。
■どんな学生生活を過ごしてこられましたか
大学生の頃はとにかくたくさんの人と出会うことを意識していました。大学1年生のときに、先輩に誘われて子どもと遊ぶサークルに入りました。それは何かといえば、在日コリアンの子どもたちと公園で遊ぶというものでした。
また、青果市場でアルバイトもしていたので、早朝にアルバイトをした後、大学で授業を受けてからサークル活動をするという毎日を送っていました。
当時、社会から不当な差別を受けていた地域に住む子どもたちと出会うことで衝撃を受け、自分の生き方を考え直すようになりました。さらに、サークル以外でも沖縄に行って愛楽園という元ハンセン病療養所で暮らす方々からお話を伺ったり、北海道ではアイヌの人々と交流したりなど、たくさんの人との出会いがありました。そのようなさまざまな環境や文化の中で生きている人たちと触れ合うことで、自分は何者なのかを考えるようになりました。
■総長の仕事とはどのようなものなのですか
総長には教育・研究・学務の3つの仕事があります。教育は実際に授業をしたり、ゼミでは学生といっしょにさまざまな課題と向き合って解決方法を議論したりします。研究は論文を書いたり、研究に関する本を読んだりしています。大切なのは、良い教育者は良い研究者であるということです。教育者としての教員は、研究を続けて常に新しい情報を学生に届けなければならず、授業もよりわかりやすく伝える工夫をしていかなければなりません。また、エデュケーションという言葉がありますが、この言葉の語源はラテン語のエクスデュカーレに由来しています。外に引き出すという意味で、教員は生徒の可能性や能力を引き出さなければなりません。そのためには教育と研究のバランスが大切です。そして最後の学務ですが、これは大学の運営、つまりはプロデュースをすることです。そのためには実際に大学のビジョンを提示し、全ての学生や教員が安心して過ごせるように管理・運営をしています。
■社会で求められる学生像をお聞かせください
大切なのは批判されることを恐れず、「真理とは何か」にこだわり続けることです。そして、自己の存在を知って他者の存在に気付き、そこから人間を学んで世界を読み解くことだと思います。つまり、常識や定説を疑い、オリジナルなものに触れるということです。デジタル・ネイティブである現代の若者は、疑問を抱くとネットで調べて分かった気になってしまいます。しかし、「本当にそうなのか?」と実際に見たり、経験したりして自分のオリジナルなものを持つことが必要です。英語の勉強もそのためにするものです。疑問の答えが日本にない場合、海外に行って本物を見て、直接自分で確かめるしかありません。しかし、そのためにはその国の言語がわからないと理解できません。英語はスコアを取ることが目標ではなく、日本語だけでは理解できない情報を得るために必要な言語なのです。そしてありふれた情報の中から本物を見つけ出すことができる人が社会で求められる人なのです。
■大学生へのメッセージをお願いします
最後にこの言葉をご紹介します。「Do your best, and it must be fi rst class.」。これは戦後日本にアメリカンフットボールを紹介した、立教大学の教授でもあったポール・ラッシュ博士の言葉です。直訳すると「最善を尽くせ。そして、一流であれ」となります。
その意味するところは、勝つことのみが目的ではなく、与えられたミッションに対して最善を尽くす、そのプロセスこそが大事なのだと。その取り組む姿勢、そのふるまいをもって一流たれと。
学生新聞2022年10月1日発刊号 立教大学4年 須藤覚斗
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