有村架純 自分の核を見つけて大切に、きっと運は自然とやってくる

女優 有村架純 (ありむら かすみ)

■プロフィール

1993年2月13日生まれ。主な出演作品はNHK 連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)、映画『花束みたいな恋をした』(2021)、『前科者』(2022)、『石子と羽男』(2022)、『月の満ち欠け』(2022)。現在、NHK 大河ドラマ『どうする家康』に出演中。2 月23 日に映画『ちひろさん』がNetflix&劇場公開された。

2010年のドラマ初出演以来、数々の人気作品に出演し、昨年は日本アカデミー賞も受賞された有村架純さん。
今回、人気漫画の映画化であり、2月23日(木・祝)より全国劇場にて公開中。また、Netflixで世界に同時配信中の映画『ちひろさん』の主演を務めた。「元風俗嬢」という従来のイメージを覆す役柄を演じた有村さんに、本作品に込められた想いや見どころを伺った。

心を救ってくれる作品『ちひろさん』

今回のお話をいただいて原作の漫画を読んだとき、私も一ファンになってしまうくらい、主人公のちひろさんに心惹かれました。そして、自分の中のわだかまりをスッと救ってくれるような、今の時代に生きづらさを感じている人にとって救いとなる作品になるに違いないと感じたのを覚えています。とくにコロナ禍において一人で過ごす時間も増えた中で、「一人でいるのは怖いことではなく、むしろ自分の幸福度を上げてくれる時間かもしれない。みんな自信を持って堂々と思いのままに生きてほしい」という思いでこの作品に参加することを決めました。
たとえば、作品の中にこんなセリフがあります。「みんなで食べるご飯はおいしいけれど、一人で食べてもおいしいものはおいしい」。人は共感性を求める生き物であり、共感できないと疎外感を感じる。そんな人間関係の駆け引きを肯定してくれる、ちひろさんならではのセリフだなと感じています。
ちひろさんは親からの愛を十分にもらえなかった子で、きっと何かを失うことへの恐怖心があるからこそ周りの人と程よい距離感を保っているのだと解釈しました。でもその距離感が心地良かったり、みんながちひろさんに心を開きたくなったりするし、ちひろさん自身もこれまで周りから愛をもらい温かさを知っているからこそ、一人を愛することができるのだと思います。

〝ちひろさん〞という女性

ちひろさんのビジュアルは私ではないという不安があり、喋り方や髪型、艶感なども調べたり話し合ったりしたのですが、あまりやり過ぎたくはなかったので、基本的にはそのままで行こうということになり、この作品の世界に飛び込ませてもらいました。ちひろさんの過去などはたくさん想像して、一社会人として、世間一般にいう普通の女性として社会に踏み出したけれど、人との尺度の違いやうまく交われない何かを感じ、風俗という職業に出会った。達観した、人生を1回終えたような佇まいをどう表現できるのかを考えながら演じる中で、私もちひろさんという人物を追いかけていたように思います。だからこそ自然とちひろさんのことを「ちひろ」ではなく「ちひろさん」と呼んでいたのかもしれません。
ちひろを生きているという感覚よりもちひろさんを客観視しているという感覚に近かったです。そのような感覚は初めてだった気がします。それと同時に、相手から飛んでくる棘のようなものに対して、「傷ついてほしいだろうけれど、私は傷つかないよ」という相手と対峙するような強さがある人。そのような中で、ちひろさんのいい意味で物事に干渉しない、人に期待しないカラッとした部分を意識していました。

誰かの心に作品を残すこと

今回、今泉監督とお仕事をさせてもらって感じたのは、監督は好奇心の塊のような人で、自分自身の中に戦い方がある人だと思いました。何かコンプレックスがあったりもがいているものがあったりして、それを撮影することで一つずつ消化しているのかなという印象を受けました。その分、細かなニュアンスまで丁寧に指導してくださり、そこに身を委ねて撮影していました。何か特別なリクエストがあったわけではないのですが、あまり暗くなりすぎず、明るくちひろさんを演じさせてもらいました。監督の作品には日常の温もりを感じさせるものが多いと思うのですが、多くの人にそのことが伝わったら嬉しいですね。
女優という仕事をしていて素敵だなと思うのは、すごく綺麗ごとに聞こえるかもしれないですが、一つでもいいので自分の作品を誰かの心に届けられればと思っています。そのために自分はこの仕事を続けているのだなと最近改めて感じています。
今のところは演じること以外には挑戦してみたいことはないのですが、いつかは脚本を書いてみたいと思っています。いろんなジャンルの作品があると思うのですが、私は説明の多すぎない、余白を感じられる作品が好きなので、そんな作品を作れたらいいなと思っています。

大学生の皆さんの中には、自分が理想とするものが漠然としすぎていて、本当にやりたいことが何か分からないという人も多いのではないかと思います。
そんなときは、まず思い描く理想の根本となる部分を探してみてください。それを見つけることができたら、いろいろなことがとてもスムーズに進んでいくと思います。タイミングとか運のようなものが勝手にやってくるような感覚です。一気に視野が広がると思います。うまく一番の核となる部分を見つけ出していただきたいです。

学生新聞2023年4月号 東洋大学3年 濱穂乃香

『ちひろさん』
有村架純
豊嶋花 嶋田鉄太 van
若葉竜也 佐久間由衣 長澤樹 市川実和子
鈴木慶一 根岸季衣 平田満
リリー・フランキー 風吹ジュン
原作:安田弘之『ちひろさん』(秋田書店「秋田レディース・コミックス・デラックス」刊)
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織 今泉力哉 音楽:岸田繁
主題歌:くるり「愛の太陽」(VICTOR ENTERTAINMENT/SPEEDSTAR RECORDS)
製作:Netfl ix、アスミック・エース
制作プロダクション:アスミック・エース、デジタル・フロンティア
配給:アスミック・エース PG12
Ⓒ2023 Asmik Ace, Inc. Ⓒ安田弘之(秋田書店)
2014 https://chihiro-san.asmik-ace.co.jp/
Netflixにて世界配信中&全国劇場にて公開中
ヘアメイク:尾曲いずみ スタイリスト:瀬川結美子
衣装クレジット:テーロプラン/テーロプランカスタマーサポート

中央学院大学4年 田根颯人/上智大学4年 八木彩花/東洋大学3年 濱穂乃香/東海大学4年 大塚美咲

撮影協力:カメラマン 広田成太

<英文記事>

Actor Kasumi Arimura

Find and care for your core values, and luck will come to you naturally.

■Profile
Born 13 February 1993. She has acted in the NHK television series’ Hiyokko(ひよっこ)’ (2017), the films ‘We Made A Beautiful (花束みたいな恋をした)’ (2021), ‘Ex-convict(前科者)’ (2022), ‘Ishiko and Haneo(石子と羽男)” (2022)’ and ‘Phases of the Moon(月の満ち欠け)’ (2022). She is currently starring in the NHK Taiga Drama” Dosuru Ieyasu(どうする家康), and her film Chihiro-san was released on 23 February on Netflix & in theatres.

Kasumi Arimura – since her first appearance in a TV drama in 2010, she has starred in various popular films and received a Japan Academy Award last year.

This time, she played the lead role in the film version of the popular manga Chihiro-san, released in theatres all over Japan on 23 February (Thursday, a national holiday) and is also being streamed on Netflix worldwide. We asked Ms. Arimura, who plays a role that overturns the conventional image of a ‘former sex worker,’ about her thoughts on the film and its attractions.

Chihiro-san, a film that saves my heart

When I read the original manga after being told about this project, I was so fascinated by the main character, Chihiro-san, that I became a fan. I remember feeling that it must be a film that would help people struggling to live in today’s world as if it helps them overcome their problems. Especially during the COVID-19 pandemic, people were spending more and more time alone, and I felt that being alone was not something to be afraid of but rather something that could increase one’s level of happiness. I decided to participate in this film because I wanted everyone to live confidently and proudly as they wished.

For example, there is a line in the film that goes like this: ‘A meal eaten together is tasty, but a meal eaten alone is also delicious. People are creatures who seek empathy and feel alienated if they cannot empathize. I feel that this line is unique to Chihiro-san, as it affirms such tactics in human relationships.

I interpreted Chihiro as a child who did not receive enough love from her parents and maintained a comfortable distance from the people around her, probably because of her fear of losing something. However, I think such distance is comforting and makes everyone want to open their hearts to Chihiro-san, and Chihiro-san herself can love one person because she has received love and warmth from the people around her.

A lady called Chihiro-san.

I was worried that the visual of Chihiro-san wasn’t me, so I researched and discussed the way she speaks, her hair, and the glossy look, but I didn’t want to overdo it, so I decided to go with it basically as it is and let myself dive into the world of this film. I imagined a lot about Chihiro’s past, etc. She entered into society as a member of society, as a normal woman in the public sense, but felt something different from the scale of other people and something that prevented her from mixing well, and she found the sex industry as a profession. As I was thinking about how I could express the appearance of a woman who seemed to have reached a certain level of maturity and completed her life, I was following the character of Chihiro. That may be why I naturally called Chihiro-san instead of Chihiro.

It was closer to the feeling that I was objectifying Chihiro than the feeling that I was living as Chihiro. I think it was the first time I had such a feeling. At the same time, she is a person who has the strength to face the other person, who says, “I know you want me to get hurt, but I won’t get hurt,” in response to the thorns that come flying at her from the other person. In this situation, I was aware of Chihiro’s frankness, not interfering in things in a good way, and not expecting things from others.

To stay a film in someone’s heart.

When I had the opportunity to work with director Imaizumi this time, I got the impression that he is a person of great curiosity and has a way of fighting within himself. I got the impression that he has some complexes or struggles and digests them individually through filming. Because of this, he gave me careful instructions about even the most minor nuances, and I could surrender myself to the filming process. I didn’t get any special requests, but I cheerfully played the role of Chihiro without being too serious. I think many of the director’s films give a sense of the warmth of everyday life, and I would be happy if that could be conveyed to many people.

What is wonderful about being an actress is that, although it might be just a nice word, I hope to deliver even one of my films to someone’s heart. I recently felt again that this is why I am doing this job.

At the moment, I don’t have anything else I want to try other than acting, but I would like to write a script one day. There are many genres of works, but I like works that don’t explain too much and give a sense of space, so I hope to be able to create such works.

I think there are many university students whose ideals are too vague and who don’t know what they really want to do.

In such cases, first try to find the root of the ideal you have in mind. Once you have found it, many things will go very smoothly. It feels as if something like timing or luck will come to you on its own. I think you will expand your perspective all at once. I hope you will successfully find the most essential core values.

In charge of translation:INTERNATIONAL CHISTIAN UNAIVERSITY Mai Wako
翻訳担当:国際基督教大学1年 若生真衣

<中国語記事>

有村架纯 
找到自己的核武器好好珍惜,运气一定会自然到来
2023.02.23

演员 有村架纯

■简介
出生1993年2月13日。 主演 NHK 电视剧『ひよっこ』(2017 年)、电影『花束みたいな恋をした』(2021 年)、『前科者』(2022 年)、『石子と羽男』(2022 年)、『月の満ち欠け』(2022)。 目前正在出演NHK大河剧『どうする家康』。 电影『ちひろさん』于 2 月 23 日在 Netflix 和影院上映。

自2010年首次出演电视剧以来,有村架纯出演了多部热门作品,去年还获得了日本电影学院奖。
此次改编自人气漫画的电影,将于2月23日(周四、节假日)起在全国上映。 她还在电影中『ちひろさん』担任主演,该电影目前正在 Netflix 上全球上映。 我们询问了饰演颠覆「前妓女」传统形象的有村女士对这部作品的看法和亮点。

■『ちひろさん』是一部拯救我心灵的作品。

当我收到这个邀请并阅读原作漫画时,我被主演ちひろさん所吸引,以至于我自己也成为了粉丝。 我还记得我感觉这项工作肯定会帮助那些在当今时代生活困难的人们,因为它会帮助他们摆脱自己的陈规。 尤其是在新冠病毒大流行期间,人们独处的时间越来越多,人们说:“独处并不可怕,事实上,这可能是一个增加你幸福感的时刻。每个人都应该感到自信和有尊严,并做到这一点。”他们想要什么。”我决定参与这项工作,因为我想让他活下去。
比如作品中有这样一句台词。 “一起吃的饭菜很美味,但单独吃也很美味的食物也很美味。” 人类是寻求同理心的生物,如果不能同情他人,就会感到疏远。 我觉得这句台词是ちひろさん独有的,肯定了人际关系的动态。
ちひろさん是一个没有得到父母足够爱的孩子,我的解读是,她可能是因为害怕失去一些东西,才与周围的人保持了合理的距离。 但那种距离感很舒服,每个人都想向千寻敞开心扉,而ちひろさん自己之所以能够爱一个人,是因为她接受了周围人的爱,懂得了温暖。我想。

■一个名叫“ちひろさん”的女人

我担心ちひろさん的形象不是我,所以我研究和讨论了她的说话风格、发型、光泽等,但我不想做得太过分,所以我基本上决定就这样。能够跳入这部作品的世界。 我对ちひろさん的过去想象了很多,她踏入社会,作为社会的一员,作为一个正常的女性,但她觉得和其他人有尺度上的差异,不能很好地交往,所以她发现成人娱乐行业。 我想我在扮演这个角色时,是在追随ちひろさん这个角色,思考如何表现出一种有远见的、仿佛经历过一次生活的人的样子。 也许这就是为什么我自然而然地称ちひろさん同学为“ちひろ朋友”而不是“ちひろさん”。
感觉更像是我在客观地看待ちひろさん,而不是我感觉自己就是ちひろさん。 我想这是我第一次感受到这种感觉。 与此同时,有人有力量对抗飞向他们的荆棘,并说:“我知道你想让我伤害你,但我不会伤害你。” 在这种情况下,我体会到了ちひろさん那种不干涉事情、不期待别人的清爽的一面。

■在某人的心中留下作品

这次和今泉导演合作给我的感觉是,他是一个充满好奇心的人,也是一个有自己战斗方式的人。 我的印象是他有一种情结或者正在与某件事作斗争,通过拍摄他正在一一消化它。 他对我进行了细致的指导,直到最细微的差别,我在拍摄时屈服于这一点。 我没有什么特别的要求,但我能够以一种明亮而欢快的方式扮演ちひろさん,而不会让它变得太黑暗。 我觉得导演的很多作品都能让你感受到日常生活的温暖,如果很多人都能感受到这种感觉我会很高兴。
我认为我作为一名演员的工作的美妙之处在于,它可能听起来很自命不凡,但我希望我的工作能够触及某人的内心,即使这只是一件事。 最近我再次认识到,这就是我继续做这项工作的原因。
目前,除了表演之外我没有什么想尝试的,但有一天我想尝试写剧本。 我确信有很多不同类型的作品,但我喜欢没有太多解释并留下空间感的作品,所以我希望我能创作出这样的作品。

我想有很多大学生的理想很模糊,他们不知道自己真正想做什么。
在这种情况下,首先尝试找到你心中理想的基础。 如果你能找到这一点,我想事情就会进展得很顺利。 感觉就像时机或运气之类的东西就降临到你身上了。 我认为它会立即开阔你的视野。 我希望你能成功找到最重要的部分。

翻訳担当:中山美緒

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